Wiiゲームレビュー

原点回帰でありながら新しい?
誰もがアクションの爽快感が楽しめる新「メトロイド」!

「METROID Other M」

  • ジャンル:アクションゲーム
  • 発売元:任天堂
  • 開発元:コーエーテクモゲームス Team NINJA
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:Wii
  • 発売日:発売中(9月2日発売)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 ファミコンでデビューして以来、その独特な世界観と雰囲気で日本のプレーヤー達を圧倒させたゲーム、「メトロイド」。アクションというジャンルにSF的なストーリー、キャラクター、舞台を合体させた、任天堂の不朽の名作だ。ゲームボーイで発売された2作目よりも、スーパーファミコン用に作られた3作目が、新たなスタンダードを確立させた。難易度のバランス、マップ機能の追加、グラフィックスの向上、やり込み要素の増加、新たな武器の使用など、続編が出る度に「メトロイド」シリーズは新要素を迎えながらどんどん強化していった。

 そして、アメリカのRetro Studiosが担当した「Metroid Prime」シリーズでは、「メトロイド」が3Dの世界に引っ越した。主人公、サムス・アランが探索する惑星が全てポリゴンで表現されており、そしてアクションはFPS(ファーストパーソンシューター)のように1人称視点で展開していた。革新的とも言える変化を遂げた「Metroid Prime」シリーズだが、「メトロイド」の魂は確かに受け継がれていた。1作目と2作目はニンテンドーゲームキューブ用に開発されたが、3作目はWiiで発売された。Wiiリモコンとヌンチャクを使った直感的な操作がセールスポイントのはずだったが、実際に遊んでみると、多くの動作とボタンの使用を必要とした操作システムは、僕には直感的という形容詞に適していなかったと感じられた。FPSに寄り過ぎていたのと、操作が複雑化したという2つの理由で、僕はこのシリーズから離れていった。DS版「メトロイド プライム ハンターズ」がリリースされても、その違和感を完全にぬぐうことはできなかった。

 しかし、今年の9月2日に、「メトロイド」の歴史を変える、重要なターニングポイントがあった。それが「METROID Other M」の発売日だった。タイトルが「別のM」と謳っているが、おそらくこれほど忠実な「メトロイド」は存在しないと思う。そう。「Prime」が理由で「メトロイド」シリーズから距離を置いていたプレーヤーの為に作られた、夢の作品。

 キャッチコピーは非常に興味深いものだ。「最新技術を使ったファミコンゲーム」。最初は「まさか!」と半信半疑だったが、ゲームをクリアした今では、このキャッチコピーの完璧さに思い知らされた。約束通り、これはWiiにとっての最高水準のグラフィックスで展開する、昔懐かしの「ファミコン」ゲームだ。つまり、グラフィックスが現代のスタンダードに従う豪華さを持っているのに、遊びの軸は“2D”のままだ。主に2つのボタン(ビームとジャンプ)と十字ボタンで遊べる。ストレスとなる複雑な動作が一切要求されていない。そして、何よりも驚いたのが、こんなに遊びやすくなったのに、何も犠牲にせずに「メトロイド」のエッセンスが見事に宿っているということだ。さらに、開発を担当したコーエーテクモゲームスのTeam NINJAの個性も凝縮されている。本作のすごさをもっと知る為にはこのレビューをじっくり読むしかない!


■ 最初のメトロイドから、今回の物語まで

 過去の出来事。バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)のサムス・アランが、メトロイドという宇宙生物を殲滅するというミッションを引き受ける。クイーンメトロイドを倒すことに成功するが、その赤ん坊であるベビーメトロイドは社会に貢献できるであろうと思い、銀河連邦へ持ち帰ることにする。

 科学的な実験でベビーメトロイドから社会に貢献できるようなエネルギーが得られることが判明する。しかし、研究の最中に銀河連邦の施設が、マザーブレインが率いるスペースパイレーツによって襲撃され、ベビーメトロイドが敵の手に落ちてしまう。スペースパイレーツが向かった先は、マザーブレインが支配する要塞惑星、ゼーベスだった。

