2016年12月23日 00:00
ついに「DX超合金 VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」が発売され、筆者も購入できた。筆者が「マクロスΔ」の発表時から待ち望んでいた「DX超合金 マクロス」シリーズの新製品である。
筆者はこのシリーズのファンであり、本誌でも“【特別企画】バンダイ、「DX超合金 YF-30 クロノス」レビュー”、“【特別企画】アニメ文化と玩具文化の1つの到達点「YF-29 デュランダル」”“”としてレビューしているほか、他の商品も購入している。個人的な思い入れが強いシリーズである。
「DX超合金 VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」は開発者インタビューで取り上げているが、やはり自分で購入し、ガシガシ変形させ、遊んでみると新発見がいくつもあった。これまでのシリーズの“進化”を受け継ぎ、さらなる発展をしていこうという試みが随所に感じられる商品である。各フォルム、変形システムを中心にレビューしていきたい。
「マクロスΔ」の主人公機は、歌姫達の守護者
最初にモチーフとなった「VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)(以下、「VF-31J」)」に少し触れておこう。本機はアニメ「マクロスΔ」での“主役機”であり、人々が凶暴化する謎の奇病「ヴァールシンドローム」を“歌”で沈静化するため、戦場の最前線で歌うという過酷な任務に挑む戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のバックアップを主任務とする「Δ小隊」の特殊戦闘機である。
Δ小隊は、ハヤテ機を含む5機で構成される。どの機体も派手なカラーリングが施されているのはヴァールシンドロームでおびえる人々にワルキューレの到着を告げ安心感を与えるためのものだ。前進翼のシルエットはワルキューレの決めポーズである指の形で作る「W」の文字を想起させるところもポイントだ。ワルキューレはヴァール化(凶暴化)を抑えるための「ワクチンライブ」も行なっており、Δ小隊のバルキリー達は“バックダンサー”さえも務める。
VF-31JをはじめとしたΔ小隊の機体は「ジークフリート」というペットネーム(愛称)を持つ。希少素材「フォールドクォーツ」により、ワルキューレの歌を増幅させ、機体性能もアップさせることが可能。両足にはワルキューレの援護・支援を行なう「マルチドローンプレート」を搭載、さらにドローンを再充電するためのエネルギー供給装置や、サウンドプロジェクションユニットも搭載している。両腕に搭載された「ミニガンポッド」も大きな特徴で、これまでの「マクロス」シリーズで登場した機体とはひと味違った活躍を見せた。
「DX超合金 マクロス」シリーズにおいても本商品は注目だ。「DX超合金 VF-31J」はアニメの設定と同じく「DX超合金 YF-30」を原型に改良、進化を遂げた商品なのである。より遊びやすく、そしてかっこよくなった「DX超合金 VF-31J」を細かくチェックしていこう。
前進翼にブルーのライン、スマートで流麗なファイター形態
まずは「DX超合金 VF-31J」の“ファイター形態”を見ていこう。本商品は設定と同じく「DX超合金 YF-30 クロノス」を発展させたものである。変形システムやパーツ構成などは共通だが、開発者によれば「すべて新造パーツ」とのことで、デザインなども大きく異なっている。
最大の特徴である前進翼は主翼部分のパーツで表現されており、VF-19のような翼の角度を変える機構はない。尾翼は主翼から枝分かれするような形で、SF戦闘機風の雰囲気を出している。シューティングゲームの自機風にも感じた。カナードと呼ばれる先尾翼もアクセントになっている。
パーツとして目立つのは磨りガラスのような処理が施された半透明のキャノピーだろう。これまでの商品と違ってコクピット内部がぼんやりとしか見えないが、この処理はF-35など最新の戦闘機のキャノピーを意識したものだという。コクピットには劇中同様ヘルメットを外したハヤテフィギュアを座らせられる。さらに座席後部のカバーを外すと副座にでき、フレイアフィギュアを座らせられるのはファンにはうれしいところだ。
