インタビュー
Logitech Gシリーズの次の革新はゲーミングマウス“ワイヤレス充電”だった!
Logitech GポートフォリオマネージャーChris Pate氏インタビュー
2017年6月13日 17:04
2016年、ライトスピードテクノロジーを採用したワイヤレスゲーミングマウス「G900」で、ハイエンドゲーミングマウスの定義と、プロゲーミングシーンを一変させたLogitech。ゲーミングマウスとしての性能だけでなく、ワイヤレスにもかかわらず、ワイヤードより応答速度が速いという事実は、ゲーミングデバイス業界に衝撃を与えた。
そして2017年6月12日、Logitechは新たなデバイスを発表した。「POWERPLAY」と呼ばれるマウスパッド大の形状をしたワイヤレスチャージングシステムは、ワイヤレスマウスの“最後の課題”となるバッテリー切れを無くす究極のソリューションとなる。
今回は、E3での発表に合わせてLogitech GポートフォリオマネージャーのChris Pate氏に「POWERPLAY」の設計意図やその狙いについて話を伺った。
「POWERPLAY」の北米での発売時期は今夏を予定し、価格は、ハードタイプ、クロスタイプの2枚のマウスパッドを同梱して99ドル。日本での発売は未定(参考記事)。
ワイヤレスゲーミングマウスの最後の課題を克服する究極のソリューション「POWERPLAY」
――今回発表したワイヤレスチャージングシステム「POWERPLAY」を開発した経緯を教えて下さい
Chris Pate氏: 我々Logitech Gチームは、デザインとテクノロジーをもってゲームをさらに進めるということを課題として取り組んでおります。私たちは、情熱をもってゲーミングギアの開発に取り組んでおりますので、一番先進のギアとゲームエクスペリエンスを、お客様に提供することをモットーとしております。
ワイヤレスチャージングシステムのお話をする前に、まずはワイヤレスゲーミングの話から始めていきます。去年「G900」を発表しました。当時、ワイヤレスゲーミングの中では解消するのが難しい問題が3つあるといわれていました。1つはコネクティビティ周りです。遅延です。2つ目がバッテリーの寿命。一番大切な時にマウスが止まってしまうことがないようにするということ。3つ目は重さです。過去にはバッテリーが重すぎて、ゲーミングマウスとしてはあまり適してないということだったので、それが3つ目の懸念事項でした。
私たちのワイヤレスデバイスは、自信をもってワイヤレスマウスの中でもどれよりも速く、同時に強靭なものということで、“ライトスピードマウス”と呼んでいます。次にバッテリー寿命ですが、これは過去のものに比べてかなり改善が測られています。競合他社のものよりもサイズは半分なのにバッテリー寿命は2倍ということで、PMW3366と組み合わせても十分に耐えられるということです。皆さんから「これが一番ベストだ」と評価を頂いています。
3つの目の重量では、機械的な工夫と設計の工夫で他社に比べて23%も重量を減らすことができています。そういったバッテリーの大きな進展があったにも関わらず、ゲーマーのようです。週に1回も充電すれば十分なのですが、それでもお客様はもっと改善を求めーの皆さんはまだ理想の状態には至っていないというふうに、まだ多少の不満を持っていますし、私たちも改善を求めてきました。そして新しいバッテリーを考えました。これはゲームチェンジャーになると思っています。
今回発表する「POWERPLAY」は全く新しいゲーミングエクスペリエンスを提供するものだと思っていて、インフィニットパワー、無限のパワーと呼んでいます。私たちはこれでワイヤレスの自由を提供することを標ぼうしています。つまりケーブルというわずらわしさからも解放されるし、デッドバッテリーのわずらわしさからも解放され、ライトスピードワイヤレスのパフォーマンスという大きなメリットを享受することができます。
「POWERPLAY」の構成要素ですが、まずベースがあって、その上にマウスパッドを置いて使います。マウスパットはハードとクロスという2つの選択肢があります。
――マウスパッドが標準で2枚付いているのは、好みに応じてハードタイプとクロスタイプをどちらでも使えるようにするためですか?
