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黄巾の乱の真実とは、劉備や曹操の本音は!?
大胆に三国志演義をアレンジしたMMORPG
「ほのぼのモグウ日記」
ジャンル:
MMORPG
開発元:
Chinesegamer
運営元:
崑崙日本
対応OS:
Windows XP/Vista/7
プレイ料金:
基本プレイ無料、アイテム課金制
発売日:
9月8日より正式サービス開始

 崑崙日本株式会社は、Windows用MMORPG「ほのぼのモグウ日記」において9月8日より正式サービスを実施した。オープンβテストは9月7日のわずか1日のみというハイスピードでの正式サービス化となった。

 「ほのぼのモグウ日記」は“三国志演義”をモチーフに、プレーヤーキャラクターは劉備、関羽、張飛と共に“桃園の誓い”を行なった、4人目の義兄弟としてストーリーを進めていく。劉備が裸の王様のように服をだまし取られてしまったり、関羽が特別な肉まんでオランウータンに変身させられてしまったり、ストーリーは“三国志演義”を大胆にアレンジしており、ファンにはもちろん、原作を知らない人も興味が持てる、ストーリー重視のMMORPGとなっている。

 弊誌ではプレビュー&インタビューや、CBTレポートで本作を紹介しているが、レビューではさらに先のコンテンツと、ゲームの感触を語っていきたい。


■ 大胆に三国志演義をアレンジ。ついに黄巾軍と全面対決に

ゲームの表題のモグウは街にいたり、様々なところで目にする
インスタンスダンジョンの「黄巾の乱」では、リーダーがパーティを率いて進む
張角の過去を語るエピソードも

 「ほのぼのモグウ日記」は、従来の台湾産MMORPGから随所に“ひと味違う”と感じさせる作品である。基本的にはオーソドックスなクエストドリブンの作品だが、ひとつひとつ演出が凝っており、キャラクターの演技や、セリフに開発者のこだわりを感じる。キャラクター達が台詞をしゃべり、寸劇を演じる。きちんと作品世界に引き込まれるというところに好感を持った。

 張飛はイノシシのように後先考えない猪突猛進タイプの人物として描かれ、劉備は自分の不利益になる事はとても沸点が低くすぐに怒る。こう言った解りやすいキャラクター表現は像は賛否がありそうだが、「彼等はこういう一面があるかもなあ」と思わせるところもある。また、関羽は自分から主張しないつかみ所がないが、実はしっかり者というところも面白い。

 クエストは村人達の悩みを解決するようなベーシックなものから、妖怪達が出てくるような民話的なものまであるが、メインは黄巾軍との対決となる。劉備達と黄巾軍の拠点に向かってぐいぐいと進んでいく戦いは、三国志演義のストーリーをうまく再現していると感じた。それでいながら張角が禿頭を光らせる攻撃をサングラスで防いだり、毒ガス攻撃にガスマスクを用意するなど、ハチャメチャな要素も盛りこまれている。

 特に凝っているなと感じたのが「黄巾の乱」と名付けられた最初のインスタンスダンジョン。ダンジョンと言うが、本作の場合は1本道のイベントを仲間と共に進めていく形になり、キャラクターの移動はリーダーのみ、他のプレーヤーはリーダーにまかせて進んでいく。フィールドは“戦場”の雰囲気が良く出ている。次々と襲いかかってくる黄巾軍だが、中には「貧困で困る仲間を助けるために反乱に参加した」という者もいて、その侠気に免じて命を助けるなどいかにも武侠ものらしい展開もある。

 この「黄巾の乱」では曹操との出会いもある。「ほのぼのモグウ日記」の曹操はかなり腹黒い人物として描写されている。「私の軍に加わらないか(ちょうど良い駒を探してたんだ)」というように、言葉の裏の本音までがプレーヤーに筒抜けで、こちらを利用しようとしていることがはっきりわかる。そして「黄巾の乱」の最後は“仙人”との戦いが待っている。この仙人は巨体な上に攻撃も派手で見応えがある。

