レビュー
「ハリー・ポッター:魔法の覚醒」レビュー
ハリポタファンなら絶対楽しい! 決戦から10年後のホグワーツ魔法学校生活
2023年7月1日 00:00
- 【ハリー:ポッター:魔法の覚醒】
- 開発:NetEase
- ジャンル:カードバトルRPG
- プラットフォーム:Android、iOS、WindowsPC
- サービス開始日:6月27日
- 価格:無料(アイテム課金)
J・K・ローリングが、エジンバラ城を見上げる小さなカフェで書き上げた物語「ハリー・ポッターと賢者の石」が発売されてから26年が過ぎた今も、ウィザーディングワールドを舞台にした新たな物語が生まれ続けている。6月27日に、サービスを開始したAndroid/iOS/WindowsPC用RPG「ハリー:ポッター:魔法の覚醒」もその1つだ。
開発は「荒野行動」や「第五人格」のNetEase。同社が得意とする、カリカチュアライズされたキャラクターと、手塗りのテイストを残した絵本のようなグラフィックスで、「ハリー・ポッター」の世界を再現している。
プレイヤーはホグワーツ魔法学校の新入生となり、魔法の勉強はもちろん、寮生活や禁じられた森での冒険、決闘クラブ、クイディッチや舞踏会など学校生活を満喫する。このレポートでは、iOS版「ハリー:ポッター:魔法の覚醒」をプレイしたインプレッションをお伝えしたい。なお、このレポートは「ハリー・ポッター」シリーズ及び「ファンタスティック・ビースト」のネタバレをやや含むので、原作や映画を知らない人は気を付けて欲しい。
舞台は「ハリー・ポッターと死の秘宝」から10年後
これまでも「ハリー・ポッター」を原作としたゲームはいくつもつくられてきた。直近では1800年代のホグワーツが舞台の「ホグワーツ・レガシー」で魔法無双をした人もいるだろう。本作の舞台となるのは、第二次魔法戦争と呼ばれるヴォルデモートとの死闘(映画でいうと「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2」にあたる部分)が決着してから10年後。だいたい2008年ごろのホグワーツだ。
激戦でガレキになった校舎はすっかり修復されているものの、まだ戦いの記憶は生々しく残っているような時代感。校長として新入生を出迎えたマクゴナガル先生は、死闘の思い出を回想シーン付きで語ってくれる。さらに、メインストーリーの中では、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」に登場する、魔法省でのダンブルドアとヴォルデモートの戦いがバトルとして再現されている。死の魔法アバダケダブラを連呼しながら襲ってくるヴォルデモートを、水の塊で封じ込めながら戦う。自分が操作できる状況でのシーン再現は、ゲームでしか味わえない特別な体験だ。
原作ではおなじみのキャラクターも多数登場する。入学許可証を持ってくるハグリッド、入学式で壇上に並ぶトレローニ先生やスラグホーン先生、管理人のフィルチなどはもちろん、10年間の間にホグワーツの薬草学の教授となったネビル・ロングボトムも先生として登場する。見知った顔に出会えるのは、まさにファンが望んでいることだろう。原作では退場してしまった人にも、様々な要素の中で出会うことができる。
本作は、もちろん「ハリー・ポッター」シリーズをまったく知らない人でも遊べるように作られてはいるが、何の説明もなく出てくる専門用語も多く、やはり基本的にはウィザーディングワールドがめちゃくちゃ大好きな人こそが楽しめる、ファンの花園といった要素が強いゲームだといえる。
マグルの世界から新入生として入学
ハグリッドから入学許可証を受け取った主人公は、ダイアゴン横丁でフクロウと杖を選んでから、ホグワーツ特急で出発する。車内では同期生となるアイビー、ロビン、ダニエル、ケビン、カサンドラ、ロッティーといったキャラクターたちと出会う。ホグワーツに到着すると、組み分け帽子によって寮が決まり、いよいよホグワーツでの学校生活がスタートする。
「ホグワーツ・レガシー」での組み分けは簡単な質問で診断されたが、本作では組み分け帽子がいきなり判じてくる。もちろんそれは拒否して、自分で寮を選ぶこともできる。ちなみに筆者は帽子の慧眼を信じて、今回はハッフルパフの寮生として誠実さをモットーにプレイした。
寮は原作同様4人部屋で、3人のプレイヤーを招待してルームメイトにすることができる。ただし、招待できるのは同じ寮の同じ性別の生徒に限られるのて、フレンドとルームメイトになるには最初のキャラメイクでそれを意識しておいた方がいい。