Pate氏:そうです。どちらかを選べばいいです。クロスが好きな人とハードが好きな人で、好みが分かれますので。ワイヤレスチャージングシステムはそんなに安いデバイスではないので、パッドが摩耗したときに、システムを全部取り替えなくてもいいように、このパットだけを替えればいいようになっています。
――自分の愛用のマウスパッドは使えないのですか?
Pate氏:それは厚みと素材によります。この仕組みなんですが、パワープレイベースが電磁界を作ります。それが表面のエリアに広がって、マウスを充電します。もしあまりパッドが厚すぎると、パワーモジュールが電磁界の中に入れなくなってしまいますので、そうするとエネルギーを補充できなくなってしまいます。
――「POWERPLAY」は実際にどのようにして使うのですか?
Pate氏:秘密をお見せしますね。非常にシンプルです。現在のワイヤレスマウスと同じように、パワープレイベースをPCのUSBポートに接続して、パワーモジュールに対応しているマウスに取り付けるだけです。非常に簡単にセットアップできます。
――「POWERPLAY」はかなり長いケーブルになっていますが、これによってレイテンシに影響はないのですか?
Pate氏:問題ありません。もともとワイヤレスマウスのワイヤレスレシーバーもケーブルの先にアダプターを繋げる形で、あらかじめケーブルも考慮して設計しています。
――パワーモジュールに対応するマウスとは?
Pate氏:まだ最終的に確定ではありませんが、2つのモデルを予定しています。1つは、「G900」の後継機となる「G903」。これは「G900」のアップグレード版で、オフィシャルにサポートしています。それから「G703」ですね。「G403」のアップデートが「G703」になります。「G403」については、まだ確定ではありませんが、アップデートでの対応が予定されています。
――なるほど「G403」背面のウェイトを入れる部分に、ウェイトの代わりにパワーモジュールをはめ込むわけですね。パワーモジュールとウェイトを両方使うこともできますか?
Pate氏:それはできません。物理的な寸法でフィットしないのです。
――今私は「G900」を使っていますが、この「G900」ではワイヤレスチャージングシステムは使えないということですか?
Pate氏:パワーコアを装着できないので使えません。「G900」をアップデートして、パワープレイを使えるようにしたものが「G903」です。
――では、Logitechの現行ラインナップの中で、ワイヤレスチャージングシステムに対応するモデルは「G403」だけですか?
Pate氏:「G403」もまだ対応すると確定したわけではありません。保証はできないけれど、そのようにしたいという意向です。発売の時にはまだサポートしていないという形になります。今後のファームウェアのアップデートを待っていただく形になります。ワイヤレスチャージングシステムが正式対応しているモデルは、新しい機種の「G903」と「G703」のみになります。我々から「G403」がワイヤレス対応するという風に謳うことはありません。
――ちなみに現行モデルの「G900」、「G403」と、後継モデルの「G903」、「G703」の違いはワイヤレスチャージングシステムへの対応のみですか?
Pate氏:耐久性が増しています。5,000万回のクリックに耐えられるテストを行なっています。「G900」は2,000万回だったので、耐久性が2.5倍ですね。
そのほかの機能は、ほぼ「G900」の機能を踏襲しておりまして、3gだけ重量は増しますが、だいたい同じような軽量性を実現しております。受信側のケーブルやアダプターも同じになっています。これは「G900」で私たちが先進的に作ったものなのですが、ほかの会社がいまコピー商品みたいなものを出しております。テクニカルな詳細を見るとPMW3366というセンサーも同じ、オンボードメモリーも同じ。ほかのパーツも同じか、少し改良が加わっている状態になっています。
「G703」は先ほどお話したように、「G403」のアップグレードでして、ファームウェアとかが入っている状態でエレクトロニクスの部品は少し違うのですが、こちらもスイッチの耐久性が5,000万回にアップグレードされております。「G903」と同じライトスピードテクノロジーが搭載されておりますので、順次「G403」とリプレイスされることになります。
――スイッチの耐久性が2.5倍になったというのは興味深いのですが、何がどう変わったのでしょうか?
