★DSゲームレビュー★
思う存分“山手線”を楽しめる 昭和の東京も完全再現 「電車でGO!特別編 ~復活!昭和の山手線~」 |
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■ 3年ぶりに「電車でGO!」が復活
「電車でGO!」シリーズ最新作が、ニンテンドーDSソフトで登場した。それが7月22日に発売された「電車でGO!特別編 ~復活!昭和の山手線~」(以下、電車でGO!特別編)だ。携帯電話向けには現在でも提供されているが、家庭用ゲーム機向けとしてはWii版の「電車でGO! 新幹線EX 山陽新幹線編」を最後に発売されていなかった。このため約3年ぶりに復活となったわけだ。
これまでのシリーズはすべてタイトーから発売されていたのだが、同社が2006年にスクウェア・エニックスと合併したあとは、先ほど挙げたWii版を最後に最新作のアナウンスもなくなり、やはりニッチな市場にしかアピールしない「電車でGO!」シリーズはもう発売されないのかな、と思っていたところに新作登場。シリーズファンとしてはうれしい限りだ。
「電車でGO!」シリーズはご存じの通り、電車の運転をゲーム感覚で楽しめるソフトだ。本作も同様で、山手線で使用されている電車の運転台がリアルに再現されており、プレーヤーは「マスコン」と呼ばれる運転用のレバーを操作しながら、電車の運転を体験できる。上画面では進行方向の風景、下画面には運転台が表示されており、マスコンなどをタッチしながら操作することになる。
なお、ゲームシステムはこれまでのシリーズとほぼ同じだ。東京~神田といった、1つの駅間を走るごとに総合評価が下され、指示速度通りに走ったり、停車位置とずれが少ないほどいいスコアをもらえ、運転可能な「持ち時間」が増える。スコアは1つの運転モードを終わるごとにクリアされるのではなく累積されるようになっており、一定のスコアを獲得すると、プレーヤーの「運転士レベル」が上がる。
本作の舞台は、タイトルの通り山手線。現在山手線で使用されている電車は「E231系500番台」と呼ばれる列車だが、このほかにも、かつて走っていた「205系」、「103系高運転台」、「101系」などの列車が登場し、それぞれの運転を楽しめる。車両は「訓練モード」をクリアすることで増えていくようになっており、E231系500番台の訓練運転をクリアしたら103系、その次は101系といったように、時代をさかのぼって車両が登場する仕組みだ。また運転モードとして、操作ボタンの少ない「ビギナー」モード、リアルな運転感覚が楽しめる「プロフェッショナル」モードが用意されており、これも訓練モードを極めることで登場するようになっている。
■ まずは現代の山手線を楽しもう
本作の楽しみ方は様々だ。先ほど述べたように、訓練モードを進めていくと運転できる車種が増えていくので、まずはそちらから攻めてもよい。運転できる区間については、たとえばE231系500番台なら最初は池袋~田端間の外回り、大崎~東京の内回りしか運転できないが、その区間をノーコンティニューでクリアすると、外回りなら次は田端~東京、東京~池袋、最後は池袋~池袋の環状運転といった具合で広がっていく。まずは好きな車両にじっくりと取り組んで運転できる区間を増やしていってもよいし、訓練モードにチャレンジして車種を増やし、様々な車両の運転を楽しむのもよいだろう。
なお、各駅で流れる「発車メロディ」はほぼ忠実に再現されている。田端駅外回りや品川駅内回りで使われている「せせらぎ」、池袋駅外回りの「スプリングボックス」といったメロディのほか、駒込駅では「さくらさくら」が流れる。ただし著作権の関係か、恵比寿駅の「第三の男」、高田馬場駅の「鉄腕アトム」が収録されておらず、上野駅や新大久保駅と同じの「プルルルルル」という発車ベルになってしまっているのは残念だ。
また、走行中に下画面左上の一時停止ボタンをタッチして「オプション」を開くと、「環境設定」から「みどころガイド」を表示するように設定できる。これを選ぶと走行中に「東京国際フォーラム」や「恵比寿ガーデンプレイス」といったランドマークが下画面に表示される。ただし表示時間が短く、運転中はどうしても上画面の速度表示に集中しているため、気づかないことが多いのだが……。