空間内の移動には画面左下の仮想スティックを使う。別の場所に行くには、マップから行先を選んでワープすることもできるが、学内なら動く階段を通って自分の足で移動することもできる。途中、絵画から情報を得たり、アイテムを拾うこともあるのでたまには自分で歩いてみるのもおすすめだ。
ハグリッドの家など、学校外にある施設への移動にはほうきが使える。ほうきに乗ると、ホグワーツ場をぐるりと空中散歩することも可能で、任意の場所に降りることもできる。完全なオープンワールドではないが、かなりの自由度があり、探索するのが楽しいゲームに仕上がっている。
ホグワーツでの学校生活とメインストーリー
本作には多くの要素があるが、いきなりすべてが使えるわけではなく、チュートリアルを兼ねたメインストーリーの中で少しずつ要素が解放されていく。ゲームを始めてしばらくは、ひたすらメインストーリーを進めていくことになる。
メインストーリーは入学式に欠席したまま行方不明になった同期生アイビー・ワリントンを探すところからスタートする。アイビーは優しく朗らかな少女だが、なぜか記憶があいまいで、使えるはずのない高度な魔法が使えたりと謎が多い。物語を進めていくうちに新たなキャラクターとの出会いがあったり、友人たちの秘密を知ることになったり、また知らなかった一面を見ることになる。
ストーリーはほぼフルボイスだが、現在は日本語でプレイできるのは1年生部分だけで、2年生は英語ボイスのみが公開されている。今後のアップデートで日本語対応が行われる予定だ。
好きなキャラを育てることができるカードシステム
本作では、禁断の森の巨大ボスから、飛び出してきたネズミまで、かなりの頻度でバラエティに富んたバトルが発生する。バトルはカードシステムを基本としており、成長や強化など多数の要素が絡んでいる。
デッキにセットできるのは、基礎カードが8枚。仲間カードが3枚。スタート時点で実装されているカードは75種類なので、無料でもらえるガチャだけでもほとんどそろえることができる。さらに、セットすることでバトル要素が強化される「共鳴」というシステムがある。カードも共鳴もレベルをあげたり強化することで性能を上げることでさらに強くなる。
基礎カードには、魔法攻撃をする「呪文カード」と、魔法生物を召喚する「召喚カード」の2系統がある。魔法攻撃は、「インセンディオ」のような範囲攻撃や「エクスペリアームズ」など行動阻害系、瞬間移動をする「ポートキー」、回復魔法の「エピスキー」など原作に登場した多彩な魔法が揃っている。カードの絵柄も原作をシーンを再現しており、例えば「エピスキー」なら、ルーナがハリーの鼻を直すシーンが動く絵柄になっている。
召喚カードは、相手に向かって進軍する「小さいクモの群れ」や「怪物的な怪物の本」、背後から弓撃する「ケンタウルス」、自分のHPを消費してコインをさがし、そのコインでプレイヤーの魔力を回復してくれる「ニフラー」、卵の状態で召喚し生まれると強力な火炎攻撃を行なう「ノルウェー・リッジバックの卵」とこちらも多種多様な効果のカードがある。
カードには4種のレアリティがあり、レジェンドのカードは、その要素が登場した映画のワンシーンを再現したショートムービーを見ることができる。筆者は今回「ノルウェー・リッジバックの卵」と「サンダーストーム」のレジェンドを手に入れることができたが、前者はハグリッドがハリー、ハーマイオニー、ロンたちに卵を見せて、生まれたドラゴンにひげを焼かれてしまうシーンが、後者は「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」の主人公ニュートがNYの空にサンダーバードを送り出すシーンのムービーを見ることができる。
仲間カードは、NPCのキャラクターを助っ人として呼び出すことができるカード。同級生たちはもちろん、ハーマイオニーやハグリッド、ドラコ・マルフォイと2人の子分を呼び出すカードもある。デッキには3枚セットできるが、1度に呼び出せるのは1人だけで、上から順になる。
最後に「共鳴」は、特定のキャラクターをセットすることで、その特性に応じた強化を受けることができるというもの。最初に手に入るドビーの共鳴では、移動回数が多くなり、姿くらましが使い放題になる。強化するカードはレアリティで変化するが、レアリティが高いほど強化されるカードの枚数が多くなる。強化の効果は指定されたカードをデッキにセットすれば発動する。
