★ 3DSゲームレビュー★
10数年ぶりに蘇るハッカー達の戦い
快適な新機能や多数の改善で新作レベルに楽しめる1本
「デビルサマナー ソウルハッカーズ」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
/アトラス
開発元:
/インデックス
プラットフォーム:
  • 3DS
価格:
6,279円
発売日:
2012年8月30日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

 「真・女神転生」の流れを汲んだ外伝的作品「デビルサマナー」シリーズの第2作目として登場した「デビルサマナー ソウルハッカーズ(以下、ソウルハッカーズ)」が、ニンテンドー3DS用ソフトとして復活!

 「ソウルハッカーズ」は、1997年にセガサターン用、1999年にプレイステーション用がリリースされたRPGで、移植やアーカイブスなどでの展開がなく、実に13年振りに今世代のゲーム機でプレイできるようになった。

 また、この3DS版では「オリジナル版を尊重しながら、今の時代のゲームファンがより快適に、かつ楽しんで頂ける新たな要素を多数追加」されている。快適にプレイできるよう配慮された、新たな要素を紹介しつつ、「ソウルハッカーズ」のレビューをお伝えしていこう。


― Story ―

日本の一地方都市、天海市。

政府肝いりのプロジェクト「次期情報都市政策」のモデル地区に指定された天海市では、市民がインターネット上の都市「パラダイムX」でコミュニケーションやショッピングを楽しんでいた。

そんなある日、
ハッカーである主人公の少年は、「悪魔召喚プログラム」がインストールされた銃型携帯端末「GUMP」を偶然手にしてしまう。それと時を同じくして、天海市には神話上の空想物と思われていた「悪魔」が現われ始め、日常が少しずつ狂い始めていた。

少年はGUMPを手に、
ハッカー集団「スプーキーズ」のメンバーと協力し、
パラダイムXに隠された巨大な陰謀に立ち向かうことになる――。




■ ハッカーの少年が「GUMP」を手にし“デビルサマナー”へ。次々に現われる悪魔や奇妙な事件に立ち向かっていく

公衆回線からハッキングを試みる主人公とその幼なじみヒトミ。二人ともハッカーグループ「スプーキーズ」に所属するハッカーだ

 地方都市「天海市」。ここは政府より推進された「次期情報都市政策」のモデル地区であり、この天海市民の中でも特に選ばれた市民には、インターネット上の都市「パラダイムX」へ参加する権利が与えられていた。

 主人公はこの天海市に住む、一見ごく普通の少年。だが彼はスプーキーと呼ばれるリーダーを中心にしたハッカー集団「スプーキーズ」の一員であり、もちろん彼も“ハッカー”だ。そんな主人公が狙っていたのは、天海市でテストされているインターネット上の仮想空間「パラダイムX」への参加権利。公衆回線からサーバーへと不正アクセスし、権利の当選者一覧のひとつを自分の名前へと書き換えていく主人公だったが……。

 その頃、リーダーのスプーキーは、奇妙なPC端末を偶然にも手に入れていた。普段は銃の形をしていて、起動するモニターが二股に開くという、まるで見た事のない作りをした携帯端末「GUMP」。主人公がその「GUMP」を手にすることで運命は動き出す。「パラダイムX」へアクセスした主人公が垣間見る“Vision”、そこで主人公に問いかける謎の人物。時を同じくして、天海市には「悪魔」が現われはじめていた……。


インターネット上の仮想空間「パラダイムX」のテストを行なっている天海市。だがそこには、なにかキナ臭い背景が見え隠れする。それを主人公たちスプーキーズのハッカーが知り、事件に巻き込まれていくという独特な物語となっている
リーダーであるスプーキーが偶然手に入れた奇妙な端末。銃の形をしていて、トリガーを開くとモニターが二股にわかれる。その名も「GUMP」

ドラマ的なストーリー展開やキャラクターを見せる事に注力されている本作。アウトローな雰囲気が独特

 このようなストリーが展開される「ソウルハッカーズ」。「真・女神転生」の流れを汲んだ外伝的作品「デビルサマナー」シリーズの第2作目だ。

 「デビルサマナー」シリーズ(特に1作目とこの2作目)では、“ハードボイルド”テイストなストーリーが魅力となっており、キャラクターもよりドラマ的な描かれ方をしているところが特徴。シリーズ1作目では主人公がある事情を持った悪魔召喚士の探偵だったが、この「ソウルハッカーズ」ではハッカー集団の1人になっている。

 ハッカーという存在からしてアウトローな香りがすると思うが、主人公達スプーキーズの仲間はもちろん、彼らを助けてくれる存在もまた、アウトローな雰囲気が漂う人物ばかり。危険な匂いのする世界で、アウトローな存在である彼らが天海市に起こる異変に巻き込まれていく、というのが、おおまかなストーリーライン。独特なテイストを持った世界観となっている。

基本的に主人公とヒトミの2人で行動するが、スプーキーズのメンバーや、同じようにアウトローな裏の顔を持つ人々が2人を助けてくれる。画像はみなスプーキーズのメンバーで、左上がスプーキーズのリーダーであるスプーキー。右上がシックス、左下がランチ、右下がユーイチだ

