レビュー
「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」レビュー
ジョウイの帰りを待つ夕日のシーンも美しく。遊びやすく生まれ変わった名作2本が楽しめる!
2025年3月5日 17:00
- 【幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争】
- 3月6日 発売予定
- 価格:5,500円
コナミデジタルエンタテインメントより、3月6日に発売されるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC用RPG「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」。本作は、1995年と1998年にそれぞれ初代プレイステーション向けに発売されたシリーズ1作目の「幻想水滸伝」と続編の「幻想水滸伝II」をHDリマスター化して、1本のソフトにまとめたタイトルだ。
シリーズとしては複数のタイトルがリリースされているが、初代「幻想水滸伝」は2006年にはPSP向けに発売された「幻想水滸伝I&II」を最後に、しばらく移植などが行なわれず、現行のプラットフォームではなかなか遊ぶことが難しいというのが現状だった。
ちなみにこの「幻想水滸伝」シリーズは、中国の四大奇書のひとつに数えられる「水滸伝」をベースにしたゲームだ。元々の物語としては、水のほとりにある自然の要塞に108人の英傑たちが集まり、国を救うために戦うというものだが、概ねそれに近い要素がゲーム内にも盛り込まれている。もちろん、「水滸伝」自体は全く知らなくても楽しめるようになっており、この作品をきっかけに興味を持ったという人も多いかもしれない。
リリースに先駆けて、こちらの「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」をプレイする機会がもらえた。今回はそこからわかったゲームの魅力や特徴についてレビューしていく。なお、一部ネタバレが含まれている箇所もあるため、その点はあらかじめご了承願いたい。
より遊びやすくなったHDリマスター版ならではの特徴
今回のHDリマスター版の最大のポイントは、オリジナルのプレイステーション版と比較してグラフィックスが大幅に進化しているところだ。当時のゲームはアスペクト比4:3などで作られていたが、現在は16:9のフルHDが主流になっている。今作では、そちらに合わせて、画面も広く表示されるようになっているのだ。
面白いのは、セリフなどと共に表示される顔のグラフィックは高精細なものに置き換えられているのだが、キャラクター自体はドット絵で描かれているところである。そうしたこともあり、元の雰囲気も崩さずに現代風の作品として遊ぶことができるという印象だ。
最近のゲームとの違いという意味では、こうしたキャラクターたちのセリフはフルボイスではなくセリフのみの表示になっている。だが、本作では顔のアイコンつきでセリフが表示されるということもあってか、あまり違和感なく、作品の世界観に入り込むことができた。
同様にユーザーインターフェースもかなり見やすく変更されている。プレイ中、メニューを呼び出して装備や道具などを整理することも多いが、こうしてオリジナル版と比較してみるとかなりわかりやすくなっている。
ちなみに今回筆者がプレイしたのはPC版(Steam版)だ。こちらはデフォルトの状態ではウィンドウモードで起動するのだが、設定でフルスクリーンにすることもできる。このあたりは好みで変更するといいだろう。今回はこのPC版に加えてNintendo SwitchやPlayStation 5、Xbox Series X|Sなど主要なプラットフォームで遊ぶことができる。ゲーム自体はそれほどGPUに負荷を掛けるというタイプの作品ではないため、どのプラットフォームで遊んでもそれほど大きな差はないだろう。
倍速機能でよりサクサク冒険
プレイの快適さを高めるために用意されている新機能が、倍速機能だ。こちらはバトル中の再生速度を早送りでプレイできるというものだ。本作では、オリジナル版同様にメニューから「おまかせ」を選んでオートバトルにすることができる。道具や技を使うといったことはできないが、こちらと併用することでサクサクと冒険していくことができるだろう。
