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ロジクールG「PRO X TKL RAPID」レビュー
安心して使えるプログレードのラピッドトリガー。SOCD対応も果たした最高峰モデル
- 提供:
- ロジクール
2024年10月28日 12:00
- 【PRO X TKL RAPID】
- 10月29日 発売予定
- 価格:32,780円
ロジクールは、同社初のラピッドトリガー対応ゲーミングキーボード「PRO X TKL RAPID」を10月29日に発売する。価格は32,780円。
2020年代に入ってゲーミングキーボード界隈に革命を起こした「ラピッドトリガー」。磁気式スイッチや光学式スイッチなどの“アナログ入力”の利点を活かし、特にFPSタイトルでの操作性を向上させる新機能で、2024年現在ではRazerやSteelSeries、Corsairといった大手ゲーミングデバイスメーカーもしのぎを削って新製品を投入している。
そんな中で唯一ラピッドトリガー対応ゲーミングキーボードをリリースしてこなかったロジクールG。ゲーマーやロジクールGファンからは「早く出してほしい!」と期待の声が挙がっていたが、遂に名前に“RAPID”を冠した「PRO X TKL RAPID」が現われた。
そこで本稿では、ロジクールGとして初めてラピッドトリガー&SOCDに対応した「PRO X TKL RAPID」のレビューをお届け。高級感のあるキーボード本体や精度が高くバグのない“プログレード”のラピッドトリガー、幅広い選択肢を用意する「KEYPRIORITY」の魅力を紹介していこう。
外観は「PRO X TKL」と同等。高級感のあるキーボード本体
「PRO X TKL RAPID」はその名の通り、ロジクールGの「PRO」シリーズに属するゲーミングキーボードだ。「PRO」シリーズのゲーミングキーボードといえば、2023年10月にワイヤレス化を果たした「PRO X TKL」、2024年5月には60%サイズの小型モデル「PRO X 60」がラインナップされたばかりで、急速にラインナップを拡大している。
今回の「PRO X TKL RAPID」は2023年10月に発売された「PRO X TKL」をベースにしつつ、キースイッチをメカニカルスイッチから磁気スイッチへと変更。これだけだと小規模な変更に留まっているように見えるが、磁気スイッチを採用したことで「ラピッドトリガー」に対応したほか、新たに「KEYPRIORITY」と呼ばれる機能も搭載された。ラピッドトリガーとKEYPRIORITYについては後程詳しく紹介していこう。
外観は「PRO X TKL」とほぼ同じで判別がつきにくいが、「PRO X TKL RAPID」はワイヤレス接続機能が省かれているため、キーボード上部のLIGHTSPEED/Bluetooth接続ボタンやバッテリーインジケーターがない。キー配列やメディアコントロール、ゲームモードボタン、輝度ボタンは同一だ。
本体の質感は非常によく、ボトムケースはプラスチック製だが滑らかな作りになっており、トッププレートは金属製で高級感がある。キーキャップはデュアルショットPBTで少しザラザラとした質感を残すことでグリップ力を確保しているほか、印字も剥げない作りになっているため耐久性も期待できる。またスペースのキーキャップにはクッションフォームがあるなど、打鍵感を向上させるための工夫も見て取れる。
「PRO X TKL RAPID」はブラックとホワイトのほかに、ロジクールGシリーズでお馴染みのマゼンタを加えた計3色をラインナップ。今回は全色お借りできたのだが、マゼンタのビビッドさには流石に驚いた。だが、ブラックやホワイトが多いゲーミングデバイスの中では珍しい色合いで、筆者も今回使いながら「意外と悪くないかも……」と感じていた。
“コトコト”とした音がクセになる! 「PRO X TKL RAPID」で実際にタイピングしてみた
ここからは実際に「PRO X TKL RAPID」を使ってみた。キーの打鍵感は少し硬めだが、指に対してキーがリニアに反応するほか、軸ブレが少なく真っすぐ“ストン”とキーが下がってくれる。またケース内部には多くのダンピング層やウレタンフォームがあるおかげで、箱鳴りのないコトコトとしたタイピング音だ。普段静音軸を使っているユーザーには少しうるさく感じるかもしれないが、とても心地がいいタイピングが楽しめる。
スタンドは4度、8度の2段階で、筆者は試用期間はほとんど8度で使用していた。実際に本稿も「PRO X TKL RAPID」と用いて執筆しているが、少し手前側に高さがあるため、スタンドを8度にするか、別途パームレストを用意すればより安定してタイピングを出来るだろう。なおスタンドの剛性はバッチリで、グリップ力もあるためキーボードがずれにくくなっている。
ゲーミングソフトウェア「G HUB」を使えば、キーライティングやキーマッピング、ゲームモード、そして後述の「ラピッドトリガー」に関する設定が可能となる。だがこれらの機能を利用するには「G HUB」を最新の状態に更新し、さらに「PRO X TKL RAPID」のファームウェアアップデートを実施する必要がある。
