インタビュー

「モンスターハンター:ワールド」開発陣インタビュー

「モンハン」世界を描く最新作、その裏側

1月26日 発売

【パッケージ版】

価格:8,980(税別)

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価格:8,315円(税別)

 カプコンは、1月26日発売予定のプレイステーション 4用ハンティングアクション「モンスターハンター:ワールド(以下、MHW)」においてメディアツアーを開催した。メディアツアーではほぼ丸1日の間、ほぼ製品版と同等の「MHW」をプレイする機会に恵まれ、その際の様子はプレイレポートならぬ探索レポートとしてお伝えした。

 当日は開発陣のキーマンであるプロデューサーの辻本良三氏、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏、ディレクターの徳田優也氏にインタビューも行なうことができた。実機プレイを踏まえ、「MHW」についてアレコレ聞いてくることができたので、その模様をお伝えしたい。

実機プレイを踏まえ、開発陣にインタビュー!

「モンスターハンター:ワールド」開発陣インタビュー エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏(左)、プロデューサーの辻本良三氏(中)、ディレクターの徳田優也氏(右)
エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏(左)、プロデューサーの辻本良三氏(中)、ディレクターの徳田優也氏(右)

――「MHW」に対するユーザーさんの反応はいかがでしょうか?

辻本氏:1番初めの発表がE3で、その次が秋葉原、海外のgamescom、TGSという流れできてるんですが、今回は色々なことができるようになった反面、「モンハン」らしさが失われているのではないかと心配する声も頂いていました。

 しかし、秋葉原の時でも誤解がありそうな部分などについては詳しく説明させていただいた上で、TGSなどでも実際触っていただいて、現状かなりポジティブな反応をいただけていると思います。

――今作ではエリア間が一繋ぎのシームレスなフィールドになってますが、これはどういった経緯でこのような形になったのでしょうか?

徳田氏:今回やりたかったこととして、「モンスターハンター」の生態系をしっかり描こうというのがありました。従来のようにエリアごとにロードが入る仕様だと、あるエリアで起こった出来事の影響をフィールド全体に及ぼすというのが技術的に難しいということもあり、エリア間のロードを無くしてシームレスなフィールドにするということが生態系を描くために重要なミッションだということで開発がスタートしました。

藤岡氏:生態を感じながらフィールドを探索して、痕跡などを発見していくという楽しさを表現するために、エリアを繋げることで世界への没入感を出したかったということもあります。

――私自身実際にプレイさせていただいて、フィールドを探索するのが楽しくてメインストーリーがさっぱり進んでいません(笑)。他のメディアさんの様子をチラッと覗きみても、ガンガン先に進む方や、フィールドをウロウロしている方など、進み方や遊び方が人によって異なっているようです。

徳田氏:いろいろな遊び方ができるようなフィールドを作りたかったので、嬉しいことですね(笑)。

藤岡氏:gamescomの時に初めてプレイアブル出展したのですが、「モンハン」シリーズのファンで、アクションがどう変わっているのか、というところを見られていた方もいらした反面、フィールドで迷っているようなプレーヤーさんもいらっしゃったんです。試遊台にはアテンダントをつけて、迷っていそうな方にはガイドもしたのですが、「ガイドはいらない。ここをウロウロしたいんだ!」とフィールドを歩き回るだけで全くクエストを進めずにプレイして帰るという方もいらっしゃいました(笑)。

 その方に満足度についてヒアリングしてみると、すごく楽しかったというリアクションをいただいたりもして、人それぞれの楽しみ方ができる濃密な世界を提供できたという点では、目標が達成できているのかなと思います。

――「MHW」において、生態系はどのように構築されたのでしょうか?

藤岡氏:ベースはやっぱり、「モンスターハンター」という世界の中にいるモンスター達をどう描くかというところになるんですが、僕たちがモンスターを設計するときには、そのモンスターがどういう理屈でそれぞれ個性的な部分を持っているのか、ということや、何を食べて生きているのか、というところからその動きが見えてきたりとか、モンスターをデザインするときはそういった根拠に強くこだわっているんです。

 しかし、それを1つのフィールドの中で表現しようとすると、モンスターの食性とフィールドの植生の辻褄をあわせていかないと、モンスターがどう生息しているのかということがなかなか決められないんですね。なので、最初の時はそういった調整を重点的に行ないました。この辺りには海があって、この辺りには木があって森があって、じゃあこういう所は湿度が高いよね、とか、じゃあ湿度が高いところはこういう植生かな、とか。より鬱蒼としたところにはこういう植物が生えるからこういう生き物がいるよね、というところを決めていきました。

