コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ
連載第1回
「Home Sweet Tokyo」主演のBJ Foxが「GTAV」とゲイとロックスターについて大いに語る
2018年8月13日 07:00
こんにちは! Hajimemashite & ハロー! 僕はBJ Foxです。36歳、東京在住イギリス人、身長189センチです。つい最近までは、昼はサラリーマン、夜はスタンダップコメディアンという二重生活を送っていましたが、現在フリーで夢を追いかけています!
2017年は、NHK初の英語コメディドラマ「Home Sweet Tokyo」の脚本家・主演として芸能界デビューも果たしました。その前にも、前世代機のBJ Foxは、ゲーム業界で長年勤めて来ました。ロンドンのThe Pokemon Company、そして長年Rockstar Gamesのインターナショナルマーケティングを担当して来ました。
今は7月いっぱいでサラリーマンを辞め、脚本家、俳優、コメディアンといういくつかの肩書きを勝手に付けてフリーで活動していますが、ゲーマーという肩書きも大事にしています。この連載コラムでは、「どうしてもゲーム会社で働きたいんだ!」と夢を持っていた20歳代の頃のBJ Foxのゲーム愛を再発見しながら、現在のゲームのあり方をイギリス人のスタンダップコメディアンの立場から考えて行きたいと考えています!
はじめに
担当編集の中村です。BJと私は、彼がロックスター・ゲームス時代からの友人で、シンガポールのマンションに遊びに行ったり、ホーカーでチキンライスとタイガービールをヤりながらフットボールの話を聞いたり、彼が出演するスタンダップコメディを見に行ったりする仲でした。彼は多趣味で、サラリーマンだけでは飽き足らず、コメディアン、俳優、脚本家と色々なことに手を出して、「僕、ゲームコラムも書きたい! 絶対できるよ」というので、本当に書いてもらうことにしました。彼のセンスはぶっ飛んでいて、ブリティッシュジョークを織り交ぜたネタにはついていけないことも多く、正直何がおもしろいのかよくわからないところもあるのですが、ぜひ長い目で彼のゲーム愛を見届けていただけたらと思います。“だいたいネタ”だと思って読んでいただけると丁度良いのではないかと。
僕はロックスターと「GTA」が好きだ!
今回紹介するタイトル
「グランド・セフト・オートV」(ロックスター・ゲームス)
GAME Watchが推進しているジャーナリズムの透明性及び報道の論理の担保のため、「グランド・セフト・オートV」についての記事を執筆する前に言わなければならぬことがある。
冒頭に書いた通り、僕は、2008年~2017年の9年間、ロックスター・ゲームスのインターナショナルマーケティング部に勤めていた。R★暦でいうと、「GTAIV」から「GTAV」まで、西暦でいうと2008年から2017年の間、この会社で働いていた。初めに言っておくと、「GTA」シリーズと、そしてロックスターが大好きだ。
「GTA」だけではなく、「マックスペイン3」もプレイしたくらいロックスターが好きだ。今はフリーの立場だけれども、ファーストラブ、初恋であり、いつになっても僕のココロの中に特別な場所があるから……この第1回はいささか平等性に欠けているかもしれない。
とはいえ、退社後、すっかり「GTA」と離れてしまった。僕はきっぱりと別れるタイプだ。そう、直ちにLINEを削除するタイプだ。僕とロックスターとの再会は、何となく今年の10月、すなわち「レッド・デッド・リデンプション2」となるかなぁと。そのときにもう1回手を繋いで、美しい夕焼けへと馬を走らせていこうと思っていたけれど、最近の「GTAオンラインアップデート」のお陰で、その再会が前倒しとなった!
その名も「ナイトライフ・アップデート!」。ちなみに英タイトルは「After Hours」であり、「ナイトライフ」と似たような意味だけれど、それよりもヤバさを秘めている。クラブよりもクラブの営業時間以外の時間帯に重みを置かれている感じかな。
実は、去年の12月に配信された「強盗ミッション:ドゥームズ・デイ」の時点でもう手を引っ張られそうだった。空を飛ぶ車、チリアド山の中の秘密暴露、そして、ジェットパック(!)に魅了されそうだったけれど、別れてからまだ日が十分に経っていなかった。けれど今回は、ジェットパックよりもGTAユニバースへの再登場を期待していたあの方が復帰した。ナイトライフ王、ゲイ・トニー!
