インタビュー
止まった時が動き出す! 「ロックマンXメガミッション」インタビュー
20年抱えていた想い、埋もれていた物語がついに明らかに
2017年12月14日 14:00
カードダス「ロックマンXメガミッション」が復活する! プレミアムバンダイにて、カードダス「ロックマンXメガミッション」の第1弾から第3弾のコンプセット、さらに実現しなかった“第4弾”のカード、そしてカードダス「ロックマンX」からも人気カードを厳選して復活する「ロックマンX&ロックマンXメガミッション セレクションボックス」が発売となる。
カードダスはカードを使ってストーリーを展開していく独特のメディアだ。子供達はお小遣いで自販機からランダムで出てくるカードダスを手に入れ、描かれているキャラクターと、ストーリーに思いを馳せた。今回、子供では揃えられなかった「コンプセット」を手に入れることができる。しかも当時描かれなかった続きも手にすることができるのだ。
前回、弊誌では“今バンダイで「ロックマンX」が熱い!? コレクターズとカードで盛り上がる!”“というインタビューで、担当である戸澗氏の想いを取り上げた。今回いよいよその企画の全貌が明らかになるのだ。
今回のインタビューでは、この復活に合わせて様々な新コンテンツを制作する漫画家の岩本佳浩氏、そして当時のカードダス「ロックマンXメガミッション」の企画・デザインに携わったフリーライターの栗原昌宏氏、今回の復活版のディレクターを務めたレイアップの紫藤義隆氏に話を聞いた。前回に引き続き、バンダイカード事業部・戸澗宏太氏には今回の仕様の詳細などの説明に加え、当時のユーザーとしての感想なども語ってもらった。
岩本氏が参加できなかった「ロックマンXメガミッション」、20年越しで合流!
まず最初に、カードダス「ロックマンXメガミッション」について簡単に触れておきたい。「ロックマンX」はカプコンのアクションゲームであり、コミックボンボンでは原作から膨らましたアイディアや熱い展開、“涙を流すエックス”など様々な要素を盛り込んだ岩本佳浩氏のコミックスが連載されており、盛り上がっていた。
カードダス「ロックマンXメガミッション」はそういった流れから生まれたコンテンツだ。その前もカードダス「ロックマンX」は展開されていたが、「メガミッション」はカプコン監修のもとオリジナルストーリーの展開、さらにオリジナルキャラクターや、オリジナルアーマーも登場し、人気を博した。今回復活するのはこの「メガミッション」が中心となる。
今回の企画の注目ポイントはカードダス「ロックマンXメガミッション」の復活と、幻の第4弾の実現と共に岩本佳浩氏が描くコミックやカードが盛り込まれるところにある。岩本氏の参加は、今回カードダス「ロックマンX」の人気カードが復活するというところと、なによりも戸澗氏の想いのこもったオファーが中心となり実現したものだという。
今回岩本氏はコミカライズで描かれていない「ロックマンX5」以降の要素からエックスのアーマーやゼロの技をイラストで描き起こし、それをカード化する。また「メガミッション」の裏話や幻の企画書などを収録したブックレットに、「書き下ろしおまけマンガ」を執筆する予定だ。そして、2018年1月12日まで開催されている「オリジナルアーマーコンテスト」がある。最優秀者には、岩本氏が最優秀作のアーマーとメッセージを描いた豪華色紙をプレゼント。そして投稿者全員に特製スマホ待受画像が配布される。
まずやはり岩本氏に聞いてみたいのは、当時のユーザー達に人気を博したコミック「ロックマンX」の思い出だ。当時はネットがなかったので、ユーザーからの反応はやはりファンレターが主なものだった。その中で印象に残っているのは「女性ファン」の多さだったという。もちろん男の子のファンからも手紙が来たが、比率としては女の子が多かった。「女の子もボンボン読んでくれてるんだな、うれしいなと思いましたね」と岩本氏は語った。
「ロックマン」のコミカライズは昨今の復刻ブームの1つとしてコミックボンボンのものだけでなく、コロコロコミックのものも復刻され、岩本氏のコミックも復刊ドットコムから2005年に発売されている。2017年は「ロックマン」30周年にあたり大きく盛り上がる中、Twitterなどでファンの期待を実感しているという。ユーザーの応援している声は、岩本氏の現在の仕事にも力を与えてるとのこと。
Twitterの反応というところで身を乗り出したのは戸澗氏。岩本氏が「超合金 ロックマンX GIGA ARMOR エックス」発表の際、Twitterで「これが出るならメガアーマーやカードダスの『メガミッション』も復活してもいいな」といったことをつぶやいたのを見て、戸澗氏がカードダスの復活を企画したという。Twitterなどの盛り上がりは商品企画の原動力の1つにもなっているとのことだ。
