レビュー
「ヴァルキリーエリュシオン」レビュー
上達するほどに面白くなる正統派のアクションRPG
2022年9月25日 21:00
- 【ヴァルキリーエリュシオン】
- 発売元:スクウェア・エニックス
- 開発元:ソレイユ
- 発売日:
- PS5/PS4版 9月29日
- Steam版 11月12日
- 価格:
- 通常版 8,580円(税込)
- 限定版 19,980円(税込)
- CEROレーティング:C(15才以上対象)
スクウェア・エニックスがプレイステーション 5/プレイステーション 4版を9月29日、PC(Steam)版を11月12日にリリース予定のアクションRPG「ヴァルキリーエリュシオン(VALKYRIE ELYSIUM)」。14年ぶりのシリーズ新作となる本作だが、初のアクションRPGということで期待を寄せている読者も多いだろう。
「ヴァルキリーエリュシオン」は、北欧神話をモチーフにした独自の世界が舞台となっている。プレーヤーは、破滅の危機に瀕している世界を救うべく、主人公である「戦乙女(ヴァルキリー)」を操作して地上界の魂の浄化の任につく。
ストーリーではヴァルキリーを創造した神であるオーディンや、ヴァルキリーと共に戦う英霊「エインフェリア」との関係性や、敵対する神狼「フェンリル」、黒い鎧を纏ったヴァルキリー「ヒルド」との戦いなどを通じて、世の中の不条理・不合理が描かれる。
今回はそんな本作の発売前にプレイの機会を頂くことができた。本誌では既に体験版のプレイレポートを掲載しているが、今回は本編をプレイしたからこそ味わうことのできた本作の魅力を紹介する。
なお、本稿では一部ネタバレが含まれているので注意してほしい。
世界の滅亡を舞台にした壮大なストーリー
物語の舞台となるのは万物を統べる主神オーディンに神狼フェンリルが反逆したことで起きた「神界戦争」の余波によって到来した「ラグナロク」によって終末の危機に瀕した世界。フェンリルと相打ちとなり、本来の力を出せないオーディンはヴァルキリーを創造し、彼女に世界の命運を託すこととなる。
本作の主人公であるヴァルキリーは、世界救済のために地上の魂を浄化し、フェンリルの野望を打ち砕くために奮闘することとなる。また、魂を浄化する過程で、強力な魂を持った存在であるエインフェリアを英霊として迎え入れ、共に戦っていく。
ストーリーの中で、神に創造されたヴァルキリーは、人間の住む世界を見たり、元は人間であるエインフェリアと関わったりすることで、様々な感情や葛藤を抱くこととなる。また、本来オーディンに仕えるはずのヴァルキリーでありながらフェンリルに仕えるヒルドの存在も彼女に様々な疑念を抱かせる。
本作では、メインストーリーでは語られない部分も多く、サブクエストをプレイすることでよりメインストーリへの理解を深めることができる。特にヴァルキリーに仕える英霊となった後のエインフェリアについてはメインクエストでは余り語られず、サブクエストで中心的に描かれる。エインフェリアとなった彼らが死して尚抱えている後悔や、エインフェリアとなったことによる悩みなどが語られる。
本作は神話の世界をモチーフにしているだけあって、世界の命運をかけた壮大なストーリーが展開される。また、崩壊した世界を舞台にしているため、全体的に世界の不条理・不合理が描写されている。かといって、本作の雰囲気が暗さ一辺倒にならないのは、本作が人間を超越した「神の存在」サイドで展開されるためだろう。そう考えると、本作のフィールドに光が刺すような場所が多く、神々しさも感じられるのになっているのにも納得だ。
これは筆者の個人的な意見だが、ストーリーでは徐々に変化していくヴァルキリーの内面に着目してほしい。最初のうちは神によって創造されただけあって人間味の薄かった彼女が、どう変化していくかは、ストーリーにも大きくかかわってくる。
シンプルながら奥深いバトルアクション
本作はメインクエストをクリアすることで進行していく。メインクエストはチャプター毎に分かれており、各チャプターのステージをクリアすることで物語が進む仕組みだ。
どのクエストも基本的には道中にいる敵を倒すことで先に進めるようになっており、戦いを避けられる場所はほとんどない。そのため、必然的に敵を全滅させながら次のエリアへと進んでいくこととなり、クエストをクリアするにはバトルの腕が必須となる。
