レビュー
「サイレントヒル 2」レビュー
真新しさと原作リスペクトが共存した、すべてのプレーヤーが納得の神リメイク作品!
2024年10月4日 16:00
- 【SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)】
- 発売元:コナミデジタルエンタテインメント
- 開発元:Bloober Team
- 10月8日 発売予定
- 価格:
- 8,580円(スタンダードエディション)
- 9,790円(ダウンロード版デラックスエディション)
- CEROレーティング:C(15才以上対象)
コナミデジタルエンタテインメントは2001年発売の「SILENT HILL 2」をフルリメイクしたプレイステーション5/PC用サイコロジカルホラーゲーム「サイレントヒル2」を10月8日に発売する。
コアなファンから熱烈な支持を得ていたシリーズながら、長期にわたって展開が止まっていた。しかし、今年の2月に完全新作の「
「SILENT HILL: The Short Message(サイレントヒル:ザ ショートメッセージ)」が配信され、シリーズが再び動き始めた。
再始動2作目となる今作は、2001年にプレイステーション2でリリースされ、シリーズの中でも屈指の人気を誇る「サイレントヒル 2」をフルリメイクした作品である。
リメイク作品というのは、コアなファンがついているほど賛否が分かれがちではある。今回エンディングまでプレイしてわかったが、“新規プレーヤーへの遊びやすさ”と“昔からのファンが納得できる原作リスペクト”の両方を強く感じられる仕上がりとなっていた。
新しく生まれ変わった「グラフィックス」や「探索とアクション」。そしてオリジナル版の良さを残した「演出」や「ストーリー」など、本作の気になる内容をお届けしていこう。なお、今回のレビューではPS5版をプレイした。
グラフィックスと操作性が現代的に進化! そして恐怖度と没入感も段違いに
本作は主人公「ジェイムス」が、死んだはずの妻「メアリー」の行方を追って、霧に包まれた不気味な街・サイレントヒルを探索していくアドベンチャーゲームである。街を徘徊する危険なクリーチャーとの戦闘や、難解な謎解きを突破しながら物語の真相へと近づいていくというゲーム内容だ。
原作から20年以上が経っていることもあり、リメイク版のグラフィックスはオリジナル版とは比べものにならないほど圧倒的に進化している。
ジェイムスをはじめとする登場キャラクターだが、原作では影を纏っておりどこか人間離れした雰囲気があった。だが、リメイク版では実在の俳優をもとにキャラクターデザインが刷新されており、グラフィックスの高さも相まって“現実にいそう”と思えるリアルなビジュアルとなっている。
俳優の顔の動きもキャプチャーしており、怒りや悲しみなど、キャラクターが見せる表情も“生の人間味”があるものとなっている。
ゲーム内で、謎の穴や便器の中に手を突っ込むシーンがあるのだが、そこで見せるジェイムスの不快に満ちた表情は“そりゃあ、こんな顔にもなるよね”と感情移入してしまう。
さらにリメイク版では日本語音声も追加されている。プレイ前は「いやいや、『サイレントヒル』シリーズで日本語は無いでしょ」と厄介ファンのような気持ちでいたが、一度日本語ボイスを聞いてみるとどのキャラクターもイメージ通りの一言。
馴染みのある言語、そして表情の動きの豊かさも相まってイベントシーンではより深く感情を読み取れるようになっている。
グラフィックスだけではなくゲーム的な部分でもかなりの変化がある。昔のホラーゲームはあえて快適ではない操作性で恐怖を煽るために、原作では左右入力で旋回、前と後ろで前進後退といういわゆるラジコン操作を採用していた。
今回リメイク版との違いを再確認するために久々に原作を遊んでみたのだが、走りながら道を曲がることすらも苦戦させられ、プレイしていてもどかしさが凄まじかった。昔はラジコン操作のホラーゲームは「サイレントヒル」以外にも結構あったので当時は全然気にならなかったが、令和の時代に見てしまうとお世辞にも褒められる操作感とは言い難いかった。
本作ではそんなクセの強いラジコン操作を撤廃し、入力した方向にキャラが動くという直感的な操作に変更されている。後に詳しく触れていくが、操作が快適になったことでクリーチャーとの戦闘も格段に面白くなっている。原作再現度よりもプレイの快適さを取ったのは本当に英断である。
視点が見下ろし型の固定カメラからキャラクターの肩越し視点に変更されているのも大きなポイント。プレイ前は画面の見え方が変わる程度だろうと思っていたのだが、実際はゲームのプレイ感にも大きな影響を与えていた。
