インタビュー

長谷川裕一氏初めての監修! 「ファントムガンダム」ついに立体化

「ネクスエッジ」だからこその“カッコ良さ”に刮目!

6月末収録

 「ネクスエッジスタイル」は、バンダイコレクターズ事業部のアクションフィギュアブランドである。手足が短く頭が大きいいわゆる“デフォルメ”アレンジでキャラクターを表現しているが、そのシャープな造形に加え、様々なオプションや、切れの良いポージングで独特の魅力がある。

 「送り手側としては、このブランドを“デフォルメフィギュア”としては打ち出してないんです」と力を込めて語るのは「ネクスエッジスタイル」企画チームの洲崎敦彦氏。「ネクスエッジスタイル」はデフォルメによる“キャラクターにかわいらしさを加える”という効果を意図的に排除し、カッコ良く、シャープな魅力を引き出すために全力を注いでいる。そういう意味で“デフォルメ”が意味するところとは異なるキャラクター表現であるというのだ。

 そして商品アプローチは変化をしている。「ネクスエッジスタイル」はスタート時“低コスト”を強調してきたが、ユーザーの声を取り入れ、凝ったキャラクター表現、プレイバリューノバランスを追求するようになっていったという。そして大きな目玉となる「ファントムガンダム」を中心に、もういちど本シリーズの魅力、そして「ネクスエッジスタイル」の表現に注目して欲しい、ということで、今回は担当者である洲崎氏と、オレスカ・ジュリアン氏に話を聞いた。

デフォルメじゃなく、ちゃんとカッコイイ、独自の思想で作られるバランス

 今回は様々な商品を並べながら話を聞いた。「ネクスエッジスタイル」はやはりその表現が楽しい。その名の通りエッジを利かせた造形、手足は短いながらきちんと曲がり、様々なポーズをとらせることが可能だ。たしかに「SDガンダム」シリーズのような“かわいらしさ”はなく、キャラクターが持つシャープさ、ロボットならではの無機質さがより伝わるアレンジになっていると感じられる。

「ネクスエッジスタイル」担当チーム・洲崎敦彦氏
オレスカ・ジュリアン氏はシリーズの新企画を提案中だ
シリーズでは例外もあるが、多くは関節パーツを共有している。この股関節の設計は、パーツ数を減らし可動域を確保したものとなっている
シリーズの様々な商品を並べてもらった。カッコ良さ、手足の長さ、武器の大きさなど、アレンジにおける独特の“思想”が見えてくる

 「ネクスエッジスタイル」は当初“低価格で高品質の商品を提供する”というテーマを前面に出してスタートした。2014年~2015年に発売された「ストライクフリーダムガンダム」、「デスティニーガンダム」は、あえて武装やエフェクトパーツをプレミアムバンダイで別売りにし、彩色などもある程度簡略化することで低価格による商品販売を強調したのだが、ユーザーからは「プレイバリュー」を求める声が強かったという。

 洲崎氏達スタッフはそういったユーザーのニーズを受けつつ、その後のシリーズで様々な新しい試みを行なってきた。キャラクターによるアレンジの変化、1パッケージで完結する充実したオプションパーツと、それによる遊びごたえ、プレイバリューの充実、そして造形は洲崎氏が目指す方向性を強めていった。

 洲崎氏はかつて在籍したキャンディ事業部で「FW GUNDAM CONVERGE」シリーズを立ち上げている。このシリーズは頭身は縮んでいるものの、“デフォルメではない”という洲崎氏のアレンジの方向性を込めた商品だという。立体物としてキャラクターフィギュアを求めるユーザーに対して“違和感を感じさせないバランス”で、大きさ、価格帯、遊びやすさを考えて行き着いたバランスだという。

 「価格帯にはこだわりたいんですよね、大別すれば“デフォルメ”というジャンルなんですけど、このバランスは、価格を抑えながらキャラクターの魅力をきちんと出す方法としての選択であって、かわいらしさとか、省略、という意味合いは含ませていないつもりです」と洲崎氏は語った。

 大型フィギュアは机の上に置いておけないし、リアルな頭身だとサイズが小さいと弱々しく見えてしまう場合もある上に、関節が多すぎたり、複雑だと遊ぶ機会そのものが減りかねない。洲崎氏が提示する商品のバランスは、遊びやすく、ある程度イメージ通りのポーズがとれる可動範囲、そしてやはりコレクションしやすい、入手しやすい価格帯というところにこだわっているという。

 「ネクスエッジスタイル」は、食玩では出せない造形のシャープさがある。そして大きな頭部や、上半身にはかなりの情報量を盛り込むことができる。リアル頭身だと相対的に頭や胸のパーツは小さくなってしまうが、「ネクスエッジスタイル」だとそれ以上のディテール表現が可能なのだ。そして手足は短いながら派手なポーズ付けが可能となっており、ケレン味のあるポーズが可能で、本シリーズだからこそ出せる“カッコ良さ”がある、洲崎氏の話を聞くことで独特のバランスと、表現方法の面白さが見えてくる。