マップは一本道となっていることがほとんどで、目的地も常に表示されているので迷うことなくクエストを進められる。一方、別ルートから迂回して進める場所や、寄り道できるような分岐路のような探索ができる場所も存在し、そういった場所には宝箱が配置されていることが多く、回復アイテムや強化素材を入手できる。また、本作の背景を読み解ける「欠魂花」やサブクエストを見つけられることもある。とはいえ、本作はあくまで探索よりもバトルが中心のアクションRPGという印象だ。
注目のバトルシステムは、シンプルな操作で攻撃が行なえる一方で、属性や各種スキルを使うためのゲージ、そしてエインフェリア召喚といった様々なシステムを駆使するものとなっており、やればやるほどのめりこんでいける奥深いものとなっている。
まず、基本的な攻撃は、PS5では通常技と変化技がそれぞれ□ボタン、△ボタンに割りあてられている。ざっくりと言ってしまえば通常技は小技で、変化技が大技となっており、通常技を連続して繋げ、変化技でフィニッシュするのが基本的なコンボとなっている。簡単なコンボならば、ボタンを連打するだけでも繋がるので、ゲーム開始時から直感的な操作で連続技を叩き込むことが可能だ。
また、ダッシュやジャンプなど特定の動作中にボタンを押したり、特定の順番で攻撃を繰り出したりすることで武器ごとに設定された技を使用でき、技を組み込むことでより強力なコンボを繰り出せる。たった2ボタンでの操作でも、自分なりに試行錯誤しながらバトルを楽しめた。
バトルのアクセントとなるのが、遠くのポイントまで糸を伸ばして移動する「ソウルチェイン」という能力。これを敵に打ち込むことで一気に距離を詰めることができるので、敵を撃破したら次の敵へと素早く移動しスピーディーなバトルを楽しむことができる。また、コンボの途中で敵を打ち上げる技を決めてから使用することで、空中でのエリアルコンボに移行したりといったスタイリッシュかつ強力なムーブも可能だ。
ソウルチェインを用いた戦闘は、スピーディーなだけあって僅かな時間で状況を判断し、どう技を繋いでいくかを考えることが重要となる。だからこそ、上手くエリアルコンボまで繋いで倒せた際には爽快感を味わえた。
また、本作にはガードや回避といった防御アクションも存在。後述する成長要素で技を解禁していけば、ジャストガードやダッシュ中の攻撃など、反撃に転じられる強力な派生技が解禁されていく。こうしたアクションもコンボに組み込め、ヴァルキリーの成長とともにコンボの幅も広がっていく。
このように簡単な操作でコンボを繋げることが可能な本作だが、敵は複数体で攻撃してくるだけでなく、防御不能攻撃や、遠距離からの魔法攻撃なども行なってくるため、戦闘の難易度は決して低くない。筆者も慣れないうちは油断をしてしまい、袋叩きにされることが少なくなかった。
そのため、本作では常に周囲の敵との位置関係を把握しつつ、できるだけ孤立した敵に向かってソウルチェインを撃ち込み、各個撃破することが重要となる。また、敵の攻撃は空中には届きづらいため、エリアルコンボを狙えば、基本的には安全にコンボを叩き込むことが可能だ。エリアルコンボは安全なだけでなく、トドメを空中で刺すことで敵がドロップするアイテムも増加するので、そういった意味でも積極的に狙っていきたい。
また、大型の敵の中には弱点部位が設定されているものも存在しており、部位破壊をすることでダウンをとることができる。強敵であっても冷静に弱点を突けば安全に撃破することが可能だ。
ディバインアーツと属性攻撃でバトルを有利に
本作では、コンボを繋げることで「コンボゲージ」が上昇していき、それにより「アーツゲージ」が溜まっていく。このゲージを用いて繰り出すのが、強力な属性攻撃を放つ「ディバインアーツ」だ。
本作では、敵をターゲットした際に表示される弱点属性で攻撃すると、敵のライフバーの横にある属性ゲージを蓄積させることができる。これが最大まで溜まることで「属性ダウン」に追い込むことができ、行動不能となった敵に連続技を叩き込むチャンスとなる。
属性には氷や雷、炎、光などがあり、各属性に様々なディバインアーツが存在する。例えば、火属性でも「ファイアランス」は出が早く使いやすい単体攻撃で、「バーンストーム」は出が遅いが強力な範囲攻撃を放つものとなっている。他にも、雷属性で敵を伝播する「ライトニングボルト」や、回復手段である「キュアプラムス」など、個性豊かなディバインアーツが使用できる。
また、ディバインアーツは最大4つまでセットすることができるので、戦う敵の数や弱点、地形などを考慮して使い分けることができれば、バトルを有利に進めることが可能だ。