 サムスは敵を追いかけ、惑星ゼーベスに到着する。長い冒険と探索の末、マザーブレインが潜んでいるエリアに突入。しかし、その圧倒的なパワーの前に、サムスが致命的なダメージを負ってしまう。死の淵に立たされたサムスが、ベビーメトロイドによって救われる。ベビーメトロイドが、サムスのことを自分の母だと思い、彼女を庇ってくれたのだ。そして、マザーブレインを倒す為のパワーも与えてくれた。

 空前絶後の戦いがとうとう終わった。人間の脅威だったスペースパイレーツやゼーベス星人が全滅した。サムス・アランを殺そうとしたクイーンメトロイドやマザーブレインは、もうこの世から消え去った。そして、サムスを守ったベビーメトロイドも、クイーンメトロイドの攻撃に巻き込まれ、無残に砕け散ってしまった。ミッションを無事にクリアし銀河連邦に戻ったサムス・アランは、久々の平和を味わう……はずだった。

 ある日、スターシップで航行中のサムスは、辺境宙域から発せられた謎のシグナルを受信する。「Baby’s Cry」。赤ん坊の泣き声を意味するそれは典型的な救難信号だった。宇宙の知らない場所で、今、誰かが、サムスの助けを必要としている。考えるまでもなく、自分の本能と直感に従ったサムスは、シグナルの元へ向かうことにした。

 シグナルが発信された場所は、宇宙塵が漂う広大な暗礁宙域だった。その中央に位置していたのが、瓶の形に似た大きなコロニー、通称「ボトルシップ」だった。それはもう破棄された施設のはずだったが、どうやら誰かの手によって活動が再開されたようだ。調査が必要と判断したサムスが、中に進入することに。前代未聞の悲劇が始まろうとしていたことを知らずに……。

マザーブレインとの戦いから生還したサムス・アランが、銀河連邦の施設で検査を受けている銀河連邦議会の上官達にミッションの遂行を報告するサムス・アラン
バウンティ・ハンターの活動を再開したサムスが、航行中に謎の救難信号を受信する。発信された場所は、ボトルシップという巨大な宇宙コロニーだったボトルシップのドックに着陸した瞬間に、サムスは1人じゃないことに気が付く。そのすぐ隣には、銀河連邦軍のロゴが入った宇宙艦艇が……


【メインキャラクター&ステージ紹介】
サムス・アラン
鳥人族から受け継いだパワードスーツを着用し、数々のミッションをクリアしてきたバウンティ・ハンター。過去には銀河連邦軍に在籍していた時代もあった
アダム・マルコビッチ
銀河連邦軍の司令官。サムスが連邦軍に在籍していた頃、彼は上官だった。聡明だが、冷酷な一面も見せる。ボトルシップでの調査中、サムスと再会を果たす
アンソニー・ヒッグス
銀河連邦軍に所属するベテラン兵士。サムスとは元同僚。サムスのことを「プリンセス」と呼ぶ口癖がある
ボトルシップ
本作の舞台は4つのセクターに分かれた巨大なコロニーだ。各セクターが、極寒や灼熱など、惑星の環境を人工的に再現している。なお、各セクターへの移動は、エレベーターで行なわれる


■ Wiiリモコンを持ち替えることで直感的になった操作システム

 本作は今までなかったような斬新な操作方法を提供している。Wiiリモコンを横持ちする時は全身のサムスを客観視点でコントロールするが、Wiiリモコンを縦にして画面に向かってポイントすると、瞬時に1人称視点に切り替わり、ミサイルで敵を撃てるようになる。状況に応じて、Wiiリモコンを持ちかえる必要があるわけだ。

 横持ちでプレイする時はサムスが全身で表示されている。これは「基本ビュー」と呼ばれる。カメラが自動的に主人公の動きを追い掛けていくので、サムスの移動だけに集中できる。カメラの自動化のおかげで、周囲の環境が3Dなのに、2Dの感覚でフィールドの探索が楽しめる。つまり、「キャラクター移動と同時にカメラも操作するのが面倒くさい」と嘆きのプレーヤーも、一切ストレスを感じることなく、3Dの環境を探索できるということだ。