取扱説明書もデジタルで収録
もうひとつ感心させられた部分が、それぞれのタイトルのメニューから「取扱説明書」が見られるようになっていたことだった。ゲーム自体の細かな遊び方も確認できるのだが、なによりもありがたいのがマップと地名が記載されているところだ。こうした「取扱説明書」は、プレイ中でもメニューから「設定」を選び、その中の項目から呼び出せるようになっている。
ギャラリーではムービーやサウンドを鑑賞できる
これも今回のHDリマスター版ならではの機能だが、メニューに「ギャラリー」という項目が用意されている。こちらでは、BGMだけが聴ける「サウンドモード」のほか、エンディングまでプレイすることで解放される「ムービー」と「イベントビューワー」、「エンディング」という項目も用意されている。
本作では、バックに流れるBGMも高音質化がなされている。こちらはオリジナル版の時点で迫力のあるサウンドではあったが、今回のリマスター版ではより音の広がりが出て聴きやすくなった。どうせならもっとじっくりと聴きたいという人もいると思うが、こちらの「サウンドモード」を活用することで好きなだけ楽しむことができる。
「ムービー」は劇中に流れるムービーシーンが、「イベントビューワー」では特に印象に残るイベントシーンがそれぞれピックアップされている。ゲームが終わった後で、思い出に浸りたいときなどに見られるのは嬉しい要素だといえるだろう。
ナンバリング順のプレイがおすすめ。「幻想水滸伝I」のストーリーとポイント
本作ではシリーズ1作目の「幻想水滸伝 I 門の紋章戦争」(以下、I)と、その続編である「幻想水滸伝 II デュナン統一戦争」(以下、II)のどちらか好きなほうを選んでゲームを進めていくことができる。それぞれ単体の作品としても楽しめるのだが、「II」をプレイするときに前作の「グレッグミンスター突入」までストーリーを進めておくことで、一部の設定を引き継ぐことができる。そのため、可能ならばナンバリング順にプレイすることをオススメする。
「Ⅰ」の主人公は帝国五将軍のひとりといわれた、テオ・マクドールの息子だ。テオが北西を守る任務で留守にしている間、近衛隊長・クレイズの元で任務に就くことになるのだが、とある事件をきっかけに反逆者の汚名を着せられてしまう。その後、圧政を続ける帝国に立ち向かうべく、解放軍として立ち上がることになるというのが大まかなストーリーだ。
本作の醍醐味のひとつが、最大108人の個性豊かな仲間を集めて戦っていくことができるところである。冒険の途中でひょんなことから出会う仲間もいれば、道半ばで命を落としてしまうものもいるなど、さまざまな人たちとの出会いと別れの物語が描かれているのである。
特にゲームが大きく変化するのが、解放軍の本拠地として水のほとりにある城を手に入れてから。これ以降、仲間の人数を増やしていくたびに、本拠地が最大4段階で街のように発展していき、さまざまな施設が利用できるようになっていくのである。
この仲間集めの部分は、単純に話しかけるだけでいい場合もあれば、ストーリーの進行に合わせて加わってくるものもいる。だが、一部のキャラクターは特定の条件を満たさなければ仲間になってくれない。
一例をあげると、パーティに特定のキャラクターが含まれている必要があったり、あるいは主人公のレベルによって仲間になってくれるものもいたりするといった感じだ。ゲーム的には必ずしも最上限の108人まで集める必要はないのだが、やりこみ要素として集めたくなってしまう。
ちなみに、このゲームでは街中やダンジョンなどではダッシュで移動することができるが、フィールドの移動は使えない。また、いつでもどこでも使えるファストトラベルは用意されていないのだが、その代わりとなるのが「テレポート」と「またたきの手鏡」だ。
「テレポート」は、ビッキーを仲間にした後に本拠地で使える機能だ。こちらは地下にいるビッキーに話し掛けることで、1度訪れた場所に瞬時にワープすることができる。この「テレポート」は片道だけなのだが、本拠地に戻ってくることができるアイテムが「またたきの手鏡」だ。こちらはテイエンという街の宝箱から手に入るアイテムだが、無限に使用することができる。
パーティでのバトルに加えて一騎打ちや戦争イベントも発生!