原作にあった距離をやや引いたカメラの際には、落ちているアイテムなどが結構見えにくかったのだが、今作ではカメラの距離が近くなったことと視点を自由に動かせられるようになったことでアイテムの取り逃しなどがほぼ起こらないのが地味に嬉しい。
さらにプレーヤーの視点に近くなったことで臨場感と没入感も段違いに上がっている。本作ではアパートや病院、刑務所といった不気味すぎる場所を探索していくことになるのだが、建物内はどこも暗くライトの光だけを頼りに進んでいく。静まり返った暗闇の中を歩いているだけで怖く、自然と足取りが重くなってしまう程だ。
カメラを動かせば全周囲を見渡すことができるが、基本的に視認できるのは正面のみで背後や側面は完全に死角になっているのも恐怖心を煽ってくる。クリーチャーが近くにいるとラジオからノイズが流れて知らせてくれるのだが、これが鳴るたびにプレーヤーを嫌な気持ちにさせる。
視認していなくてもクリーチャーが近くにいればノイズで教えてくれるのなら安心――と高を括っていると怖い目を見る。基本的には徘徊しているクリーチャーはラジオが感知してくれるのだが、クリーチャーが意図的に物陰に隠れている場合はノイズが発生しなくなるのだ。
ノイズが無いからここは安全地帯だと油断しているときに、視線を向けた先にクリーチャーが潜んでいるのを発見した瞬間は思わず声が出るほどビビらされた。
戦闘&探索も新たに生まれ変わり、ゲーム性が格段に増した
「サイレントヒル」シリーズは、基本的には戦闘部分にそれほど重きを置いておらず、クリーチャーとの戦闘を楽しんでいるというプレーヤーはそれほど多くはないと思う。
本作の戦闘も、あくまでゲームを盛り上げるための要素の1つという扱いに変わりはないが、それでも原作と比べるとかなりアクション性が強くなり、緊張感のある戦いが楽しめるようになっている。
これまでクリーチャーとの戦いは、とにかくダッシュで近づいて木材で殴りまくり、ダウンしたら一撃必殺の蹴りを入れて終了という単調なパターンだった。だがリメイク版ではクリーチャーの行動パターンが複雑になっており、こちらの攻撃を俊敏にかわしたり、攻撃を受け止めてはねのけてくるなどの行動もとってきて一筋縄ではいかなくなっているのだ。
慎重に敵との間合いをとって攻撃し、こちらの攻撃を食らいながら反撃をしてくる動きが見えたら新たに追加された回避アクションを駆使して敵の攻撃を避ける。空振りの隙をついてまた攻撃を食らわせるといった、ヒット&アウェイの戦い方が基本になってくる。
すぐに仕留めたいが故に一度に何発も攻撃をお見舞いしたくなるが、欲張って連打で攻撃をしていると反撃で痛いダメージをもらってしまう。逆に相手の動きを見ずに一発殴ったら無条件で回避行動で距離をとってしまうと、敵が怯んでいた際の追撃チャンスをみすみす逃して戦況が不利になってしまうので、敵の行動をしっかり見て攻撃と回避を的確に使っていくのが大事になる。
従来のクリーチャーも多彩な動きをして手強くなったが、新たに追加された亜種系のクリーチャーはさらに厄介な強敵となっている。ゲームをプレイしていて最初に遭遇するはライングフィギュアの亜種。
見た目は通常と多少異なり、黒ずんだ色になっているのが特徴的。ライングフィギュアは毒液を吐く基本攻撃だが、亜種になると毒液の吐き出し方が変化する。
さらに驚かされたのが、亜種のライングフィギュアは絶命する際に“毒霧をまき散らして自爆する”という特徴をもっている。そんなことを知らない初見では目の前で急に爆発されて、トラウマと大ダメージのダブルパンチをもらった。
他にも、鉄パイプからナイフに武器を持ち替えて殺傷能力が上がったバブルヘッドナースの亜種や天井や壁に張り付いて襲い掛かってくるスパイダーマネキンなど、未知のクリーチャーによる恐怖が襲い掛かるのも本作の見所の1つである。
貧乏性の筆者のプレイスタイルは、弾薬の数に限りがあるハンドガンやショットガンはザコ戦ではほぼ使わず、接近武器1本で撲殺に徹していた。
しかし1対1の戦いならばなんとかなるのだが、2体、3体と複数のクリーチャーがまとめて襲い掛かってくるようになると近接武器だけではかなり苦しく、弾薬を節約するだけダメージを受けて回復アイテムを消費していき、一時は回復が底を尽きて“詰みの一歩手前”の状態まで追い込まれた。
起死回生の手としてゲーム中盤からはハンドガンを解禁したのだが、結果から言うと“早い段階からケチらず使っておけばよかった”という結果であった。
今作からは「エイムシステム」が実装されたことでスティック操作で特定の部位を狙って射撃できるようになっている。クリーチャーの種類によっては脚などの特定の部位を撃つと態勢が崩れ、その隙に接近して殴りまくるという弾薬の消費を抑えつつ安全に戦うことができた。
