レビュー
「メタファー:リファンタジオ」レビュー
王道ファンタジー世界でも“アトラス節”全開! RPGオタクを沼らせる「アーキタイプ」システムの自由度が計り知れない
2024年10月8日 10:00
- 【メタファー:リファンタジオ】
- 10月11日 発売予定
- 価格:9,878円~
アトラスは10月11日、全く新しいRPGシリーズとして、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/PC用RPG「メタファー:リファンタジオ」を発売する。
アトラス作品といえば「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズを代表に、ダークな部分を含むエッジの効いた世界観やストーリーを展開しながら、近年ではコマンドバトルながらスタイリッシュなバトルUIやシステムが目を惹く独自路線の面白さが特徴的だ。
本作「メタファー:リファンタジオ」はその流れを組むタイトルでありながら“王道ファンタジー”のような世界観という既存シリーズ作品にない切り口と、随所に“アトラス節”を感じながらも新タイトルらしい独自システムが数多く用意されている。
そんなアトラスの新たな挑戦となる本作を、今回は一足早く実際にプレイすることができたので早速紹介していきたい。アトラスファン、RPGファン、ダークファンタジーファンなど、様々なプレーヤーにお勧めできる圧巻の面白さだったのでぜひ気になる人は参考にしてほしい。
王道ファンタジー×アトラス! 未知の合体で凄まじいダークファンタジーが誕生……!
本作の舞台となるのは剣と魔法、武力と権力、宗教・王政・種族差別などがバリバリに押し出された所謂“王道ファンタジー”的な世界だ。
8つの種族の人々が暮らす「ユークロニア連合王国」では、国王「ユトロダイウス5世」の嫡男が謎の集団の襲撃を受け「死の呪い」に穢される事件が発生する。そこから数年後となるゲーム本編の時間軸では「ユトロダイウス5世」自身が同じく襲撃事件で命を落とす場面から物語が始まる。
王位継承権を持つ存在が唐突に死んだことで国と民は混乱し、上位層の人間たちは玉座を狙って暗躍しているなど“王道ファンタジー”の中でもダークな側面が世界観として強く描かれているのが特徴的だ。
そんな初っ端から血生臭い描写が飛び交う世界で、消息不明となった王子と強い関りを持っていた青年がプレーヤーの分身であり本作の主人公だ。世界を構成する8つの種族のどれにも属さない9つ目の種族“エルダ族”である主人公は「危険な魔法を受け継ぐ穢れた種族」として今に至るまで迫害を受けており、元々暮らしていた村を焼き払われた過去を持つ。
主人公は「死の呪い」を受け臥せってしまった王子と幼馴染であり、王子の呪いを解く”特命”を軍内部に潜む同士に届ける命令を受けて「ユークロニア連合王国」を訪れることとなる。
プレーヤーの分身となる主人公だが、ゲーム中でも喋るシーンが比較的多く、意思や考えがハッキリしているのでキャラクターがしっかり立っている印象だった。
そして本作の物語で重要となるのが「ニンゲン」と「アーキタイプ」の2つの存在である。
本作における「ニンゲン」とは正体不明の怪物のことを差しており、魔法の源である「マグラ」を大量に抱え込んだ恐ろしい異形の姿で人々を襲う恐怖のシンボルとして描かれてる。その見た目はまさに化け物であり、アトラス作品のダークテイストが存分に発揮された姿でプレーヤーに牙を剥いてくる。
