【特集】

【年末特集】お正月だしほっこりしよう。1年の疲れを癒やす、心温まるアドベンチャーゲーム特集

 早いもので2022年もあとわずか。読者の皆様は今年はどのような1年だっただろうか? 広い世界を探索し、強大な敵に何度も何度も立ち向かった? 人々が消失した東京で妖怪や亡霊と戦った? はたまた、荒廃した世界で機械獣と戦ったかもしれない、インクを塗り合ってナワバリ争いをしたかもしれない。

 そんな忙しい1年を過ごしたであろう方々に、本稿ではほっこりとするようなアドベンチャーゲームを紹介したい。1年の疲れを癒やすべく、お正月は心温まるストーリーを楽しんでみてはいかがだろうか。

7 Days to End with You

著者:堀江くらは

プラットフォーム:Android/iOS/PC(Nintendo Switch版が2023年1月26日配信予定)

 「7 Days to End with You」は、手軽にコミュニケーションが取れてしまう現代だからこそプレイしてほしいタイトルだ。アドベンチャーゲームでありながら、パズルゲームの要素を持っており、プレーヤーは物語の観測者としてストーリーを読み解いていく。誰かとのコミュニケーションについて考えさせてくれる作品となっている。

【『7 Days to End with You』発売日アナウンストレーラー】

 物語は主人公が見知らぬ部屋で目覚める場面から始まる。主人公の前にいるのは、未知の言語を話す女性。誰だかわからないどころか彼女が何を喋っているのかすらわからない、主人公は記憶を失っているのだ。彼(とプレーヤー)は女性の助けを借りながら未知の言語を理解していくこととなる。

 最初は本や新聞に書いている内容や、瓶などに書いてあるラベルすら読むこともできないが、主人公が何を書いているか彼女に聞けば未知の言語で教えてくれる。また、女性は植物の世話や料理といった頼み事もしてくれたり、何気ない会話もしてくれる。こうしたやり取りの中で、翻訳メモをとり、1つ1つの単語の意味を推理していくことで未知の言語の理解を進めていく。

 翻訳は数や色といったわかりやすいものから進めていきながら、言語の法則をつかんでいく。時には頻発するワードの意味を様々なシーンを振り返って推理してみたり、その単語を使う彼女の表情を見ながら推測していくことも重要となる。

 タイトルの通り本作は7日間で終わりを迎えることとなる。1週目をクリアしても翻訳ノートを維持したまま2週目に突入することができ、周回を重ねるたびに言語の意味の特定が進む。言語の意味がわかることで、物語の輪郭や女性が自分に何を伝えたかったのかが見えて来る。

 本作の物語の全容や、女性と主人公の関係などは是非プレイして確かめて欲しい。本作の翻訳を通じて相手を理解しようという試みは、相手のことがわからないからこそ、「理解しよう」という努力が必要という、普段の生活では忘れがちなことを思い出させてくれる。SNS等で簡単に、誰とでもコミュニケーションが取れる現代だからこそ、プレイしてほしい作品だ。

タイトル概要

2022年2月6日 発売
価格:650円(税込)
プラットフォーム:Android/iOS/PC(Nintendo Switch版が2023年1月26日配信予定)

・Steam版「7 Days to End with You」
・iOS版「7 Days to End with You」
・Android版「7 Days to End with You」

Road 96

著者:堀江くらは

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC

 「Road 96」はFPS視点のアドベンチャーゲーム。映画的な雰囲気を味わいたいならこのタイトルをオススメしたい。

 本作は、1996年の架空の独裁国家「ペトリア」を舞台に、国家に反発し脱出を図る若者となり国境のある「Road 96」を目指して旅をする。旅の中では様々な人々と出会い行動を共にすることになるのだが、本作の特徴は1人の主人公の物語が終わったら、次の主人公の視点へと移り物語が進行することだ。

【『Road 96』ローンチトレーラー】

 主人公は徒歩やヒッチハイク、バスなどの様々な移動手段を、体力や資金と相談しつつ選択して「ROAD96」を目指すことになる。時には国外逃亡を取り締まる警察の目を掻い潜ったり、出会った人を助けたりしながら道を進んでいく。

 旅の途中で出会うキャラクターとのイベントが本作の中心となっており、誰といつ会うのかや、会話の中でどの選択肢をとったか、旅の中で発生するミニゲームの結果などによって物語に変化が生まれ、その結末が変化する。