Pate氏:オムロンからもっと寿命の長い、違うコンポーネントを購入しました。
――この同じコンポーネントを使っているマウスが存在しますか?
Pate氏:はい、このコンポーネントを使っている競合製品はすでにあります。
――なるほど、この5,000万回というのは、ゲーミングマウスの業界標準になりそうですか?
Pate氏:業界スタンダードとまではいいません。ただ、過去にあったものの持続性、耐久性からいいますと、新しいレベルの耐久性にはなったということだと思います。
「スマートバッテリーチャージングテクノロジー」でバッテリーも保護
――話を「POWERPLAY」に戻します。ワイヤレス充電そのものは、新しい技術ではありませんが、このシステムのセールスポイントは何ですか?
Pate氏:いくつかあります。まず、「POWERPLAY」をご覧になってもらえればわかりますが、コントローラーボックスがライトスピードレシーバーを兼ねているので、マウスの使用から充電まで1つのUSBケーブルがあれば済みます。
それからメカニカルデザインも非常に重要視しています。ご想像できると思いますが、一般的なワイヤレスチャージングシステムは、かなり厚みのあるベースが必要になっておりますけれども、10mmとか12mmとか、それ以上のものもあると思います。この「POWERPLAY」の場合は、だいたい2mmくらいまでの厚さに抑えていますので、マウスを置くベースとしても非常にうまく使えるように設計されております。
さらに、スマートデバイス向けのワイヤレスチャージングシステムと違って、充電する際にマウスを特定の1カ所に置いておく必要がなく、動かしてもいいというのが違いだと思います。マウスを使いながらでも、自分が使用するバッテリー以上にチャージングするような仕組みになっていますので、例えば始めた時点で1%か2%しかない状態でチャージングが始まったとしても、もしマウスが全く動かなければ14時間でマックスチャージができます。マウスを動かした状態でも48時間で充電が完了します。
充電については「スマートバッテリーチャージングテクノロジー」というものを搭載しており、100%まではチャージングしないようになっています。80~95%の間にバッテリーのレベルを保っておく。まだ最終的な数字は決まっていないのですが、そのくらいのレンジになると思っています。絶えず充電されることでバッテリーの寿命そのものが短くなってしまわないようにという配慮です。
私は使い初めて6カ月くらい経過しましたが、これがどのくらいクールなことか説明するのが難しいのですが、例えばPCを何回か起動するまで、SSDがどれだけ便利なものかわからなかったというのと同じくらい、私にとってはエキサイティングで画期的な話だと思っています。とりわけずっと使っていてもマウスのバッテリーが絶対に死なないというのはすごいことだと思います。ぜひ、ご経験していただければと思います。
――気になる価格は?
Pate氏:USドルで99ドルです。
――99.99ドルという価格は、このマウスパッド2枚も付いた価格ですか?
Pate氏:そうです。マウス以外はすべて付いています。クロスパッドとハードパッドとベース、ケーブル、あとはパワーコアですね。
――「G903」、「G703」はいくらですか?
Pate氏:「G903」は149.99ドルです。「G703」は「G403」と同じ99.99ドルです。日本ではまだ未定です。
――「G903」を合わせて購入すると250ドルとなり、1つのマウスとしてはかなり高額になります。セットで買うと安くなったりはしないのですか?
Pate氏:今のところはそういった計画はありませんが、ご要望はあります。そういったことを決めたら、マーケットがどのような反応をするかを考えた上で、これから解答を出したいと思います。
――マウスの背面に装着するモジュールは、これは1つだけでしょうか?
