インタビュー

セガ 3D復刻プロジェクト「3D パワードリフト」インタビュー

“セガまみれ”!スペシャルモードにはギリギリを攻める、あのキャラやこのキャラが!

「セガ 3D復刻プロジェクト」や「アーカイブス」シリーズでクレジットにのみ登場してきたアレックスキッドがついに……!

――スペシャルモードでの「セガキャラクター」の話に移らせて頂きますが……。このキャスティングはなんというか……「どうしてこうなった!? 」っていう感じになっていますけど。

堀井氏:「パワードリフト」って賑やかなゲームですから。そこにセガのキャラを載っけたらどうなるのかなーと考えて。

奥成氏:このキャスティングのセンスは松岡さんですよね、間違いなく。

堀井氏:その通りでございます!

下村氏:最初にキャスティング案を見せてもらったときに、僕は意味がわからなくて(笑)。

――読者の方もそれに近い感じだとは思います(笑)。

下村氏:セガ作品の「人」のキャラが乗るのはまぁわかる。でも、これはもう「物体」ですよね? って。 これがバギーに乗ったときの画が想像できなくて(笑)。まぁ、開発者の熱意が1番大事と腹をくくりまして、「お任せするので好きにやっちゃってください」って返答したんですけど。

堀井氏:任せてもらえるのが本当にありがたいです。

奥成氏:さすがコンパイル出身の松岡さんというところで、お笑いの血が流れているなというキャスティングですね。

【スペシャルモードに登場するセガキャラ ドライバー】
・ハリアー「3Dスペースハリアー」より
ご存知、3D復刻第1作としても活躍した超能力戦士。「スペースハリアー」ではユーライア、「スペースハリアーII」ではホバーボードに乗っていたが、今回はバギーに乗って登場。バギーでは木に体当たりしても倒せないので注意だ
・ビンズビーン「3Dスペースハリアー」より
カタさが自慢の正二十面体。「スペースハリアー」で無敵の強さを誇り、数々の超能力戦士を倒してきたが、「スペースハリアーII」でボスになった際には意外と弱かった。また「シェンムー」のガチャガチャのハズレフィギュアとしても有名
・名無しの獣戦士(ウェアベア)「3D獣王記」より
神の力により甦った伝説の戦士。レースの興奮によりスピリットが高まると、ウェアベアに変身するが、ライバルを石化したりはしない。
・フラッグマン「3Dアウトラン」より
「アウトラン」のゲームスタート時に登場するおじさん。走らないでじっとしているとスネるところが意外とキュートと評判。今回はついにハンドルを手にしドライブとしゃれ込んだが、そこは「アウトラン」の世界ではなく、「パワードリフト」だった
・忍「3Dザ・スーパー忍II」より
「オールスターレーシングTF」でも活躍した現代の忍、ジョー・ムサシ。バギー操作もお手の物である
・ドラリンフラー「3Dファンタジーゾーン」より
オパオパと思った? 残念! ドラリンフラーでした! ドラリンフラーは緑の惑星プラリーフを守る前線基地である。そもそも基地なのに、なぜバギーに乗っているのか。ドラリンフラー自身にも誰か乗っている可能性もあるのかなど、「ファンタジーゾーン」には今も多くの謎が隠されている
・アクセル「3Dベア・ナックル」より
シンジケートを拳ひとつでぶっ潰す、マーシャルアーツの使い手
・ブレイズ「3Dベア・ナックル」より
アクセルたちとともにシンジケートを倒した元刑事。今回も(ほぼ)紅一点のヒロイン枠確定。声がかわいい
・アダム「3Dベア・ナックル」より
25周年記念でプレーヤーキャラクターとして復帰。アニメ「Hi-sCool! セハガール」にも出演している人気者でもある。
・ミスター・ハングオン「3Dスーパーハングオン」より
スーパーバイクを狩るライダー。時速324キロで走るバイクから転がり落ちても傷ひとつ無く復活する
・ギャラクシーレディ「3DギャラクシーフォースII」より
イメージイラストで登場する謎の美女。イラストではUFOのような乗り物に搭乗しているがあの乗り物が何なのかは不明。事態を重く見た開発スタッフが後で「TRY-Zのパイロットのガールフレンド」という説を生み出した。今回はそのUFOではなく、バギーに搭乗して、ゲーム内で初めての活躍を見せる
・アレックスキッド
今年生誕30周年を迎えた、セガを代表する人気キャラクター。乗り物への執着は強く、スコパコサイクル(バイク)、BMX、ハングライダーなどを使いこなし、「オールスターレーシング」シリーズへも参戦した。本シリーズでは「クレジット」の中で活躍するマスコットキャラクター的存在であったが、ついにゲーム本編にも登場することがかなった!