また、今回の検証ではプレイステーション 5への接続も試みたが、キーボードとして認識はされるものの入力ができず使用できなかった。同時発売となる「G915 X」も使用できないほか、筆者が所有しているラピッドトリガー対応の「ZENAIM KEYBOARD」も動作しなかったため、PS5での使用を検討されている方は注意が必要だ。
遂に「磁気スイッチ」を採用! ロジクールGとして初めて「ラピッドトリガー」対応機に
「PRO X TKL RAPID」のトピックと言えば、やはり「磁気スイッチ」の採用と「ラピッドトリガー」への対応だ。特に「ラピッドトリガー」はゲーミングキーボード界隈に革命を起こしたといっても過言ではない機能で、2020年代から続々と対応機種が現れ始めた。ラピッドトリガーというワードを生み出したWootingを始め、Razer、SteelSeries、Corsairなど各社が対応したゲーミングキーボードを販売している。
従来のメカニカルスイッチを搭載したゲーミングキーボードでは、キースイッチのオンオフのみを検知しており、キー入力が作動するポイントまで押し込むとオン(アクチュエーションポイント・AP)、キー入力が途切れるところまで離すとオフ(リセットポイント・RP)になっていた。
「ラピッドトリガー」では、キーのアクチュエーションポイントに対してリセットポイントが追従し、キーを少しでも戻すと入力が切れ、そこから再び押し込むとまた入力ができる。これによって、キーを押したり離したりする距離が最小限で済むため、より高速(ラピッド)な入力ができるようになるのだ。
だが「ラピットトリガー」に対応するには、キーがどれだけ押し込まれているかを認識できるキースイッチが必要になる。そのため「PRO X TKL RAPID」では“磁気式アナログスイッチ”を搭載し、キースイッチ側に搭載された磁気とキーボード本体側のセンサーによって、0.1mm単位でキーの位置を認識できる。
代表的なラピッドトリガー対応ゲーミングキーボードでは、SteelSeriesの「Apex Pro」シリーズ、Corsairの「K70」シリーズ、Wootingの「Wooting 60HE」、東海理化の「ZENAIM KEYBOARD」が磁気スイッチを採用。一方でRazerの「Huntsman」シリーズは光学式スイッチ、東プレの「Realforce GX1」は静電容量無接点方式のスイッチを採用している。
実は2024年5月に発売された「PRO X 60」はオプティカルスイッチ(光学式)を採用していたため、筆者は「ロジクールGのラピッドトリガーは光学式で来るかも」と予想していた。だが、結果としては磁気スイッチを採用した「PRO X TKL RAPID」が発売されたため予想は外れた形だ。
「PRO X TKL RAPID」ではまずアクチュエーションポイントを「0.1mm~4.0mm」の間で0.1mm単位で調整可能。そしてラピッドトリガーは「0.1mm~2.0mm」の間で0.1mm単位で調整可能だ。市場には0.01mm単位で調整できる製品も登場しているが、「PRO X TKL RAPID」は一般的な0.1mm単位となっている。だが、よほど指先が器用でない限り0.1mm単位で十分だろう。
ラピッドトリガー対応ゲーミングキーボードでは最後発となってしまったロジクールGだが、肝心のラピッドトリガー機能の完成度は非常に高い。実際に「VALORANT」や「Apex Legends」といったFPSタイトルをプレイしてみたが、ストッピングやレレレ撃ちといったラピッドトリガーならではのテクニックを十分に発揮することができた。
筆者はラピッドトリガー対応のキーボードとして「ZENAIM KEYBOARD」を所有している。ラピッドトリガーで緻密なコントロールができる点はどちらも一緒なのだが、両者の決定的な違いは「PRO X TKL RAPID」がフルハイトなのに対して、「ZENAIM KEYBOARD」はロープロファイルであることだ。打鍵感は全く異なる製品だが、どちらもeスポーツシーンで使われる最高峰のキーボードとして確かな性能を備えている。
ラピッドトリガーは比較的新しい機能であるため、キーボードによってはキーが反応しないといった致命的なバグが起きることもあるが、「PRO X TKL RAPID」ではそういったバグと遭遇することも一切なかった。「PRO」シリーズはトップeスポーツプレーヤーが大会で使用することを前提に設計されており、バグは決して許されないため、プロも安心して使用できる「ラピッドトリガー」に仕上がっている。
ラピッドトリガーに次ぐ新機能「SOCD」にも対応! だがゲームによっては注意が必要
ラピッドトリガーによって革命が起きたゲーミングキーボードを新たな次元へ引き上げようとしている新機能が「SOCD」だ。SOCDは“Simultaneous Opposing Cardinal Directions”の略で、日本語に訳すと「反対方向同時入力」となる。