3日間のプレイでは、ほかにスネイプ先生、ハリー、ニュート、ハーマイオニーの共鳴を手に入れることができた。共鳴の獲得シーンは、記憶を水盆に保存する「憂いの篩(ふるい)」に顔を突っ込んだ時のように炭の流れがそのキャラクターを想起させる文字を形作る。スネイプ様推しの筆者は、「半純血のプリンス」という文字を見てキャラクターが表示される前からきゃっきゃと喜んでいた。
カードとアクションを組み合わせたバトル
カードの説明の次は実際のバトルの感触を解説しよう。本作のバトルはカードバトルだが、カードだけで戦うわけではない。オートバトルの合間にカードを使ってスキルを発動するというイメージだ。また、本作の敵は、たまに予兆のある攻撃をしてくる。そのままそこにいると攻撃を食らうので、当然だが移動して避けなくてはならない。足元に毒沼を設置されたら、移動して範囲から外れなければならない。
設置できるリーチが短いカードなら、敵に近寄る必要があるし、後衛にしたいカードは端まで行ってから設置したい。跳ね返ってくるブラッジャーを打ち返して攻撃する「ブラッジャー」というカードでは、打ち返すために、ボールの軌道に移動する必要がある。時には戦闘エリアの半分が予兆で埋まったりもするので、そういう時には瞬間移動の魔法を使って移動したりと素早い判断が求められる。そのため左手親指は仮想スティックに置きっぱなしで頻繁に移動しながら、カードの選定や範囲攻撃の設置を右手で行なった。
行動回数はバトルごとに決まっているが、移動できなくなって困るということはなかった。チームで潜るダンジョンなどは、99回の移動が可能で、かなり余るくらいの余裕がある。
バトルが始まると、ランダムに4枚のカードが場にセットされる。1枚使うと次のカードがセットされ、後はそれがずっと繰り返される。カードには発動に必要な魔力が決まっている。バトルが始まると、魔力は自動的にたまっていくので、それを使ってカードを使う。
セットできるカードの魔力に制限はないが、強いカードを使うにはたくさんの魔力が必要になるので、強いカードばかりをセットすると発動頻度が下がり逆に不利になりかねない。強さと魔力のバランスのいい構成を考えつつデッキを組んでいく。
召喚する魔法生物は、うまく使えば1人でパーティプレイのような戦闘が可能になる。トロールは打たれ強く、敵の攻撃を引き付けてくれる盾役として機能する。ケンタウロスは、HPは低いが遠距離から敵を弓で打ち続けてくれる。ノルウェー・リッジバックは設置するとじわじわとHPが増えていき、満タンになると生まれて猛烈な火力で一気に方をつけてくれるが、卵の間に攻撃を受けるとHPが減って、全然生まれてくれない。HPがゼロになると生まれることなく卵が割れてしまう。
レベル10くらいまでは、適当にやっていても勝ててしまう。しかし、だんだんと敵が強くなってくるので、カードや共鳴をしっかりレベルアップしつつ、デッキの構成や相手に応じた戦い方を考えなくてはメインストーリーの敵にも勝てなくなってくる。
デッキ構築構築画面で「おすすめ」ボタンを押すと、公式のおすすめデッキや首位魔法使いのデッキを見ることができ、自動でその構成を作るボタンもある。カードバトルのゲーム初心者ならこういったシステムを活用するといいだろう。
戦闘はソロバトル以外に、NPCやプレイヤー同士での3人のチームバトルや、2対2の対人戦もある。チームバトルの場合は誰かのHPが0になっても復帰させることができる。本作では寮やサークルなど他のプレイヤーとコミュニケーションが取れるソーシャル要素があり、マッチング用のシステムもある。他の人と一緒に戦う自信がつくまで、NPCたちを連れてのチームバトルで経験を積むのもよさそうだ。
学校は授業だけじゃない。決闘クラブや舞踏会にも参加しよう
学校の授業は、呪文学、魔法史、闇の魔法に対する防衛術、魔法生物飼育学、古代ルーン文字、占い学、マグル学があり、月曜から金曜は時間割によって2~3の授業が開講、土日はすべての授業を受けることができる。
授業の内容は、例えば魔法史なら「ハリー・ポッター」クイズ、呪文学は達成目標が定められたバトル、古代ルーン文字はマルチプレイの神経衰弱ゲームと、内容も個性豊かだ。他のプレイヤーと共闘したり競うものはオートでマッチングされる。
決闘クラブは、1対1または2対2で戦うマッチングバトル。ランクによって使えるカードのレベルに制限があり、制限を超えたカードは自動的にレベルが下がる。また、戦闘エリアの中央にバリアがあり、プレイヤーは相手のエリアに入ることができない。これらの制限の中でスポーツライクな対人戦を楽しめる。ルーキーランクの間はNPCが相手をしてくれる。