 Wiiリモコン1つで全ての操作ができてしまうこのゲーム。十字ボタンでサムスを好きな方向に動かせる。1ボタンでビーム発射(押し続けるとチャージし、一定以上チャージすると強力なビームを撃つこともできる)、2ボタンでジャンプ。そして、Aボタンでシリーズのトレードマークにもなったと言える、あの有名な“モーフボール”に変身するのだ。基本的な操作はこれだけ。ゲームが進むにつれ、新しいアクションや武器が追加されるが、Wiiリモコンのボタンはもちろん増えないから、ある工夫が必要だった。

 その1つは、Wiiリモコンの持ち替えだ。「基本ビュー」の時はビームしか撃てないが、主観視点の「サーチングビュー」になると、ミサイルも撃てるようになる。Bボタンで敵をターゲットにしてからAボタンを押すと、ミサイルが発射される。過去の作品で複雑な動作を必要としていたコマンドが直感的になったお陰で、もっとスムーズに、もっと気持ちよく、探索と戦闘を楽しめるようになったと言える。

「基本ビュー」の時のプレイ感覚は昔の2D作品によく似ているWiiリモコンを画面にポイントすると、主観視点の「サーチングビュー」に切り替わる。切り替わる早さはすごいと思ったボタンを押す瞬間にビームが発射される。その2D的な早さを3Dに変換する為に、開発チームが苦労したという
サムスは上に続く狭い通路を発見した。普通の形態では入らないが……Aボタンを押すとモーフボールに変身し、あの通路に入るのに丁度いい大きさになる通路の向こうにサムスを待っているのは一体何だろう?あの独特なワクワク感を感じながら、ボールを転がし続けるしかない……


 もう1つの工夫は「センスムーブ」という。敵とのバトルで、このコマンドのすごさがフルに発揮される。よくアクションゲームではLやRボタンを押すことで敵の銃弾をかわす為の“横転”が実行できるが、本作ではそれが、誰もが簡単にできるようにもっとシンプルに行なえるようになった。ビームを食らう直前に十字ボタンのどれかの方向を“本能的に”入れると、サムスは瞬時に横に転んで、敵のアタックをかわす。通常はサムスの移動に使われる十字ボタンだが、この瞬間だけは「かわし」に変化する。ちなみに「センスムーブ」は特にボスとの戦闘で大きな役割を果たしているので、マスターすることが非常に重要になる。さらに、1ボタンを押しながらセンスムーブを発動させることもできる。この際、ビームのチャージが通常より早くなり、1回攻撃を避けるだけでもすぐにフルチャージしてくれるのは便利だ。

攻撃される直前に十字ボタンを押すというのは、人間の本能に従う反応だ。「センスムーブ」のお陰で、この恐ろしいモンスターに食われずに済んだ……今回は「センスムーブ」は失敗したようだ。サムスは敵に捕まえられてダメージを受けている触手のようなものがサムスを襲おうとしている。ここでも「センスムーブ」を使うべきだ!


■ 病みつきになる、探索型エンターテインメント

 「メトロイド」シリーズの面白さの半分は、未知の惑星(本作の場合、コロニー)を探索することだと思う。新しいエリアに足を踏み入れる度に、独特なスリルを味わえる。そして、各部屋に隠されたギミックや隠し通路を探すのも、「メトロイド」シリーズの醍醐味の1つだ。

 今回の「Other M」でも探索パートが大きな割合を占めている。ステージが緻密な3Dで表現されているので、当然ながら探索の仕方も進化した。壁や地面の気になる場所を見つけると、Wiiリモコンをポイントすれば、一瞬にして「サーチングビュー」に切り替わり、調べられるようになる。照準をターゲットに合わせてBボタンをしばらく押し続けると、対象物についての情報が表示される。例えば、スーパーミサイルで壊せるものだったら、スーパーミサイルのアイコンが表示される。やり方は変わったものの、フィーリングは昔の「メトロイド」と全く同じだ。

遠くに機械のようなものを発見。照準を合わせてみると近付くと操作できるという情報が表示された。早速行ってみよう!端末をいじってみると、空に変な歪みが現われた。どういうこと?
「基本ビュー」では隠し通路を見過ごしがちなので、怪しいところでは「サーチングビュー」に切り替えてみよう壁にポイントしてみると、「ノーマルミサイル」の文字が現われた。それを発射すると…………狭い通路が現われた。あのモーフボールの出番だ!


