PCハードウェアレビュー

省スペースながら標準で「GeForce GTX 480」を2枚搭載
フラッグシップクラスのパフォーマンスを発揮

「NEXTGEAR-MICRO im800PA1-SP2」



 マウスコンピューターが発売するゲーミングPC「G-Tune」シリーズ。搭載CPUやビデオカードの異なる様々なモデルが用意されているが、新たにトップレベルのゲーミングパフォーマンスと省スペース性を兼ね備えた最新モデルが追加された。それが「NEXTGEAR-MICRO」シリーズだ。今回、NEXTGEAR-MICROシリーズのフラッグシップモデルである「NEXTGEAR-MICRO im800PA1-SP2」を試用する機会を得たので、詳しい仕様やパフォーマンスをチェックしていこう。

 なお、実は現状この製品は完売状態となっている。この点についてマウスコンピューターは「本製品は完売状態となっております。販売再開は2011年1月上旬から中旬を予定しております」と回答している。



■ microATXマザーボードとミニタワーケース採用で省スペース性を実現

ゲーミングPCとしてはコンパクトな、196×430×417mm(幅×奥行き×高さ)のミニタワーケースを採用している

 ゲームプレイの快適さを追求したゲーミングPCでは、ハイエンドクラスのCPUに加え、ハイエンドクラスのビデオカードを複数枚搭載することが珍しくない。ただ、ハイエンドクラスのCPUやビデオカードは非常に発熱が大きく、長時間高負荷がかかり続けるゲームプレイ中でも安定して動作するよう、ケースはしっかりとしたエアフローを確保し、効率良く熱を排出できるようにする必要がある。しかも、ハイエンドクラスのビデオカードはサイズが巨大だ。そのためゲーミングPCでは、複数枚の大型ビデオカードを余裕で取り付けられる空間的な余裕があるとともに、大型のケースファンが取り付けられるという利点から、フルタワータイプの大型ケースを採用する場合が多い。

 しかし、日本の住宅事情を考えると、フルタワータイプの大型ケースは設置が厳しいのも事実。そのため日本では、フラッグシップクラスのパフォーマンスを維持しながら、小型化を追求したゲーミングPCも数多く存在している。今回紹介する「NEXTGEAR-MICRO im800AP1-SP2」(以下、im800AP1-SP2)も、そういった趣旨の製品で、microATX仕様のマザーボードとミニタワーケースを採用することで、フラッグシップレベルのパフォーマンスと、コンパクトなボディを両立させている点が最大の特徴となる。

 採用しているケースは、台湾IN-WIN製の「Dragon Slayer」というケースをベースとした、マウスコンピューターオリジナルモデルだ。サイズは、196×430×417mm(幅×奥行き×高さ)と、microATX仕様のミニタワーとしてはやや大きいが、一般的なミドルタワーケースとほぼ同等のサイズで、フルタワータイプのゲーミングケースに比べると圧倒的にコンパクト。これなら、設置場所に苦労することも少ないはずだ。

 ケース内部は、ドライブベイをケースの上下に分けることで、マザーボードの拡張スロット部を妨げないように工夫されており、コンパクトながら最大320mmの拡張カードも余裕を持って搭載可能となっている。また、前面に14cmと8cmの吸気ファンに加え、後部上面に14cm、背面に9cmの排気ファンと、標準で4個のファンを搭載するとともに、ケース前面と左側面パネルをメッシュ構造とすることによって、ケース内の優れたエアフローを実現。しかも、前面の14cmファンはマザーボードの拡張スロット正面に、8cmファンはケース下部3.5インチベイ正面にそれぞれ配置されており、ビデオカードやHDDを効率良く冷却できるよう工夫されている。加えて、ケース前面のメッシュパネルは簡単に着脱できる構造となっており、ホコリなどによる目詰まりのメンテナンスも容易だ。

 ドライブベイは、5インチベイ×1、3.5インチベイ×1、3.5インチシャドウベイ×2、2.5インチシャドウベイ×1と、さすがにフルタワータイプのケースに比べると少ない。ちなみに、「im800AP1-SP2」では、標準で光学式ドライブ、HDD、SSD2台、メモリカードリーダーが搭載されており、全てのドライブベイが埋まっている。

正面はドライブベイより下の部分がほぼ全面メッシュ構造となっており、優れたエアフローを実現メッシュ部分は簡単に取り外してホコリなどの掃除が可能な構造となっている左側面も、ほぼ全面がメッシュ構造となっている。また、このメッシュ部分には12cmファンを4個取り付けられるようになっており、ケース内のエアフローをさらに高めることも可能
内部は、マザーボードの拡張スロット部に大きな空間が確保され、320mmの大型拡張カードに対応。2スロット占有のハイエンドビデオカードの2枚搭載も余裕だ前面の14cm吸気ファンは、拡張スロット正面に位置しており、吸い込んだ外気で直接拡張カードを冷却できるよう工夫されている。8cmファンは3.5インチシャドウベイ前方に位置し、HDDを効率良く冷却する後方上部の14cmファン、背面の9cmファンと2個の排気ファンを備え、前面の2個の吸気ファンと合わせ、効率のよいケース内エアフローを実現している