本拠地では最大108人まで仲間を増やせるが、実際にパーティに参加できるのは主人公を含めて6人までだ。それぞれのキャラクターごとに異なる能力を持っているのだが、それに加えてS(近距離武器)、M(中距離武器)、L(長距離武器)という射程が設定されている。パーティでは前列と後列の隊列を設定することができる、このなかでSだけは前衛にしておかないと攻撃ができなくなってしまう。パーティのメンバーの選定と隊列を設定するときは、このあたりも考慮しながら選んでいくといいだろう。
バトルはランダムエンカウント方式になっており、フィールドやダンジョンなどを移動しているときにランダムでバトルが始まる。バトル自体はターン制になっており、先ほど紹介した「おまかせ」を選べば自動で戦ってくれる。
また、キャラクターによっては「紋章」と呼ばれる魔法攻撃が選べるほか、特定のキャラクターがパーティ内にいるときのみ「いっしょに」を選ぶことで、複数人で同時に協力攻撃を繰り出すこともできる。例をあげると、主人公とその師匠であるカイで「師弟攻撃」が繰り出せるといった感じだ。
こうしたパーティでの戦闘だけではなく、本作ではストーリー上で特別な戦闘も用意されている。そのひとつが一騎打ちだ。こちらはその名の通り1体1のバトルとなっているのだが、戦闘自体は「攻撃」または「防御」、「捨て身の攻撃」の3つのコマンドを選んで戦っていくことになる。
この3つのコマンドは、それぞれ「攻撃」は「防御」に強く、「防御」は「捨て身の攻撃」に強い、そして「捨て身の攻撃」は「攻撃」に強いというじゃんけんのような三つ巴の関係になっている。相手のセリフなどから、次にどの攻撃を仕掛けてくるか予測しながら有利な攻撃を選んで戦っていくといいだろう。
この一騎打ちを、さらに大がかりにしたのが「戦争イベント」である。こちらは軍隊同士のぶつかり合いとなっており、やはり「突撃」や「弓矢」、「魔法」といった三つ巴の要素がコマンドとして用意されている。ここで重要になるのが、もうひとつ用意されている「その他」という攻撃コマンドだ。
「その他」の中には、そのとき参加しているユニットにより、さまざまなコマンドが実行できるようになっている。たとえば、「あきんど」を使って敵を寝返らせたり、「忍者」や「こそどろ」で、次に敵がどんな攻撃をしてくるのか探ったりするということも可能だ。「その他」の攻撃コマンド自体は、使える回数に制限はあるが、どんどん活用していこう。
チンチロリンやルーレット、神経衰弱などのミニゲームも登場!
本編と直接関係ないものも含めて、さまざまなミニゲーム的な要素もいくつか登場する。たとえば、カクの街ではチンチロリンに勝たなければ先に進むための船が出してもらえない。チンチロリン自体はシンプルなゲームで、サイコロを振って同じ目がふたつ出たもの以外の目が自分の数字になり、それを相手と競い合うというもの。しかし、慣れないうちはタイミングがなかなかシビアで、お椀から飛び出してしまうこともあった。
また、コウアンにある屋敷を探索中、唐突にルーレットが出現する場所が出てくるということもあった。こちらはランダムで経験値やアイテムがもらえるほか、当てないと先に進めないという場所になっているのだ。貴重なアイテムがゲットできるポイントでもあるので、ぜひともチャレンジしてほしいポイントでもある。
また、キーロフという街では神経衰弱がプレイ可能だ。こちらは枚数を指定したあとで、同じ絵柄2枚の組みを時間内に見つけ出していけばOKである。このように、さまざまなポイントに箸休め的な要素がいろいろと盛り込まれているところも「I」の面白いところだ。
「幻想水滸伝II」ではシステム面でも遊びやすさが向上!