なぜ人々を襲うのか、生物としてどんな存在なのか、ゲームをプレイしている我々“人間”と同じく「ニンゲン」と呼ばれることにどんな意味があるのか……非常に惹きの強い存在となっている。
もうひとつの重要な要素「アーキタイプ」は、言わば脅威に立ち向かうための主人公達の武器である。
「アーキタイプ」は密命を届ける中、命の危機に瀕した主人公が最初に覚醒させた力であり、その身を英雄の姿にも似た何かに変身させられる。この世界では魔法を扱う際に「魔道器」と呼ばれる道具が必要になるのだが、「アーキタイプ」にその身を変えた者は魔道器に関係なく魔法を扱い、超常的なパワーを発揮できる。
「アーキタイプ」を覚醒させた後に出会える謎の男「モア」によれば“この世界の本来の魔法”とのことで、導かれるように主人公の仲間たちもその力を覚醒させることにも意味があるようだ。
これら「宗教・権力による玉座争い」と「“ニンゲン”という異形と“アーキタイプ”という未知なる力の謎」が複雑に絡み合ったストーリーが本作の魅力だ。
物語の冒頭では、密命の内容が「王子の死の呪いを解くためにルイを暗殺する」ということだと知った主人公達が暗殺を決行するのだが失敗に終わり、その際に同時に発動した「王の魔法」により民衆の支持で次期王を決める……言わば政(まつりごと)に巻き込まれたりなど、先の読めない怒涛の展開が後を絶たない。
目下の敵となる「ルイ」が世界を改革するために「ニンゲン」を用いたマッチポンプな支持集めを行なっていたり、現状の種族差別が色濃い世界を維持したい物知り顔の宗教派閥「惺教」陣営が怪しく暗躍していたりなど、本作の世界観ならではの展開が数多く用意されているのが面白い。
「アーキタイプ」を駆使できる主人公たちがこの地獄をどのように改革していくのか、様々な謎に迫りながら旅の中で出会う気高き魂を持つ人々と絆を結ぶストーリーが楽しめるのだ。
また、本作をオススメする上で外せないのが随所に“アトラスらしい”ダークな要素とが垣間見えるところだ。
一例を上げるなら“人の命が簡単に失われる緊張感のある世界”だという点が最も印象強い。これは文字通りモブだろうが仲間だろうが油断していたら簡単にひどい目に合うし、バンバン命を落とす。他にも自分が被害を被りたくないから“あえて差別を無視する”といった妙に生々しい差別描写があったり、処刑される罪人を見て興奮する人々が描写されたりなど、ある種異世界だからこそできるダークテイストが本作では描写されているのが新鮮だ。
現実世界をベースにした「ペルソナ」シリーズや大体すでに滅んでることが多い「真・女神転生」シリーズにはない、人間の負の部分の描写が本作の魅力につながっている。
さらに、作品タイトルである「メタファー」に付随するような謎を随所に匂わせているのも面白いポイントだ。
劇中では主人公が持つ禁書となった小説に我々プレーヤーが住む現実世界のことが載っており、現実世界がゲーム世界から見た異世界の話「幻想小説」として語られているのだ。争いも魔法もない世界を羨んだり、高層ビルや明かりのなくならない街に想像を膨らませ、国のトップが民の票によって決まるシステムに驚愕したりなど“ゲーム世界から見てファンタジーな世界”といった形で現実世界が描写されている。
他にもゲーム開始時に操作する主人公の名前とは別に“プレーヤー自身の名前を聞かれる”など、王道ファンタジー世界を冒険するだけの作品には収まらなそうな雰囲気を本作は常にまとっている。
アトラス作品にはどんでん返しの多いシナリオがこれまでも数多く存在したので、本作にもそんなプレーヤーの予期しないトンデモ展開が待ち受けているかもと期待して良いだろう。
「アーキタイプ」周りのシステムの独自性が凄い!