 「サーチングビュー」の時はギミックや扉だけでなく、例えば人物や、敵の死体も調べられる。やり方は他の対象物と全く一緒だ。Bボタンを押しながら人物にリモコンをポイントすると、基本的な情報が表示される。「Prime」シリーズで見られた機能にとてもよく似ているが、今回はスキャン可能な場所が少ないし、ゲットする情報が名前程度なので、ゲームのリズムを損ねずに調査をスムーズに進めることができるようになった。

 しかし、本音を言うと、調べられる場所をもう少し増やして欲しかったと思えるシーンがあった。例えば、実験室の地面に書類が見つかるときがあるが、連邦軍の兵士がそれに注目しているのに、その内容が調べられないということに対して少し不満を感じた。「Prime」シリーズは逆にスキャン可能なターゲットが、これでもかというほど用意されていたが、本作では少なすぎると、正直に思った。その間のバランスが丁度よかったのかもしれない。

周辺の捜査を目標にしたパートでは、カメラがサムスの背中に近付き、スリル満点の視点に切り替わるこの独特なパートの時だけはサムスは走れない。ゆっくり薄暗い廊下を進むことになる。ホラーゲーム的なサスペンスが味わえる
連邦軍の兵士達が何かに注目しているようだが……サーチングビューに切り替えても、兵士達の名前しか調べられない。その注目していたものとは、一体何だったのだろう?


 複数のセクターに分かれた「ボトルシップ」だが、複雑に入り組んだエリアもあるので、方角を間違えない為にもマップ機能が非常に役立つ。Wiiリモコンの+ボタンを押すと、マップ画面が開くようになっている。また、開いた状態で+/-ボタンを押すと、拡大・縮小が可能なので、気になるところを細かくチェックできる。さらにミサイルタンク、エネルギータンクなどのアイテムの位置も表示されているので、マップのヒントは非常に助かる。とはいえ、あえて平面なマップなので、上下関係まではわからないようになっている。「サーチングビュー」での細かいチェックも必要になるわけだ。隠し扉の奥に隠されたアイテムや通常視点では見えないギミックを見つけるのが、本作の大きな楽しみの1つと言えるだろう。

 探索の幅を拡大させる方法は、相変わらず、サムスのパワードスーツの武器と機能の数々。これまでの「メトロイド」作品では探索中にボムやミサイルなどの武器を発見してその場で装着というシステムだったが、今回のサムスは最初から全ての機能が揃ったパワードスーツを持っているという設定なので、従来のシステムが実現できなかったわけだ。とはいえ、ゲームの最初から全ての機能が使えるわけでもない。冒頭ではモーフボール、ボム、ミサイルといった、限られた機能しか解除されていない。

 そう、今回のキーワードは“解除”だ。サムスは、銀河連邦軍の司令官、アダムの下で動いているので、許可された武器や機能だけを使用できるわけだ。「なぜ、探索に必要と気付いた時も、スーツの機能を自分で解除できないの?」という無理を感じる場面もあるが、今回はストーリーが重要な役割を果たしているので、他の選択がなかったのかもしれない。個人的には従来のスタイル(見つけて、拾って、装備)を好み続けるが、「Other M」だから、常識が少し変わってもいいと思った。

マップにはアイテムだけでなく、次に向かうべき目標地点やセーブポイントも表示されている。探索しながらのチェックは必要不可欠アダム司令官から、熱気からのダメージをカットするバリア機能の解除が許可された。重要な機能の解除が遅くなることは少し気になったグラップリングビームが解除されると、浮遊する装置にぶら下がって、崖や障害物を飛び越えられるようになる


■ Team NINJAらしい爽快感溢れるアクションパート

 アクションゲームに定評のあるTeam NINJAの手によって「METROID Other M」のアクションパートは、深みが増した。そう。今までの「メトロイド」シリーズになかったが、でも、ずっと前から導入して欲しかった“プラスアルファ”要素が、たっぷりと入っている。おそらく任天堂が懸念していたことは、アクションの増加で「メトロイド」らしさが失われるのではないかということだったと思う。会議と意見交換が連発したであろう3年間という長い開発期間で、完璧といえるバランスが達成できたと思う。探索パートとアクションパートが、お互いぶつかり合うことなく、これほど見事に共存しているとは、神業としか思えない。