 「ネクスエッジスタイル」は進化し続けていると洲崎氏は語った。最近のものは四肢が長くなりさらにポーズのメリハリが効くようにしている。胸の張り出しも強調することで体が小さく見えすぎないようにしているという。手のひらの大きさ。開き手パーツを用意し、手を大きく見せることでキャラクターの迫力を増している。そして“武器”の大きさである。武器の表現を強調し、モールドを細かくすることで構えたときの楽しさや、キャラクター性の強調を行なっている。

 洲崎氏の目指す方向性を試行錯誤しながらよりはっきりと、“デフォルメとは異なる、カッコイイキャラクター表現”を提示したい、という。「この頭身だと、どうしても“ファニーでカワイイ”というイメージを持ちがちだと思うんです。だけどネクスエッジスタイルは違う。“ちゃんとカッコイイ”。そういう所をユーザーさんに手にとって確認して貰いたいです」と洲崎氏は語った。

 オレスカ氏は「ネクスエッジスタイル」をこの春から担当している。素材感にこだわるオレスカ氏はシリーズの台座を灰色の素材からクリアパーツに変えるところなども主張し、ユーザーから評価を受けている。また、後述する「ガンダムエクシア」のふんだんに使用されているクリアパーツなどもアドバイスを行なったとのこと。今後このシリーズにぴったりのキャラクターを商品化するために、現在気合いを込めて企画書を作成中とのことだ。

【ネクスエッジスタイル】
「ネクスエッジスタイル アルファモン」
「ネクスエッジスタイル オメガモン」
「ネクスエッジスタイル エヴァンゲリオン零号機(改)/零号機」と、「ネクスエッジスタイル エヴァンゲリオン2号機+S型装備」。エヴァは特に手足を長くアレンジしているという

カッコ良さと遊びごたえを追求した「エクシア」と「ストライク」

 洲崎氏達開発チームの“思想”が色濃く出ているのが、7月発売の「ガンダムエクシア」と、10月発売の「ストライクガンダム」である。「ガンダムエクシア」では、武器である7つの剣を全て同梱、“セブンソード”と言われるフル装備状態にできるほか、GNロングブレイド等の剣を台座に刺せるようになっている。

7つのソードを全て同梱した「ネクスエッジスタイル ガンダムエクシア」
今回はランチャー装備を見せてもらった「ネクスエッジスタイル パーフェクトストライクガンダム」

 ビームダガーとビームサーベル用のエフェクトパーツも2個ずつ付属しているため、きちんと7本の剣を扱うエクシアを再現できる。太ももも力強く、手のひらも大きめなため、エクシアらしい派手で動きのあるポーズを決められる。

 そして本商品の大きな特徴がクリアパーツの多用だ。今回の商品は試作品のため一部彩色が行なわれていないが、頭部、胸部、太ももにかなり大胆にクリアパーツを使用し、後ろから光を当てることでまるで各部が発光しているような雰囲気を味わうことができる。また、エクシアのモールドはGNドライヴの“トランザム”発動時をイメージしたものになっており、複雑で緻密な表現になっているという。

 メインの武器となるGNソードは原作以上に大きく、強調されている。この巨大な刃を振り回すポーズをとらせることで、エクシアのキャラクター性をより強調させた商品となったと言えるだろう。

 「ストライクガンダム」は、基本装備である「エールストライク」と、全てのストライカーパックを装備した「パーフェクトストライク」の2種が同時発売となる。ユーザーのニーズを満たすべく、エールが2,700円(税込)、パーフェクトが4,860円(税込)と、2つの内容、価格を提示しているという。

 今回はランチャーストライクを見たのだが、大型ビーム砲「アグニ」が、ものすごく大きい上にモールドが緻密だ。バックパックのアームも大きめでアグニをしっかり支えている描写が楽しい。大型武器をしっかり保持し、どっしりとしたポーズでアグニを保持することも可能なのは手足が長めな「ネクスエッジスタイル」ならではだろう。

 「エールストライカーパックがダブってしまいますが、2つ購入することでランチャーとソード、というように異なるストライカーパックを装備した形で飾ることもできバリエーションを表現できる、そういうことも提案の1つです」と洲崎氏は語った。

 ストライクに関しては特にフロントスカートのディテール表現はあえて抑え、アニメ風の処理にしているとのこと。同じガンダムでもエクシアは線を増やし、「Zガンダム」はアレンジをきつめにしたりとキャラクター性や劇中の雰囲気、ユーザーからのニーズを考えて様々な方向性を考えているとのことだ。

【ネクスエッジスタイル ガンダムエクシア】
台座に剣を飾れる。ダガーを投擲したイメージにもできるという。GNブレイドの大きさや、頭や胸だけでなく、太ももまでクリアパーツが使用されており、光を透けさせるととても派手だ