従来はA(左移動)とD(右移動)キーが入力された場合、ゲーム側でニュートラル(静止状態)となっていた。だがSOCDを有効にすると、AとDが同時に押されていても“最後に押されたキーを優先して入力する”といった設定が可能となる。これによって、例えばAを押したままの状態でDを押すと、キャラクターが右へと移動していく。このままDを離すと、今度は押したままになっていたAが入力され左に移動していく。これによって指の動きをより少なくしながらキャラクターを操作できるようになるのだ。
大手ゲーミングデバイスメーカーでは、東プレの「RealForce GX1」が2023年12月のアップデートでSOCDに相当する「Kill Switch」を発表。さらにRazerが2024年7月に「Snap Tap」を導入したことを皮切りに、Corsairは「FlashTap」、SteelSeriesは「Rapid Tap」を続々と発表し、ラピッドトリガーの元祖であるWootingも「SOCD」を導入した。ラピッドトリガーでは出遅れてしまったロジクールGだが、SOCDは「PRO X TKL RAPID」の新機能である「KEYPRIORITY」として形にしてきた。
「KEYPRIORITY」ではSOCDの種類として、最後に押されたキーを優先“する「LAST INPUT PRIORITY」のほか、アナログスイッチの利点を活かして“最も押下されたキーを優先”する「KEY TRAVEL PRIORITY」、どちらかのキーを“絶対優先キー”にする「ABSOLUTE PRIORITY」、どちらの入力も送信しない「NEUTRAL PRIORITY」の4種類から選ぶことができる。
最後に押されたキーを優先するのはSOCDの定番となっているが、これ以外にも“最も押下されたキーを優先”や“絶対優先キー”といった選択肢によって、「PRO X TKL RAPID」はプレイスタイルにあったSOCDを選ぶことができる。後発ということもあって、よりSOCDの挙動を増やすことで機能を充実させてきた形だ。
筆者は今回「LAST INPUT PRIORITY」と「KEY TRAVEL PRIORITY」を試してみたが、どちらも「VALORANT」や「Apex Legends」での操作性の向上を実感できた。筆者の所有する「ZENAIM KEYBOARD」は現状SOCDに対応しておらず、今回が初体験であったが「Apex Legends」にて「LAST INPUT PRIORITY」を有効にするとレレレ撃ちの速度が安定するようになり、より敵を狙いやすくなったと感じた。
だがSOCDはプレーヤーに対する“過度なアシスト”として問題視する意見も存在している。既に「Counter-Strike 2」といった一部のFPSゲームは、SOCDを“ハードウェアチート”として扱いゲーム内での使用を禁止しているため、現在は使用可能となっているタイトルも今後禁止される可能性は否定できない。SOCDは操作性をより向上させる新機能ではあるが、プレイするタイトルが使用OKなのか十分に調べてから設定してほしい。
実際、「G HUB」でKEYPRIORITYを設定する際も「Counter-Strike 2などの特定のゲームでは、キーの優先順位機能の使用が禁止されているのでご注意ください。」という注意書きが表示されるようになっている。キーボード自体が使用禁止という訳ではないが、SOCD禁止タイトルで「PRO X TKL RAPID」を使用する際は必ずSOCDを切ってから使うようにしよう。
「PRO X TKL RAPID」は安心して使えるラピッドトリガー対応ゲーミングキーボード
ここまで「PRO X TKL RAPID」のレビューをお届けしてきた。ロジクールG初のラピッドトリガー&SOCD対応モデルは、やはり“PRO”の名が付くだけあって、バグも少なく安心して最新の機能を使えるゲーミングキーボードに仕上がっていた。これまでロジクールGがラピッドトリガー対応モデルをリリースしてこなかったのも“プロプレーヤーが安心して使える機能”になるまで、精度を高めてきたのだと推察する。
また「KEYPRIORITY」は幅広い選択肢が用意されており、ユーザーのプレイスタイルにあった入力を選べられる。SOCDについてはまだ議論が行われているが、数年間進化が止まっていたゲーミングキーボードに次々と新たな機能が搭載されていくのは、ゲーマーにとっても嬉しい流れと言えるだろう。
個人的にはせっかくキースイッチのホットスワップができるので、押下圧や打鍵感が異なるキースイッチをオプションとして用意してほしいと思った。そうすることでより自分のプレイスタイルにあったゲーミングキーボードへとカスタマイズできるため、ロジクールGにはぜひともお願いしたいところだ。
「PRO X TKL RAPID」は32,780円と決して安くないゲーミングキーボードだが、この価格に見合う質感と機能を備えている。ロジクールGゲーミングキーボードの最高峰として、全ゲーマーにオススメできるモデルだ。
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