 もちろん、Team NINJAだけに、バトルの難易度は少々高めに設定されている。ザコ敵は比較的スムーズに倒せるが、大きなモンスターやボスとなると、通常の攻撃方法は効かないことが多く、ちゃんとした戦略を練らなければならないので、ベテランプレーヤー並みのテクニックが要求される。例えば、「サーチングビュー」でのミサイル発射を必要とするバトルもあれば、逆にレスラー的なアクションが重要になるバトルも用意されている。頭も働かせるアクションは、Team NINJAの昔からの大きな特徴と言えるだろう。

 敵のアタックをかわせる「センスムーブ」と同じくバトルで大きなカギを握っているのが、新たに導入されたスペシャルアクションだ。1番印象に残ったのは、サムスが敵の上に乗って、ビームでその頭を撃つ「オーバーブラスト」だ。敵の上に乗る為にはジャンプするタイミングと正確さが要求されるが、それさえマスターすればザコ敵とのバトルが楽勝になる。敵から敵へと飛び移ることも可能なので、このテクニックのパワーは本当にすごい。といっても、敵の種類によって使えないこともあるので、注意が必要だ。

「オーバーブラスト」をマスターすれば、バトルはさらに楽しくなる。敵の上に飛び乗った後、ビームを溜めて発射すれば、大ダメージを与えられるここでもサムスが「オーバーブラスト」を使おうとしているが、モンスターの耐久力が非常に高く、簡単に実行できそうにない気絶した敵に近付き、十字ボタン&1ボタンを同時に押すと、致命的なダメージを与えられる「リーサルストライク」というスペシャルアクションが実行できる
戦闘中でも「サーチングビュー」が重要な役割を果たす。どうやらこのモンスターのお腹の部分に照準を合わせることができる。ミサイルを発射しろというシグナルか?バトル中は集中していて気付く間もないが、武器による特殊効果は本当に素晴らしい


 1つだけ気になったことがある。今までの「メトロイド」では倒した敵から紫色のエネルギーが放出され、それをゲットすることでエネルギーの補給が頻繁にできるようになっていたが、今回はそのシステムが完全に廃止された。代わりに、「コンセントレーション」というコマンドが導入された。戦闘中、エネルギーバーが赤く点滅し始める時(イコール、エネルギーが残り少ない時)、Wiiリモコンを縦にしてAボタンを押すと、「コンセントレーション」を発動して一部のエネルギーを(その回復加減は集めたスペシャルアイテムによって変動するが)回復する。

 注意すべきところは、「コンセントレーション」が発動されている間に、サムスが完全に無防備になることだ。つまり、エネルギー充電中に敵から攻撃を受ける場合、「コンセントレーション」が中断され、しかもダメージを受けてしまう。ベテランプレーヤーはこのシステムをマスターできるかもしれないが、アクションに慣れていない人は少しフラストレーションを感じるのかもしれない。特に、難易度が高い中盤以降のボス戦闘では、「コンセントレーション」を発動する為の合間を見つけるのが難しくなる。ボスの行動パターンをよく観察して、ボスが攻撃しないタイミングで「コンセントレーション」を発動することがベストな方法だが、慣れる為には練習が必要だ。難易度をもう少し下げるか、それとも、エネルギー補給の方法を増やしたほうがよかったのかもしれない。

 今回のボスはとにかく強い。面白い。デカイ。「メトロイド」シリーズで見たことのないような、本当にすごいボス。その数は、過去の作品と比べて大きく増えた。Team NINJAの得意分野だから、手強いボスが登場するのは当然だ。グラフィックス面もすごいが、頭もいい。ボスを倒す為には、まず通常のビーム攻撃を忘れたほうがいい。「サーチングビュー」を活用して欠点を探すことが大切。そして、ミサイルなどの特殊武器を最大限に生かすことも勝利のカギだ。一見無敵のボスだが、必ず、比較的簡単に倒せるコツがあるから、難しいと感じても諦めないで欲しい。忍耐もTeam NINJAならではのフィロソフィーの1つ。