舞踏会は、ダンスを競う音ゲー。デフォルトではワルツ、タンゴ、フラメンコなど6の曲があり、さらにスペシャルな曲が楽しめる要素もあるようだ。音ゲーは踊っている画面の前に表示されるアイコンの指示に合わせて、タイミングよくタップしていく。難易度は3段階あり、最高の★5は音ゲーに慣れていない筆者には、歯ごたえのあるものだった。
ドレスアップして単に自キャラが華麗に踊っているのを見るだけでも楽しい。そこに参加している別のプレイヤーを招待して、一緒に踊ることもできる。
禁断の森はボス戦やアイテム収集できる修練の場
学校の外に広がる「禁断の森」は、冒険の場であるとともにアイテム収集の場でもある。森はソロ用と3人チームで入るインスタンスダンジョンになっている。チーム用のダンジョンは、NPCと一緒に入ることもできる。
どちらのダンジョンも、内部に1~3つの分かれ道がある。分かれ道はアイコンによって、アイテム収集、敵とのバトル、ボスバトル、休憩などに分かれていて、最後には大きなボスを倒すことになる。1つのダンジョンをクリアすると、次の段階が解放される。段階は現時点ではソロ用が45段階、チーム用が10段階用意されている。どの段階でどんな報酬が出に入るのかの一覧表もあるので、報酬を目指して攻略を進める楽しみもある。気軽にボスバトルができる場所なので、デッキ構成を試したり、研究する場としても有効だ。
また、ソロダンジョンを進めるとかなり最初の方で、空飛ぶフォード・アングリアと出会う。「ハリー・ポッターと秘密の部屋」でハリーたちを助けた後、また禁断の森に消えていったあの車だ。本作では、一定時間ごとに勝手に報酬を集めてきてくれる素敵な車として登場する。
ファンにとっては「ハリー・ポッター」の宝箱のようなゲーム
本作の感想を一言でいうと、ハリポタファンなら間違いなく楽しめる、に尽きるだろう。本作には、ファンがこうしたいと思っていることが、これでもか、これでもかと盛り込まれている。例えば、バトルでカードを使うときの魔法詠唱は、デフォルトの音声以外に自分の声を収録して使うこともできる。自分で「エクスペリアームズ!」と叫んで魔法を使えるなんて、ワクワク感MAXにもほどがある。
同期のNPC生徒たちとの親密度を上げることができるのもいい。ダンスに誘ったり、一緒にダンジョンにいくことでどんどん仲が良くなっていくのを実感することができる。特に、スリザリン寮のカサンドラのように、最初はツンツンで取り付くシマもないような相手とも仲良くなれるのは、いかにも青春という感じでいい。まあ、求められるレベルが高いので、彼女と仲良くなるのはなかなか大変ではあるが。
カードとアクション性を融合した独自のカードバトルは、デッキの構成枚数が8枚と少なく、普段あまりカードゲームをしない人でもとっつきやすい仕様になっている。レベルが低いうちは単調さが目立つが、敵が強くなってくるにしたがって、ぎりぎりの戦いも増えてきて、スリリングな戦闘が楽しめた。
そして、普段MMORPGをプレイすることが多い筆者としては、やはり周囲に他のプレイヤーが表示されるのが嬉しい。本作のプレイヤーキャラは、普通のオンラインゲームと同じようにクエストを巡ったりしているが、学園生活を送るNPCとしても表示される。例えば図書館に行くと、複数のプレイヤーキャラが本を探したり、読んだりしている。多種多様な見た目のキャラからはそのプレイヤー情報にアクセスすることもできる。アクセスの許可は設定画面からできるが、ハラスメント対策のために、デフォルトでは情報を見たり、勝手にフレンド申請をしたりできないようになっている。
本作にはルームメイトやサークルなどのコミュニティ要素、マッチングが必要なコンテンツが多数用意されており、友達と一緒に遊びやすく作られている。ただ、始めたばかりや友達がいない人でも遊べるよう、たいていのコンテンツではNPCが相手をしてくれるので、ぼっち学校生活でも十分満足できる。
決闘クラブや舞踏会で高みを目指すもよし、最強デッキを目指すもよし、おしゃれコーデやマイルームの構築を頑張るもよし、とだれもが自分のホグワーツ魔法学校生活を楽しめるはずだ。現在アジアエリアにはサーバーが5つあるが、そのうち不死鳥とユニコーンが日本運営となっている。日本人同士でプレイしたいなら、この2つのどちらかを選んで遊んでみて欲しい。
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