【ネクスエッジスタイル パーフェクトストライクガンダム】
「気持ちの良い大きさになった」と洲崎氏が語るアグニがやはりインパクトが大きい。アームがしっかりと支えるので、ポージングもきちんと決まるという。浮遊状態で飾れる台座も大型武器に相性が良い

初立体化! ネクスエッジで語る炎を全身にまとった「ファントムガンダム」

 「ファントムガンダム」は、長谷川裕一氏のコミック「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」の主役機である。搭乗者はフォント・ボー。サナリィ開発のMS「レコードブレイカー」の技術を取り入れたという本機は、ミノフスキードライブを搭載、背面のミノフスキードライブにレコードブレイカーや、V2ガンダムを思わせるデザインがある。

炎のエフェクトパーツが印象的な「ネクスエッジスタイル ファントムガンダム」
こちらが通常のフェイス。比較することで目つきの鋭さがよくわかる
こだわりの炎の表現。裏と表のモールドによって炎の雰囲気が良く出ている

 そして“光の翼”を展開しようとするとき余剰エネルギーが全身から放出され、全身に炎をまとったような姿となるのが大きな特徴だ。「ネクスエッジスタイル ファントムガンダム」は、その派手な姿をカッコ良く再現するために生まれた商品だと洲崎氏は語った。この炎をまとった姿をどう表現するか、コレクターズ事業部でも様々なブランドを検討した結果、ネクスエッジスタイルが選ばれたとのことだ。

 商品の最大の特徴は差し替えで炎のパーツが装着できるところ。この炎の表現は商品で最もこだわったところで、後ろから見たときなど光を透かしてみたとき、立体感のある、独特の美しさが楽しめる。エフェクトパーツの裏と表面でモールドを変化させ、“炎らしさ”を追求しているという。

 また、ネクスエッジスタイルは、その頭身から“かわいらしい”になりがちだ。造形では常にそこを考え“こわさ”を感じさせるほどにきつめのアレンジを行なっている。特にファントムの場合、“フェイスオープン”で口のカバーが上に上がるため、目を細めた表情になり、よりきつい“目つき”になるところも洲崎氏は気に入っているという。フェイスオープンは差し替えパーツで行なう。

 本商品は長谷川裕一氏の監修を受けている。長谷川氏は本商品がはじめての監修ということで、「ファントムガンダム」は、かなり力を込めて監修してもらったとのこと。そのときのエピソードは「魂ウェブ」で掲載されている。顔部分もかなり監修で触れられた部分ということだ。

 「ネクスエッジスタイル」に関して、洲崎氏はもっとユーザーに触れて欲しいと考えている。シリーズスタート時の低価格イメージの強調や、“かわいらしさ”のイメージを持たれてしまう部分などで、どうしてもリアル志向、プレイバリューを追求するユーザーにとって関心の薄いブランドになってしまっているのではないか、という思いを持っている。初立体化である「ファントムガンダム」では、改めてユーザーにシリーズの良さ、面白さに気が付いて欲しいという。

【ネクスエッジスタイル ファントムガンダム】
長谷川氏の監修によるこだわりの造形。炎に包まれた雰囲気と、ネクスエッジスタイルのバランスが非常にマッチしているように感じられる
各モチーフによってバランス、ディテール表現、同梱パーツなど様々なところでアイディアを検討しているという、両氏の言葉からは商品への強い力のいれ具合が伝わってくる

 読者へのメッセージとして洲崎氏は「夏のエクシア、秋のストライク、そしてその後のファントムは、シリーズでも特に気合いの入った商品となっています。ファントムは長谷川先生に協力していただき、すごく面白いものになりました。この機会にぜひ、ネクスエッジスタイルを手に取ってみて下さい」。

 オレスカ氏は、「これからネクスエッジスタイルはもっとモチーフの幅を広げていきます。私も今企画を出して、コレクションしやすい、遊びやすいキャラクターを提案中です。これからの“広がり”にも期待して下さい」と語った。

 筆者も実は「ネクスエッジスタイル」は気になっていながら、手が出せないシリーズだった。そして“デフォルメではない”という洲崎氏の言葉に驚かされた。今回筆者もインタビューの後に発売された「エヴァンゲリオン2号機」を手に取ってみたのだが、「かわいらしさではなく、カッコ良さ」という洲崎氏の提示する方向性が確認できた。

 武器を構えさせたり、ポーズをとらせて、大きいからこそ緻密な頭部、長めの手足のダイナミックなポーズという本シリーズの特徴を改めて実感した。ネクスエッジスタイルは机の上に気軽に置いて、ポーズを変え、キャラクターのカッコ良さを満喫できる商品だ。ユニークなバランス感覚の商品だと思う。今後も注目していきたい。