戦闘部分は明確に新しくなったが、探索などの面もしっかり現代的な形に進化している。
「トラバーサルアクション」の追加で、窓を飛び越えて屋内に出入りすることや、特定の穴などは通り抜けられるようになり探索の幅に広がりを感じた。
また、壁を壊して新たな道を切り拓いたり、車や棚の窓ガラスを破壊することもできるようになっている。車の中からは弾薬や回復アイテムが出てくることもあり、車を見つけては窓を破壊して回るワクワクの車上荒らしプレイを存分に楽むことができた。
「サイレントヒル」シリーズのウリといえるのが難解な謎解き要素である。単純にアイテムを使って仕掛けを作動させるものから、ヒントを頼りに特定の番号を入力する暗号解読的きなものまでさまざまな謎が用意されている。
本作は敵やアイテムの配置の変更だけではなく、謎解きの内容の一新や原作には無かった新たな謎解きもかなりの数が追加されている。原作を遊んでいて謎解きの答えがわかっているプレーヤーへ“簡単にはクリアさせんぞ”という開発からの強い意志を感じた。
ゲーム性は新しく、ストーリーと演出面は原作を最大限にリスペクト
「サイレントヒル」シリーズはジャンルとしてはホラーゲームであるものの、怖さを楽しむだけではなく、謎に満ちた物語を紐解いていき徐々に真相に近づいていくのが醍醐味である。
そういったゲームの性質上、ストーリーの展開や演出の見せ方などは非常に重要な要素で、原作はシリーズ最高傑作と名高い「サイレントヒル 2」ともなれば、ゲームをプレイしていて少しの違和感や改悪点などがあったら、ファンからは失敗リメイクと厳しく評価されてしまうだろう。
しかし、本作の開発を務めたポーランドのゲームスタジオ「Bloober Team」はシリーズ愛がとても深く、それがプレイしていて伝わってくるレベルであった。
イベントでのキャラクターのセリフ回しなどは洗練された形に変更されているが、ストーリーやイベントの大筋となる部分は原作そのまま。イベントシーンのカメラ割りなども忠実に再現しており、熱心なファンであればあるほど唸らせる作りになっている。
原作からの変更点についてもファンの心を掴む粋な計らいが盛り込まれている。ゲームで最初にクリーチャーと戦闘になるシーンで例を挙げると、原作では廃トンネルの中でクリーチャーと遭遇するのだが、本作では民家の中での戦闘に変更がなされている。
廃トンネル自体はしっかりと残っており、そういった原作では重要だったが今作では特に何も起こらなくなった場所を調べると“既視感”のような演出が入るのだ。
新規プレーヤーには“原作ではここで何かが起こっていたのか”というような想像を掻き立て、原作ファンならば“あのイベントが発生しなくなっている”というようなノスタルジーな気持ちにさせてくれる。
この既視感演出があることで、ただ“原作から変更しました”ではなく、“ここで起こったイベントや仕掛けがどう変わっているのか”というワクワク感を与えてくれる演出はさすがのBloober Teamと感心させられた。
先にも少し触れたが、本来ホラーゲームは怖さを楽しめる人や耐性がある人のみが楽しめば良いジャンルだが、「サイレントヒル 2」に関しては“ホラーゲームはちょっと……”という人にも遊んでもらいたい。
3年前に亡くなった妻からサイレントヒルで待っているという手紙がジェイムスに届くという、ゲーム導入からストーリーの先が気になる展開である。
妻のメアリーにそっくりな容姿で、これまで会ったことのないジェイムスやメアリーのことを知っているかのような言動を時折見せる「マリア」や、3年前に亡くなったメアリーと最近まで会っていたという少女「ローラ」など、登場キャラクターたちも謎に満ちたストーリーを盛り上げる。
亡くなった妻を求めて彷徨うジェイムスの深い愛情、そして人間の弱さや狂気性などを描く「サイレントヒル 2」。未プレイの人なら、徐々に明かされていく衝撃の真実に惹き込まれていくことだろう。
今回エンディングまでプレイしたが、道中をビビりながら慎重に進めていたことと、謎解きなどで頭を悩ましていたこともあり20時間ほどかかった。もう少しサクサク進めれば恐らく半分以下の時間でクリアできそうだと感じた。
「サイレントヒル 2」はマルチエンディング形式を採用しており、何度も遊ぶ周回プレイを視野に入れたボリューム感なのはとてもありがたい。
筆者が迎えたエンディングは原作でもあったものだったが、リメイク版からの新エンディングも追加されているとのことなので、どんな結末が待っているのか気になってしかたがない。
(C)Konami Digital Entertainment
※ゲーム画面は開発中のものです。