Pate氏:1つのパワープレイパッドに対して、1つのパワーコアがついています。それぞれは別にペアリングされているわけではないので、例えばベースとコアが2つずつあったとして、それを入れ替えたとしてもお互いにチャージングできますし、ベース自体も1度に2台までのマウスを同時に充電するだけのパワーを提供することができます。ただ、これはほかの技術と違って、早くとか急速とか、濃密にといった充電ができるようには設計されていません。ただ継続して持続して充電できるように改善が図られています。
どういうことかというと、たとえばスマートフォンのチャージですと、置いておいて寝ている間に急速バッテリーチャージを行ないます。我々の場合は750mAのバッテリーを14時間かけて充電するのですが、これがもし3,200mAのバッテリーを搭載したスマートフォンならフル充電に56時間掛かる計算になります。急速性がまったく違うのです。今の数字はあくまでも概算なので、機器によって実際の数字は違うということは念頭に入れておいてください。
急速性に欠ける代わりに、今回の設計はサーフェスエリアが非常に広くとられておりますので、どこかここのポイントでチャージングしなければならないということではなくて、表面で広くチャージングできます。たとえばスマートフォンのワイヤレス充電みたいに、ここのスポットでなければ充電できないというような感じだと、ゲームをしながらマウスを充電することができなくなってしまいます。
――チャージングエリアはマウスパッドの全域ですか?
Pate氏:それよりは少し小さいです。最終的なチャージングエリアはまだ確定していないのですが、基本的にはマウスがマウスパッドの中に完全に納まるところであれば、チャージングができます。まだ最終的には決まっていませんので、若干小さくなるかもしれませんが、だいたいのところは大丈夫だと思います。
――このパワーコアは単体販売もしますか?
Pate氏:パーツをなくしてしまった場合のリプレイスメントパーツとして売ることはあるかもしれませんが、単体アイテムとして販売するという考えはないです。
――発売時期はいつくらいになりますか?
Pate氏:まだ100%確定しているわけではないのですが、まず最初にアメリカで市場投入をして、世界のほかのマーケットはそれ以降になる予定です。発売時期についてはおそらく8月に第1号のモデルが出荷になると思うのですが、いまは最後のいろいろフィックスしなければならない問題にとりかかっているので、まだ確定ではありません。
――「G903」と「G703」はいつ発売ですか?
Pate氏:同じ日に発表します。アメリカでは6月末から出荷が始まる予定です。マウスとワイヤレスチャージングシステムの間の相互の連携については、まだ調整しなければならない点が残っているので、世界のほかのマーケットについてはまだちょっとわからない点があります。一方が出てからずっともう一方を待たなければならないというシチュエーションは回避したいので、だから今はっきりとは言えません。
――つまり、仮にワイヤレスチャージングシステムの発売が遅れる場合、それに合わせてマウスの発売も遅れるということですか?
Pate氏:そこは言いにくいのですが、とはいえ、ビジネスとして定期的に何か売るものがなければいけないという無視できない現実もありまして(笑)。理想的には同時期にマーケットに出したいなと思っています。
――発表のタイミングはちょうどE3開催時期で、ゲーム業界が一番盛り上がるタイミングですね。
Pate氏:そうですね。なぜ今日、これをお見せするのがそんなにエキサイティングに思っていたかというと、E3で発表するのもあるのですが、私の誕生日でもあるんです(笑)。開発に4年もかかっているので、ようやく話せることがまず嬉しいということと、それからスイスでお会いした時に非常に素晴らしい質問をしてくださったので、そのことで私の記憶にすごくインプットされた記者さんでしたので、これをようやくこの機会に直接会ってお話できることが嬉しく思います。
――私はスイスでインタビューさせていただきましたが、開発に4年掛かったということは、昨年「G900」をお披露目した時には開発から3年経過していたわけですよね。なぜ同時発表ではなく1年間ずらしたのですか?
