インタビュー
「DX超合金 VF-31J ジークフリード」開発者インタビュー
全てが新しく遊びやすく! 脅威の変形システムと進化を徹底紹介
2016年8月1日 12:00
「DX超合金 VF-31J ジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」はアニメ「マクロスΔ(デルタ)」に登場する最新鋭可変戦闘機をモチーフとしており、バンダイの「DX超合金」マクロスシリーズの最新作だ。弊誌では“アニメ文化と玩具文化の1つの到達点「YF-29 デュランダル」”、“バンダイ、「DX超合金 YF-30 クロノス」レビュー”といった形で、シリーズの進化や、商品の特徴を取り上げており、個人的にも注目していた。
「DX超合金 VF-31J ジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)」は、2015年10月の「魂ネイション2015」で発表されていた。「VF-31J」は試作機「YF-30」の量産モデルであり、超合金もバンダイが以前に発売した「DX超合金 YF-30 クロノス」に近いように見え、試作品も発表されていた……しかし、なかなか発売のリリースがなかったのである。そしてついに発売時期が公開されたところ、なんと2016年末だという。「どうしてなんだ?」と筆者は疑問を持った。筆者同様、「新しいバルキリーのDX超合金」を心待ちにしている人は同じ気持ちだろう。
今回、試作品に触れ、企画担当者である木村禎成氏に「DX超合金 VF-31Jジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)(以下、「DX超合金 VF-31J」)」の注目ポイントと、こだわりを聞いた。これまでのシリーズの知識も活用した、濃く深く紹介していきたい。
戦術音楽ユニットワルキューレを助ける翼、Δ小隊が駆る最新鋭可変戦闘機VF-31 ジークフリード!
まず最初に、「VF-31」の“設定”に軽く触れていきたい。VF-31は試作機であるYF-30の量産モデルである。YF-30は可変戦闘機ではあるものの実際は高純度のフォールドクォーツを活用し、“フォールド断層突破”のために設計された機体だった。VF-31は星間企業複合体「ケイオス」の軍事部門が保有する最新鋭可変戦闘機であり、マルチロール機として設計されている。
VF-31での一般機は「VF-31 カイロス」という名称で、YF-30に採用されていたフォールドクォーツはオプション装備となっている。「マクロスΔ」では主人公ハヤテの所属する「Δ小隊」を補佐する役目を担っている。そしてΔ小隊が搭乗する「VF-31 ジークフリード」は、一般機と異なる数々の特殊装備を搭載したスペシャルモデルなのだ。
Δ小隊の任務は戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のバックアップだ。ワルキューレは人々が凶暴化する謎の奇病「ヴァールシンドローム」を歌で沈静化する歌姫達であり、彼女たちは凶暴化した人々に直接歌声を届けるため、最前線で歌い続けなくてはならない。Δ小隊はジークフリードの特殊装備でワルキューレ達を援護する。しかし謎の可変戦闘機を駆る「空中騎士団」がワルキューレやΔ小隊の前に立ちはだかるのだった……。
そして主人公ハヤテの搭乗する機体を立体化したのが今回発売される「DX超合金 VF-31J」だ。設定と同じように変形システムそのものは2014年8月に発売された「DX超合金 YF-30 クロノス」に一見近い。YF-30の最大の特徴である“コンテナシステム”により、コンテナを変えることで様々な状況に対応できる、というギミックも共通である。
だからこそ、「『DX超合金 VF-31J』は部品の一部を変えるだけで発売できるんじゃないの?」と筆者を含めた多くの人が思っていた。しかし木村氏は、「YF-30とVF-31では共通の部品はありません。強いて言えば台座くらいですかね? 部品はすべて新規設計なんです」と答えた。「DX超合金 VF-31J」はこれまでの「DX超合金」マクロスシリーズからさらに進化した商品となっているという。ここからは試作品をじっくり見ていきたい。
これまでの技術を進化させた腕の収納、変形システムに注目
「DX超合金 VF-31J」のファイターモード(飛行形態)は、青と白のカラーリングと翼端が基部より前にある“前進翼”が印象的だ。機体前方に取り付けられた前翼(カナード)も目を惹く。YF-19と特徴上は共通項が多いが、実際に見比べてみると可変翼のYF-19と機体がそのまま翼に繋がっているようなVF-31Jは雰囲気が大きく異なる。尾翼も主翼からわかれているように見えるデザインで面白い。
「『DX超合金 VF-31J』のファイター形態はこの塗装のブルーのラインで、“W”の機体のシルエットがとても美しく出ています。この精度の高い塗装は、結構大変なんですよ」と木村氏は語った。Wはワルキューレも指でポーズをする「マクロスΔ」を象徴するものだ。VF-31Jの前進翼のデザイン、機体のバランスはWのアルファベットを意識したものだという印象を受けた。