僕はゲイ・トニーが大好きだった。確か日本には、2010年(遅れた発売がまだ許されてた、R★暦「GTAIV」2年目)に「エピソード・フロム・リバティーシティ」の1パーツとして発売されたと思うが、欧米では、「GTAIV」の2番のストーリーDLC「グランド・セフト・オート・ザ・バラッド・オブ・ゲイ・トニー」として単独で配信された。
みんなは覚えているだろうか、「GTAIV」というゲームがどのくらい暗かったか。DLC第1弾「ザ・ロスト・アンド・ダムド」は、主人公に弾痕でボコボコに穴の空いた、黒いバイカージャケットを着させ、美しい夕焼けどころか、さらに暗い闇に入っていった。それだからこそ、ライトかつ派手なDLC第2弾「バラッド・オブ・ゲイ・トニー」が発売となり、楽しみというより先に、ホッとした。派手なナイトクラブ 、派手なキャラクター、風刺が効く派手なミッションで気分転換したかった。「ザ・ロスト・アンド・ダムド」で溜まったストレスは、毒舌ブロガーを脅すための、1回のスカイダイブだけで全て解消となった。
なお、ロスサントスはそもそもリバティー・シティより明るく、タッチがライトであって、GTAVはGTAIVの暗さを抱えていないにも関わらず、やはりゲイ・トニーと再会できてよかった。
でも、今の時代は“ゲイ”を付けてしまうと、アンチゲイ差別用語でネット炎上する恐れがあるとして、トニーのみとなった。これは僕が言ってるわけじゃなくて、ゲーム内のキャラクターがそのように説明していた。それを見て僕は「さすがロックスター」と思った。ロスサントスの世界で盛り込まれている現代社会への風刺も、オンライン追加コンテンツでさらに進化している。ときおり厳しい批判に晒されるロックスターは、ゲームメーカーの中でも進歩派であり、様々な意味で先駆者だと言えるだろう。ゲーム市場の最初の黒人の主人公の1人を挙げ、史上初(?)となるゲイのタイトルキャラも挙げ、そして世界唯一ヒップホップサウンドトラック付きの卓球シミュレーション「Rockstar Games presents Table Tennis」を出したのも、全てロックスターだった。
しかし、ゲイの主要キャラクターを挙げたことでリベラルから進歩的として褒められたことが、わずか8年後には進歩的から差別的だと言われてしまうなんて怖いものだ。これがさらに先鋭化していったらどうなるんだろう?
「ポケモン」は、いずれ動物虐待に訴えられるのか。「ゼルダの伝説」も、強い男性が弱い女性を救うパターンの繰り返しで、時代遅れの男女描写ゲームとしてクレームが来てしまうのか。「マリオカート」は、イタリア人の運転の適当さのステレオタイプでクレームを受けるのか。ちなみに、そのステレオタイプに関しては、ローマに行って実物を目撃して辛うじてロンドンに無事に帰れた筆者としては、炎上を避けるためにこれ以上何も言わないようにする。
ほぼ2年ぶりにオンライン上のロスサントスに戻って、驚いた。ネット上で差別用語について対談が展開していくペースと同じく、「GTAオンライン」の進化も早い! 僕が細くデザインしたキャラクターも、お金をかけて装備したガレージも、時代に遅れている感じであった。まるでナイトクラブに行く気分と同じで、自分が歳とったなぁ、と思った。ちなみに、最後に六本木のクラブに行った時の話だが、スニーカーの着用で入場を断られ、「靴がダメだ」と無礼に指を指されたルイス・ロペズ役に対しては、怒りどころか、微妙に感謝していた。あの自分の年齢に合わないところに入らせていただかなくて、サンキュー。
ロックスターだけあって、ナイトライフのコンテンツとともに新しいDJも装備されてくる。「Solomun, Dixon, Tale of Us and The Black Madonna...」というのトップクラスDJだ! というニュースを目にしたときに、僕も歳を取ったなあという思いと同時に、懐かしい気持ちがこみ上げてきた。正直、4人とも初耳だ。有名かどうか正直わからない。現代日本国内のマーケティングを担当している人間が大変だなぁ、と懐かしく現役時代をふと思い出した。
9年間、こうした感じで、日本人がまったくわからないようなアーティストと海外カルチャーのタイアップを紹介しなければいけなくて大変苦労した。
担当(僕):半端ないサウンドトラックが満載されているよ! 記事にしてね!!
記者:どのアーティストですか?「キングダムハーツ」の宇多田ヒカルさんとか?
担当(僕):ちょっと違うんだけど。まずは記事を書いてくれない?
記者:なるほど……うーん、ちょっとね……。
久しぶりに「GTA」をプレイして再度思ったのは、ロックスターはロックスターだということだ。日本人がほとんど知らないDJの紹介にせよ、リアリティを追求しすぎるピンポンゲームにせよ、半端なく奥深い無料DLCにしても、何と言ってもロックスターは個性的だ。「RDR2」向けの準備として、ハイラルでの馬慣らしごっこばかりしていたけど、ゲイ・ト……いや、ジャスト・トニーと同様に、またゲームに戻る時期が来ちゃったかも。では、また次回!
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