なお、本作では運転の評価に合わせて「勲章」や「称号」を得ることができる。勲章には、停止目標に対して誤差プラスマイナス0センチで停車したときの「ゼロピタスター」、山手線全駅29駅を定刻到着したときにもらえる「テイコクシルバー」などなど。まだ開いていない勲章は「?」マークで表示され、勲章の名称はゲットしないとわからないのだが、もらえる条件は下画面に表示されるので、ほしい勲章をゲットするための参考にしてみてはいかがだろうか。
称号については、訓練モードで特定の車両を習熟したときに得られる「○○系熟練者」「○○系職人」といったものや、急激な加速度をかけずにクリアしたときに得られる「快適停車の師匠」などがある。こちらは「プロフィール」に反映できるので、好きな称号を選んで名乗ってみよう。
■ 懐かしの“昭和モード”で山手線を走る
本作の特徴はなんと言っても“昭和の山手線”を運転できることだ。101系より古い車両を選択すると、運転区間部分が「昭和」という表示となり、周りの風景も歴史をさかのぼって表現されている。新橋あたりを走ったときには建設中の東京タワーが見えたり、恵比寿駅では恵比寿ガーデンプレイスではなく、サッポロビールの工場が見えるなど、風景ががらっと変わるのだ。また各駅で流れるアナウンスも画一的な自動アナウンスではなく駅員風の声が流れるし、発車時の音も「発車メロディ」から「発車ベル」になる。
筆者は子供の頃にオイルショックを経験した世代の人間なので、さすがに建設中の東京タワーは見たことがないが、内回りが恵比寿駅を発車したあと、山手貨物線越しに見えた「ヱ」「ビ」「ス」「ビ」「ー」「ル」の看板は記憶に残っている。沿線にも高いビルがそれほど存在しないし、「駅ビルって何?」という時代。40歳代以降の人なら、懐かしい風景を思い出すことができるだろう。“昭和モード”は是非プレイしてみてほしい。
【スクリーンショット】 | |||
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有楽町を発車したあとに見える建設中の東京タワー。「三丁目の夕日」状態 | サッポロビールの工場って、こんな感じだったかなぁ……新しい風景になれると昔の風景は記憶の片隅に追いやられてしまう事が多いという悲しみ | 駅で電車を待っている人の服装も変わっている。細かい。ちなみに右写真は現代。雰囲気の違いを感じ取ってもらえればと思う |
■ 山手線という“システム”を楽しめるソフト
公式サイトでは車両のパスワード配信も開始されている。2009年に山手線100周年を記念して走った「明治ミルチトレイン」や、昭和一ケタの時代に走った「31系」、「205系量産先行車」が使えるようになるので、公式サイトからパスワードをゲットしよう |
東京近郊に住んでいる人なら、山手線は、通勤で乗るだけであったり、買い物に行ったり遊びに行くときに使うだけの電車でしかないかもしれない。しかし本作をプレイしていると、山手線という路線が、正確かつ事故のない運行を実現するために、いかにシステマチックに作られているのかがよくわかる。29駅、1周34.5キロという距離に、ラッシュ時には駅の数と同じくらいの車両が走っている路線。ゲームの中で規定された速度を守りつつ運転するだけでもかなり難しい。こうしたことからも、その一端を知ることができるだろう。
まあ、本作はあくまでもゲームだし、そんな難しいことを考えなくてもよい。好きな車両を運転して、山手線を楽しんでみてはいかがだろうか。筆者はやはり、「山手線」というと103系高運転台の車両が印象深い。1番前の車両に乗って、運転台から見える風景を楽しんだ、子供の頃がよみがえってくる。
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□「電車でGO!特別編 ~復活!昭和の山手線~」のページ
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(2010年9月21日)