難易度が高めに設定されたバトルパートだが、強力なボス戦闘の直前にセーブポイントが位置されていることが多いので、安心して欲しいボスとの戦闘では、まず、「サーチングビュー」を使ってみよう。欠点を見つけられるかもしれないボスが投げる溶岩は「センスムーブ」でかわすことができる
エネルギーバーが赤く点滅し始めたら、「コンセントレーション」で回復させようボスの触手を凍らせることに成功した。次にとるべき行動は?バトル中ヒントをもらうこともあるので、それに従って戦いを続けよう!


■ 最高基準の動画で語られるストーリー

 任天堂がコーエーテクモゲームスとタッグを組んだことで、最高のアクションパートはもちろんのこと、最高水準の動画も実現した。技術の面で素晴らしいのは言うまでもないが、演出的にもCG映画に匹敵するほどのクオリティを誇っている。さらに、モーションキャプチャーの活用によって、サムス・アランをはじめとしたキャラクター達が、本物の人間に見える。特にサムスの瞳が、心に秘めた葛藤や悩みを見事に物語っていると思う。その強い感情が画面を破り、プレーヤーの心に強烈に伝わってくる。今までの「メトロイド」になかったドラマが楽しめるので、シリーズの価値がさらに上がったと思う。

 本作では“戦闘機械”としてのサムス・アランと同時に、パワードスーツの下に隠れた、女性としてのサムス・アランも描かれている。もちろん、スーツ姿のサムスがメインだが、ストーリーのクライマックスではパワードスーツを脱いだサムスも見られる。銀河連邦軍の司令官、アダムとの複雑な関係も語られている。バウンティ・ハンターになる前のサムスの過去も垣間見られる。これまでの作品では人間とも思えないようなサムスだったが、今回は無防備な女性としても描かれているので、彼女の魅力にさらに近付けるのではないかと感じた。

 サムスの過去や心情を描く中で、本作の動画はSF、ホラー、アクション映画ならではの演出も取り入れている。今回の「メトロイド」は特にホラー、スリラー系の色が濃くなったと思う。詳細を言ったらサプライズがなくなるが、今回は定番の宇宙生物との戦いだけではないことを言っておきたい。思いも寄らないことが起こるので、その具体的な内容を自分の目で確かめて欲しい!

 特筆すべきことは、もう1つある。動画とアクションパートがシームレスに繋がっていること。動画の再生中はもちろんサムスをコントロールできないが、動画が終わるカットが、アクションが始まるカットと重なるようになっているので、その一体感はすごいと思った。動画の主人公になったような感覚を受ける。任天堂ホームページのインタビューでも読んでいたが、動画パートとアクションパートとの編集作業は大変だったらしい。しかし、その苦労があったからこそ、この高いレベルに達することができたと思う。

連邦軍時代のサムス・アランと、司令官のアダム・マルコビッチの間には何があったのだろうか?連邦軍に在籍していた頃のサムスは未熟なものだった。アダム司令官の命令を受け入れられず、まるで反抗期中の学生のようだった……
「悲惨な過去を持つ私」。サムス・アランの過去の悲劇が、本作で初めて暴露される!ボトルシップでサムスが再会した連邦軍のアダム達。本当に味方なのか?それとも……サスペンスが漂う本作でもある


■ サプライズ満載の2周目とおまけモード

 本作の寿命についても触れるべきだ。「ストーリーモード」をクリアするには10時間ぐらい必要だ。「Prime」シリーズと比べると少し短く感じられるかもしれないが、本作のほうが充実していると思う。最初から最後まで一瞬の余裕も許さないスリル満点のゲームなのだ。ただ、1周目で全てが終わったわけではない。最初のプレイでは全てのアイテムをコレクトできないようになっている。例えば、特定の扉を開ける為に必要なパワーボムは、2周目に入ってから積極的に使えるようになる。