徳田氏:そこになにが生えているのかということもそうですが、どんなものが生態系の1番下にいて、モンスターは何を食べて暮らしているんだということを大事にしています。例えば「古代樹の森」だと草とか木の実などがそれに当たりますし、「陸珊瑚の台地」では「陸珊瑚」という陸生の珊瑚が産卵して、それがエネルギーの元になっていたり、という感じですね。特殊な生態を作ろうとするときはピラミッドの1番下の土台から考えて作っていきました。

藤岡氏:そこから紐づくように小型のモンスターがそれを食べて、さらにそれより強いモンスターがそれを捕食して、というようにピラミッドを作って、生物としての強さとゲーム的な強さを照らし合わせながら作っていったので、そういう意味ではマップの中の生態系というのはかなりこだわって設定をしています。

――今作ではかつてのシリーズでは類をみないほどストーリーがゲームプレイに強く関わってきている印象を受けました。これは何故このようなスタイルになっているのでしょうか?

徳田氏:「MHW」のルールを理解して入り込んでもらうために、1つ1つステップを踏みながら世界に慣れていけるようストーリー仕立てにしています。最初はストーリーを進めてもらうことで色んなことがわかるようになっていて、後半になると探索や新大陸の調査など、段々自由度が増していくレベル設計になっています。後半の自由度の高いプレイ向けた丁寧な導線が引きたくて、そうしたストーリーにさせてもらいました。

藤岡氏:NPCの人物像であったり、そもそも調査団とは?というところをストーリーを追うことで理解してもらったり、ゲームの目的はなんなのか、舞台はどういうところなのかという説明を序盤で丁寧に行なう形ですね。

――キャラクタークリエイトが非常に細かく設定できるようになっていましたが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか?

藤岡氏:表現が豊かになったということもあるし、技術的に細かいところまで表現できるようになったというところもあります。また、今回はグローバルで展開したいということもあり、国によって「かっこいい」とか「かわいい」という価値基準にかなり差が出てくると思っているので、そういったところにフィットしていくには、これまでのように決まった形から選んでもらうというのには限界があるなと思っていました。

 細かいところをカスタムできたり、年齢とはまた別に、しわの深さ、我々はディテールの深さと呼んでいますが、これらをコントロールして自分好みのキャラクターを作るというのは感情移入していくうえでとても大事な部分だと思っています。なので踏み込んだところまでキャラクリができるというのが今回目指したところで、表情なんかもしっかりでますし、キャラクターに感情移入して楽しんでもらえればと。

――表情の具合というか強さまで設定できるのはユニークですよね。自分の思い描くキャラクターのイメージにより近づけることができるといいますか。

藤岡氏:渋いオジサンさんキャラを作ったのにニコォ!と思いっきり笑われても困るよとか(笑)。ゲーム中には「ジェスチャー」などを使った時にも表情が出るんですが、キャラクター像みたいなところで自分のイメージってあるじゃないですか。そういうところでもっと感情移入できるようにしたいというところで、数パターンではありますが表情の度合いも選べるようにしてありますので、キャラクターづくりもこだわって貰えればと思います。

――「MHW」の舞台はこれまでのシリーズの世界とはどのような繋がりがあるのでしょうか?

辻本氏:シリーズ全てでそうなんですが、ユーザーさんの想像に任せるといった意味もあって時系列や位置を明確にはしていないんです。物理法則は共通で、様式だとか生態の雰囲気が違っていたりとかというのは地域ごとの違いといった感じで考えています。今回もそういった意味では同じで、なんとなく「モンスターハンター」の世界で繋がっているというイメージですね。

――「モンスターハンター」世界という繋がりで考えると、「MHW」では初めてキャラクターが日本語を喋っていますよね。

藤岡氏:あれは吹き替えです。ホントはモンハン語喋ってますから(笑)。こちらとしては「モンハン」語の設定をすごく意識しているのでそこを崩したつもりはなかったのですが、日本語のボイスに関しては想定以上に反響がありましたね。

徳田氏:例えばドイツ圏だと、「ドイツ語入れてくれてありがとう!」という声もあったりしました。

藤岡氏:グローバルも視野に入れているということで、なるべく多くのニーズに応えようと取り組んでいます。ちなみにセリフは「モンハン」語バージョンも収録されていて、実はここに非常にコストがかかっています(笑)。でもテキスト量の多い中、声優さん達には頑張っていただいて、いいものが収録されていると思います。

――「MHW」では武器の派生先がツリー形式で確認できるようになりました。強化の「巻き戻し」ができるようになったのもプレーヤー待望の機能だと思いますが、これは前のシリーズの段階から検討されていたものなのでしょうか?