Pate氏:ワイヤレス充電はアイデアとしては突飛なものではないですよね。「G700」の時代からお客様も何年も求められてきたシステムですし。競合メーカーもこれと似たようなものは提案されてきましたが、ここまでのエクスペリエンスは実現できていないと思うのですね。これを実現するには、非常に大きな技術的な壁を乗り越えなくてはならなかったので、単に去年は実現できなかったということです。
――その技術的な課題とはなんでしょうか?
Pate氏:電磁界を作るということに関係するのですが、スマートフォン向けのシステムだと非常にシンプルで、フォーカスすべきエリアというのは小さくて、そこにデバイスを載せればいいという形だと思います。ただ、その時に、デバイスを数ミリでも動かしてしまうともう充電がストップしてしまうのです。
マウスでの課題は、プレートエリアとして十分な広さを確保できる電磁界のフィールドを作るということと、継続的にチャージングができるということ。それから分散された大型のフィールドの中でも十分な強さのパワーが放出できるという3点でした。マウスはライトとかセンサーとかで、絶えず電力を消費しますので、充電するためにはそれ以上の電力を作らなければいけない。
あとは物理的な話もあります。マウシングサーフェスとして、厚さを十分に薄くするということですね。メカニカルデザインと、素材の選択と製造の工程といったところで課題を克服しなければいけなかったのです。薄いながらもチャージングアンテナを守るだけの十分な厚さはなければいけないと。
いま言った課題は単独でも十分に大きな課題なのですが、これがお互いに組み合わさると、我々にとってはもっと課題が増幅するわけですね。
――確かにそうですね。開発はローザンヌですか?
Pate氏:ほとんどはそうです。メカニカル設計は台湾でやっているので、台湾でも結構やっています。
――ローザンヌと台湾の合作なんですね。
Pate氏:「G900」もそうです。アンテナやワイヤレスの部分はローザンヌですが、メカニカルな部分は、ほとんどがアイルランド、一部台湾です。ゲーミングに関しては、スイスにメカニカルエンジニアはいないので、私たちのエンジニアリングチームは世界中に分散しています。例えば、ソフトウェアはアメリカだし、ファームウェアはローザンヌと台湾、それからエンジニアリングはやはりローザンヌと台湾でして、それから機械工学のところは中国、アイルランド、台湾です。
――ワイヤレスチャージングシステムは、昨年の目玉商品だった「G900」に勝るとも劣らないほど非常に画期的な製品だと思いますが、技術的なチャレンジはどちらのほうが大きかったですか?
Pate氏:「G900」はいろんな世代が培ってきた繰り返しの結果できたものなのですね。例えば私たちの最初のワイヤレスマウスは、1995年にリリースした「RFワイヤレス」というものですが、そこからずっと培ってきた知識を次の世代のものに組み込んでという形で開発してきました。
ですから適切に設計されていれば、ワイヤレスマウスでもワイヤードマウスよりも早く処理ができるということは、非常に大きな達成事項だと思っています。ただ、アイデアを実行に移すということ、そしてそれに伴うすべての努力を考えると、ワイヤレスチャージングシステムのほうがより達成感が大きいのかなと思います。「G900」にライトスピードのものがすべてあるし、性質は違うけれどメカニカルでも大きなチャレンジを乗り越えたということもあります。でもそういうことを考えると、全体としてみればワイヤレスチャージングシステムのほうが大きな達成感があるのですが、お子さんが複数いたら「どちらのほうが好きか?」という質問みたいに思えるくらいにはあまり差がありません。
――これはワイヤレスマウスにとって、究極的なソリューションだと思いますが、将来的にはすべてのゲーミングマウスが対応すると考えてもいいのでしょうか?
