インタビュー

山岸功典氏が「Trip Trap Travelers」で模索するVR-MMORPGへの道

開発者達を驚かせるVRユーザーの「ピュアすぎるリアクション」の楽しさ

 モノビットが池袋にあるVR PARK TOKYO IKEBUKURO向けにリリースしたHTC Vive用多人数対応VRトラッピングバトル「Trip Trap Travelers(T3)」。最大4人の同時プレイが可能なダンジョン脱出ゲームである。

「T3」のプロデューサーを務める山岸功典氏と、モノビット代表取締役社長の本城嘉太郎

 モノビットはVRに関して、これまで開発者や企業に向けたツールを提供してきた。その目標は「VR空間でコミュニケーションを行なう」もので、モノビットエンジンはコンピューター空間で多くの人がその空間に実際にいるかのようなふれあいを実現させるために作られている。

 この理念はモノビットの代表取締役社長の本城嘉太郎氏の「ウルティマオンライン」での体験がスタート地点となっている。オンライン上で全く知らない人々が出会う。そんな世界をVRで作りたいという理念がモノビットの“根幹”であると言えるだろう。そのモノビットが多人数参加型VRゲームをリリースした。

 「T3」のプロデューサーを務めるのは「スターオーシャン」シリーズや、「ヴァルキリープロファイル」シリーズのプロデューサーであった山岸功典氏。ストーリーベースのRPGを多く手がけた山岸氏が、「VRコミュニケーション」を可能にするモノビットエンジンでどのようなゲームを作ったのか、非常に興味が惹かれる。

 今回はモノビットで「T3」をプレイし、山岸氏と本城氏に本作で込めた想いやこれからの展望を聞いた。さらに本作の開発スタッフに、遊び方のコツや“攻略法”なども聞くことができた。ゲームの感触と共に紹介していきたい。

【TripTrapTravelers_T3_公式PV】

「くやしい、もう1度やりたい!」手探り感こそがゲーム性のキモ、「Trip Trap Travelers」

 「T3」は古典的な香りがするダンジョン探索アドベンチャーである。巨大なミノタウロスが封じ込められた罠だらけの迷宮で、ミノタウロスの封印が解ける前に迷宮を脱出しなければならない。

今回はモノビットの開発室で、実機と同じように4人でプレイした
迷宮にはいくつものトラップが仕掛けられている
封じられたミノタウロスが解放される前に脱出しなくてはならない

 迷宮は薄暗く、トラップだらけだ。床に設置されたトラバサミ、空中を往復するギロチン、突き出す槍……そして何度倒しても復活するスケルトンが行く手を阻む。プレーヤー達は4人で協力して難関を突破し、出口までの道を探さねばならない。

 本作はHTC Viveを装着してプレイする。ゴーグルをかぶれば目の前はダンジョンだ。他のプレーヤーは手と頭の頭巾だけが実体化したような姿で表示されている。モノビットエンジンならではで、マイクとヘッドフォンを通じてのコミュニケーションが可能だ。

 ダンジョン内での移動はViveコントローラの親指部分、タッチパッドの上を押すと前進、後ろを押すと方向転換となる。左右の向きは実際にプレーヤーが向くことで変わる。コントローラーのトリガーを引くことで、左手からはファイアーボールが発射され、右手はものを掴んだり、スイッチを押したりする。今回は会場と同じ4人でのプレイを体験できた。プロデューサーの山岸氏も加え、開発スタッフの説明を受けながらゲームを進めた。

 ……ところが説明を最初に受けても、実際のプレイはわからないことだらけだ。まず移動ができない。タッチパッドで移動ができるので、つい左右を押して方向転換か、スライド移動ができるものと思ってしまうが、できないのである。

 そして迷宮のルールがわからなかった。先に進むためには仕掛けを動かさなくてはいけないが、それがどこにあるかわからない。木箱をファイアーボールで壊すと罠が隠されている事も説明されるまでわからない。初見プレイでは移動に手間取り、スケルトンを撃退するのに精一杯になってあっという間に時間切れになってしまった。

 しかし、じつはこの手探りで進むゲーム性こそが「T3」のテーマなのだ。初見では訳がわからない。だからこそプレーヤー達が勝手な憶測をして進んでいく。歩き方がわかるようになって時間切れ、「よしもう1回並ぶか」とプレーヤー達はプレイ待ちの列につく、くり返し遊び、ゲーム性を解明していくゲームなのである。