VF-31JをはじめとしたΔ小隊機の大きな特徴が「マルチドローン」の搭載だ。マルチドローンは板状の形でVF-31Jのふくらはぎ部分に多数収納され、ワルキューレを支援する。「DX超合金 VF-31J」ではふくらはぎのカバーがスライドし、マルチドローンが収納されている内部機構を見ることができる。
そしてVF-31Jのすね部分はマイクロミサイルが収納されている。基本装備でミサイルを内蔵しているというのはVF-25と大きく違う部分だろう。VF-31Jの脚部にはエンジンだけでなく様々な装置が仕込まれていて、ランディングギア(着陸脚)の収納スペースがない。このためランディングギアは膝の装甲内部に入っている。ランディングギアは膝の装甲を展開してタイヤ部分を回転させて接地させる。
木村氏ら開発チームがこだわったのが「キャノピー」の表現だ。「DX超合金 VF-31J」はスモークのようなコクピット内部が少し見にくいキャノピーとなっている。これは現実のF-22戦闘機の電磁波などをカットするキャノピーを参考にしたものだという。コクピットに関しては、搭乗しているハヤテのフィギュアが劇中同様ヘルメットをつけてないのも楽しいところだ。「DX超合金 VF-31J」はフレイアのフィギュアも同梱されていてVF-25同様後部にサブ座席を用意することができ、フレイアを乗せたシーンも再現できる。フレイアはヘルメットをつけているところも劇中のエピソードそのままだ。
「マクロスΔ」の総監督を務め、これまでの“バルキリー(可変戦闘機)”のほとんどをデザインしている河森正治氏は、本商品をはじめとした「DX超合金」マクロスシリーズの開発にも深く関わっている。河森氏こそ本シリーズのヘビーユーザーと言える人物であり、シリーズの改良へのアイディアも積極的だ。バルキリーのデザインもつねに“玩具化(立体化)”を意識している。後述するが「DX超合金 VF-31J」は翼に腕を収納するので、翼が厚くなりすぎないか心配していたが、デザインと機構の工夫、開発チームの設計で、これまでのものより厚いものの、その翼の厚さを意識させない様にしているという。
塗装だけでなく、マーキング、パネルラインも非常に細かい。木村氏ら開発チームは本商品を“玩具”というカテゴリーに留まらない、「遊べるスケールモデル」という、より本格的な雰囲気を持った商品にすべく、意欲を持って開発に取り組んでいると言うことだ。
これまでの技術を進化させた腕の収納、変形システムに注目
そしてガウォークへの変形である。変形時、翼から腕が展開するシステムこそ、「DX超合金 VF-31J」で最も注目して欲しいポイントだと木村氏は語った。YF-30では飛行形態時の腕は足の側面にぴったりくっつき、足のカバーで手首部分が隠されていたのだが、VF-31では手首も含め、腕全体が“翼”と一体化している。
まず翼のカバーパーツを開き、手を取り出す。この時手は“平手”になっている。この平手が可動によってちゃんと握り手になるのが驚きだ。手のパーツには付け根と指の中程に軸が仕込まれており、動かすことで握った状態にできる。
前腕の変形は非常に複雑だ。VF-31Jは両腕前腕に「ミニガンポッド」を装備している。このガンポッドはトンファーのように肘側に銃口を向けることも可能となっている。このミニガンポッドと手の側面の装甲板、そして手首の回転軸はちょっとしたことで干渉してしまうので、変形させるときには注意が必要となる。そしてこの複雑で緻密な機構が、翼に手が収納された状態、ガンポッドを前につきだしたとき、ガンポッドを肘側に回したときと、どの形態でも自然なラインを実現している。ここまで複雑な機構になっているのかと、目の前で見て驚かされた。
肩の部分は基本構造はYF-30と同じだが、ロックがなくてもきちんと収まるなど進化が見られる。カナードが肩の装甲板になるという面白いデザインは継承されている。肩の構造はVF-25よりもシンプルだが、だからこそポーズをつけて飾っていても腕の重量をしっかり支えてくれるので、より遊びやすくなっている。
足は機体から引き出すバルキリーとして王道と言えるギミックである。こちらも技術の蓄積を感じさせる。足の付け根はよりスムーズに曲がるようになり、回転軸も付け根と膝に設定されているので、ガウォークらしい鳥足形のポーズからぐりぐりと動き、様々なポーズがとれる。劇中ではハヤテはVF-31Jに「インメルマン・ダンス」という複雑な機動をさせるが、その雰囲気を再現できる自由度が盛り込まれているという。
YF-30ではガウォーク形態の時、腰ブロックと足の基部が機体から離れ、フリーの状態になっていた。このため「ガウォーク形態でも腰がひねることができる」という面白さを生んでいたのだが、反面足が機体から外れてしまうので不安定に感じることもあった。その分YF-30のガウォークのシルエットは斬新でユニークだったが、VF-31ではVF-25に近い、機体に足がくっついた状態での変形となり、ガウォークとしてのフォルムは安定したものとなっていた。
遊びやすく、耐久度を考えたギミックを盛り込んだバトロイド形態
バトロイド形態は、コクピットブロックが水平になるYF-30の機構を受け継いでいる。その中で大きいのは、腰に装甲板がスライドして被さるところ。YF-30ではかなり腰がスリムな印象を受けたが、この装甲板のおかげでシルエットが変わっている。「DX超合金 VF-31J」のバトロイドでは、腰ブロックが回転し腰をひねることができるが、この時折りたたまれた機首が可動することで腰の可動を妨げない様になっている。
