レビュー
ワイヤレス充電システム「POWERPLAY 2」レビュー
いったい何が“2”なのか? G903からDEXまで9種のゲーミングマウスで検証してみた
2025年3月12日 00:00
- 【POWERPLAY 2】
- 3月13日発売
- 価格:18,480円
ロジクールは、ロジクールGゲーミングマウスに対応したワイヤレス充電システム「POWERPLAY 2」を3月13日に発売する。
ワイヤレス充電システムといえば、スマートフォン向けに提供されている「Qi(ちー)」などがその代表格だが、送電、受電、2つのコイル間で電力を伝送し、デバイス側のバッテリーにワイヤレスで充電する仕組みだ。
初代「POWERPLAY」は、2017年に登場し、その後、Razerなど幾つかのメーカーから競合製品がリリースされたが、比較的マニアックなポジションのゲーミングデバイスといっていい。マウス周辺で言えば、マウスバンジーやガラス製マウスパッド、サードパーティー製のソールぐらいの位置づけで、知っている人は知っているし、使っている人は使っているというような、知る人ぞ知る快適グッズだ。
筆者はそのマニアックなほうのひとりだったが、その後、ワイヤレス充電の先駆者であるロジクールからも話題自体が出なくなり、新製品のフォーカスポイントもほかに移ったため、筆者自身も数年前にお蔵入りにしたほどだ。前回の「G309」インプレッションのように、新製品の評価の際に引っ張り出して使うぐらいだったため、今回突如として新モデルが出たのは驚いた。
ただ、「POWERPLAY 2」は、初代ユーザーからするとわかりにくいところが多い。なにがどう2なのかよくわからない。初代との比較が一切なく、買い換えに値する商品なのかどうかも明確ではない。そこで今回は、発売前に製品をお借りして、自前の環境で1週間ほど使い倒してみた。発表後、気になっていたPCゲームファンはぜひ参考にして頂ければと思う。
忘れがちの充電作業から解放されるワイヤレス充電システム「POWERPLAY」
「マウス用のワイヤレス充電システムなんて初めて聞いた」というゲーマーもいると思われるので、まず最初にどのような製品なのか簡単に紹介しておきたい。
「POWERPLAY」は、送電コイルが内蔵されたPOWERPLAYベースと、受電コイルが内蔵されたマウス本体に装着するPOWERPLAYコアモジュール、そしてベースの上に敷くマウスパッドがセットになったプロダクトだ。見た目は、“有線ケーブルが繋がった普通サイズのマウスパッド”という感じで、勘違いしないように外箱にも大きめに記載されているが、マウス本体は別売だ。
使い方は、ベースをPC本体に接続し、対応マウスの背面にあるレシーバー収納部のカバーを外し、そこにコアモジュールをはめ込むだけ。ワイヤレス状態でありながら、充電しながら使い続けられるという、ワイヤレス派にとっては夢のような環境が構築できる。
初代「POWERPLAY」は、当時のトレンドを反映して、ロゴがRGBライトで彩れる仕様となっており、カラーをG HUBで調整可能だった。加えて、ロゴ部分がワイヤレスレシーバー機能を備えており、USBポート1つで、POWERPLAYもマウスも使えるという便利仕様。さらに、ベースに敷くマウスパッドは、ソフト、ハードの2枚セットで、ソフト派もハード派も満足できるという至れり尽くせりの内容だった。
このように仕様を盛り盛りにした結果、価格は21,450円と、なんと当時の同社のフラッグシップモデルであるG900を上回る価格設定になっていた。そもそもローンチ時点では対応マウスがG903、G703など、ごく一部に限定されており、G903とセットで購入して極上の環境でゲームを愉しむという贅沢アイテムだった印象は否めない。
ゲーマーからも価格設定以外にも、マウスパッドが小さい、対応マウスが少ないなどの指摘も多かったように記憶している。繰り返しになるが、筆者は愛用していたゲーマーの1人だが、色んな意味で早すぎたところがあったデバイスだと感じている。
「POWERPLAY 2」はかなりの時間差でやってきた普及モデル
そして今回、8年振りの待望の新モデルが「POWERPLAY 2」となる。POWERPLAYユーザーとしてリリースを一読して感じたのは、ようやく普及モデルがやって来た、ということだ。
ネーミングに「2」を付けているため過度に期待させてしまうところがあるが、「POWERPLAY 2」は初代「POWERPLAY」のリニューアルモデルだ。たとえば、急速充電や複数充電が可能だったり、サードパーティー製のマウスに対応するなど、そういった革新的な新機能がが盛り込まれているわけではない。
「POWERPLAY 2」は、初代「POWERPLAY」のノウハウを引き継ぎながら、細かい部分をリニューアルし使い勝手を向上させつつ、ゲーマーに必要な機能のみを搭載し、価格をグッと下げたモデルだ。現在は対応マウスが何倍に増えていることもあり、一気に魅力的なプロダクトになったように思う。
見るべきポイントは3つあると思う。1つは0.5mmの薄型化を実現したことだ。これにより、さらに自身で愛用しているマウスパッドでの使い勝手が良くなった。
ちなみに同梱のマウスパッドはG240ベースのクロス素材。1mmほどの厚さで、ロゴの刻印はなしのオリジナル仕様だ。クロス素材のため、初代のソフトよりも柔らかく、しなやか。背面は吸着素材になっており、ベースにピタッと貼り付けられるようになっている。このマウスパッドも十分に使いやすく、そのままでもいいなという印象だ。