こちらは天海市全体のマップ。ここから地域を選択し、その地域内の2Dマップから各施設の3Dマップへと移動していく
会話の見せ方は今世代のゲームにもよく見られる立ち絵を使ったもの。さらにフルボイス化もされている

 フィールドエリアは天海市全体のマップから地域を選んで移動し、その地域内では主人公のシンボルマークを動かして各施設に行くという2Dマップになっている。施設に入ると、3Dダンジョンになるという作りで、「真・女神転生」や「真・女神転生II」の流れを汲んだものだ。

 パーティーは最大6人になるが、基本になるのは、主人公と幼なじみのヒトミ(ネミッサ)の2人で、その他の4枠には召喚した悪魔が入る。このあたりも「真・女神転生」と共通しており、いわばアトラス(当時)によるRPG作品の伝統的なスタイルといえる。

 「真・女神転生」シリーズとは異なるポイントとして、先に書いたストーリーのテイストもそうだが、他のキャラクターとのやり取りがある。会話シーンでは今世代でもスタンダードな見せ方である“キャラクターの立ち絵を表示しての方式”になっているし、登場人物の魅力もビジュアル、ボイス、テキストで際立ったものになっている。

 ストーリーの中身、シナリオでは、現実世界と「パラダイムX」というネット上の仮想世界の存在、そしてハッカーというスキルならではの行動など、デジタルな側面もたくさん本作では描かれているが、今遊んでも存分に楽しめるものといえるだろう。

 ただ、さすがに世界設定の中で、特にテクノロジー周りやネット関連のものは、“1990年代から見た未来”と言えるところがあり、今からすると懐かしさは感じられる。そこも“逆に新鮮”とも言える「ソウルハッカーズ」にしかないようなテイストで、それもまた“個性的な作品”として楽しめるはずだ。

パーティーメンバーは最大6人。ターン制のコマンドバトルで、悪魔たち“仲魔”が上手く戦力になってくれるかがポイントだ

 戦闘はターン制のコマンドバトル。レベルをしっかりと高め、補助魔法をうまく使いつつ、剣、銃、魔法を使い分けてダメージを与えていく。仲魔の悪魔に指示を出せるが、本作には“仲魔との親密度”があり、指示に従ってくれないこともしばしば。親密度を高めるアイテムを与えて、戦闘が思い通りに展開できるようにしていくというのも醍醐味になってくる。

 戦闘での1番の魅力はやはり「悪魔との会話」だ。悪魔には様々な性格が設定されており、会話の流れやこちらに質問してくることも異なる。どの悪魔との会話もユニークでウィットに富んでおり、一筋縄ではいかないことも多い。この「真・女神転生」から長く続く要素も存分に楽しめる1本となっている。

 悪魔と会話の結果、仲魔にして、悪魔合体でより強力な悪魔を生み出していく楽しみも「真・女神転生」から続く魅力。造魔という「デビルサマナー」シリーズ特有の従順な僕のように働いてくれる造られた悪魔の存在もあり、さらに特殊合体の数々、そして剣合体もあり、「合体」の要素も奥深い。

 悪魔合体に関しては、3DS版では原作になかった「悪魔全書」と「剣全書」が搭載されている。マグネタイトを払うことで1度作った悪魔や剣を再入手できるので、合体をより気軽に、そして育成やコレクションがより楽しみやすくなっている。同時に難易度もかなり緩和されたと感じられる。


悪魔と会話をして仲魔に引き入れ、そして悪魔合体が行なえる「業魔殿」で複数の悪魔を合体させ、より強力な悪魔を作り出す。3DS版では「悪魔全書」と「剣全書」が搭載されたので、より楽しみやすくなっている

15年前のゲームとは言っても、会話の見せ方など手法はほとんど今も使われているもの。しっかりと刷新や改善がされているので新鮮に楽しめる
原作にもあったストーリー中に挿入されるムービーがあるのだが、こちらはさすがに映像の荒さを感じさせる。とはいえ、今でも充分に楽しめるもので、15年前の作品なのに結構がんばってる、という印象になるのではないだろうか

 「ソウルハッカーズ」は初代セガサターン版から数えると約15年前の作品であるが、3DS版ではさらに快適にプレイできるようたくさんの配慮がなされている。

 上画面はもちろんアスペクト比は16:9向けのものになり、3D立体視にも対応。ダンジョン移動中なら下画面にマップやメニューが表示されるのもプレイしやすいし、グラフィックスやフォントも3DSの解像度に合わせた、くっきりとしたものになった。キャラクターとの会話シーンでも原作より立ち絵が大きく表示されるようになっているなど、今遊んでも全く見劣りしない出来ばえ。

 さらに、主要な登場人物のセリフは「全編フルボイス」になっていることにより、よりキャラクターの魅力が際立っている。ちなみにボイスはボタン押しでスキップもスピーディーにできるし、ボイスのON/OFF機能もあるのでOFFにすれば原作通り。むしろ、レスポンスの改善がなされているので原作以上に快適に遊べる。