Pate氏:将来のプランについて私からすべてを口にできるわけではないのですが、基本的な考え方として、100ドルのチャージングシステムと100ドルのマウスが必要ということを考えると、これがすべてのお客様をカバーできるわけではないと思います。単三電池で駆動する「G602」に対するニーズは今後も存在し続けるのではないかと思います。
特に家の中で自分専用のスペースでゲームができるという人も限られていますし、デスクトップPCでゲームをやっている人がすべてではなくて、ノートPCで遊ぶ人もそれなりにいるでしょうし、そうするともっと小さなマウスを好む人もいるかもしれない。ですからこれは非常に画期的なソリューションだとは思いますが、ただすべての人が欲しがるかというとそうではなくて、別のニーズを欲する方もそれなりにたくさんいると思います。
――なるほど。「G900」や「G403」が「POWERPLAY」に対応する一方で、今の仕様のまま継続するモデルもあるということですね。
Pate氏:これは決まったわけではなく、計画があるわけでもないのですが、私の予想でいうと、今後新しいマウスが出てくる中で、一部は「POWERPLAY」に互換性があるでしょうし、一部はそうではないものが発表されることになると思います。
ローセンシ対策、プロゲーマー対応、キーボードやヘッドセットなどへの転用の可能性は?
――ワイヤレスチャージングシステムの使い方についてですが、プロゲーマーをはじめPCゲーマーの中には、“ローセンシ”と言われる、大きくマウスを動かしながらプレイする層がいます。そういう人からすると、「POWERPLAY」はサイズが小さすぎると思うのですが。
Pate氏:それは理解しています。そういったゲーマーに向けた問題をどうやって解消するか、いま検討していまして、チャージングフィールドそのものをもっと大きくするというのは、非常に大きな難しさを伴うと思います。チャージングシステムを大きくできれば、それはクリエイトな素晴らしい事なのですが、それをやろうとするとさらに多くの課題を解消しなければいけないのです。大きくするためには技術的な問題、それから製品としての問題がたくさん出てくきます。
今回我々は2つの理由から、このサイズを選んでいます。1つはフィールド全体でチャージングシステムが実現できるという実現可能性の部分です。それからほとんどのゲーマーの人たちを対象にリサーチをかけまして、ゲームをするためのサーフェスエリアと自分のデスク上で利用可能なサイズを調査しました。
ローセンシを多用する「CS:GO」ゲーマーのような人たち向けの、ソリューションはぜひとも見つけたいところなのですが、今はそれで何かお話できるようなことは持ち合わせていないです。かなりローテクなソリューションになるのではないかと思います(笑)。
――それはベースがすっぽり収まるような3ミリ厚のへこみが付いた長いマウスパッドでしょうか?(笑)
Pate氏:そういう可能性もあると思います(笑)。
――ローセンシについて質問したのは、私は5月にシドニーでIntel Extreme Mastersという世界的なeスポーツイベントを取材したのですが、そこで「CS:GO」の試合を見たんですね。何人かのプロゲーマーが、キーボードを斜めにおいてモニターの前にスペースを確保して、大きなマウスパッドを置いてプレイしていました。それで印象に残っていたんです。
Pate氏:そのトーナメントは私もライブで見ていました。私たちはオーストラリアチームのスポンサーをしていて、優勝はできませんでしたが、予想をはるかに超える成績を残してくれました。オーストラリアの「CS:GO」チームはそんなに強くありませんが(笑)。
「POWERPLAY」は340×280×3mmぐらいですが、「LoL」と「DoTA」のチームはそのサイズを通常使っています。ですから今は「G900」を使っているのですが、「POWERPLAY」と「G903」に乗り換えるのではないかと思っています。
我々も大きなマウスパッドとして「G640」があります。460×400×3mmくらいの大きさで、そういった大きいものも作っているし、必ずとは言い切れないですが、プロチームについては多分アダプターみたいなものを用意して大きなマウスパッドにも対応すると思います。
――ちなみにこのソリューションはキーボードには使えないのでしょうか? キーボードのワイヤレス化のニーズもありますよね
Pate氏:キーボードの消費電力は、ライティングがなければ、マウスよりも全然低いので、単三電池で18カ月間平気で使えると思います。バックライトなしならば、数学的にはこれで十分な電力を提供できるはずだと思います。バックライトありだと、ちょっと無理かなと思います。現時点でキーボードにバックライトを提供するのに、USBポートをほぼフルに使っているという事情がありますので。「POWERPLAY」にはUSBポートほどのアウトプットパワーがないので、USBのポートから500mAで出てきた出力を、ワイヤレスシステムのほうにそのまま全部が変換できるわけではなく、かならず損失が起こります。ですから効率性を考えると、今のUSBでは出力が低いから無理かなと思います。
といった具合でキーボードについては、テクノロジーに適正な設計になっていないという問題もありますし、そもそも「POWERPLAY」はマウスに向けた設計になっています。キーボードをチャージングするデザインはおそらくそれとは違うものになるのではないかと思います。興味深い質問で、それについていま検討しましたけれども、どういうのが正しい答えなのか今すぐには答えられないです。
――ちなみに技術的に対応しているマウスパッドの厚さって何ミリくらいなのでしょうか? ベースの上にマウスパッドを置いて使うわけですけれど。理論上は何を置いても使えますよね?