 実際、2回目は結構うまく進めるようになった。ギロチンをすり抜けるときはタッチパッドを連打して駆け抜ける。しかしその先に設置型のトラップがあったりするのだ。迷宮の作りも実はそこそこ複雑で、ちゃんと探索しないと先に続く道がわからない。2度目のプレイはスタッフに助けて貰いながらも先に進めたのだが、トラップに体力を削られてゲームオーバーとなってしまった。生き残ったスタッフがゴールするシーンを灰色の画面で見守ることになってしまった。

 よし3度目ならクリアできるぞ! と意気込んだのだが、ここで体験プレイは終了。実はこの「残念な気持ち」もアトラクションのキモなのである。VR PARK TOKYO IKEBUKUROは90分3,500円の完全入れ替え制。制限時間内なら複数のVRコンテンツが遊び放題なのだ。「T3」が気に入ったユーザーは時間内で何度も遊びたくなる。ゴール直前で終わってしまったらなおさらだ。シンプルでわかりやすく、あと少しでクリアできそう……となったら、くり返し遊びたくなる。「ロケーション型VRコンテンツとはこういうものだ」というテーマを押し出したゲームなのである。

 ゲーム内で面白かったのが、1人がスケルトンを掴んだところ。スケルトンは何度でも復活するウザイ敵なのだが、掴んで放り投げることができる。これでスケルトンを遠くに放り投げてしまえば復活までの距離が稼げる。感心させられた「裏技」だ。習熟したプレーヤーは頼もしいし、予想を超えた動きをする面白さもある。

 「T3」はシンプルながら様々な要素を盛り込まれていると感じた。この「くり返しプレイしたくなる」と言う気持ちも含めて、クリエイターが「どう楽しませるか」を考えているのがよくわかった。インタビューでは制作背景なども質問してみた。

VR-MMORPGを実現するために……山岸氏と本城氏が積み重ねるVRのノウハウ

 やはり気になるのは、山岸氏がモノビットに参加し、VRゲームを作るというポイントだ。これまで様々なRPGタイトルを手がけた山岸氏はどのような想いで新しいチャレンジをしたのだろうか。本城氏は「モノビットは将来VR-MMORPGを作りたいと考えています。その中でこれまで素晴らしい日本の代表的なRPGを手がけてきた山岸さんとご一緒いただける機会ができたので、そこはぜひ、と言うことでご参加いただきました」と答えた。

「スターオーシャン」シリーズや、「ヴァルキリープロファイル」シリーズのプロデューサーであった山岸功典氏。山岸氏が得たRPGのノウハウ、プレーヤーへのアプローチがどのようにゲームに活かされているかも気になるところ
本城氏の想いはVR-MMORPGにある。その壮大な夢を実現させるために1つ1つ段階を踏んで物事を推し進めていく姿は非常に興味が惹かれる
今回は非常にシンプルなタイトルとなった。今ある技術とノウハウを組み合わせ、「ユーザーの体験」、「協力プレイ」、「リプレイしたくなるゲーム性」など様々な要素を盛り込んでいる

 今回の「T3」はこれまでの山岸氏が手がけていたストーリー性、キャラクター性は少なく、非常にシンボリックで、シンプルなものだ。見た目だけなら「ウィザードリィ」のような海外製のゲームの様にも見える。こういったシンプルなゲームになったのは「初期の構想と大きく違うものになったため」と山岸氏は語った。「T3」は現在の形になるために、大きく軌道修正が行なわれたという。

 元々、初期の開発コンセプトは「ダンジョン探索RPG」だった。ゲームの内容は今のものよりずっと複雑で、プレーヤーは戦士として剣と盾を装備し、戦士と魔法使いでしっかり役割がわかれ、協力して敵と戦うゲームとなっていた。ストーリー要素も盛り込まれる「王道VR-MMORPG」になる予定だった。そのコンセプトは“「ウィザードリィ」のようなRPG”であり、ダンジョンや敵などのリソースはRPGとして作られたときからのものだという。