 さらに黄巾の乱をクリアすると、張角の過去を知ることができる。そこでプレーヤーキャラクターは過去の世界に飛ぶこととなる。張角は少なくなる髪の毛を気にして仙人を探していたのだ。モンスターと戦うごとに髪の毛が減っていく描写がエグイ。そして張角は結局髪の毛を失い、仙人からは髪の毛を再生させる術は得られなかった代わりに、強力妖術を手にして、反乱を起こすに至ったのだ。こういったキャラクターにフォーカスしたエピソードも興味深い。

 プレイを続けていくと、都からの役人・督郵の命令により村人達が困らされている状況に直面する。この“困らせられている”状況はユニークで、命令によりずっとジャンプさせられていたり、木のふりをして、立っていなくてはならなかったりしているのだ。村に入ると多くの村人がジャンプしている異様な光景や、大きな木がズズズと動くところなど、ストーリーが演出に反映されているところが楽しい。何故そんなことになっているかと、ストーリーに引き込まれるし、今後どんな風景が待っているのか、期待してしまう。


クエストはクイズあり、選択で展開が変わるものもあり、多彩だ。キャラクターがクルクルと表情を変えるのも楽しい。右は飛び跳ねている村人
レベル20以降は黄巾軍と激しい戦いとなる。劉備達のキャラクターは特に丁寧に描かれている。右の関羽は素っ気ない態度を取っているが、後でプレーヤーをしっかり助けてるのがわかる
インスタンスダンジョン「黄巾の乱」。曹操の腹黒さや、単純な悪役ではない黄巾軍など、ストーリー要素が濃いのが楽しい。最後は巨大な仙人との戦いだ
張角の過去を知る武将エピソード。ここまで髪の毛問題を取り上げるのは、現在の日本のゲームではできない感じだ


■ 武将システムの楽しさは、もう少し練り込みが必要か。様々なシステムを組み合わせて成長

MMORPGではおなじみの、アイテムを使った強化システム
武器合成システム。領地での生産材料が必要

 「ほのぼのモグウ日記」の最大の特徴はフィールドや街にいるNPCを武将にできることだ。登場キャラクター全てが仲間にできるわけではないが、街の市井の人や、黄巾族の猛者も仲間にでき、しかも育てられる。自分のお気に入りのキャラクターをお供に戦えるのが楽しい。

 最初に仲間にできる肉まんの「パオズ」をずっと使っている人も少なくない。どう見ても雑魚にしか見えないキャラクターが意外に強く成長したり、イケメン風の武将を連れていたり、他の人が連れている武将を見るのは楽しい。ただ、序盤からかなり仲間にできるキャラクターが登場するが、同時に所持できる武将は3~5人程度とあまり多くない。

 しかも仲間にすると武将は1レベルからなため、レベルを上げて戦力とするには多少時間がかかる。仲間にしていれば戦場に出していなくてもレベルは上がる。ただ、一緒に戦っている武将も“忠誠度”はほとんど上がらず、「継承システム」など武将を強化するシステムは、実際にどんな効果を及ぼすか今のところよくわからない。武将システムはもう少し練り込めるのではないかと感じた。結局途中からどの武将がいいのか確信が持てないまま、新しい武将も入れずに戦い続ける、という形になってしまっている。武将の数はものすごく多いのだから、これを活かすシステムを作って欲しいところだ。

 ゲームを進めていくうちに、趙雲など有名武将も仲間にできるようだ。気になったのは、女性武将が極端に少ないところだ。女性モンスターなども出てくるのだが、これは仲間にできない。「ほのぼのモグウ日記」はかわいらしいキャラクターが大きなセールスポイントであり、女性キャラクターも是非連れ歩きたいところだ。

 1つ驚いたのは、最初に基本的な武器、防具は与えられるのだが、それより上の装備が出てこないところ。実は強い装備は、ソーシャルゲーム要素の「領地」と、インスタンスダンジョンの「黄巾の乱」で手に入る素材で合成するのだ。このことを知るまで、領地のメリットが見えにくかったのだが、ようやく使い方が見えたと感じた。この領地と生産の関係はもう少し導線が欲しかったが、自分で上級装備を作っていくというのは面白い。

