レビュー
「スーパーマリオRPG」レビュー
時を超えても輝き続けるRPGの傑作。マリオがピーチやクッパたち仲間と冒険
2023年11月16日 00:00
- 【スーパーマリオRPG】
- 発売日:11月17日
- 発売元:任天堂
- ジャンル:RPG
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 価格:
- パッケージ版 6,578円
- ダウンロード版 6,500円
時を遡ること約27年。1996年3月にスーパーファミコンで「スーパーマリオRPG」というソフトが発売された。
「スーパーマリオRPG」は世界中で愛される「マリオ」という人気キャラクターを持つ任天堂と、「ファイナルファンタジー」シリーズなどの名作RPGを送り出しているスクウェア(現在のスクウェア・エニックス)が共同開発した作品だ。「RPGをやったことない人も、RPGをやりつくした人も楽しめる」とパックンフラワーが陽気に歌うCMがインパクト抜群で、「スーパーファミコンが4,000円安くなるクーポン券」が封入されていることを強くアピールしていたCMが強く印象に残っている人もいるのではないだろうか。
当時、ただゲームを楽しむだけだった1プレーヤーの筆者にも「あの任天堂とスクウェアが!」という衝撃があった。マリオといえばアクションというイメージがある中で、まさかのRPG化だし、数多くの名作RPGを世に送り出してきたスクウェアとのタッグというのだから、その驚きの大きさと期待の高まりも理解していただけると思う。
冒頭で紹介した印象深いCMを何度も見た筆者は本作に非常に期待したし、実際にプレイした「スーパーマリオRPG」はその期待を軽く上回る名作だった。
そんな名作がグラフィックスを一新して蘇り、11月17日に発売されるのがNintendo Switch用RPG「スーパーマリオRPG」だ。本稿ではそんな「スーパーマリオRPG」の魅力を改めて振り返りつつ、生まれ変わったNintendo Switch版ならではの魅力をお届けする。
マリオらしいアクションと、王道のコマンド式RPGが融合した新感覚のゲーム体験!
まずは戦闘システムの魅力についてお話ししていきたい。
本作はタイトルに“RPG”という文字が入っているとおり、ベースの部分はコマンド選択式のターン制のバトルシステムを採用している。具体的には「こうげき」や「アイテム」、「スペシャル」といったコマンドを選択して戦う。
だが、ただのコマンド選択式のバトルではなく、ちょっとしたアクション要素を導入しているのが本作の面白いところだ。それが「アクションコマンド」というシステムで、攻撃や防御の時にタイミング良くボタン押すと、より多くのダメージを与えたり、逆に受けるダメージを減少させられる。このシステムを上手く使えるか否かで本作の難易度は大きく変化する。
バトルのエンカウントはシンボルエンカウント方式を採用している。そのため敵を避けながら進むこともできるし、積極的に敵にエンカウントして経験値やコインを稼ぐ進め方もできる。
また本作もRPGらしくフィールドには宝箱が配置されているのだが、下からジャンプして宝箱を開けるのだ。これは「マリオ」シリーズでお馴染みのアクションだが、RPGとミックスされているのがユニークだ。
それだけでなく、本作のフィールドは立体的に作られているので、ジャンプで段差を乗り越えたり、動く足場を乗り継いでいったり、時には水中を泳ぐこともある。足場から足場にジャンプしようとしたら落ちてしまって少し戻ってやり直すこともあるし、着地点に敵がいて戦闘が始まるということもある。そういった刺激がマリオ×RPGらしい本作の面白さだ。
またミニゲームがストーリー上に多数盛り込まれているのも本作の特徴だ。本作では世界はいくつかのフィールドに分かれており、ストーリーの進行にあわせてフィールドからフィールドに移動していく。その際にミニゲームが挟まれることが多いのだ。
ミニゲームの種類は多く、滝を下っていくようなものもあるし、タイミング良くジャンプして転がってくる樽を避けたり踏みつけて進んでいくものもある。もちろんミニゲームが導入されているRPGは珍しいものではないが、ここまで豊富なミニゲームを盛り込んでいる作品は珍しい。
いつも通りの展開から始まる、いつも通りじゃないマリオたちの冒険の物語
本作は、コミカルに描くストーリー描写も魅力だ。
導入部分では、いつも通りピーチを救うため、いつも通りクッパ城に向かうマリオ。クッパとの死闘を制し、ピーチ姫を救える……というところで、いつも通りじゃない出来事が彼らを襲う。
空からやってきた巨大な剣のようなものがクッパ城に突き刺さり、3人はバラバラの場所に飛ばされてしまうのだ。そこからマリオがピーチ姫を探す旅に出るのだが、紆余曲折があり、最終的にその巨大な剣が属する悪の軍団を倒すための冒険になるというストーリーだ。
本作のストーリーは非常にシンプルでわかりやすいものだ。悪役がいて、世界にネガティブな影響を与えるので、それを阻止して世界を救うために主人公達が活躍する、そういった王道の物語がベースになっている。
もちろん本作のストーリーはそれだけではないのだが、序盤の大筋としてはピーチ姫を救うために色んなロケーションを訪れながらマリオが旅をする。それはオーソドックスなマリオの姿と言える。