藤岡氏:ツリー形式は元々やりたいと思っていた部分なんですよね。

徳田氏:派生先がわかるようにしたい、なるべくゲーム中で完結できるようにしたいというのは常々思っていた部分で、画面のサイズや解像度などいろいろな条件があって、対応できていなかった部分がありました。

 今回はツリーができそうだというのが分かったときに、これだけ先もわかるし、折角様々なデザインの装備がありますので、もっと色々な武器を気軽に試して欲しいという欲求もでてきました。なので「巻き戻し」を活用して同じ武器種の別の派生を試してもらったり、その素材を使って別の武器種を試して欲しいですね。

藤岡氏:そういう風な企画にしたいということもあったので、武器のデザインも今までとは趣向を変えておりまして、武器の基本の形が変わるのではなくて、ベースとなる部分をモンスターの素材でカスタムしていくというデザインにしています。なので、巻き戻しをするときはそのカスタムされているものを外して、新しい素材をつけるといった形のデザインになっています。

徳田氏:防具の見た目やスキルの組み合わせなども試せるようになっているので、試着して作りたいものを見繕って、ウィッシュリストに登録して作っていただくような装備生産におけるサイクルができるといいなと思います。

――ハンマーでは段差でジャンプして縦回転する派手なアクションなどが追加されていましたが、こういった新アクションはどのようなコンセプトで追加されたのでしょうか?

徳田氏:フィールドには高低差や段差がありますが、そういった環境のあらゆる要素をハンティングに生かしたいという想いがありましたので、例えば斜面では自動的にスライディングをして、そこで武器出し攻撃をすると特殊なモーションに派生してもいいじゃないかと。追加するにあたっては武器のコンセプトに合っているかということを重要視していまして、ハンマーの例でいうとこれまで縦回転はなかったけれど横回転はあったわけですので(笑)。

 打撃攻撃を生かしてめまいを起こさせる、という武器のコンセプトを踏まえて、武器の特性をより強化する地形技として追加をしています。そうしたアクションが武器毎に散りばめられていて、どんな地形でも楽しめるようになっています。

――アクションといえば、トレーニングエリアも新たに実装されましたが、これもユーザーにはありがたい内容ですよね。

徳田氏:それぞれの武器には特徴を紹介するムービーを表示するようにしてあるのですが、アクションゲームですので実際に触ってみて合う合わないを判断してもらえるようにしました。14種類も武器があるので、実際にトレーニングエリアで気軽に試していただいて、自分の感覚に合った武器を選んでいただきたいですね。コンボルートなども現状ではかなりの数に上りますので、改めて復習する意味でも使っていただけると思います。新しい武器を買ったときなんかにもいいですよね。ダメージ表示も出ますので、自分の武器がどれだけ強化したのか視覚的にもわかりやすくなっています。

藤岡氏:タルにも肉質を反映して硬いものや柔らかいものがありますし。

辻本氏:柔らかいタルってなんだろうね(笑)。

――ダメージを表示する、というのは攻撃の効果がわかりやすくなる反面、従来のシリーズの流れからするとかなり勇気のいる決断だったのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

徳田氏:自分たちのやったことの結果のフィードバックが早く欲しいという要望が特に海外ユーザーから特に多く寄せられまして、例えば与えたダメージが1であれば、すぐにそれを間違った行動だと判別して別の行動を試すことができるのに、ダメージが表示されないことによって何が正解で何が間違いなのかわからないという声がありました。それならば1度試してみようとダメージの表示を実装してみたんです。

 結果としてシステム上は肉質やダメージ計算などちょっと複雑なことをやっているのですが、そういったところをフォローする意味でも、モンハンの遊びを殺さずに行動の良し悪しに気づきやすくする取り組みとしては優秀だなと思いましたので、そのまま採用ということになりました。もちろん抵抗がある方もいらっしゃると思うので、オプションで消すこともできるようにしています。

藤岡氏:ユーザーさんからは体力ゲージを表示して欲しいという意見も当然ありましたが、「モンスターハンター」のコンセプトとして、モンスターが疲れてきている、怒っているといった状態はモンスターを見て、そのリアクションで判断していくというところを大事にしていきたかったのです。

 ただ、そういったモンスターの状態がゲームデザインとして組み込まれてはいるものの、わかりにくくなってしまっているのは事実なので、有効・無効の指針としてダメージ表示を取り入れてみたところ、我々としても得るものは大きかったです。数字だけに限らず、例えばオレンジ色の表示は肉質に対して有効な攻撃ができている、ということが一目でわかりますし、「モンハン」のコンセプトにも合っているかな、という感じで採用しました。

辻本氏:海外の声、と言いましたが、日本の既存プレーヤーでもわかりにくさを感じる人はいたかもしれませんし、はじめて「モンハン」をプレイする人ももしかしたら同じ事を思うのではないか、ということに気づけたのです。また、ダメージ表示を採用したとしても、今まで「モンハン」シリーズをやってきたプレーヤーも、そんなに違和感なく馴染めるのではないかという判断のもとに導入しているので、良いことばかりなのではないかというのが正直な感想です。