 「黄巾の乱」は人気の高いコンテンツだ。募集をチャンネルを超えるワールドチャットで募集すると、あっという間に希望者が集まる。彼等の目当ては生産用の材料と、「黄巾の箱」というランダムボックス。この箱からはレア武将や強化アイテムが入手できる。このため、高レベルプレーヤーからの援助も得やすい。このゲームは序盤はかなりソロで進められるため知り合いが作りにくい。「黄巾の乱」でパーティーに参加し友達を増やすのもいいかもしれない。


スキルには必殺技があり、強化していくこともできる。右はボスの必殺技。スキルの演出も大きな楽しみだ
様々なキャラクターを武将にできる。スキル強化にはゲーム内マネーが必要で、結果的にはごく限られた武将しか強化できなくなるバランスだな、と感じた。多くの武将を状況に合わせて使ったり、合成の楽しさをもっと強調したり、ゲーム要素をもっと濃くしたアップグレードをして欲しい
カード収集や、敵のボスも仲間にできるなど、収集要素はとても充実している。右はインスタンスダンジョンの報酬「黄巾の箱」。この箱から出るレアアイテムを求める人も多いため、黄巾の乱は人気が高い


■ 課金アイテムはゲーム内マネーを節約するのに有効? ユニークなアバター要素も

イベントは曜日によって違うが1日1回限定なのが寂しいところ。1つのイベントはコアタイムを含めた形で1日に2回はやって欲しい

 「ほのぼのモグウ日記」では、レベル20を越えたからあたりからクエストで得られた回復薬を使い切ってしまう。このあたりから資金繰りが苦しくなってくる。敵のダメージは大きくなってくるし、スキルのレベルアップにもゲーム内マネーの銅貨が必要になる。しかしメインのクエストでは銅貨はほとんど得られない。このためフィールドの敵を狩る事になるのだが、敵の強さも跳ね上がっていて、ダメージが大きくうまく稼げない。

 ここで課金アイテムが有効になる。筆者が最も必要だと感じたのは「HP薬」で、65金貨(1金貨=1円)で500回使える。これを買うと銅貨で回復薬を使わずにすみ、節約になる。また装備強化の巻物も85金貨と比較的安いため、こちらも有用だと感じた。一方で、経験値増加などの定番アイテムは、逆にレベル30あたりでは必要ない感じだ。筆者の進め方にもよるとは思うが、せっかくレベルが上がったのに、複数の武将のスキルを上げられないのはもちろん、自分のスキルすら銅貨不足で育てられない。有効な金策を編み出さないといけないというのが現在の筆者の課題だ。

 この他課金アイテムではやはりガチャ系が目を引く。幼稚園の制服セットや、騎乗ペットが当たりで、1回86金貨。当たったプレーヤーはかなり目立つ。三国志世界に幼稚園児の格好というのはかなりインパクトがあるが、それも何となく許容してしまうのが「ほのぼのモグウ日記」という作品だと思う。こちらの今後にも注目したい。

 イベント関連にも触れておきたい。本作では毎日参加できるイベントが用意されているのだが、パズルなどユニークなイベントは昼12時だったり、夕方16時だったりと、社会人では休日にしか参加できないというところが気になった。これらは1日に数回、少なくとも21~24時というコアタイムにも開催すべきだと思う。

 「ほのぼのモグウ日記」は三国志演義にこだわり、開発者の独特の解釈が楽しめるストーリー重視型のMMORPGだ。特に複数のMMORPGを遊んだ人は、本作の「他の作品と同じにはしたくない」というこだわりを感じられるるだろう。イベント中のキャラクターのアクションや、演出も凝っていて、既存のシステムの追随だけでない、いろいろなことに挑戦しようという気概を感じる。多くの人に触ってもらいたい作品だ。


劉備の描き方や、充実したゲーム要素など注目点は多い。右は村人を配置して役人を迎えたところ。NPCを動かせたり、キャラクターのドラマが繰り広げられたり、MMORPGの表現を広げようという、開発者のやる気が感じられる
課金アイテムはアバター、便利アイテム、ガチャという定番。経験値増加などはキャラクターがかなり育ってから必要になる印象だ
馬や、園児服が当たったプレーヤーの姿も見かけた。様々なプレーヤーの姿や、連れている武将を見るのが楽しい



(2012年9月14日)

[Reported by 勝田哲也]