 国境に辿り着いたとしても、旅の中で得た資金や残りの体力、入手したアイテム・情報などを利用し、警備が厳重な「壁」を越えなければならない。主人公がどのような旅をしてきたかが、国境で試されることとなる。

 例え国境を超えることができなくとも、やり直しをすることはできない。脱出の成否に関わらずその主人公の物語は幕を閉じ、次の主人公の視点に切り替わるのだ。

 次の主人公の物語では、前の主人公の選択や行動が引き継がれ、時系列も後のものとなる。前の主人公でその後の動向がわからなかったキャラクターが登場し、新しい主人公とも関わりを持つ。キャラクターによっては主人公が変わることによって意外な一面を見ることができたり、キャラクター同士の関係性が見えてくるのが面白い。

 本作では、複数の主人公のストーリで自由な選択をとることができ、その積み重ねが独裁国家の行く末という大きな物語へと反映されていく。その様相を神の視点で楽しむことができるのが本作の魅力。また、個性豊かなキャラクターや、独裁国家らの脱出をテーマにしたストーリーは映画の影響を強く受けているとのことで、映画好きにも楽しめる作品となっている。

 なお、2023年1月6日まで、Steamでは50%OFFの割引価格1,098円(税込)で販売中だ。

タイトル概要

2021年8月16日 発売
価格:2,196円(税込)
プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC

Amazon/楽天で購入

・Switch版「Road 96」
・Xbox版「Road 96」
・Steam版「Road 96」

A Short Hike

著者:岩瀬賢斗

プラットフォーム:PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC

 「A Short Hike」は自然広がるホークピーク州立公園を舞台に、小鳥の「クレア」となってハイキング(散策)するタイトルだ。親戚のおばさんに連れられ公園にやってくるが、ここでは携帯の電波が入らず、電波の届く山の頂上を目指すことになる。

 エンディングも存在するが、決まった道筋などはない。そのため自由に公園を散策でき、気ままにゲームを楽しめるのが魅力だ。寒い冬の時期にコタツや布団の中で暖まりながら、あまり難しいことを考えずにプレイできるタイトルとして本作をおすすめしたい。

【A Short Hike - Switch Trailer (Japan)】

 山頂を目指すという目的はあるものの、冒頭にさらっと触れられるだけで急ぐ必要はまったくない。道なりに歩いていると気になるものが見つかり、その先で新たなキャラクターに出会ったりと、むしろ“寄り道を推奨”しているかのような設計になっている。クエストマーカーなども登場せず、自分のペースで探索が楽しめるのがいい。

 公園内では気ままに過ごしている動物たちが多数存在し、一緒にビーチバレーをしたり、かけっこをしたりと様々なミニゲームも存在する。「どうぶつの森」シリーズを彷彿とさせる要素もあり、魚影めがけてウキを投げて魚釣りをしたり、地面に埋まった星型のアイテムを掘り起こしたりと、ゲームは散策がメインになっている。

フィールドやキャラクターはやや荒いポリゴンだがそれもまた味がある
羽を手に入れることで探索範囲がより広がる
「どうぶつの森」っぽさを感じる釣り要素。BGMに耳を傾けながらまったり魚釣りが楽しめる

 基本は歩いて探索することになるが、アクティビティをこなしたりして光る羽を集めると探索できる範囲が拡大。クレアのスタミナのような立ち位置で、より長く崖を登ることができるようになったり、長い時間飛ぶことができたりと、段々と探索範囲が広がるといった工夫も秀逸なゲームだ。

 登場キャラクターたちはクレアに対して優しく接してくれるほか、敵キャラクターも存在しないため、ほんとうに優しい世界が広がっている。ゲーム内楽曲も非常に優しげな曲たちが揃っているため、是非本作の世界に触れてみてほしい。いずれのプラットフォームでも800円台で購入できる。

 Steamでは、2023年1月6日まで35%OFFの割引価格533円(税込)で販売中だ。

キャラクターたちはクレアのことを心配してくれたりととても優しい
豪快に小舟を乗り回すこともできます!