続編となる「II」は、前作の3年後がゲームの舞台となる。そのため、前作に登場したキャラクターたちが本作でも活躍するなど、シリーズ作品ならではの楽しみ方ができるのが特徴だ。ストーリーとしては、プレーヤーが演じることになるのは、ハイランド王国の少年兵部隊ユニコーン隊の兵士である。そこで親友のジョウイと共に任務にあたっていたのだが、上司のラウドと第一軍団長ルカ・ブライトの策略に巻き込まれてしまう。
その後、主人公は同盟軍のリーダーとなって仲間を集結。一方親友だったジョウイとは敵対する関係になり、「デュナン統一戦争」と呼ばれる争いに発展していくことになるというのが大まかなストーリーだ。
先に前作を遊んでいたということもあるが、この「II」をプレイして感心させられた部分が、ときおり印象的なカットシーンが盛り込まれているということであった。いずれも美しい場面が多く、心に残るものばかりである。それを、今回のHDリマスターで見られるというところもポイントといえるだろう。
これは前作との共通点だが、どちらも店で買えるのは防具のみで武器自体は変更できず、鍛冶屋で鍛えることで強化ができるシステムになっている。前作ではこの防具を購入するときに、そもそもどのキャラクターが身に付けることができるのかわかりにくいことに加えて、アイテム自体をいちいち渡して装備できるか確かめる必要があった。
だが、「II」ではその手間がある程度改善されており、お店で購入するときにどの程度強化できるのか表示されるようになっている。それに加えて、購入時に身に付けている装備も引き取ってくれるようになったのだ。これは細かい部分ではあるが、頻繁に利用することにもなるのでありがたい仕様である。
「II」では、アイテムの管理もひとりひとりのキャラクターごとではなく、「袋」の中に装備品以外が入れておけるようになった。これにより、回復薬などの必需品も管理しやすくなった印象だ。また、セーブは各地にある「旅の封印球」または宿屋などで行なえるようになっているが、こちらも前作とは異なり宿泊とセーブが分かれているのではなく同時に行なえるよう改善されている。
キャラクターの見た目も成長!? 「戦争イベント」はSLG風に
前作「I」から変化した部分もあれば、いい意味で変わってはいるものの共通している部分もいくつかあった。そのひとつが登場キャラクターたちだ。どちらの作品にも共通して登場し、主人公たちともストーリー面で大きな関わり合いを持つキャラクターのひとりにビクトールがいる。
前作では若干野生児的なスタイルの見た目になっていたが、今作では引き締まった戦士のような見た目になっていた。3年という月日は、こうも人に変化を与えるのかと感心してしまった部分だが、他のキャラクターも同様に見た目が少し異なっている。そうした変化が楽しめるというのも、シリーズ作品ならではといったところだろう。
バトルのシステムについても、ほぼ前作を踏襲したものとなっている。こちらも紋章による魔法攻撃に加えて、パーティメンバーによって変化する「いっしょに」を選ぶことも可能だ。若干演出が派手になっているということもあり、戦闘そのものの楽しさも増したように感じた。
一騎打ちに関してはほぼ変わっていないものの、「戦争イベント」はじゃんけん方式ではなくターン制のシミュレーションゲームのようなスタイルに変更されている。こちらはユニットを選んで移動先を選び、攻撃を仕掛けるといったものだ。シミュレーションゲームというほどの難しさはないものの、その雰囲気が味わえるようになっているのはなかなか面白い。
「幻想水滸伝」シリーズといえば、やはりはずせないのが108人の仲間集めと拠点のレベルアップだ。こちらも引き続き、仲間を集めていくに従って拠点内の施設が充実していく仕組みになっている。なかなか仲間になってくれないキャラクターたちもおり、どのような条件をこなせばいいのか考えながらプレイするのもなかなか楽しい部分である。
ナンバリング順にプレイすることでゲーム自体の進化も体験できる
今回のレビューにあたっては「I」を約12時間、「II」のほうは7時間ほどプレイした状況になっており、どちらもこれからさらに物語が盛り上がっていくというところだ。本来なら順番にクリアしていった方がいいのだが、それでも作品の違いが感じるほどに楽しむことができた。
とくに「II」は前作の経験もある程度活かすことができるような作りになっていたことに加えて、既存のキャラクターに加えて新たな仲間たちとの出会いも多く、ついつい遊び続けてしまったほどだ。また、よりドラマチックなシーンも増えており、そちらも夢中になった理由に挙げられる。
また、108人の仲間集めなど、1度クリアした後でもやりこみたくなるような余白がいろいろと用意されているところも魅力だ。とくに「II」はマルチエンディングになっているそうなので、トゥルーエンドを目指して遊ぶというのも良さそうである。
これらも含めて、名作RPGが現代のゲームプレイ環境で遊びやすくリマスターされ、一気に2本も遊べるのはかなりありがたい。過去にシリーズ作品を遊んだことがある人はもちろんのこと、まだ1度も触れたことがない人も夢中になってしまうこと間違いなしだ。この記事を読んで、少しでも興味を持ったならばぜひ挑戦してほしいタイトルである。
(C)Konami Digital Entertainment