レビュー
「Monster Energy Supercross - The Official Videogame 4」レビュー
「AMAスーパークロス」を題材とした、テクニカルなオフロードバイクレース
2021年4月14日 18:00
- 【Monster Energy Supercross - The Official Videogame 4】
- ジャンル:モトクロスレーシング
- 発売元:DMM GAMES
- 開発元:Milestone S.r.l.
- プラットフォーム:プレイステーション 5 / プレイステーション 4
- 価格:
- 8,778円(税込、ダウンロード版)
- 12,078円(税込、Special Edition)
- 発売日:4月15日
DMM GAMESは、モトクロスを題材としたプレイステーション 5/プレイステーション 4用レースゲーム「Monster Energy Supercross - The Official Videogame 4」(以下、「Supercross 4」)を4月15日に発売する。
本作はスタジアムに作られた人工のトラックで、オフロードバイクによるレースを繰り広げる、「AMAスーパークロス」公式ゲームの4作目。初代シリーズは2019年12月にPlayStation Plusのフリープレイに登場したことがあるので触ったことがある人もいるかもしれない。
「Monster Energy Supercross - The Official Videogame 4」では最新2020年度の公式トラックやライダーのデータが採用されていて、自分の分身を作って育成していく「キャリア」や、当シリーズの名物であるプレーヤーが自由にトラックを作ってオンラインでシェアできる「トラックエディター」などの、多彩なモードが用意されている。
舗装されたサーキットではなく、スタジアムに作られた無数の起伏のあるトラックを走行する「スーパークロス」を題材とした本作。そのテクニカルなアクションは、これまでのバイクレースをモチーフとしたゲームとはひと味違う、難しくも楽しい操作感覚を味わえるようになっている。今回は製品版と同等のサンプルを実際にプレイして、最新のオフロードバイクレースゲームの内容やプレイフィールについてお届けしていく。
スタジアムに造成されたダートトラックで繰り広げられるオフロードバイクレース「スーパークロス」をゲームへと昇華
本作がテーマとしている「スーパークロス」は、主に屋外の広いトラックで繰り広げられる「モトクロス」とは趣が異なり、スタジアムなどの競技場に土砂を入れて造成された比較的短いトラックによって行なわれるレースである。限られた広さの中に作られたコースゆえに、そのレイアウトは直線が短くてコーナーが多く、その中に無数の起伏が存在しているため、よりテクニカルなレース運びが必要とされるのだ。ちなみに「AMA」はアメリカモーターサイクリスト協会(American Motorcyclist Association)のことで、「AMAスーパークロス(AMA Supercross Championship)」は、同協会が1974年より毎年1月~5月にかけて実施しているレースのことである。
国内では一部熱狂的なファンから支持されているものの、一般的にはあまり目にする機会のないスーパークロスだが、オフロードバイクをテーマとしたゲームは過去に多く登場していて、プレイしたことがある人も多いはず。筆者も任天堂の「エキサイトバイク」とそのシリーズを発端に、家庭用やアーケードなどでいくつかタイトルを遊んだ経験がある。レースゲームとしての面白さに加えて、トラック上の起伏を利用したテクニカルなアクションがゲームにも向いているというのもあるのだろう。
起伏のあるトラックを走る本作のバイクの操作は、初めてプレイする人にはかなり特殊な感覚があるが、それが本作の醍醐味にもなっている。例えば右スティックで行なう体重移動は走行時に非常に重要なファクターで、スタート時は前方に体重をかけることでいいスタートを切りやすくなり、ジャンプ時は姿勢制御によってタイムロスや転倒を抑えられる。このシリーズでは恒例の操作系のようだが、本作で初めて触った筆者は右スティックで車体の傾きを常に微調整する感覚は新鮮であった。
もう一つ面白かったのは、「スクラブ」だ。トラック上の起伏は障害物でもあり、上手く飛び越したり着地したりしないと、大きなロスになってしまう。スクラブは起伏を使ったジャンプの直前にバイクの車体を寝かせることでジャンプの高さを抑え、ロスを軽減するという高等テクニックで、レースの映像などで見たことがある人もいるだろう。本作のスクラブは起伏でジャンプする瞬間に左右のアナログスティックを内側に倒すと右向きに、外側に倒すと左向きに車体を寝かせることで行なえる。着地前にアナログスティックを入力時と逆に入れて車体を戻さないと確実に転倒してしまうリスクもあるが、決まれば格好良く効果も高いテクニックであり、エクストリームスポーツのゲームとしての醍醐味も体感できる要素である。ちなみにジャンプ中に空中で車体を寝かすテクニックを「ウィップ」といい、ゲームではタイミングによってこちらに判断されることもある。
その他にも、ブレーキがフロントとリアでそれぞれ用意されていたり、クラッチが切れたりすることで、異なるターンを行なえるなど、実車に近い操作が可能で、当然ながらそれぞれに意味があり、使いこなせればより速く走ることができるわけである。
これらの操作方法に関してはゲーム内にチュートリアルが用意されているが、正直それだけではかなり物足りない印象もあった。前述のスクラブなどは、操作方法は表示されるものの、いつどんなところで使うと効果があるのか具体的に説明されることはなく、オフロードレースをわかっている人しかそれを理解できない。コーナーリングに関して触れられるのもフロントブレーキを使ったドリフト走行のみで、他にもテクニックがあることは開発のMilestone S.r.l.が手がけた他シリーズの動画などを検索することでわかった次第である。
またこのようなテクニックがあることを理解して走ると、ゲームとしてもかなり楽しくなってくるのだが、レースで他のライダーとともに走ると一筋縄ではいかず、オフロードレースの厳しさを痛感した。筆者の腕では、一緒に走るライバルのAIを「VERY EASY」に設定しても、何度プレイしても勝てないどころか、最後尾から順位を上げることができなかったのだ。
本作にはミスをしたときなどに、レースの進行を一定時間巻き戻す「リワインド」という、ゲームならではの機能が用意されている。一度のミスが致命的になるオフロードレースにおいて非常に便利な機能なのだが、これを使っても上位に入れないのは、筆者の腕が及んでいないためであろう。AIのライダーは転倒することはあっても、致命的なミスをすることはあまりないようで、離されるともう追いつくことができないのである。
なかなか順位を上げられない状況が続き、ふがいない腕前が情けないのだが、不思議と遊んでいてストレスが溜まるようなことはなく、何度も挑戦したくなる気分にさせられたのは、ゲーム自体の完成度が高いということがあるのだろう。例えばレース中のライダー同士の当たり判定は、一般的なレースゲームほどシビアではないため、AIにぶつけられてミスすることはあまりなかった。そのぶん、こちらがぶつけてAIをミスさせるようなことも難しいので、純粋にライディングテクニックの勝負が優先される仕様だ。今回は発売前なので体験できなかったが、このルール下でのオンライン対戦も楽しみである。