インタビュー
「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」開発者インタビュー
可動、質感、スタイル……アニメのカッコ良さへ挑戦する“究極のストフリ”
2018年3月23日 07:00
「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」が3月24日に発売となる。今回はこの発売直前の製品のインタビューを行なった。本商品の思い入れを語るのは設計デザインを担当したDRAGON STUDIOの坂埜竜氏と、バンダイコレクターズ事業部で本商品を担当する小西諒氏だ。
ストライクフリーダムは人気の高いモチーフだ。アニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」においてキラ・ヤマトが乗る機体であり、金色に輝く関節と、大きな羽を持ち、大火力で敵をなぎ倒す。人気の高い機体であり様々な商品化が行なわれている。
そして「METAL ROBOT魂」は約14cmという手頃なサイズにギッシリと金属パーツを詰め込み、金属ならではの質感、重さ、しっかりしたポージングを可能にするブランドである。「METAL ROBOT魂」でどうストライクフリーダムを表現するか、今回はこのテーマに迫ってみた。
弊誌で坂埜氏は「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」のインタビューを行なっている。インタビューで坂埜氏の関節へのこだわり、ポージングへのこだわりの強さが伝わってきて、とても楽しいインタビューだった。今回のストライクフリーダムにどういったこだわりを込めているか、気になるところである。
小西諒氏は先日の「ROBOT魂 シナンジュ FINAL BATTLE SET:Feat.ネオ・ジオング」に続いてのインタビューとなる。坂埜氏と共に本商品へどういう想いを込めたのか、そして「METAL ROBOT魂」というブランドをどう捉えているか、といった話を聞いた。
アニメの原画が表現するストライクフリーダムの魅力をアクションフィギュアに!
「ストライクフリーダムガンダム」はアニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」において“最強”といえる機体である。オールレンジ攻撃を可能とする「スーパードラグーン」を搭載、青い翼を開いて高い機動力で戦場を飛び回り、2つのビーム・ライフルを繋いで強力な攻撃を行なう。そして内部骨格はフェイズシフト装甲素材で作られ、金色に光り輝く。
強烈なイメージを持つこの機体は多くのファンを獲得し、その後も様々な玩具ブランドの“目玉商品”として商品化が積極的に行なわれた。プラモデル、食玩、そしてアクションフィギュア。コレクターズ事業部の商品としては「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」はその大胆なアレンジが高く評価された。その上で「METAL ROBOT魂」ブランドでストライクフリーダムを発売する意義とは何だろうか?
小西氏はそれこそが新しい「METAL ROBOT魂」のブランド戦略だと語った。2015年に発売された「METAL ROBOT魂 Hi-νガンダム」から始まったシリーズだが、坂埜氏に担当してもらう「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」からのラインでは、劇中のイメージ再現とポージングの両立を大きなテーマに展開している。
「ダブルオーライザー」も様々な立体物が発売されている商品だ。その中で「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」は「ダイキャストを多用した高級感」、「堅牢な関節によるポージング」、「充実したオプションがもたらすプレイバリュー」、といったシリーズの特性を活かすことで、既存の商品以上の価値、ユーザーに「次はこのキャラクターを『METAL ROBOT魂』で見てみたい!」と思わせる事に成功した。その方向性をより明確に提示するために「ストライクフリーダム」が選ばれたのだ。
「METAL ROBOT魂」は金属パーツによる関節に大きな特徴がある。重い武器を持ってもしっかりと保持する、固定フィギュアのような派手なポーズをユーザーが思い描くまま試し、そしてその状態を維持できる。そこに「メタルビルド」で培った“電解メッキ”で美しい金のメッキを施すことでこれまでの商品以上に遊んで楽しいストライクフリーダムを実現できたという。「今後METAL ROBOT魂の商品を出すにあたり“橋頭堡”となってくれるキャラクターだと思います」と小西氏は語った。
そして坂埜氏は本商品に「アニメで動いているストライクフリーダム」のイメージを込めて設計したという。坂埜氏は製作にあたり参考にした膨大な画像を見せてくれた。坂埜氏は設定画にあるストライクフリーダムを立体化するのではなく、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のチーフメカ作画監督を務めた重田智氏が描いたアニメの中のストライクフリーダムを追求した。
それは羽の薄さ、各部のエッジの効いたライン、全体のバランスと、細部のディテール……。今回坂埜氏が追い求めたのは動いているストライクフリーダムであるという。その中で特にこだわったのが「顔」の造型。アニメの原画のストライクフリーダムは口にあたるところの幅が広く、側面と明確に“面”が異なっている。側面から正面までが丸く繋がっているのではなく、鋭角に“面取”がなされているという。全体的に、これまでの商品でのストライクフリーダムとは異なるバランスになっているという。
こういった「今までにない解釈でのキャラクター造形」というのは、プラモデルに大幅に手を入れるモデラーのアプローチであり、ガレージキットの製法に近い方法論と言える。坂埜氏は「自分の中でこのキャラクターの魅力はここだ」という想いを「METAL ROBOT魂」というマスプロダクト商品に込めているとのことだ。
