★Windowsゲームレビュー★
日本競馬の歴史を追体験せよ! 最新データ&音声実況を搭載した 「Winning Post」ファン待望の最新作 「Winning Post 7 2010」 |
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コーエーテクモゲームスの人気競馬シミュレーションゲーム、「Winning Post」シリーズ。その最新作がWindows版として発売された。PCプラットフォームとしては「Winning Post 7 MAXIMUM2008」以来2年半ぶりの登場となるため、待ち焦がれていたファンも多いことだろう。そこで今回は、2010年9月22日に発売されるPS3&PSP版に先駆けて、Windows版のレビューをお届けしていきたい。
本作「Winning Post 7 2010」はレースシーンで音声実況が楽しめることが最大のセールスポイントとなっているが、基本的には前作Win版「Winning Post MAXIMUM2008」のマイナーチェンジ的な位置づけと考えていい。もちろん、「2010」のタイトルにふさわしく、春のクラシックを盛り上げたヴィクトワールピサ、エイシンフラッシュ、古馬の新星ナカヤマフェスタなど、今年度の最新競馬事情はばっちり反映されている。以上の点を踏まえたうえで、ゲームスタートからの流れを見ていきながら本作の魅力を探っていこう。
■ 「Winning Post」の魅力、それは馬主として世界の競馬界に挑戦すること
このレビューを読んでいる読者の多くは、「Winning Post」シリーズをプレイしたことがあるはず……と思われるが、念のため本作について簡単に説明しておこう。「Winning Post 7 2010」ではプレーヤーは馬主となり、入手もしくは生産した競走馬をレースに送り出して好成績を上げる……、というのがゲームの目的となる。騎手や調教師といった職業を追体験できる「Winning Post World」シリーズとは異なり、あくまで馬主として競馬に携わっていくことになるのだ。
ちなみに、現実の日本中央競馬会(JRA)の個人馬主になるには、「年間所得額が2年連続で1,800万円以上あり、現有資産額が9,000万円以上」という金銭的なハードルをクリアしなければならない。また、その条件を満たしているとしても、非情に厳しい様々な規約が設定されており、それに触れる人物は馬主にはなれないのだ。つまり、馬主というのは、筆者を含めた多くの競馬ファンにとって夢のまた夢のような存在なのである。そんな馬主気分を手軽に楽しめるというのが、「Winning Post」シリーズの大きな魅力なのだ。
【馬主登録】 | ||
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馬主登録は名前、誕生日、所属地域を登録。さらに登場人物からの呼ばれ方も設定できる。牧場を所有する場合は、開設する地域も選択することになる |
■ 過去と現在、2つの時代からプレイ可能。スペシャルな種牡馬がよみがえる!
さて、本題に入ろう。ゲームを立ち上げて「初めから」を選択すると、開始時期を2つから選択することになる。グレード制が導入された1984年から開始する場合は、「ノーマルタイプ」、「大牧場タイプ」、「大馬主タイプ」の3種類から馬主タイプを選び、選択によって馬主の初期資金や牧場の有無が変わってくるのだ。なお、「Winning Post 7」や「Winning Post 7 パワーアップキット」、「Winning Post 7 MAXIMUM2008」、もしくは本作のセーブデータを持っている場合は、そのストーリーデータを受け継ぐことによって、通常よりも資金や各種お守りを多く所持した状態でプレイが可能になる。一方、2011年からスタートする場合は馬主タイプを選択できない。
【各馬主タイプの特徴】
● ノーマルタイプ初期資金は3億円、牧場なしの状態でスタート。ストーリーデータから資金と牧場を引き継ぐことも可能で、お守りを使えば実在競走馬を入手可能。また、海外馬カードを購入すれば一部の海外競争馬も所有できる。
● 大牧場タイプ初期資金は100億円で、施設の充実した牧場を所有している。実在幼駒は所有できず、実在繁殖牝馬はセール以外では入手できないが、海外の種牡馬を所有する日本の繁殖牝馬に種付けできるのが特徴。
● 大馬主タイプ初期資金は100億円で、実在の競走馬の購入に必要なお守りも豊富に所有(金50個、銀銅赤各10個)し、一部の海外競走馬も所有できる。ただし、牧場は開設できず、2009年末でゲーム終了という制限がある。
開始時期を決定して難易度設定とエディット設定を行なったら、スペシャル種牡馬の選択になる。「スペシャル種牡馬」とは早逝して惜しくも種牡馬になれなかった競走馬や、志半ばにして種牡馬を引退してしまった馬などのうち、10頭だけ選択して種牡馬として登場させられるというシステム。1984年から開始した場合は、海外遠征を前にした壮行レースでの事故で亡くなった名馬テンポイントや、「華麗なる一族」と呼ばれる血統に属するハギノカムイオーなどを選択できる。
一方、2011年から開始した場合は、日本競馬界の勢力図をガラリと変えながらも19歳という若さでこの世を去ったサンデーサイレンス、そのサンデーサイレンスの仔で後継馬と言われたが早逝したアグネスタキオン、レース中の事故で種牡馬になれなかったサイレンススズカ、ライスシャワーたちが選択可能だ。「もしこの種牡馬が長生きしていたら」、「もしこの競走馬が種牡馬になっていたら」という歴史のifを楽しめるのは、「Winning Post 7 2010」ならでの楽しみといえよう。
プレーヤーをサポートしてくれる秘書は、安田五月と如月英里子のふたりから選択できる。秘書は季節の移り変わりとともに衣装や髪型が変わっていくが、能力に違いはない | 登場させられるスペシャル種牡馬は10頭だけなので厳選しよ |
■ 競馬ファンにはたまらない音声実況でレースシーンがパワーアップ!