 そう、2周目がある。メインのストーリーが終わった後、サムスはあのボトルシップに再び向かうことにする。彼女の目的は取り忘れた、ある“大切なもの”の回収だ。2周目ではボトルシップの全ての秘密を発見できるようになる。全く新しい場所にもアクセスできるようになるので、常に新鮮さを感じながら2周目もプレイできる。さらにアイテムの一部の位置しか表示されていなかったマップは、2周目では発見が難しいアイテムも含めて全ての位置が見えるので、アイテム回収率100%という目標は比較的簡単に達成できる。そして、例の“大切なもの”を見つけると、もう1つの結末が用意されているので、2周目も頑張ってクリアして欲しい。

 なお、2周目で全てのアイテムをコレクトすると、新たなモード、「ハードモード」が現われる。最初からストーリーモードを選び、モンスター的な難易度の「ハードモード」を遊べるようになる。元々難しい本作だが、これは恐ろしいぐらい難しいので自信のあるベテランプレーヤーは自分の実力を試せると思う。

 さらに「ストーリーモード」をクリアすると、おまけとして「ギャラリーモード」と「シアターモード」も追加される。「ギャラリーモード」ではアイテムの回収率に応じて、キャラクター、ロケーション、モンスターの設定資料が閲覧できる。ズーム機能を使うと、手書きのメモや文章も読めるので、キャラクターの誕生について貴重な情報を得られる機会でもある。そして、「シアターモード」というのが用意された。ストーリーで語られた事実を1つの映像作品として楽しめる。CG動画が繋がっているだけでなく、それらを繋ぐシーンも追加されているので、ただのコラージュではない。プレイから1カ月ぐらいおいた後、一気に観れば、その面白さが倍増するに違いない。

「シアターモード」のシーンは1つの映画のように全て繋がって再生できるようになっている。もちろん単体でも再生できる「ギャラリーモード」の設定資料はゲームのクリア率によって増加するオプション画面では音声と字幕の言語の設定ができる。英語も入っているので、勉強に役立つかもしれない


■ 伝統を守りながら新しくもなった、夢の「メトロイド」

 レビューの最後にもう1度書きたい。「最新技術を使ったファミコンゲーム」。本作のキャッチコピーだが、ただの宣伝文句ではない。この発言に嘘などない。スタッフの目標は見事に現実になった。Wiiリモコン1つで「メトロイド」の全てを楽しめる作品が、まさしくこれだ。本作の遊びやすさが全てのプレーヤーに受け入れられると確信している。

 ただし、「ストーリーモード」の終盤で戦闘の難易度が一気に上がるというのが気になった。セーブポイントの多さやCONTINUE機能の使用で、ボス戦闘も問題ではないが、最初から「Easy Mode」も導入したほうがよかったのではないかと思う。本作のコンセプトは遊びやすさなので、難易度を上げ過ぎるのもそのコンセプトと矛盾しているように感じた。

 本作の魅力はもちろん豪華なグラフィックスでもある。「スーパーマリオギャラクシー2」と同じぐらい、Wiiの最高水準に達していると思う。キャラクターとモンスターデザインにも驚かされた。これほど美しいモデリングはWiiでは不可能だろうと思った。特殊効果もすごい。特に水面の反射効果とサムスのパワードスーツの光沢効果で目が幸せになった。そして、何よりもびっくりしたのが、グラフィックスが超豪華なのに処理落ちが全くなく、さらにローディング時間がゼロに等しいということだ。

 最高の動画で語られるストーリーも見どころの1つ。前述したように、今回はサムス・アランが女性として描かれることもあるし、これまで謎だった彼女の過去も明かされるので、「メトロイド」シリーズのファンにとっては必見のものになっている。

 「METROID Other M」をクリアした瞬間に思ったこと。任天堂とコーエーテクモゲームスのTeam NINJAに感謝の気持ちを送りたい。これこそが、日本が世界に誇れるデジタルエンターテインメントだ。アメリカでのレビューはそれほど盛り上がりを見せなかったようだが、羨ましかったからかな?と思っているのは僕だけだろうか?とにかく、このゲームのおかげで、あなたの眠っていた「メトロイド」への愛情が再燃することは間違いない。はい、絶対。

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:33歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること


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(2010年9月15日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]