もちろん商品というものはただひたすら自分の想いを突き詰めたものではない。小西氏を始めとした開発スタッフ、工場スタッフと話し合いながらのバランスとなると坂埜氏は語った。しかしそれでも商品の芯となっているのは坂埜氏のストライクフリーダムへの想いだと筆者は感じた。他の商品でもデザインはもちろん、色調、関節設計、ポージングへのバランスなど様々なディテールにクリエイターの想いが込められているということが、今回のインタビューで確認できたように思う。
メッキ、マット、グロス、様々な質感がもたらす存在感
今回のインタビューでも「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」のインタビュー時と同様、坂埜氏に商品のポーズをつけてもらいながら話を聞いた。今回撮影したのは発売直前の製品に近いバージョンの試作品である。設計を検証するモデルに比べ、彩色など最終的な仕様を確認できる。坂埜氏は商品を動かしながら「これ良いね、色が良いよ」と感嘆しながら小西氏に語りかけた。
マテリアルと質感というのは、「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」の大きなセールスポイントだという。本商品では手足の関節部分だけでなく、胴体内部のフレームや、首の基部などにも金属パーツを使い、そして光り輝くような鮮やかな金色の電解メッキ処理を行なっている。このため動かしていくと様々な所から金色の光りがのぞき、フレームが発光しているストライクフリーダムのイメージを強調する。
坂埜氏が気に入ったのはこの金属光だけでなく、骨格を覆う白い装甲や黒い部分はマットな質感があり、青い部分は光沢のあるグロス処理、そして全身のマーキングやラインにつやを持たせている。異なるマテリアルが組み合わさっている雰囲気はプラモデルとは異なる、超合金などの“玩具っぽさ”が良い意味で出ていると坂埜氏は語った。
坂埜氏がこれまで触っていたのは動きを検証するモデルであり、製品に近い仕様の立体物を触ったのは今回が初めてだという。小西氏は「マテリアルの違いは意識しました。坂埜さんにそう言っていただけるとうれしいですね」と答えた。坂埜氏は「この質感の違いを組み合わせた感覚は気持ち良いよ」ともう1度繰り返した。
つやのある部分を取り入れたのは小西氏の中でストライクフリーダムのイメージソースに“天使”というものがあり、小西氏は公式のイラストなどに“艶やかさ”を感じたという。このイメージを商品に盛り込むため、つやのあるラインや青い部分はその艶やかさを演出するためにグロス(つや)処理を選択した。グロスの表現はあえて強くつやが出る工程で行なっているとのことだ。
青い部分で大きく目立つのは背中に装備されたスーパードラグーンだ。このドラグーンは光が当たるとラインを入れているような白く細い反射光を放つ。このため背中側から見たとき一層派手になる。翼の基部は金色の金属パーツで、非常に豪華な雰囲気がある。関節部分は青いグロスを引き立てるため、基本色の白はつや消しを使っているのだと小西氏は語った。「今回のはやっぱりグロスが効いているね。このギャップが良いね」と坂埜氏がコメントするのも印象的だった。
外観に関しては細かいマーキングも見所である。「METAL ROBOT魂」は全高約14cmというサイズだが、ビーム・サーベルの柄など細かいところにもタンポ印刷でマーキングが入っており、その精密さに感心させられる。小西氏はこの商品に関しては「実在の兵器の雰囲気が感じられるマーキング」を目指したとのことだ。
そして“動き”である。「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」は足を大きく開き、見得を切るポーズが楽しい。長い足は幅広く動き、金属パーツでしっかりと固定されるのでかっちりと決まる。肩は引き出し関節で前にまで引き出せ、ビーム・サーベルの両手持ちや、イラストなどでおなじみの連結したビーム・ライフルを持ったポーズも可能だ。また肩を前に出しても顔が隠れないように首の自由度も高くしてあるという。
坂埜氏の求めるアクションフィギュアの方向性は「人に近い可動」だという。人間のような動きができる関節をモチーフのデザインを活かしつつ、これまでの技術を活用しつつ実現していく。「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」でもその坂埜氏のこだわりが活きている。
筆者も「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」を持っているので本商品の動かす楽しさはとても理解できる。サイズ感による動かしやすさ、手足がしっかりと固定されることでの手先、足先までこだわったポーズ付けが本当に楽しいのだ。手足の重さに負けない関節構造、様々な所に仕込まれた関節が迫力のあるポーズを可能にする。
そして背中部分。「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」では、本体と同じくらい背中の設計にも時間がかかったと坂埜氏は語った。羽は金属パーツの基部でしっかりと支え、そして各羽がきちんと可動する。ストライクフリーダムは羽を広げ自在に空中を飛翔する姿も、羽を畳んで直立する姿も映える。
坂埜氏は羽の表現に関しては特に“薄さ”に関してこだわったとのこと。重田氏が描くストライクフリーダムの羽はスピード感を強調するためか薄く、鋭角である。「METAL ROBOT魂 ストライクフリーダムガンダム」の羽はその雰囲気を活かしたものになっているという。大きく広がる羽は見得を切るポーズを引き立てる。今回は坂埜氏に商品のポーズをつけてもらったのだが、ポーズをつける様子はとても楽しそうで、見る角度までこだわったものにしてくれた。動かして楽しいアクションフィギュアだと言うことを実感させてくれる風景だった。
小西氏は「METAL ROBOT魂」においては、劇中のシルエットの追求、アニメやこれまでの商品などでとっていたポーズを、より洗練された姿で取ることができる関節設計、“動き”を感じさせる工夫など様々なポイントを高い基準で満たす商品にしたいという想いを込めている。「その上で金属部品を使うことで、プラモデルではできないような質感や、重量感も求めています。見た目の質感に加え、手に持ったときのずっしりした重みもきちんと感じられるようにしたい。そういうポイントを提示して坂埜さんに設計していただいています」と小西氏は語った。
(C)創通・サンライズ
※写真は試作品のため、実際の商品とは異なります