筆者が面白いと感じたのは、コンボにディバインアーツを組み込めることだ。コンボで溜まったアーツゲージを用いて弱点のディバインアーツを放ち、ブレイクした敵にソウルチェインで接近し追い打ちをかけるという一連の動きは、見た目がかっこいいだけでなく、使用したアーツゲージも回収できるので非常に強力だ。とはいえ、ディバインアーツを乱発しすぎるとアーツゲージは尽きてしまうし、スキの多いものを使用すれば被弾してしまうので、使うタイミングに見極めが必要だ。
エインフェリアを召喚し属性を付与
属性攻撃は「エインフェリア」の力をかりて放つこともできる。エインフェリアはヴァルキリーに仕える英霊であり、特に優れた魂を持つ人間が死後、神の力によって英霊となった存在だ。ヴァルキリーと共に戦うだけでなく、本作ではヴァルキリーとエインフェリアとの群像劇を中心に物語が進行する重要な役割を持ったキャラクターとなっている。
そんなエインフェリアは、戦闘中に「ソウルゲージ」を使用することで召喚が可能。エインフェリアは特別な指示をださなくとも自動で敵を攻撃してくれる他、彼らの攻撃もコンボにカウントされたり、敵のヘイトをかってくれたりと頼れる存在だ。
特にヴァルキリーのライフが少ないときには、こちらが敵から逃げ、回復するまでの時間を稼いでくれるので非常に助かった。ソウルゲージも敵からドロップする「ブルーソウル」で直ぐに回復できるので積極的に召喚できる。
エインフェリアはそれぞれ属性が設定されており、召喚中はヴァルキリーにも同じ属性が付与される。属性が付与されている間は攻撃がその属性になるほか、同じ属性のディバインアーツが強化される。また、複数のエインフェリアを召喚している場合は、戦闘中にどの属性を付与するかを切り替えることが可能だ。
一方で、エインフェリアの召喚時間には限りがある。無暗に召喚し続けているとゲージが枯れ、ヴァルキリー単身で戦わなければいけない状況に陥ってしまう。また、エインフェリアの召喚やディバインアーツの使用を制限するようなデバフをかけてくる敵もいるので、うまくゲージを管理できていても油断は禁物だ。
また、実際にプレイをしてみると、コンボをつなぐこと自体は簡単なものの、エインフェリアやディバインアーツといった全ての要素を使いこなすにはかなりの習熟が必要だと感じた。コンボ中に技を使用しながら適格に属性を切り替えつつ、強化されたディバインアーツを打つという操作は非常に忙しい。それに加え、エインフェリアがどう動いているかを確認し、彼らとフォーカスを合わせたり、逆におとりに使ったりといったムーブまで行なおうとすると瞬時の判断力を求められる。各動作単体で見ればシンプルだが、組み合わせようとすると途端に難しくなるゲームバランスは飽きることなく楽しむことができた。
強気なアクションが有利な展開を生み出し、ヴァルキリーの強化も進む
また、本作ではライフやソウルゲージを回復できるアイテムの保有数に上限があるため、なるべく使用を控えたい。そこで重要になるのが敵を倒したり、特定のアクションを決めたりした際にドロップする「ソウル」をいかに集めるかだ。
ソウルはライフを回復する「グリーンソウル」、ソウルゲージを回復する「ブルーソウル」、ヴァルキリーや武器の強化に用いる「イエローソウル」の3種類が存在する。特にグリーンソウルとブルーソウルは本作における貴重なリソース回復手段となっている。
ソウルはテクニカルなアクションを決めると多く手に入る傾向にある。上述したように、地上で敵を倒すよりも、エリアルコンボで倒したほうが多く手に入る他、敵の攻撃を直前でガードする「ジャストガード」からの派生攻撃といったリスクのある行動を決めれば、敵を倒さずとも大量のソウルをドロップさせることができる。また、ヴァルキリーから離れた位置にあるソウルは敵を全滅させない限り自動的には回収されないが、周囲に落ちているソウルを回収し、攻撃を放つスキル「ソウルバースト」を用いれば回収が可能だ。
なお、筆者のプレイでは、特に周囲に倒しやすい敵がいないボス戦では、ソウルが手に入らずにじり貧に陥ってしまうことが多かった。ディバインアーツを使用するためにコンボを決め、エインフェリアを召喚するためにリスキーなムーブを成功させることが、強敵を倒すためには必要となってくるのだ。もし被弾してしまっても、一度高難易度の行動を決めれば「グリーンソウル」でライフの回復が見込めるので、どんどんテクニカルな動きに挑戦していくといいだろう。