劇中で印象に残るマルチドローンプレートを放出するための機体上部のハッチを展開させ、収納されたプレートをのぞき見ることができるのも楽しい。また足のすねの部分はミサイルの発射口が確認できる。設定ではVF-31はマルチドローンか、マイクロミサイルをコンテナに選択で搭載可能ということだ。
ミサイル発射口の近くにはミニガンポッドも見える。主翼やエンジンと一体化しているように見え、「これがどうやって両腕にくっつくんだろう?」と思わせるところが楽しい。アニメではVF-31は空中での戦闘シーンが多かった。この姿で飾っておくファンも多いだろう。
かっちり決まるガウォーク形態。複雑に変形するコンテナに注目
いよいよ変形である。「DX超合金 VF-31J」では主翼裏のカバーを外すところから変形開始だ。カバーを外すと主翼の中に収納されていた平手パーツが確認できる。ここからエンジン部分の接続部を外すことで、エンジン(足)部分を動かせるようになる。さらに主翼部分を持ち上げ、腕を分離させる。
VF-31Jはこの収納の関係からか、実は腕が細くちょっと華奢なイメージがある。その基本的な“細さ”を肩にカナードを被させたり、前腕にシールドが重なることで細さをカバーしているのは面白いアイディアだ。YF-30からの進化を感じたのは肩の部分。変形では腕の部分をぐいっと前に曲げた後、肩ブロックとしてカナードの接続部分が機体からわかれるのだが、YF-30では腕を固定するためのツメの部品が必要だったが、VF-31Jではすっきりと整理されている。腕の重さに負けて肩がヘタる心配もないところも好感触だ。
足はぐいっと前に曲がりガウォーク(トリ脚)になるのはシリーズの蓄積を最も感じるところかもしれない。随所にクリック関節が使われていて自由度と耐久性を両立している。ガウォーク形態では足部分が1番引き出されるのだが、足部分につや消しの塗装がされているのは高熱にさらされるノズルっぽさがよく出ているし、足首部分は燃焼機関の一部なのか色がはっきり違う。塗装により素材感が異なるところがメカらしくて楽しい。
YF-30でのガウォーク形態は、ここからさらに腰部分が起き上がり、足は完全に機体から外れるため、「ガウォーク形態で腰がひねられる」というのがセールスポイントだったが、ちょっと構造的に弱く見えるところもあった。VF-31Jのガウォークは腰部ロックが機体にくっついた従来のシリーズに近いデザインになっている。だからこそ安定しており、スマートだ。
ガウォーク形態は翼部分に支える物がなくなるため、部品の重さで垂れ下がる可能性がある。YF-30の場合は専用のサポートパーツを組み込むことでしっかりした変形を実現したが、“完全変形”にこだわる場合はやはりちょっと構造的な不安があった。VF-31Jは関節部分に軟質パーツのロックパーツが使われており、デザインに齟齬をもたらさず主翼を支えている。このロックパーツはパトロイド形態でも機体の固定に役立つ。設計の見事さを感心させられる部分だ。
そしてコンテナである。YF-30ではハッチが36個も付いたミサイルランチャーという無骨な代物だったが、VF-31Jはコンテナが2つに割れ複数の装備を搭載したプラットフォームになる。コンテナ下部に搭載されていたビームガンポッドは右側に付き、右肩の上から砲身を伸ばす。左側はドローンに電力を無線供給できるユニットだ。外見からは特殊な何かを放射するマシンにも見え、右側と大きくデザインが異なるのが面白い。このコンテナの変形は複雑で、動かしていてワクワクさせられる。
ガウォークは他のロボットフィギュアと大きく異なるシルエットを見せる独特の形態だ。だからこそ劇中の印象も強い。特にVF-31Jは、コンテナの展開/収納、ミニガンポッドを構えた姿、ビームガンポッドを構えた姿と色々なポーズで楽しめるのがいい。
複雑に重なる機体。変形システムの“頂点”を見せつけるバトロイド形態
バトロイド形態への変形は複雑である。特に戦闘機の形を保っていた部分が複雑に分割、折れ曲がり、重なり合って胴体になるのは圧巻だ。面白いのは機首部分の回転。可動部分が斜めになっているため、回転させると直角に折れ曲がるように見える。実はこの機構が腰の可動で機首が干渉しないようにできる仕掛けになっているのは感心させられた。
VF-31Jのバトロイド形態の変形の最大の特徴は「コクピットが地上と平行になっているところ」にある。これまでのVF-25系のモデルはコクピットが垂直になっていて、設定上シートは可動するものの、商品では再現されていなかった。このコクピット配置はYF-30から受け継がれているが、より洗練され、構造的にもしっかりした物になっている。