 元々は家庭用VRデバイス向けに、オンラインで協力プレイを行なえるVRRPGを作ろうと「T3」はスタートした。しかし“市場”を考えた上で本作は大きく方向転換したと山岸氏は語った。家庭用VRデバイスによる協力型RPGを考えていたのだが、普及台数などを考え、アミューズメント施設による「ロケーション型VR」コンテンツにシフトしようということになり、現在の形になったという。「T3」の開発期間は6カ月ほどだが、前半3カ月は本格的なVR-MMORPGとして開発を始め、それから今の形にまとめるのに3カ月かかったという。

 「ロケーションベースは10分ぐらいでお客さんが巡回するビジネスモデルです。コンシューマーのように1時間以上じっくり遊んでもらうものではない。ですのでゲーム性も大きく変えることになりました」と山岸氏は語った。

 RPGという様々な要素を盛り込んだゲームから、ロケーションベースのショートコンテンツに方向転換していく中でも、「VR-RPGとしてのアプローチ」は続けている。「T3」で試みたのは「移動」の概念である。RPGの冒険は“移動”が大きな要素を占める。HTC Viveは部屋の中で座標を判定するため、歩こうと思えば数歩歩けるが広大な空間を移動するRPGでは実際に歩いていたら空間は絶対的に足りない。

 欧米ではポイントを指定して移動するワープの移動法が取り入れられているが、「日本人には合わないのでは」と山岸氏は考え、コントローラのタッチパッドを使う方式にしたという。しかし「VR酔い」は大きな問題で、パッドの前を押して連続で移動させると酔いやすくなる。そこでボタンを押す感じで1歩1歩歩くようにした。速く歩くためには連打させることでゲーム性も盛り込んだ。

 山岸氏にとってもこれが初のユーザー向けVRコンテンツとなる。特にユーザーの反応でこれまでの開発とは違う感触を得たという。やはり大きかったのはユーザーの反応だ。コントローラとモニター画面を通じてゲームと繋がる場合と違い、VRの反応はダイレクトだ。敵が来たときに後ずさりをしたり、障害物をジャンプで飛び越えようとする人もいた。ギロチンをしゃがんでかわそうとする人もいて、こちらの想像を超えてくる。プレーヤーの反応で進化するギミックもあり、今のバージョンでは吊り天井をしゃがんでかわせるようにしたという。

 移動も現在の形に落ち着くまでは試行錯誤があった。以前は3Dダンジョンゲームの様にタッチパッドの左右でスライドするアクションを入れていたのだが、ロケーションを訪れる人にはそういったゲームならではの「常識」がわからない。このため、あえて前進と振り返りにしぼり、頭の向きで進む方向を決めるようにしたという。

 一方で本城氏の目指すVR-MMORPGと言う意味では今回はまだ遠い作品となった。「まずは本格的なRPGを」と思っていたが、市場の動向もあり、今できる形、サービスできる形として「T3」は、「協力型脱出ゲーム」といえる作品としての形となった。ただそういう方向転換の中で「VR空間でものがつかめると楽しい」、「しゃがむ動作がゲームに盛り込める」など、VRならではの楽しさをゲームに盛り込めたところにはうれしさを感じているという。

 そうしたなかでユーザーが実際に自分たちのゲームを遊んでいる姿を見たとき、本城氏は「こちらの予想以上に怖がってくれてうれしかった」と語った。「VRは本当に色んな人がいて、本当に没入しちゃう人もいれば、平然としている人もいる。僕たちは日頃触れてしまっているので慣れている部分もあって、新鮮でした」と語った。

 今回はこういう形でゲームとなったが、山岸氏、そして本城氏が目指していくのは「VRRPG」だ。山岸氏は「RPGは移動を別とすれば様々なゲームの集合体だ」と語る。特にエンカウント型の場合などは、フィールドと戦闘システムは全く別なゲームと言える。そして他のミニゲームも盛り込まれているのがRPGというスタイルである。

 そういう意味で、「T3」のような10分くらいのゲームサイズは「ミニマムだからこそ作りやすい」と山岸氏は語った。10分間のロケーションベースのVRコンテンツという言わば“外枠”があれば、これからも様々な要素を盛り込めるのではないかと山岸氏は思っているという。例えば「ドラゴンクエスト」の不思議な鳥「ラーミア」に乗るライドコンテンツなど色々な方法が考えられる。今の状況では様々な「ピース」をゲームとして作り上げていく、今後これらを統合していくことでVR-MMORPGへと繋げていきたいと山岸氏は語った。