2つ目はワイヤレスレシーバーやRGBライトなど、ワイヤレス充電というコア機能に直接リンクしない重要度の低い機能がカットされたことだ。当時とはレポートレートの水準も変わってきており、それに対応するためにマウス側のUSBレシーバーも大型化している。互換性が保証できないのは明らかだ。RGBライトについても、PROシリーズは最初からRGBライトを廃している。正しい取捨選択だと思う。
そして3点目、これがもっとも重要だが、2024年以降のマウスにも対応していることだ。これは問い合わせの過程で明らかになったことだが、逆に言うと、初代「POWERPLAY」は、“2024年以降のモデルに正式対応していない”のだ。
それを知って筆者自身も驚いた。というのも、実際にレビューで使えることを確かめていたからだ。ただ、実際に検証してみると、確かに対応していない、正確に記述すると、対応しているとは言えない事実が明らかになった。次章ではその検証結果を報告しよう。
初代「POWERPLAY」は新世代の製品ほど充電が不安定に。「POWERPLAY 2」は安定
今回検証に使用したのは、POWERPLAYに対応しているロジクール製ゲーミングマウス。古くは、GシリーズハイエンドモデルであるG903(2019年6月発売)から2024年10月に発売されたばかりの「PRO X SUPERLIGHT 2 DEX」まで全9モデル。
まず始めに断っておくと、マウス/キーボード共に、未使用の新製品は「POWERPLAY 2」のみで、基本的にレビュー用の機材か、筆者の私物だ。特に「POWERPLAY」は2017年から使っている使い古しであり、機能的にくたびれている可能性が高いことはあらかじめ明記しておく。このため、評価は参考程度に留めてほしい。
この検証の目的は、「POWERPLAY 2」が2024年発売モデルに対応していること、その反対に初代「POWERPLAY」が対応していないことを確かめるというものだ。
さっそく、新旧POWERPLAYに1台ずつマウスを接続して検証してみた。結果は以下の通りとなった。上から新しい順番に並べてある。検証当初は、もっと少ない機種で検証していたのだが、「あれはどうだろう」、「ということはこれはどうだろう?」とやっていくうちに、結局手持ちの全モデルで検証することになってしまった。備考の内容はすべて旧モデルの検証内容を記したものだ。
マウス\世代 | POWERPLAY 2 | POWERPLAY | 備考 |
---|---|---|---|
PRO X2 DEX★ | ○ | △ | 充電されるが、80%台で充電が終わってしまう |
PRO 2★ | ○ | △ | 充電されるが、80%台で充電が終わってしまう |
G309★ | ○ | ○ | 両モデルとも支障なく電池無し駆動が可能 |
PRO X2 | ○ | △ | 充電が安定しない。いきなり100%になったり、数字が下がり始めたり、途中で充電されなくなる。全体的に挙動が怪しい |
PRO X | ○ | △ | 充電は可能だが、充電の数値が安定しない、飛び飛びになり数値が信用できない |
PRO | ○ | ○ | 特になし |
G502 X | ○ | ○ | 特になし |
G502 | ○ | ○ | 特になし |
G903 | ○ | ○ | 特になし |
結果を見ると一目瞭然だが、初代「POWERPLAY」では、2024年モデルを中心に、一番肝心な充電機能が十分に発揮されないことがわかる。筆者は、新しいマウスが出る度に、POWERPLAYを取り出して使っていたが、新しいモデルで充電性能が不十分な事実は気付いていなかった。なぜなら充電自体は可能で、充電しながらの使用も可能で、充電機能自体はしっかり提供されていたからだ。
ただ、上記にあるように初代「POWERPLAY」では、充電が80%台で終わり、100%まで充電ができなかったり、数字が飛び飛びになるなど、不安定な部分が露わになる。ロジクールが非対応を表明するのも肯ける話で、ケーブル充電ならキチッと100%まで充電できるだけに、この不安定さは気になる人は気になるだろう。
「POWERPLAY 2」は、全モデルにおいて安定的な充電性能を提供しており、いまどちらをオススメするかというと、選択の余地なしで「POWERPLAY 2」になるだろう。先述したように、「POWERPLAY」の強みであるワイヤレスレシーバー機能は、2024年以降のモデルが採用しつつある8000Hzのレポートに対応していないし、RGBライトが好きでたまらないというゲーマー以外は、わざわざ「POWERPLAY」を選ぶ理由はないように思う。
一方で、「POWERPLAY」ユーザーが、「POWERPLAY 2」に買い換えるべきかというと、そこも微妙だと思う。初代では実現できないような画期的な新機能を備えているわけではないし、繰り返すが充電自体は可能だからだ。完全に互換性がなくなるまで、筆者のように大事に使い続ければ良いと思う。
最後に「POWERPLAY」ユーザーとして要望を書いておくと、これはロジクールにすでに256回ぐらい直接伝えていて、さらに記事でダメ押しするのは担当記者としてどうかというところもあるが、ついでなので書いておく。1つは、G640サイズ(400×460mm)の大型バージョンも出して欲しいということと、POWERPLAYコアモジュール単体販売も実施して、複数台のマウスを同時に充電できるようにしてほしい。
なお、初代「POWERPLAY」は、店頭在庫のみで販売終了となり、今後はすべて「POWERPLAY 2」に置き換えられる。これから手に入れようと考えているロジクールユーザーは無理に「POWERPLAY」のサルベージを狙わず、素直に「POWERPLAY 2」の購入をオススメしておきたい。
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