その分変形システムは複雑だ。機首部分はいくつも折れ曲がるし、部品は複雑に動く。筆者は変形を繰り返して遊ぶタイプなので割り切っているが、部品のこすれによる塗装のハゲが気になる人は神経を使うところだろう。
バトロイドへの変形で最大の難関だと感じたのが首の部分。特に首の後ろのクランク部分の構造をきちんと理解した上で動かさないときちんとできない。筆者は2回目でようやく説明書と見比べながら部品の動きを理解した。ジョイント部分の細さを隠すパーツが首の基部を動かすときのちょうど良く力を込められる部分になっていて、変形の目安としても助かる。このアイディアにも改めて感心させられた。
主翼をたたみ、足の付け根を左右に押し広げて変形完了だ。デザイン上後ろに重心がかかるが、関節がしっかりしているので、うまく調整すればしっかりと自立する。台座を使えば様々なポーズが可能だ。VF-31Jは特にアニメ前半ではダンスシーンも見せ、派手な動きをアピールした。アニメを参考にポーズをつけてみると良いだろう。
シリーズのファンとしては、足の付け根の関節がクリック関節になったところを特に触れておきたい。シリーズはこれまで付け根はボールジョイントだったため、飾っているとへたれてしまう場合があった。以前のVF-25シリーズは肩もなで肩になりやすかった。VF-31Jは、肩関節も腕の重みでヘタれないようにデザインから工夫されている。“遊ぶ”、“飾る”というところで、これまでの進化をしっかり感じさせられるのはとてもうれしい。
バルキリー玩具の決定版とも言うべき「DX超合金 VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」ではあるが、新機体ならではの気になる点もあった。変形機構の都合で仕方がないのだが、可動指の手首パーツの場合、人差し指が伸びたままになっていて、ポーズを取るところで気になる。こちらは豊富な交換用手首が付いているので実際には全く問題ないのだが、「完全変形」というコンセプトがやはり大きな魅力であり、このハードルを今後ぜひクリアして欲しい。
もう1つは、コンテナパックがYF-30と互換性がないことだ。インタビューで聞いてはいたのだが、改めてジョイントなどのデザインが違い、交換できないことが確認できた。コンテナ換装はVF-31の最大の特徴であり、“原作”を超えた遊びの幅として大いに期待していただけに残念だ。実際YF-30ではコンテナが外れやすかったし、メッサー機などはコンテナのアーム基部に複雑なパーソナルマークを描くため、同じ機構にはできなかったのは仕方ないと思う。しかし今後、超合金オリジナルの換装コンテナも出して欲しい。
こうした不満点はまさに些末な個人的なこだわりで、「DX超合金 VF-31J」は、ファンとしては大満足な商品であり、持っていること大いに自慢し、試行錯誤の果てに開発者がたどり着いた魅力的なギミックを我がことのように語りたくなる逸品である。
今回撮影のために何度も変形させ、ポーズを決めてみたのだが、改めてその進化、“遊びやすさ”にうならされた。「DX超合金マクロス」シリーズは「マクロス」を牽引し続ける河森正治氏こそが最大のヘビーユーザーであり、バルキリーは常に立体化を視野に入れてデザインされている。そして「DX超合金 VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」は、これまでで最も遊びやすくなっている。それは河森氏が積極的に意見を出し、そこに開発者が答えていった結果なのである。「マクロスΔ」ファンはもちろんだが、「バルキリーの立体物は初めて」という人も、ぜひ手にとって欲しい。
「DX超合金マクロス」シリーズは3月にライバル機である「DX超合金 Sv-262Hs ドラケンIII(キース・エアロ・ウィンダミア機)」も発売される。また、現在本商品の「スーパーパーツ」も受注受付中である。今後、Δ小隊、空中騎士団の機体の発売や、「VF-31A カイロス」の発売も期待したいし、もちろん他のバルキリーも商品化して欲しい。これからも期待を込めて注目していきたい。
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