主人公達が行使する未知の力「アーキタイプ」はゲームシステム的にも今までにない存在となっている。
「アーキタイプ」は主人公達が使用するスキルや装備品、バトルスタイルを司る存在となり1人に1つしか装備できない。装備したアーキタイプによって、使用できるスキルや装備品が変わるといったイメージだ。
「アーキタイプ」は1人1つしか装備できないが、一度解放した「アーキタイプ」なら、メンバーの誰でも装備できる。主人公専用「アーキタイプ」みたいな「シーカー」も別のキャラクターが装備できるし、何ならパーティー内に「シーカー」を装備したキャラクターが2人存在しても良いのが面白い。
そしてキャラクターのステータスは「アーキタイプ」と異なるという点も奥深い要素となっている。レベルアップする毎にキャラクターはそれぞれステータスがアップしていくのだが、それと同時に装備している「アーキタイプ」も経験値を得て「ランク」が上昇していく。
アーキタイプのランクが上昇するとステータスのボーナス値が増えたり、新たなスキルを獲得できたりと様々な恩恵があるが、キャラクター自身のステータスとは別扱いのステータスなのだ。
このシステムの面白いところは非常に自由度の高いビルドが可能な点だ。同じキャラクターでも、プレーヤーが装備させるアーキタイプによって性能が全然異なる。
例えば最初に仲間になる「ストロール」は、「ファイター」が初期「アーキタイプ」なこともあってか力の伸び値がいいため、物理攻撃を得意とする「アーキタイプ」との相性がいいことがわかる。その方針に沿って「ファイター」や「モンク」を付けて成長させていくこともできれば、序盤の魔法攻撃アタッカーとして「マジシャン」を装備させたり、「ヒーラー」を装備させて回復役に回すことだってできるのだ。
さらに主人公に関しては、レベルアップの際に、上昇させるステータスを自身で選べるようになっているので、ハチャメチャに自由なビルドが可能だ。
「アーキタイプ」による戦術の変化と、キャラクター毎の特徴を上手く活かして自分なりにパーティーを成長させていくことが本作の面白味の1つとなっている。
他にも、アーキタイプは特定のランクまで育て上げた上で条件を達成すると上位の「アーキタイプ」を装備できるようになったり、他のアーキタイプで習得したスキルをいま装備しているアーキタイプにいくつか引き継げるシステムが存在していたりなど、かなり奥深いビルド要素となっていた。
パーティーの方向性はプレーヤー次第で変化し、ダンジョンやボスのギミックに合わせて装備する「アーキタイプ」を変化させるといった芸当も当然可能なので、非常に自由度の高いゲーム体験が味わえる。
バトルはアトラスお馴染みの「プレスターンバトル」! 隊列システムや「ジンテーゼ」など独自のシステムも光る
物語のネタバレは極力したくないのでこの辺にしておき、続いてバトルシステム周りを紹介したい。
本作のバトルシステムは一部の「真・女神転生」シリーズではお馴染みの「プレスターンバトル」が採用されている。味方と敵で行動が分けられたコマンドバトルをベースに、パーティーメンバーの人数に応じた「プレスアイコン」を消費して行動するシステムだ。
特徴的なのは、敵の弱点属性を突いたり、あえて次の味方に行動をパスすることで「プレスアイコン」の消費を半分にできたり、逆に敵に耐性のある属性攻撃をしてしまったり、攻撃をミスしたりすると「プレスアイコン」が2つ消費されるなど、選択した行動によってキャラクターの行動回数を変動させる要素が随所に存在しており、奥深い戦略を実現しているところだろう。
そして本作のバトルは「プレスターンバトル」が基盤でありながら、既存作品とは全く異なる要素がいくつも存在している。
まず重要になるのが、ダンジョン攻略の際に「アクションパート」と「コマンドバトルパート」の2つが存在しているという点だ。本作はダンジョン探索中にフィールドに存在する敵エネミーに、アクション要素で攻撃を行なうことができ、攻撃によってエネミーの「ブレイクゲージ」をゼロにすれば敵全員を気絶させた有利な状態でコマンドバトルを開始できるのだ。
ただし、アクションパートでは敵からも攻撃を仕掛けられることもあり、攻撃を受けてしまうと逆にプレーヤー側が不利な状態でバトルが開始してしまうので注意が必要となっている。
アクションパートを行なわず、最初からコマンドバトルに移行することもできるので、万が一でも失敗できない相手の時は無理をせずにバトルを仕掛けることも戦略になるのだ。
コマンドバトル時にも本作独自の要素が戦略性に深みを持たせている。特に大きいのが「隊列」と「ジンテーゼ」の存在だ。