バトロイド形態はロック機構も用意されており、しっかりと定位置に各ブロックを配置できる。特にガウォーク形態では背中ブロックが重みで垂れ下がるのを防ぐロックも用意されている。ただし変形するときにはロックを外さなくてはいけない部分もあるので注意して欲しいと木村氏は語った。
首部分は襟元にせり上がる仕掛けがあり、これはバトロイド形態の時の首が細く感じるシルエットを改善させるためだという。実用性だけではなく、プロポーションにこだわった機構も用意されているのだ。
バトロイド形態での大きな“改善点”として木村氏が挙げたのが足の付け根のクリック機構。これまではボールジョイントだったものが、クリック関節になった。足の回転だけでなく、横に広がるクリックも用意されている。足の付け根は、筆者も「DX超合金」マクロスシリーズをバトロイド形態で飾っているときに気になっていた点だった。
ボールジョイントの関節は、金属製で強度は充分なのだが、長時間飾っているとどうしても緩んできてしまうのだ。このクリック関節と、シンプルな肩構造、そして大きく動かすことができる腰の回転軸……「DX超合金 VF-31J」のバトロイド形態は、かなり自由にポージングが楽しめ、長時間飾って置けそうである。
「河森さんはこのシリーズの『世界一のヘビーユーザー』とも言えます。肩のデザイン、クリックの機構など河森さんと相談して耐久性も気を配っています。足の長さがガウォークとバトロイド、ファイター形態で変わりますが、ここの長さもしっかり決まるようになっています。先ほど見せたストッパー機能や、ロック機構など、耐久性、遊びやすさで、これまでの経験を活かして、遊びやすさをより追求した商品を目指しています」と、木村氏は語った。
そしてVF-31J最大の特徴であるコンテナだ。YF-30では合計で36個ものハッチがついたミサイルポッドだったが、基本は大型の“箱”の形だった。VF-31Jでは、2つに分割し、右側がビームガンポッドの接続部分、左がマルチドローンの充電装置になっている。「DX超合金 VF-31J」ではこのギミックをきちんと再現。コンテナが2つに分割し展開していくギミックをパーツ差し替えなしで再現している。ドローン充電装置の方は展開するハッチの細かさ、内部の塗り分けなどが細かい。
ビームガンポッドは基部から取り外し、バルキリーの腕に持たせることもできる。収納状態の時はコンテナの底についているのだが、これまでのバルキリー同様機体の下につり下げているように見える。木村氏開発スタッフは設定にはない“オリジナルギミック”として、ファイター形態のコンテナを収納している状態でも、ビームガンポッドが下にスライドし、銃口が機体下から現われるという機構をつけたという。こうすればコンテナを収納していてもビームガンポッドから射撃できるというわけだ。アニメでも使って欲しいギミックである。
スーパーパック、コンテナ、そして「ドラケン」! さらに広がっていく世界
今回はさらに「DX超合金 VF-31J」の“拡張性”も質問してみた。「マクロスΔ」では、現在(第17話放映)までで、第6話「決断 オーバーロード」で宇宙用の装備「スーパーパーツ」と、特別なコンテナ「サウンドブースター」を装着した姿を見せているが、この装備が発売されるか気になるところだ。今後の情報で明らかになるという。
特に“コンテナパーツ”には期待したいところだ。YF-30では発売されなかっただけに、期待したいし、アニメやもしあるならば劇場版や、ゲームなどで出て欲しいし、超合金オリジナルでも出て欲しい。ちなみに残念ながら「DX超合金 VF-31J」と「DX超合金 YF-30」ではコンテナの交換は考えていないとのことだ。
さらにライバル機である「DX超合金 Sv-262HS ドラケンIII(キース・エアロ・ウィンダミア機)」も注目である。今のところ2017年発売というアナウンスがされている。こちらは完全新規の設計で、河森氏のデザインはもちろん、それを立体で実現させる開発チームの苦労はものすごいものが想像される。もちろんΔ小隊の他の機体と、VF-31の一般機、さらにSv-262の一般機など、本当に今後のラインナップもワクワクさせられる。
最後に木村氏は「皆さんに応援していただいたおかげで、「DX超合金」シリーズの新作『DX超合金 VF-31J ジークフリード(ハヤテ・インメルマン機)』を商品化することができました。皆さんに応援していただいて8年目の展開を迎えることができました。12月の発売までお待たせしてしますが、その分いいものになるよう、スタッフ一同これからもがんばりますので、よろしくお願いします。」とファンに向かって語りかけた。
今回、筆者にとっても念願の「DX超合金 VF-31J」の試作品を細かく見ることができ、話を聞けた。全てのパーツが新規であり、デザインもギミックもここまで変わっているとは正直想像もしていなかったので、驚かされた。「DX超合金」マクロスシリーズはデザイン、ギミック共にバンダイの最先端技術の結晶ともいえるシリーズだが、今回これまで以上に“より長く遊ぶことへの耐久性”をしっかり考えているということがわかり、うれしくなった。本当に発売が楽しみだ。これからのラインナップにも期待したい。
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