それでも本作のストーリーは魅力的に見える。そう見える理由はユニークなキャラクター達がこの世界でイキイキと動いているところにある。
例えば旅をする途中で出会う仲間たち。不思議な力を持った“自称”カエルの男の子「マロ」、天空からやってきた「ジーノ」、そしてお馴染みの「クッパ」や「ピーチ姫」もそれぞれの理由があってマリオと旅をともにする。それぞれの仲間がマリオとともに旅をし、巨大な剣を倒すべく冒険をする理由があるのだ。そういった彼らを見るのが楽しい。
魅力的なのは仲間だけではない。街にいるNPCや、敵として登場するNPCも個性派揃いだ。シリーズを通してお馴染みのキャラクター「キノピオ」はどこか天然ボケのような立ち振る舞いをしたのもキノピオらしいなと思ったし、いわゆる“メタい”発言をしたときは思わず笑ってしまった。
ほかにも、もの知りでマリオ達にヒントを教えてくれるカエルの「カエル仙人」、謎多きひげ面の男「ブッキー」などキャラが濃いキャラクターがたくさん出てくる。
彼らは単体でも面白いのだが、寡黙さを貫くマリオとの掛け合いもまた面白い。RPGなので彼らとの交流もあるのだが、マリオは寡黙で会話をすることはない。だがコミカルなまでのオーバーリアクションでNPCたちとコミュニケーションを取るシーンが見られる。
本作のマリオはジャンプしたり、ダッシュしたり、ずっこけてみたり、寡黙ではあるが、可愛らしい一面を見せてくれる。時にはクッパなどほかのキャラクターに変身して、ボディランゲージでメッセージを伝えようとするコミカルな表現は見ていてとても楽しいものだ。
そしてキャラクターが立っているからこそ、演出によって本当にキャラクターがイキイキしている表現ができていて、とても楽しい印象があった。
Nintendo Switch版で追加された新要素。本作のゲーム体験がより楽しく
Nintendo Switch版の「スーパーマリオRPG」はただの再現に留まらない。新要素の追加により新たな魅力であふれている。
グラフィックスは原作のタッチを大切にしながら3Dで再現されており、現代らしい最大フルHDの高解像度な表現になった。サウンドも原作の名曲の数々を活かしながらもアレンジが加えられている。当時を知るプレーヤーは懐かしさと新しい要素の数々が魅力的に映るだろうし、新しいファンは新作をプレイするような新鮮な体験ができることだろう。
Nintendo Switch版の新要素は、例えば「エンジョイモード」。難易度を調整して遊びやすくする機能だ。序盤はそれほどでもないのだが、中盤〜終盤ともなると敵も強くなってくる。特にボスキャラの手強さはなかなか歯ごたえがあるものだ。
もちろん雑魚モンスターを倒してキャラクターのレベルアップをさせたり、より強力な装備を揃えたり、戦闘中に使える回復アイテムを揃えていくと有利に戦闘を運べる。だがストーリーに重きをおいて戦闘はほどほどに楽しめれば良いというプレーヤーもいるだろう。この新モードのおかげで遊び方の幅が広がったのは好印象だ。メニューが開けるタイミングならいつでもモードを変えられるのもありがたい。
そして原作ファンには溜まらないのが新規にアレンジされたNintendo Switch版の楽曲と、スーパーファミコン版のオリジナル版のサウンドに切り替えられる機能だ。
改めてプレイして感じたのは、本作の楽曲のクオリティの高さ。「スーパーマリオRPG」という統一感は残しつつ、ロケーション毎に楽しく陽気な曲から、おどろおどろしくて暗い曲、そして独特な怪しさを感じさせる曲もある。それぞれのロケーションを印象づける楽曲ばかりでとても魅力的だった。
もちろんNintendo Switch版で新たにアレンジされた楽曲も素晴らしいのだが、スーパーファミコン版をプレイしたことがある身としては、元の楽曲も楽しみたい。そんなわがままに答えてくれるファンサービスだと感じた。
ほかにもモンスターたちの設定やステータスなどを確認できる「モンスターリスト」や、クリア後に強くなったボスと再戦できる機能も追加された。ただストーリーを楽しんでボスを倒して終わりではない。やりこみがいもバッチリというわけだ。
今回Nintendo Switch版の「スーパーマリオRPG」をプレイして、改めて本作はユニークで魅力的な作品だったことを再認識した。スーパーファミコン版の発売から長い年月が経ち、その間に多くのゲームが発売されてきた。任天堂からは「マリオ」シリーズの新しい作品も多くリリースされたし、スクウェア(スクウェア・エニックス)からも多くのRPGが発売された。自分で言うのもおかしな話だが、多くのゲームに触れてきた筆者はゲームに対する目が肥えてきていると思う。
だがこれだけ長い年月を経て、目が肥えた筆者でも「スーパーマリオRPG」という作品の輝きは全く色褪せていなかった。そのくらい本作の魅力は光り輝いていたことを再認識したのだ。これまで「スーパーマリオRPG」をプレイしようと思うと、ハードの問題でハードルが高かったのも事実だが、Nintendo Switch版が発売されることでこの名作に触れやすくなった。
本作は“やったことない人も、やりつくした人も”満足させてくれる作品であることは間違いない。ぜひ遊んでみてほしい。
(C) Nintendo/SQUARE ENIX
Characters: (C) Nintendo, (C) SQUARE ENIX