 こうした改善も多くなされているので、原作からして元々今風な作品だったものが、さらに今遊んでも見劣りのないものになっている。初めて遊ぶ人にとっても、15年前の作品の移植というよりも、“今世代の新作レベル”で楽しめるだろう。



■ 3DSだけの要素に、難易度自由自在な「COMPハック」、「エキストラダンジョン」、「すれちがい通信要素」を搭載

 この3DS版では、より快適にプレイできるように機能が追加されているほか、「エキストラダンジョン」や「すれちがい通信」機能を使った新しい楽しみもある。

・「COMPハック」でゲームそのものをハック!! 難易度をガツンと下げてプレイ可能

難易度を自由に変更できる「COMPハック」。これを全部使えば楽勝で、手軽にサクサクプレイできる

 「ソウルハッカーズ」の難易度バランスは、なかなかにシビアなものがあった。もともと当時のアトラス作品は歯ごたえのある難易度を持った作品が多く、「ソウルハッカーズ」もそのひとつだったと言える。

 そこでこの3DS版には、大胆な機能が追加されている。「COMPハック」というタッチパネル画面をタッチすると呼び出せる機能で、以下のような設定項目がある。


・「難易度ハック」 難易度を調節できる
・「オートマッピングハック」 まだ進んでいないマップも最初から全表示
・「パーティー属性ハック」 属性の縛りをなくして自由に悪魔を呼び出せる
・「デビルアナライズハック」 初めて出会った悪魔でも詳細情報が見られるようになる

 直接的にゲームの難易度を大きく変化させる機能の数々で、これらを全てオンにし、難易度も下げれば、初めて会う悪魔の情報が見え、ダンジョンのマップも入った時点で全体の把握ができ、パーティーに呼び出せる悪魔も自由自在。3DダンジョンもののRPGが苦手という人でも、シリーズ作品を遊んだ事がなくても、昔のゲーム特有の歯ごたえというのも、全て1発で乗り越えられる。

 また、この「COMPハック」はプレイ中いつでも変更ができるので、機能を都度切り替えることで自分の遊びやすい難易度にしたり、むしろ難易度を高めてより歯ごたえのあるプレイをするということもできる。「パーティー属性ハック」は、自分の作った悪魔をより自由にメンバーに入れられるということで、楽しみ方も広がる機能だ。


・葛葉ライドウをはじめ、歴代デビルサマナーが総出演する「エキストラダンジョン」

 本編のクリア後に楽しめる難関マップ「エキストラダンジョン」も見逃せない。ここにはなんと、シリーズに登場した、初代「真・女神転生 デビルサマナー」の“あの人物”や、PS2「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団」、「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王」に登場した葛葉ライドウ&葛葉雷堂も出現する。シリーズの主人公サマナー総登場という、スペシャルダンジョンだ。


・「すれちがい通信」で悪魔「ネメッチー」を育てれば、新規悪魔もゲットできる!

すれ違い通信で成長する悪魔「ネメッチー」。すれ違うことで「デビルソウル」が手に入り、ネメッチーも様々な姿に変化していく

 3DSと言えば「すれちがい通信機能」による遊びの追加も気になるところ。本作では「ネメッチー」という、「ソウルハッカーズ」を遊んでいる人とすれ違うほどに成長していくオリジナルの悪魔がいる。

 すれちがい通信によって、人々(他のプレーヤー)の「デビルソウル」を集めることができ、ソウルが集まるとネメッチーは様々な姿に成長していく。また、ネメッチーにももちろんボイスがついていて、ボイスも姿の変化とともに変わっていくので、そこも見所といえる。

 このネメッチーが成長すると、オリジナルの悪魔を召喚してくれるのがすれちがい通信の大きな魅力で、その数は全30種類。そのオリジナル悪魔たちのグラフィックスは他の「真・女神転生」からのものになっていて、所持している能力も特殊なものばかり。オリジナル悪魔をもらうには、デビルソウルを支払うのだが、3DSの歩数計機能でもらえる「ゲームコイン」を換金してデビルソウルにすることも可能だ。


左が初期状態のネメッチーなのだが、中央と右の画像のような姿に変化するかは、プレーヤー次第。ボイスももちろんあるが、姿が変わると声も変わっていく



■ アウトローで危険なテイスト漂う独特なRPG。アトラス作品の魅力を掴める良作

 主人公が所属するハッカーグループや、ネットを推進する天海市に現われる悪魔、奇妙な事件の数々と、アウトローな、危険な香りのするハードボイルドなテイストが魅力の本作。10年以上前の作品ではあるが、元より手法が今風だし、グラフィックスも刷新。今遊んでもストレスがないように数多くの改善がなされている。

 当時は「真・女神転生」の外伝というスタンスが色濃かった作品でもあって、「真・女神転生」ファンで未プレイの人にもオススメできる。もちろん「真・女神転生」も含めてアトラス作品をあまり遊んだ事がない人でも、悪魔との会話、そして悪魔合体など、独自の魅力を知っていく入口になれる作品だろう。原作を当時にプレイしたという人にも、プレイしたことがないという人にもオススメできる1本だ。


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(2012年 9月 15日)

[Reported by 山村智美 ]