タイトル概要

2019年7月30日 発売
価格:820円(税込)〜
プラットフォーム:PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC

・PS4版「A Short Hike」
・Xbox版「A Short Hike」
・Switch版「A Short Hike」
・Steam版「A Short Hike」

Unpacking アンパッキング

著者:DENPA IS CRAZY

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC

 「Unpacking」はオーストラリアのゲームデペロッパーWitch Beamが開発したパズルゲームだ。パズルゲームではあるが、単なるパズルゲームの枠ではない、新しいストーリーを楽しめるためオススメしたい。

【Unpacking アンパッキング [Indie World 2021.12.16]】

 ゲームの目的は簡単、部屋の中にある引っ越しの段ボールの箱を開けて中にある荷物を順番に部屋に配置していくだけ。ゲームから積極的に語られるストーリーはほとんどなく、わかるのは今日が新しい部屋で過ごす新しい1日というだけ。

 これだけだと正直本作の面白さは伝わらないのは筆者も百も承知の上だ。

 本作の魅力は荷ほどきから見える持ち主の姿だ。例えば最初の部屋(ゲーム的に言えば最初のステージかもしれないが、あえて部屋という表現を使いたい)では、段ボール箱から多くのぬいぐるみが出てくる。この部屋の持ち主はかなりの寂しがり屋なのだろうか。

 次はたくさんの本が出てくる、すごく読書好きなのかもしれない。でもサッカーボールも出てきた、意外と外でも活発に遊ぶのかもしれない。携帯ゲーム機にたまごっちのようなものも出てきた。きっとこの部屋の持ち主はゲーマーなのだろう。

 そうやって荷物から出てくるこの部屋の持ち主の姿、そして引っ越しを重ねるごとに増えた荷物、変化した荷物、なくなった荷物、そのままの荷物……。そこにある物語性。それを感じるのが本作の魅力だ。

 正直パズルゲームとしてだけ見ると面白いかと言われると悩ましいところだ。「どうしてその荷物をそこに置くのが正解なのか」と思ってしまうこともなくはない。

 ただそんなこと些細なことなのだ。まったりとした音楽に身を任せ、のんびりと「自分ならこの荷物はこの辺りに置くかな。こっちの向きの方がいいな」と荷物を置いていくのが癒やしなのだ。

 そしてこの部屋の持ち主の姿をぼんやりと思い浮かべながら、ゲームを進めていくとこの部屋の持ち主の変化を感じることだろう。その一方で変わらないものもある。そうやって住人の姿に思いを馳せながらプレイしてみて欲しい。

 なお、2023年1月6日まで、Steamでは30%OFFの割引価格1,435円(税込)で販売中だ。

タイトル概要

2021年11月2日 発売
価格:2,050円(税込)〜
プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC

・PS5/PS4版「Unpacking」
・Xbox版「Unpacking」
・Switch版「Unpacking」
・Steam版「Unpacking」

Chill Corner

著者:DENPA IS CRAZY

プラットフォーム:PC

 「Chill Corner」はベトナムのゲーム開発者Low-Hi Tech氏が開発した癒やし系の放置ゲームだ。ゲームと言ってもほとんどプレーヤーが介入する要素はない。Lo-Fiな癒やし系BGMを聞きながら、キャラクターが行動をするのをのんびりと眺めるのが基本的な遊び方だ。まさに癒やしをもたらしてくれるゲームとなっている。

 とは言っても部屋の内装を変更したり、家具をカスタマイズすることもできるし、天候を晴れ、雨、雪に変更することができ、雨や雪にすると部屋に差し込む光が変化するほか、BGMにも雨の音が入ったりして天候の変化を感じられる。

【Chill Corner - Free chilling and relaxing game】

 そしてゲームを起動して放置していると「チルタイム」というゲーム内通貨のようなものが獲得できる。これを消費することで家具などがアンロックでき、部屋をデコレーションすることも可能だ。

 ゲーム的な要素はこれだけだが、のんびりとした音楽を聞きながら、キャラクターが生活しているのを見るというのはなんとも言えない癒やしがある。常に最大化して見続けるには少々退屈なところはあるが、サブモニターに映しながらBGMとして起動するような遊び方がオススメだ。

 実際に筆者もこの原稿を本作のBGMを聞きながら執筆している。年末年始の忙しい中、あえてまったりした時間を過ごしてみるのも面白いだろう。

 ちなみにVRMというファイル形式の3Dキャラクターのデータを持っていると、そのキャラクターをゲーム内にインポートできる。VRSNSなどを使っていて自分のアバターを持っているという読者の方はぜひそちらも試してみて欲しい。

 なお、本作はSteamで無料で配信されている。

タイトル概要

2021年12月18日 配信開始
価格:無料
プラットフォーム:PC

・Steam版「Chill Corner」