堀井氏:「3DギャラクシーフォースII」からの「ギャラクシーレディ」とか、ドット画がすごく良くできているんですよ。プレイしてもらうと「なんでここにこんなに手の込んだことをやっているんだろう」っと思ってもらえるのでは。スピンしたときには正面の画も表示されますし、ぜひ見てあげてください。

――なるほど、ライバルカーを抜いたときの動きとかスピンしたときとか、細かく見所がありますね。それにしてもキャスティングがやっぱり気になっちゃいますが、なぜ「ファンタジーゾーン」から「ドラリンフラー」を(笑)。

堀井氏:それはもう、俺にもわからないです(笑)。松岡がなぜそのチョイスをするのか! でも、「ドラリンフラー」がバギーに乗っているのは結構面白いですよ。

奥成氏:「なんで?」っていうのは松岡さんにしかわからないですね。

堀井氏:でも、いつもクレジットを担当している高橋も、社内ナンバーワンドッターの渡辺も、喜々としてドットを描いていましたよ。

――登場キャラを見ていくと、ほかにも「おおっ!? 」っていうチョイスがいますよね。「スペースハリアー」からビンズビーンとか、「アウトラン」からフラッグマンとか。

堀井氏:松岡のセンスだとは思うのですが。ただ、少なくともゲームを遊んだ人は知っているというチョイスにはなってますね。たぶん、「なんでこれ!?」って突っ込まれたいんですよ(笑)。そこらへんは関西ノリなのかも。

――確かにギリギリわかるっていうところを攻めてますよね(笑)。ほかにも登場キャラクターを見ていくと、ついに「アレックスキッド」がゲーム内に登場っていうのがありますよね。

堀井氏:アレックスキッドは「出してあげたい! 」っていう気持ちからでしょうね。

――このアレックスキッド選出も奥成さんはノータッチなんですよね?

奥成氏:ノータッチです。そもそもクレジットにアレックスキッドを入れ始めたのも、エムツーさんのろみゅさん(※)ですから。アレックスキッドは最初、「3D サンダーブレード」のクレジットに登場していましたけど、そこに至るまでも流れがあって。

 今ではクレジットで結構遊びを入れてますけど、「3D アフターバーナーII」あたりから遊び心が強まってきたんですよね。そこから「3D アウトラン」あたりでそれが極まって(笑)。「3D サンダーブレード」のときはシリーズの最後でしたから、全員総登場で大団円な感じにしようというなかに、なぜかアレックスキッドも登場していて。

 そのときは「最後だしいいか」って思ったんですけど、その後の「アーカイブス1」のクレジットにもアレックスキッドが登場し、その後もずーっと出続けることに。それもまぁ、「アレックスキッドだからいいか。セガのコーポレートキャラクターだし(僕のなかでは)」って思っていますよ(笑)。

堀井氏:僕らのなかでは(笑)。

奥成氏:でも「僕が『アレックスキッド』を移植しよう! 」って言うとスルーされるんですよ。

堀井氏:いやまぁ、アレックスキッドがクレジットに登場し続けているのって、クレジットには出てきてTwitterなどで皆さんが笑ってくれて、「クレジットには出てくるのにゲームは出ないよね(笑)」って延々と突っ込んでくださるからで。ゲームももちろん機会があれば作りますけど、とりあえずはその日までクレジットに出し続けようというのが担当のろみゅにはあるんですよ。

奥成氏:今回はついに新キャラクターとして出てきちゃいましたからね。この「3D パワードリフト」が配信される前日の11月1日が、まさにアレックスキッドの生誕30周年記念日なので、これも運命かなあと感慨深いです。

堀井氏:やっぱりそのあたりの特別感は「3D サンダーブレード」のときのような“これが最後だから感”がありますね。

※ろみゅ氏……エムツー所属のデザイナー、高橋直樹氏のこと。「セガ 3D復刻プロジェクト」のいくつかのタイトルや、「アーカイブス1」、「アーカイブス2」にて、楽しいクレジットを制作している。

堀井氏:当時のスタッフ間のやり取りを見直してみると、「元のキャラクターこういう色具合なので、その色パレットを載せ替えないままに作れるとしたら、このキャラクターとかどうだろう?」といったものがあって。