本作のバトル中は味方キャラクターの位置を示す「隊列」の概念が存在し、「前列」にいる場合は近接攻撃の威力が上昇するメリットがあり、「後列」にいる場合は敵から受けるダメージを減らす代わりに自分の近接攻撃の威力が下がるという効果がある。「隊列」は各キャラクターの番が回ってくるたびに何度でも変更できるため、バトル中は自由に前後を入れ替えながら戦うことができる。
実際にプレイしてみた感覚だと、最初は「近接攻撃を行なう際にだけ前に出せばいいや」と思っていたのだが、近接攻撃の威力やクリティカルの存在から、近接攻撃を行なうメリットも大きいバランスなこともあって前列をキープする場面も多くなった。逆に敵から強力な攻撃を受けそうなタイミングが示唆されたり、弱点属性を突いてくる敵が現われた際には戦略的に後ろに下げるなど、状況によって毎ターン前後を入れ替えることが多かった印象だ。
他にも、敵からの攻撃を集中させるスキルを使いながら後ろに下げることでダメージリスクを減らすなど隊列を意識したコンボもあるので、バトルの戦略の幅が広がる非常に楽しい要素となっている。
もうひとつの取り上げたい独自要素「ジンテーゼ」は、言わばキャラクター同士の合体技である。「プレスアイコン」を複数消費しパーティーメンバーの様々な組み合わせで強力なスキルを発動することができる。
「ジンテーゼ」の発動条件は特定の「アーキタイプ」同士が揃っていることだったり、特定のスキルを覚えたキャラが揃っていることだったりと様々で、その種類は無数に存在していた。
合体技と聞くと頻繁には発動できない奥義のような印象を受けるかもしれないが、本作の場合では消費するHP・MPさえ揃ってればバンバン発動できる仕様になっているので、「ジンデーゼ」を基本的な戦略として組み込むことができ、雑魚戦などでも積極的に発動していくことになる。
通常のスキルと「ジンテーゼ」を打ち分けることで敵を戦略的にうち倒し、キャラクターを成長させて新たな「ジンテーゼ」を見つけていくことも本作の魅力の1つなのだ。
これらの新要素に加えて当然ボス戦やイベント戦などでは特殊なギミックを用いる強敵たちも登場する。プレーヤーの手札が十分な分、敵もしっかり強力に作られているのでやり応えのあるバトルを楽しめる。
アトラスらしいスタイリッシュで戦略性の高いコマンドバトルを本作でも味わえるのだ。
仲間たちと過ごす刺激的なファンタジーライフ! ゲームの流れは近代の「ペルソナ」シリーズに近い?
次に本作のゲーム全体の流れについて紹介していこう。
本作のゲームの流れは近年の「ペルソナ」シリーズに近く、“日にちの流れ”の概念がある世界で期間内にストーリーに沿った特定のダンジョン攻略やボス攻略を行なっていくシステムとなっている。
限られた時間の中でキャラクターを育成しながら迫る脅威と戦い、時には仲間や「支援者」たちと交流して絆を深めたり、街で発生するイベントを駆使して主人公の人間的ステータスである「王の資質」を高めたりなど、プレーヤーの自由にこの世界を謳歌できるのだ。
「支援者」たちとの交流を深めることで「アーキタイプ」の能力が成長したり、主人公の「王の資質」が育つことで新たな出会いや選択肢が生まれるなど、日常パートがゲームに影響する範囲は非常に広いので、日常の生活を無駄にすることなくダンジョン攻略とバランスを取りながら毎日を過ごすことが重要だ。
そもそも本作の場合は新しい「支援者」と繋がることが新たな「アーキタイプ」を見つける切っ掛けになるため、支援活動は欠かせない要素と言える。
ファンタジー世界ならではの日常要素が数多く見受けられるのも本作の大きな魅力だ。
攻略対象のダンジョン以外にもこの世界には様々なダンジョンが存在しており、冒険はもちろんながら特定のモンスターや「ニンゲン」の討伐依頼などを受けられる。
他にも混沌渦まく本作の世界では困っている住人を助ける「サブクエスト」も多数存在しているので、日常パートでやることがなくなるという事態には早々ならない。
全く新しいテイストなのに“アトラス節”だらけで安心のクオリティ!
今回はストーリー序盤となる部分をベースに本作を紹介したが、所々で既存シリーズ作品を彷彿とさせる要素がありながらも根幹は独自性の塊だったことがおわかり頂けたかと思う。
アトラス作品らしいダーク感と戦略性の高いバトルシステム、予想が付かないシナリオなど見所は沢山備わっているので、「ペルソナ」、「真・女神転生」ファンはもちろんながら全RPG好きプレーヤーにも強くお勧めできるタイトルとなっていた。
現在本作の体験版が各プラットフォームにて配信されているので、気になる人はぜひそちらもプレイしてみてほしい。発売までもう間近、今後の情報も見逃せない。
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
※ゲーム内容は開発中のものです