また、本作では、イエローソウルや、各種素材となるアイテムを用いて、キャラクターや武器を強化することが可能となっているので、バトルでテクニカルな動きを決めるほどヴァルキリーの成長も早まっていく。
ヴァルキリーの強化はスキルツリーで、「攻撃」、「防御」、「補助」の3つのツリーからポイントを割り振っていく仕組みとなっている。名前の通り、攻撃ツリーでは攻撃力の上昇や、攻めるのに使用するスキルが得られ、防御ツリーでは被ダメージの減少や、「ジャストガード」のような防御スキルを解禁できる。また、補助ツリーでは各種ゲージの最大値を増加させるほか、2段ジャンプなどの役立つアクションを習得することが可能となっている。
また、各ツリーにはエインフェリアを特定の条件下で自動的に召喚するスキルも解放できる。自動召喚を設定しておけば、こちらがカウンターを決めた時や、被ダメージ時などに自動的に設定しておいたエインフェリアが召喚され、サポートをしてくれる。自分の得意なアクションにエインフェリアの召喚を組み込めば、より強力なラッシュを叩き込むことができる。また、防御面が不安なら、連続攻撃を受けた際にエインフェリアを自動召喚するように設定すれば生存率をグッとあげられる。
なお、スキルはコスト性となっており、上限コストを超えないようにどのスキルを使用するかのオン・オフを切り替える必要がある。序中盤では気にする必要はないが、終盤では自分のプレイ傾向を振り返って、使用頻度の低いスキルをオフにすることが必要だ。
武器の強化は拠点である「ヴァルハラ」や道中に点在するセーブポイントで行なえる。武器を強化すれば攻撃力が上昇するほか、新たな技を習得できる。習得した技はその場ですぐに確認できるので、直近の戦闘でも迷わずに使用することが可能となっている。
本作には複数の武器が存在し、モーションやリーチが異なるだけでなく、敵には弱点武器が設定されている。一例をあげると、最初から使用できる直剣「アルファズル」はスタンダードな武器で様々な場面で活躍する。双刃槍「ヘルテイト」は投擲することもでき、離れている敵にも攻撃できる武器となっている。
また、武器は一度に2種類装備することが可能で、バトル中も持ち替えながら戦うことが可能だ。敵の状況や弱点武器に合わせて、有利な武器を使っていくといい。
また、サブクエストの中には素材だけでなく、ディバインアーツや、エインフェリアが新しい技を習得できるクエストも存在する。本作のストーリーはメインクエストの内容だけでは十分な理解が得られないため、ただ強くなるためだけでなく、物語を紐解くためにもサブクエストをこなしていくこととなる。
どのようなスキルを習得し、どの武器を強化・使用するかなど、本作はカスタマイズ性も高いのが特徴だ。攻撃に特化したスタイルでどんどんラッシュを仕掛けていくこともできれば、カウンタータイプのスキルをメインにテクニカルな動きを連発することもできる。自分のプレイスタイルや好みに合わせてヴァルキリーを強化していくといいだろう。
また、本作には「ヴィーンゴールヴ」という訓練所も存在するので、そこでアクションの腕を磨いたり、自分のプレイスタイルを模索したりすれば強化の方向性も見えてくるはずだ。
上達するほどに楽しさが増していくアクションRPG
本作はバトルに軸足をおいたアクションRPGというだけあって、スピーディーで爽快感のあるバトルを楽しむことができた。終盤になると敵もどんどん強くなっていくので、常に緊張感をもったバトルになる。
序盤のプレイでは同じようなコンボばかりを繰り出しがちで、マンネリ化しないか心配ではあったが、ヴァルキリーの成長と共に新たなエインフェリアやディバインアーツ、スキルの解放など様々な要素が解禁されていくので常に試行錯誤を重ねられた。
要素が解禁されるほど、その全てを使いこなすのが難しくなっていくので、ヴァルキリーの成長に合わせてプレーヤーも成長していく必要があり、常に上達を感じながらプレイすることが可能だ。特にボス戦では、回復手段が限られてくるためソウルを集める行動を決める必要があるため、自分の上達を確認するいい機会となっていた。
それでも、各要素は簡単な操作で行なえるため、誰でも直感的に操作できる。アクションRPGとしては、ライトゲーマーからヘビー層まで楽しめる優等生的なタイトルとなっているのではないだろうか。
冒頭でもふれたが、本作は体験版が配信されている。気になる読者はまずこちらをプレイして、手触りを確認してみるといいだろう。
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