■ 標準でGeForce GTX 480を2枚搭載

 コンパクトなケースを採用しているものの、その中身はフルタワーケース採用のフラッグシップゲーミングPCに一切負けていない。

 まず、CPUには現時点で最強のパフォーマンスを誇る、6コア12スレッド処理対応の「Core i7-980X Extreme Edition(3.33GHz/3.60GHz)」を搭載。標準でも非常に優れた処理能力を発揮するが、CPU内部の動作クロック倍率がフリーとなっており、しっかりとした冷却システムを用意すれば、オーバークロックにより、さらなるパフォーマンスアップも目指せる。また、メインメモリは標準で24GBと、圧倒的な容量を搭載。メモリ不足でスワップが発生し、パフォーマンスが低下するという懸念も皆無だ。

 ビデオカードは、標準で「GeForce GTX 480」カードを2枚搭載した、NVIDIA SLI構成を採用。GeForce GTX 480は、NVIDIAのDirectX 11世代GPUシリーズであるGeForce 400シリーズのフラッグシップモデルだ。すでに、上位モデルとなるGeForce 500シリーズが登場済みではあるが、GeForce GTX 480のパフォーマンスが大きく見劣りすることはなく、しかも2枚搭載によるNVIDIA SLI構成となっていることを考えると、十分にフラッグシップレベルのパフォーマンスが発揮されると考えていい。

 また、CPUやビデオカードだけでなく、ストレージ構成も飛び抜けている。HDDには、容量2TBのドライブを採用するとともに、システムドライブとして、高速なアクセス速度で定評のあるインテル製SSD「Intel X25-M Mainstream SATA SSD」の80GBモデルを2台、RAID 0構成として搭載している。OSやゲームプログラムをRAID 0構成のSSD上にインストールすることによって、ディスクアクセス時のストレスを低減。実際のアクセス速度も非常に高速で、OSやゲームの起動が超高速なのはもちろん、ゲームプレイ中もディスクアクセスを意識するシーンが非常に少なくなるのは嬉しい。

 そのうえで、前述したように、ケースの優れたエアフローにより、コンパクトなケースにこれだけのハイエンドスペックを積み込みながら、非常に安定した動作を実現。実際に、長時間高負荷をかけてみても、CPUやビデオカードの動作が不安定になるということは全くなかった。しかも、このフラッグシップスペックを安定して稼働できるよう、容量1,200wの大容量電源ユニットが標準搭載されている点も見逃せない。ケース内に熱がこもったり、電源容量不足で動作が不安定になる心配は全くなく、安心して長時間プレイが可能と考えていいだろう。

CPUは、現時点でのIntel製CPUフラッグシップモデルとなる、Core i7-980X Extreme Editionを採用ビデオカードは、標準でGeForce GTX 480カードを2枚搭載し、NVIDIA SLI構成を実現しているメインメモリは、4GBのPC3-10600 DDR3 SDRAM DIMMを6枚、計24GBを標準搭載

ストレージデバイスは、インテル製SSD、Intel X25-M Mainstream SATA SSDの80GBモデル2台をRAID 0構成で搭載するとともに、2TBのHDDも搭載光学式ドライブは、ブルーレイドライブを標準搭載する




■ 27型の大型液晶ディスプレイが付属

オプションで用意されている、27型ワイド液晶のProLite E2710HDS。2msと高速な応答速度でゲームプレイに最適だ

 「im800AP1-SP2」は、本体のみの販売が基本ではあるが、液晶ディスプレイ付属モデルも用意されている。今回試用したのは、その液晶ディスプレイ付属モデルで、iiyamaの「ProLite E2710HDS」が付属していた。

 27型の大型液晶パネルを採用しており、デスク上に設置した通常のゲームプレイスタイルであれば、視野のほとんどを画面が占めることになり、ゲームプレイ時の迫力は圧倒的だ。大型パネル採用ながら、スリムボディで省スペース性に優れる点も嬉しい。また、オーバードライブ機能により、2msと非常に高速な応答速度を実現している点も大きな魅力。高速な描画を伴うゲームの映像を表示させても、ほとんど残像が気にならず、非常に快適なプレイ環境が得られる。加えて、パネル表面が非光沢処理となっており、外光などの映り込みが全く気にならない点も、快適なゲームプレイを実現するという意味で大きなポイントだ。

 パネルにはTN方式パネルを採用しているものの、表示品質は十分に優れており、ゲームはもちろん、デジカメ画像やBlu-rayなどの動画も高品質で楽しめる。「im800AP1-SP2」とみ合わせて、快適なゲームプレイ環境を構築するのに最適な液晶ディスプレイと言っていいだろう。



■ まさしくフラッグシップクラスのパフォーマンスを発揮

 では、パフォーマンスをチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」、「ロストプラネット2ベンチマーク」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XIV Official Benchmark」を利用した。また、比較用として、筆者が利用している自作PCでも同じテストを行なった。その自作マシンの仕様は表にまとめたとおりだ。