そして今回、岩本氏が描くのは1枚のカードのイラストとしてマッチするよう、ストーリーのあるコミックというよりも、アーマーをまとったエックスや、技を出すゼロ達を格好良く描くためにシチュエーションを考えたものとなるという。
当初はアーマーの全身がきちんと見えるような構図を考えていたのだが、戸澗氏、レイアップの紫藤氏と話していく中で、「せっかく岩本先生にかいてもらえるなら、マンガのような躍動感を感じさせるイラストにしてほしい!」という戸澗氏の想いを受け、コミック版「ロックマンX」の1場面のような凝ったポーズや派手なエフェクト、極端なパースを盛り込んだものになったという。
岩本氏はカードダスには思い入れがある。コミック執筆当時は「メガミッション」などは“外”から見ていた。本人は関わりたいと思っていたのだが、「岩本先生はコミックに集中して欲しい」ということで、ファンの1人としてカードダスを購入していたものの、コンテンツとしての関わりはなかった。
「『メガミッション』のコミックはありがひとし先生が描かれてて、いいなあと(笑)。俺も描きてえなあ……とか思っていました。なんで俺に『メガミッション』の仕事が来ないんだろうと。だから、『メガミッション』には、“くやしい想い”があったんですよ(笑)」と岩本氏は当時のぶっちゃけ話を語った。そういう意味で今回は“念願”の関わりとなったとのことだ。
「僕はやっぱり『仮面ライダーカード』世代なんですよ。集めるのが楽しい。玩具として、グッズとして楽しいじゃないですか」。岩本氏は他のカードダスにも関わっているが、岩本氏の絵が「ロックマンのカードダス」でカードになるのは初めてとのことだ。「キラカードは特に憧れがありますね。ぜひ僕のカードはキラにして欲しいですね(笑)」。
岩本氏が描き出す新しいカード! アーマーコンテストも大きな期待
今回カード化される岩本氏のイラストは「ゼロの滅閃光」と、「エックスのファルコンアーマー」だ。ゼロは地面に拳を叩きつけ、エネルギーを流し込み地面に亀裂を発生させながら敵を攻撃する。
「マンガに登場するゼロの『アースクラッシュ』の元ネタがゲーム内でゼロが地面を叩き床を砕くシーンでした。この『地面にエネルギーを走らせる技』がゲームでゼロがプレイアブルキャラクターになった際に“滅閃光”として使えるようになった。やっぱり元ネタとなった”あの”シーンは印象的だったんですね」と岩本氏は当時を振り返った。
もう1つが、「ロックマンX5」で登場した「ファルコンアーマー」のエックス。岩本氏がコミカライズを行なったのは「ロックマンX4」までだった。このためその先のシリーズのアーマーをカード化したいという中で、ファルコンアーマーを選んだ。絵的に派手で、かつポージングの見栄えで選ばれたという。空中を移動できるファルコンアーマーの機能を活かした、天地が逆の非常に動きを感じさせる絵柄になっている。
アーマー全体を見せるよりもポーズで、というのは戸澗氏の提示した方向性だ。「岩本先生ならではのダイナミックで、ヒロイックな構図を、見たかったんです」と戸澗氏は語った。戸澗氏は小学生時代、岩本氏のコミックにドハマリしていただけに思い入れは深い。「『ロックマンX』の企画を当時のファンに届けるなら、岩本先生ははずせないと思いお声がけいたしました」。
岩本氏の描いた「ロックマンX」は“オリジナリティ”への評価が高い。涙を流すエックス、ボロボロになりながらも戦い続けるヒーロー達の勇姿は、ゲームの世界をさらに膨らませユーザーの心を強く掴んだ。こういった作劇に関して岩本氏は「僕もある日『僕はどれだけ勝手なことをやっていたんだろう』と思うことがあって、改めて資料を見たんですよ。そしたら、確かに広げ方は大きいんですが、根っこはちゃんと拾ってる。ゲームの説明書のキャラクター説明に『アルマージは武人肌である』とか書いてあって、それがコミックでのキャラクターの性格に活かされている。『俺はこの武人を活かしてあそこまでやったのか!』と(笑)。その根っこをちゃんと活かしているからこそ、ユーザーさんに受け入れてもらえたのかな?」と岩本氏は語った。
そして、「アーマーコンテスト」である。岩本氏は当時も「読者が考えたロックバスター」を選考し、イラスト化しているが、「アーマー全て」を募集し、イラスト化するのは初めてとなる。現在募集ページにはいくつも作品が上がっており、それぞれの思い入れが強くうかがえる。岩本氏は「Twitterでは『絵がうまくないと応募できないな』という声も聞かれるんですが、魅力って絵のうまい下手だけではないと思います。アイディアで勝負するのも良い。今の時点で選考する側はあまり言えないですけど、色々投稿していただきたいです」と岩本氏は語った。
戸澗氏は「アーマーコンテスト」に関して、このコンテストは絵だけでなく、アイディアや設定も投稿できると指摘した。すでに投稿されているものの中には「ゲーム内でどういう機能を発揮するか」まで言及しているものもあり、ユーザーの想いの強さが伝わってくるという。ファンならばその情熱をぶつけてみるのもありではないだろうか。