本作から搭載された音声実況は、「Winning Post World」シリーズと同様、TV東京系の競馬中継「ウイニング競馬」の矢野吉彦アナによるもの。ゴール前直線の盛り上がりはまさにテレビ中継そのものといった感じで、競馬好きにはたまらない追加要素となっている。また、レースシーンに加えて、GⅠレースの馬場入場シーンにも音声実況が用意されており、ビックレースならではの高揚感も味わえるのはうれしい限り。
あえて不満を挙げるとするなら、自分が名付けた競走馬の名前を思うように呼んでくれないことぐらい。馬番で呼ばれるほか、馬名として前半と後半それぞれに用意されている音声を組み合わせたもの以外は、「マイホース」、「ユアホース」、「私の馬」、「あなたの馬」、「プレイヤーホース」、「騎手」といったさまざまな呼び名を設定できるが、それでもちょっと物足りないものがある。技術的に難しいのかもしれないが、今後のシリーズでぜひとも改良してもらいたいところだ。
【レース】 | ||
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音声実況により、レースの臨場感が大幅にアップ。特に直線での競り合いには力が入ること間違いなし。GⅠレーススタート前や馬場入場シーンは、まさにテレビの競馬中継さながらの盛り上がりを見せる。なお、自分で名付けた競走馬の音声は実況を選択すると変更できる |
■ お守り、海外馬カードを入手して実在の競走馬の馬主になる
本作には国内外の実在競走馬が多数登場するが、これらを入手するためにはお金に加えて、特定のアイテムが必要になる。まず、国内の実在競走馬の入手には「お守り」というアイテムが必要だ。お守りは赤<銅<銀<金の順に貴重となり、入手したい競走馬や繁殖牝馬が有名であればあるほど、貴重なお守りが不可欠になってくる。具体的には、ナリタブライアンやシンボリルドルフ、ディープインパクト、さらには名繁殖牝馬スカーレットブーケといった名馬を入手する場合は金のお守りを用意して、当歳もしくは1歳の時点で「馬情報」→「幼駒」をチェックして購入すればいい。
一方、海外の実在競走馬を入手するには「海外馬カード」というアイテムが必要になる。この「海外馬カード」の入手には金のお守りが複数個必要になるため、国内の実在競走馬よりも入手は難しいといえる。ただ、1度入手した海外馬は国内のレースに参加させることができるようになるため、ダンシングブレーヴvsシンボリルドルフや、ナリタブライアンvsラムタラといった夢の対決が実現可能だ。
なお、実在競走馬の馬主になり、史実どおりにビッグレースを制覇するといった特定の条件を満たすと、名馬たちのスペシャルムービーが流れるイベントが発生する。この名馬ムービーは全部で33種類あり、「機能」の「ギャラリー」でいつでも閲覧が可能。競走馬によっては達成が難しいものもあるので、現役時代の成績やローテーションを検証しながらギャラリーを埋めていくのもおもしろいだろう。
【お守りが必要】 | 【海外馬カードの購入】 | 【実在馬イベント(皇帝)】 |
お守りは計画的に使用しないとすぐに足りなくなってしまう。とりわけ金のお守りは入手が厳しく、交換するにも銀のお守りが5つも必要になる。本当に入手したい実在競走馬を絞ってから使っていこう |
■ GⅠに挑戦、そして目標は海外へ!
馬主として競走馬を手に入れたら、狙うはビッグレースであるGⅠでの勝利。有馬記念、日本ダービーをはじめとする中央競馬のGⅠ、地方交流重賞はもちろん、「Winning Post 7 2010」では最新の競馬プログラムに対応しており、新設重賞レースである「みやこステークス」も楽しめる。実際には1984年には存在していなかったNHKマイルカップやヴィクトリアマイルに加えて、世界最高賞金のドバイワールドカップ、ヨーロッパ最大のレース凱旋門賞、アメリカの祭典ブリーダーズカップなど、海外のGⅠレースも充実。日本の重賞(GⅢ~Ⅰ、jpnⅢ~Ⅰ)に勝利した競走馬で挑戦し、海外GⅠ制覇を目指そう。
好成績を残した牡馬は、引退後種牡馬として繁殖生活へ入る。種牡馬となった牡馬は繁殖牝馬と配合されて幼駒が誕生。そして幼駒が競走馬へと成長してレースの世界へ進み勝利を目指す、といったように競走馬、サラブレッドの血は後世へと受け継がれていくのだ。シンボリルドルフとトウカイテイオーの親仔二代ダービー制覇、メジロアサマ、メジロティターン、そしてメジロマックイーンへと受け継がれた三代天皇賞制覇といった血統のドラマがここにある。競馬のロマン、そして新たな競馬の歴史を自らの手で築きあげられるのが、本作最大の魅力だ。
【ダービー】 | 【凱旋門】 |
日本のホースマンならば誰もが目標にする東京優駿こと「日本ダービー」。まずはこのレースの制覇を目標に馬作りを進めていこう | フランス、ロンシャン競馬場で行なわれる凱旋門賞はヨーロッパ中の競走馬が集まる最大の注目レース。日本馬でこのレースを制覇した競走馬は未だ存在しない |
■ 対戦レースで時代を超えた名馬たちの対決を再現!