 また、今回はリアルタイムのアクションだが、現在のコマンド式RPGでもアクション性が盛り込まれているように、リアルタイム性だけがVRではない。コマンド式でもVRの表現は可能で、「ゲームでどこまでVRコンテンツを吸収できるか」というのはチャレンジしがいのあるテーマだ。「ゲーム内で剣を振らせるとものすごく疲れる。ボタン操作やコマンドであたかも自分が剣を振っているように感じさせるかなど、やれることは多いと思います」と山岸氏は語った。「できるだけ少ない動きで、大きなアクションを自分がやっているように感じさせる」、これは冒険にユーザーをのめり込ませる面白いテクニックだ。

 山岸氏の言葉を受けて、本城氏は「1つ1つを積み上げている」と語った。VR-MMORPGという目標に向かい、モノビットは1つ1つ技術的なアプローチを行なっている。ネットワークエンジニア、プログラマーによるゲームエンジン、山岸氏のようにRPGを手がけてきたプロデューサーがいる。今後VRデバイスがさらに日本で普及していく未来に向け、VR-MMORPGを実現させるためにさらに進んでいきたいと本城氏は語った。

 方向性としては、「VRに特化しないハイブリッドの方が実現するのではないか」といった方向も模索している本城氏だが、それでもその視点はあくまで“VR-MMORPG”にある。本城氏のMMORPGといえば「ウルティマオンライン」であり、しかも海外サーバーでの衝撃だという。「周りは英語ばかりで本当に異世界、自分が色んな人のいる、不思議な異世界に迷い込んでいると実感するような、そういう体験を実現したい」それが、本城氏のゲーム作りの根底だという。ビジネスでの実現を目指しながら、MMORPG、そして異世界感をユーザーに提供するために、本城氏は活動をしているとのことだ。

 その中で、「T3」を作るには、VR PARK TOKYO IKEBUKUROを運営するアドワーズのアドバイスが必要不可欠だったと山岸氏は語った。ユーザーが何を求めるか、ユーザーはどうゲームを遊ぶか。「VRユーザーはコントローラでの操作という“常識”は通じない」と言うのもアドワーズ側の意見だったという。山岸氏はディレクターと共に、アドワーズの助言を受けながら「T3」を作り上げていった。

 「T3」はまだVR PARK TOKYO IKEBUKUROでサービスしてから日が浅い。様々なユーザーデータが蓄積されているという。最先端のVRコンテンツを遊ぶユーザーからのフィードバックが日々得られるこの状況は、ワクワクさせられるものがある。山岸氏が期待をしているのは「こちらが予想もしない動き」だという。それはコンシューマタイトルのユーザーとは全く異なるフィードバックであり、山岸氏も楽しみなところだという。
「T3」は調整とアップデートも行っていくということで、今後も楽しみである。

 それでもやはり本城氏の夢は「VR-MMORPG」だ。本城氏はこのプロジェクトとは別に、森川幸人氏と共にモリカトロンという会社を立ち上げ、AIを使ったゲーム制作を進めている。こちらはAIによる「VR-MMORPGのフィールドの作成」というこちらもワクワクさせられるテーマであり、いずれは山岸氏の「VR-RPG」に加えられ、VR-MMORPGへ集約させられていく。こちらも期待して欲しいと本城氏は語った。AIはフィールド制作だけでなく、キャラクターの受け答え、さらには運営もAIである程度任せられるか、という壮大な計画だそうだ。

 山岸氏は最後に、自分なりのVRコンテンツの未来を語った。「VRはFPSにも近い部分があって、これまでのゲームとは人間の五感に訴えかける部分も変わってくる。しかしそれは大きな負荷もかかってきます。どのように負荷を掛けず楽しんでもらえるか、それにはユーザーさん自身も慣れが必要だと思います。開発者はもちろんですが、ユーザーさんも進化していく、それがVRというジャンルだと思っています」。

 一方でこれからの進化について、ジェットコースターを例に挙げ、ジェットコースターは刺激を強める方向で進化し、怖いと思うユーザーは触らないという進化を遂げた。VRも過度なVR酔い対策が本当に必要になるか、ユーザーが慣れれば作れるコンテンツの方向性は大きく違ってくるのではないか、そこが今後のVRの分岐点になるのではないか、そう山岸氏は考えているという。