奥成氏:元々のプログラム上に追加する形になるので、ゲームにない色パレットを呼び出すことはできないんですよね。

堀井氏:そうなんです。でも、最終的にはそこもいじっているんですけど、最初はそのつもりはなくて。例えば、「この『パワドリ』キャラとこのセガキャラなら服の色と顔の色が同じだから、そのまま作れるかも」っていう手抜きしよう的なやり取りをしているんですよ。

奥成氏:いや、それは工夫であって手抜きじゃないから(笑)

堀井氏:まぁ、楽をしようとしたんだけど、結局は全部やり直しでパレット追加だ! みたいになってます。

――移植作への新規ドット画の追加ならではな話というか。2016年にはなかなか聞けない話です(笑)。

堀井氏:ホントそうですよね(笑)。あと、当時のやり取りだと「ビンズビーンなら正面の概念がないから楽だよね」とかも話し合っているんです。

――あー、正二十面体ですから(笑)。角度が変わっても描くのが楽。

堀井氏:そうなんです。そういうのもちゃんと考えているんですよ。ただ、その代わり「ビンズビーン」を出すことでのシュールさとかもちゃんと議論していて。

――そういう意味では「ビンズビーン」ってテスト的に、初期に入ったのかなという感じがしますね。

堀井氏:そうですね、初期から名前が挙がってます。

奥成氏:なんか「シェンムー」のガチャガチャみたいな話をしてるよね。数を増やしつつ楽なやつということで、まず「ビンズビーン」みたいな。

堀井氏:あーすごいわかる。でも結構みんなビンズビーン覚えてるから。これ入るとグッと「スペースハリアー」のキャラだなってわかってもらえるという。

――ちなみにこのスペシャルモードですが、当初からメドレー曲追加とキャラクターの乗せ替えをしようというコンセプトだったのですか?

堀井氏:最初は実は「コースを作れないかな?」っていう話もあったんですよ。コースを作るとなると曲も、キャラクターもとなっていくとは思うので、それこそ丸ごとっていう感じになったとは思うのですけど。

 ただ、残念ながら新コースの制作まではさすがにできなくて。可能なこととして、曲とキャラの乗せ替えになりました。

奥成氏:そもそも「アーカイブス3」の開発を並行していますからね。

堀井氏:割ける労力はなかったはずなんだけど……結構入れ込んでやっちゃってますね。本業とは別腹にやりたいことをやった、みたいな感じですね。

奥成氏:だってこれ、もともとはもっと早く配信する予定だったんですよね。

下村氏:6月頃から始めたんですけど、最初は「お盆頃の配信を目指そう」みたいな話だったような(笑)。まぁ、僕らはコストが変わらないのなら、どれだけがんばって頂いても何も文句はありませんので。

――(笑)。

奥成氏:「3D パワードリフト」を7月からお盆の間に配信して、「ぷよぷよ通」を8月に配信して、それから「3D復刻アーカイブス3」を発表しよう、みたいな流れを予定していたんですよ。

堀井氏:その段取りは……完全にぶっちぎっちゃいました。申し訳ない!!

全員:(笑)。

――想定よりも苦労された部分がやはりあったのでしょうか?

堀井氏:画は描けても、それを載せ替えるためのデータフォーマットの解析などが必要になって。解析班のプログラマーは相当に手をかけていましたね。

 解析スタッフは別のチームのプログラマーだったんですけど、松岡が「借ります!」って言って、「じゃあ、○○日ぐらいまでね」っていうのも約束してたんですけど、それがちょっとずつ延びていって、最後はファミコンカセットの借りパク状態みたいになっちゃって。

全員:借りパク状態(笑)。

堀井氏:いやホントに。貸している方がキレる一歩手前みたいになってたので。でもまぁ、出来上がっているものを見ると黙るみたいなところはあるんですけどね。

奥成氏:結局、2カ月ぐらい押したんですかね。

下村氏:まぁこの「3D パワードリフト」は、配信日がいつでなければいけないというようなことはなかったですから。「アーカイブス3」は年末に発売したいというのがありますけど、この単体配信版はそれまでの間に「できたときに出そうぜ!」みたいな感じでしたよ。

堀井氏:いいなぁ、そのノリ……!

――エムツーの皆さんに「できたときに出そうぜ!」って言うと、すごいことになっちゃいそうですけど……!

堀井氏:そう! いつまでもやっちゃうんですよ。ホントに。