「対戦レース」では、自分のセーブデータやパスワード、対戦ファイルを取得した競走馬同士を対戦させられる。友達やインターネット上でファイルやパスワードをやり取りすれば、ネット上で大会も開ける。VTRファイルにレース内容を録画可能なので、セーブデータを使えば自分の所持競走馬以外もレースに登録できるため、シンボリルドルフvsディープインパクトの無敗の三冠馬対決、エアグルーヴvsウオッカの最強牝馬決定戦などを開くことも可能だ。複数のレースでポイントを競い合う「シリーズモード」もあり、競馬ファンが集まれば盛り上がること間違いなしといえる。
【カスタムレース】 | 【シリーズモード】 |
「カスタムレース」は1レースのみの勝負で着順を競い合う。対戦に使用する馬は能力がピークになった時期にファイル、もしくはパスワードを登録しよう | 「シリーズモード」はテーマにそった複数のレースを走り、その合計ポイントを競い合う形式。広い距離適性を持った競走馬ほど有利に戦える |
■ エディットで自分好みに能力を設定しよう!
エディットモードではゲーム内に登場する人物、競走馬、種牡馬などの名前、能力値などを自分好みに調整できる。まず「馬エディット」の項目では、「実在競走馬エディット」、「1984年初期種牡馬エディット」、「2011年初期種牡馬エディット」の3項目が調整可能。
「実在競走馬エディット」は、1984年から2010年までに登場する競走馬の能力値を自由に設定できる。スピード、スタミナといった競走馬の土台となる能力から、瞬発力、健康といったサブパラメーター。さらには「大舞台」や「スタート」といった特性、走法、気性も細かく設定が可能だ。このモードを利用すれば、大レースを制覇できなかったお気に入りの競走馬の能力をパワーアップさせて活躍させたり、または「この馬はこんなパラメータじゃない!」と納得できない能力値の競走馬を調整したりと、自分だけの競馬の歴史を作るのに役立つ。安価なマイナー血統馬の能力を三冠馬ディープインパクトなみの能力に変更し、現実では発展しなかった血統を保護するといったマニアックな遊び方もおもしろいだろう。
「1984年初期種牡馬エディット」と「2011年初期種牡馬エディット」は、それぞれスタートした年代で活躍している種牡馬の能力値を変更するモード。これも基本的には「実在競走馬エディット」と同じように、スピード、スタミナ、勝負根性、瞬発力といったパラメータの数値を調整できる。ここでは任意でゲーム内に登場させることが可能なスペシャル種牡馬も設定可能。早逝して後継を残せなかったナリタブライアンなどの名馬の能力を再設定しているだけでワクワクすること間違いなしだ。
「人物エディット」では「騎手エディット」、「調教師エディット」、「馬主エディット」、「牧場エディット」の項目では、各登場人物の名前をはじめ能力、特性を設定できる。一部実名で登場している騎手、調教師もいるが、ほとんどはよく見れば雰囲気はあるものの架空の名前になっているような人物もいる。根気よくひとりひとり確認しながらすべてを実在する競馬界の人物名に変更(本当にかなりの根気と調べる時間が必要だが)すれば、いっそうリアリティを増すはずだ。
■ 究極の自己満足競馬ワールドへようこそ
「Winning Post 7 2010」は最初の「7」が発売してから6年近くが経過しており、そのあいだに何度もパワーアップ版がリリースされているだけあって手堅い仕上がりになっており、音声実況の追加のおかげでいっそうリアリティが増している。本作はGⅠ全制覇、最優秀馬主、牧場の全拡張など一応の目標はあるが、それだけではゲームクリアとはならない。自分の生産した競走馬で実在馬に勝つことを目標にプレイを進めたり、GⅠをいくつも勝てるような競走馬の生産を目指したりと、その目標設定は自分次第で無限に生み出せる。自分だけの箱庭で究極の自己満足プレイで楽しもう。
【シンボリルドルフで凱旋門】 | 【系統確立】 | 【年度代表馬】 |
グレード制初期の名馬シンボリルドルフでヨーロッパ最大のレース凱旋門賞を制覇。現実世界では大それた夢だろうが本作でなら叶えられる。競走馬として活躍して多くの仔を種牡馬にすれば、新しい血統の系統として認められる。自分の生産した馬の血統を発展させることも楽しい |
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http://www.gamecity.ne.jp/
□「Winning Post 7 2010」の公式ページ
http://www.gamecity.ne.jp/keiba/wp7_2010/
(2010年9月15日)