 本城氏はもう1度自分の理想のゲームを語った。「ウルティマオンライン」に触れたのは19才の頃。19才の自分が「死ぬほどはまれるゲーム」こそが、モノビットが作るゲームの理想だという。最先端のテクノロジーで、「ウルティマオンライン」が世界に衝撃を与えたような同じような感動を自分の手で作り上げたい。ネットワーク、AI、VR……全てをつぎ込み、最高のMMORPGを作りたいと、力を込めて語った。

裏技大公開! 開発者の語る「T3」の攻略法

 続いて、ディレクターとプログラマーに話を聞いた。2人は最先端のVRコンテンツを作成している。世には出ていない作品も多いが、経験を積みながら技術を重ねているという。「こういったやり方が気持ちいい、こうすれば良いのか」など、やってみることで得ることも多いという。

レベルデザインアドゲームの具体的な仕様を詰めていったディレクター
VR空間でのコミュニケーションなど数々の難題に挑戦するプログラマー

 一方で現場の人間としてはジレンマも抱えているとプログラマーは語った。VRが一気に注目され、ユーザーの期待が爆発的に高まったはいいが、見せ方、やり方のノウハウはまだ全然足りない。1つ1つ積み上げている現状と、それを知らないユーザーの大きな期待値の間で、作り手としては葛藤を抱えている。「ゲームの中に入ったような体験をしたい!」という気持ちに対して、どれだけ情報を与えれば良いのか、どういう操作性にすればいいのかすらまだ手探りの状態だ。この状況こそが爆発的なVRヒットタイトルが出てない原因ではないかと指摘した。

 もちろん研究や開発者間の情報交換なども行なっているが、今回のVR PARK TOKYO IKEBUKUROへの出展はとても有用なデータとなっているとのことだ。論文や開発者の視点では得られない「結局ユーザーは何を楽しんでいるか」と言う部分が非常に参考になるとのことだ。「車のドライブや、操作が制限されるゲームより、『T3』のような自由なゲームの方が、こちらが『えっ!?』と驚くような反応をしてくれます。普段ゲームをしない人の方がうまく攻略したり、ゲームのセオリーを超えたところが面白いです」とプログラマーは語った。

 ディレクターが「T3」でユーザーに特に見てもらいたいのは「レベルデザイン」だと語った。「レベルデザインは本当に何度も繰り返しました。「ここは何度も通る」、「こっちは向かない」などくり返しくり返し検証しました。結構意地悪なトラップ配置になっていると思います。(運営を担当する)アドアーズさんから『少し難しくして欲しい』という要望があったので、歯ごたえがレベルになっていると思います。皆さん体力が削られて、1回は倒されて欲しいです。諦めずに挑戦して欲しいですね」。

 プログラマーはVR空間でのやりとりをいかにスムーズにさせるかがテーマである。ただユーザーはゲームに夢中になって無言になってしまう人も多い。「『T3』は脱出ゲーム的な要素も大きいので、声が出しやすいところがあります」。今回に関してはできるだけシンプルに、直感的にできる操作性を特に感じて貰いたいとのことだ。「何でもやれるように盛り込みたくなるんですけど、今回は入れすぎなかったところが丁度良かったなと思います」とプログラマーは語った。

 最後に教えてくれたのは「T3」の“裏技”である。スケルトンがつかめるのはプレイレポートでも触れたが、実は地面のマグマが噴き出している部分にスケルトンを投げ込むと、復活しなくなるというのだ。他に釣り天井はしゃがむとかわせるようになっているとのこと。これから「T3」をプレイする人は、ぜひこの裏技を活用して欲しい。

 これから「T3」をプレイする人に向け、プログラマーは「VRはゲームに慣れていない人も楽しいコンテンツだと思います。ぜひ色んなお友達を誘って、会場に来て下さい」。ディレクターは「学生の方、カップルの方、わいわい楽しんで欲しいです。実際、VR-PARKでは皆さん声を出して下さって、楽しいです」と語った。

 今回プレイし、インタビューをして「VR」に改めてワクワクさせられた。特に「まだVRは方法論もきちんと決められていない」と言う意見はハッとさせられた。そういう中で1つ1つピースを作っていき、VR-MMORPGを実現していこうというモノビットの取り組みは応援していきたいところだ。

 VRコンテンツの普及はまだまだこれからだ。その中で、「アーケードでのVR」が注目されているところも興味深い。もう少し時間はかかりそうだが、VRコンテンツの進化は注目していきたい。