Pate氏:2mmのハードパット向けに最適化しておりまして、それよりももっと厚いものをプロトタイプでやったこともあるのですが、家に充電効率を測る機器がなくて、まだ十分なテストができていません。ぜひ色んなマウスパッドで検証してみていただければと思います。
――ちなみに私は、ゲーミングヘッドセットにG933を使っているのですが、やはり「G900」のように、すっとUSBケーブルを差し込めるチャージングケーブルがないので、無線で充電できたらいいなと思うのですが。
Pate氏:おっしゃる通りだと思います。次の世代の製品を考えるプロダクトマネージャーという仕事をすることもあるので、次の世代を考えるときにそのことも考慮するようにインプットしておきます。どうなるか今すぐには言えませんが、「G900」のチャージングケーブルのデザインはすごくいいのですが、ヘッドセットにどうフィットさせるかというのは別の考え方が必要だと思います。頭の側面が結構近いので、ここに大きいものが来てしまうと不快な感じがするので、そのまま持ってくるのはどうかなと。見栄えが良くないという人もいるでしょうし、ヘッドセットはウェアラブルデバイスなので、理想としてはワイヤレスチャージがあったほうがいいというのはおっしゃる通りですね。
――最後に日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
Pate氏:かなり長くなりますがよろしいですか。一部は先ほど来申し上げている通りですが、このワイヤレスチャージングシステムで一番重要なのはワイヤレスゲーミングの中で多くの人が考えている最後の障壁を取り払ってくれるということなのです。「G900」はご存じの通り、プログレードの本当のワイヤレスゲーミングが実現できています。
LogitechがスポンサーをしているCloud9のメンバーには、もう1年以上も「G900」を使ってくれています。このほかにも「CS:GO」、「LoL」、「オーバーウォッチ」などで「G900」を使ってくださっているチームがたくさんいて、チャンピオンになった人もいます。我々のプロダクトはチャンピオンを輩出できるような領域に来ているわけです。
「G900」は、ワイヤードのマウスに比べてモーションでもクリックでも勝っているということは資料でお見せしていると思います。それから現実の世界でも、RFのシミュレーション世界でも、ノイズに対する耐性や耐久性が非常に強いということもご覧になっていただけたかと思います。私たちのワイヤレステクノロジーであるライトスピードは今マーケットにある中で一番最速の技術が実現できていると思っています。
そしてワイヤレスチャージングシステムで「バッテリーライフに対する恐れ」という最後の懸念事項を取り払うことができたと思います。ですからワイヤレスチャージングシステムさえあれば、ワイヤレスについて一切心配しなくてもよくなります。本当に使い始めるまではそこを心配しなくてもいいというメリットをたぶん実感してもらえないかもしれないですが、ぜひ試していただければと思います。
――ありがとうございました。