 筆者が利用している自作マシンは、ゲーミングPCとしてみると、エントリークラスと言っていいほどのスペックだ。「im800AP1-SP2」とのスペック差はあまりにも大きく、ベンチマークテストの結果にも大きな差がある。ここまでの差があると、比較として横に並べるのが失礼と思ってしまうほどだ。

 また、「バイオハザード5ベンチマーク」や「ロストプラネット2ベンチマーク」では、8xアンチエイリアスをかけるなど、あえて高負荷となる設定で実行しているが、それでも十分快適にプレイできるパフォーマンスが発揮されていることがわかる。これなら、現時点で登場済みのゲームはもちろん、将来登場してくる、より処理の重いゲームでも、十分快適にプレイできると考えて良さそうだ。

 ちなみに、試用機の標準設定では、CPUクーラーの動作音がやや大きく、システム全体の動作音はかなりうるさく感じた。しかし、マザーボードのBIOSメニューから、CPUファンの回転数制御の設定を見直すことで、うるささを低減できることも確認できた。ケースファンや電源ユニットの音は十分に静かなので、静音性を追求したいなら、静音性に優れるCPUクーラーに交換すればいい。とはいえ、ゲーミングPCはうるさいのが普通、と考えている人であれば、BIOSメニューでCPUファンの回転数制御の設定を見直すだけでも、十分に満足できるはずだ。

 これだけのハイエンドスペックを詰め込んだ「im800AP1-SP2」は、販売価格が359,940円とかなり高価だ。とはいえ、スペックやパフォーマンスを見ると、この価格も十分に納得できるはずだ。

 また、魅力的なのはわかるけど、この価格はちょっと厳しいという人には、スペックを落とした安価なモデルをおすすめしたい。NEXTGEAR-MICROシリーズは、109,830円のモデルからラインナップされている。しかも、最も安価なモデルでも、CPUにCore i7-950、ビデオカードにGeForce GTX 460搭載カードが採用されており、ミドルレンジクラスのパフォーマンスを確保。もちろん、BTOで搭載スペックを自由にカスタマイズでき、ケースは全モデル共通だ。予算に、目的にあったスペックにカスタマイズして購入できるという点も、NEXTGEAR-MICROシリーズの魅力だろう。

 フラッグシップクラスのパフォーマンスを持ちながら、コンパクトなゲーミングPCが欲しいという人はもちろん、コストパフォーマンスに優れるゲーミングPCが欲しいという人まで、広くおすすめしたい製品だ。

【ベンチマーク】
 NEXTGEAR-MICROシリーズ インテルX58 & NVIDIA GeForce搭載モデル プラチナモデル自作PC
CPUCore i7-980X Extreme Edition (3.33/3.60GHz)Core i5-750(2.66/3.20GHz)
チップセットIntel X58 ExpressIntel H55 Express
ビデオチップGeForce GTX 480×2枚 SLIRadeon HD5770
メモリ24GB4GB
HDD80GB SSD(Intel X25-M Mainstream SATA SSD)×2 RAID0、2TB HDD(Hitachi HDS722020ALA330)1TB HDD(Western Digital WD10EARS)
OSWindows 7 Professional 64bitWindows 7 Professional 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark SuiteN/A7366
Memories Suite119656173
TV and Movies Suite77024918
Gaming Suite199959131
Music Suite180036200
Communications Suite175826684
Productivity Suite201586969
HDD Test Suite354283479
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/A
CPU Score111589612
Memory Score1025110195
Graphics Score2282314702
HDD Score392226784
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット
3DMark Score2274110453
GPU Score185509827
CPU Score面7059512924
3DMark06 Build 1.1.0 0906a 1,024×768ドット
3DMark Score2332516097
SM2.0 Score84116491
HDR/SM3.0 Score112217568
CPU Score72854361
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.77.3
メモリ7.77.5
グラフィックス7.97.4
ゲーム用グラフィックス7.97.4
プライマリハードディスク7.95.9
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット200949632
1,920×1,080ドット104125452
バイオハザード5ベンチマーク DX10
(アンチエイリアス:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高)
1,280×720ドット(ベンチマークテストA)179.898.2
1,280×720ドット(ベンチマークテストB)146.696.5
1,920×1,080ドット(ベンチマークテストA)112.158.8
1,920×1,080ドット(ベンチマークテストB)116.566.0
ロストプラネット2ベンチマーク DX11
(アンチエイリアス:CSAA8X、モーションブラー:on、影品質:HIGH、テクスチャ品質:HIGH
演出レベル:HIGH、DirectX11 Feature:HIGH)
1,280×720ドット(ベンチマークテストA)75.323.0
1,280×720ドット(ベンチマークテストB)58.420.6
1,920×1,080ドット(ベンチマークテストA)49.818.6
1,920×1,080ドット(ベンチマークテストB)42.515.0
FINAL FANTASY XIV Official Benchmark (ヒューラン 男)
LOW ウィンドウ65424558
HIGH ウィンドウ43312571
LOW 全画面66764613
HIGH 全画面44242654

(2010年12月21日)

[Reported by 平澤寿康 ]