藤岡氏:ずっと調整を手伝ってくれてる方も、テストプレイではボウガンを使っていて、自分では役に立っているつもりだったらしいんですけど、ダメージが表示されるようになった瞬間に全然ダメージソースになっていないことに気づいてしまって「ちょっと立ち回りが変わりました」という風に言ってまして(笑)。色んな気付きがあっていいのかなと思います。

徳田氏:副産物としてはモンスター同士の争いの時にケタ違いのダメージが入るので、チームのヘビーなゲーマーが「モンスター同士の誘導なんて手間がかかるから誰もやらないんじゃないですか」なんてことを言っていたのが「これやらないのはおかしいよ」なんて言い出すくらいわかりやすくなりました(笑)。

――確かにダメージの桁が違いますものね。

辻本氏:あれはデカいよねぇ。

藤岡氏:あれはデカいです。狙わない手はないですね(笑)。そういったところも含めて色々な仕掛けがすごくクリアになったかなと思うので、今回は1度やってみようかな、と。そういう感じですね。

――そうしたわかりやすさというのはやはり新規プレーヤーを強く意識してのことなのでしょうか?

辻本氏:新規プレーヤーを強く意識したというのはあったんですけれども、あくまで今までの「モンハン」プレーヤーが離れてしまっては絶対にダメだというところは大前提としてあった上で、新規プレーヤーをいかに誘導できるかというところなので、ダメージを表示するというのも慎重に決めましたし、いろんなことを試してこれ新規プレーヤー、既存プレーヤー両方にメリットがあるね、という結論なのでどちらかに重点を置いているというわけではありません。

藤岡氏:途中でどうしてもシリーズから脱落してしまっている方々には必ずなにかしらの理由がありますし、そうした方々がいざ戻ってきてくださるというときにも、新規ユーザーの方が「モンハン」を手に取るのと同じくらいこちらが環境を整えないといけないと思っているので、そこはあまり新規ユーザーとは区別なく、設計の対象としています。

――ダメージ表示の他に、実装にあたって悩まれた部分はありましたか?

藤岡氏:今回はいい方向に実装が進んだものが多かったです。通信周りもそうなんですけど、今までは大型モンスターしか同期をとっていなくて、小型のモンスターは居るか居ないかだけを判断してローカルで動かしていたんですが、全てのモンスターもいけるのではという話になりまして。

 一方では本当にできるのかという風にも思っていて、できるという前提で設計を始めているのに、いざできないとなったら非常に困るので、結構長い時間をかけて調整をしたんです。今はできるという方向で進めているので、いざここでダメだと言われても困るんですけど(笑)。

 なので、これは上手くいった例だと思いますけど、全モンスターの同期に関して最初こっちは結構不安でしたね。どっかでやっぱり無理ですって言われたらどうしよう、みたいな。

徳田氏:ほんとにいけるんですかって何度聞いたかわからない(笑)。

藤岡氏:制作を担当するスタッフには新しい方々も入っていたので、今まで大事にしてきた部分というのを見落としていないかというのもとても不安だったんです。でもこれはいけそうだという手応えがあったので、同期を前提とした企画なども盛り込んでいます。

――それでは最後に、発売を楽しみにしているファンの皆様に、ひとことずつお願いします。

徳田氏:僕を初め、チームには「モンスターハンター」シリーズはもちろんゲームが大好きなゲーマーたちが揃っています。今はチームでテストプレイを重ねている段階なのですが、何時間遊んでもずっと面白いという状態が続いています。本当に長く遊べるタイトルになっていると思いますので、ぜひ手にとって頂きたいと思います。

藤岡氏:今回は色んなチャレンジをした結果が「モンスターハンター:ワールド」というすごくいい形になっていると思いますし、色んな人達の想いが詰まったタイトルになっています。フィールドをちょっと歩いているだけでも様々な発見があったり、それが新しい遊びに繋がっていたりするというのが「MHW」のいいところだと思いますので、是非そういったところを楽しみにしていただければと思います。

辻本氏:「MHW」は1月26日に発売となりますが、ここに至るまでには優秀なスタッフと共に沢山の壁にぶつかりながら色んなチャレンジをして、最終的にリリースできる内容としては、皆さんに自慢できるような「モンスターハンター」のコンセプトにそった最新作になっていると思います。そして何よりも、僕がゲームとして1番大事だと思っている、プレイした時にワクワクする感じというのが実現できてると思いますので、是非、ご自分の手で1度プレイしていただきたいです。

――本日はありがとうございました。