PS Vitaゲームレビュー
俺の屍を越えてゆけ2
今「俺屍」は優しさの時代へ。コーちんによる提案システムがプレーヤーをサポート
(2014/8/22 00:00)
“今「俺屍」は優しさの時代へ”コーちんによる提案システムがプレーヤーをサポート
本作で一族当主(プレーヤー)の秘書役となるのは、人間にいじめられ死にかけていた所をある神様に助けられ、その恩義により一族のサポート役を引き受けることになったイタチの“コーちん”。普段は人間の女の子の姿で一族の事務全般を取り仕切る。
交神の儀をはじめとした一族の行事から、さまざまなシステムの解説までこなすのは前作の秘書役“イツ花”と同じだが、本作の新要素であり、筆者が前作との違いを1番大きく感じたのが“コーちんの提案”システムだ。
「俺の屍を越えてゆけ」は、どの迷宮に挑むのも自由、どんな神様と交神して一族をどう育成するかも自由、という自由度の高さがゲーム性の根幹にある。あるのだが、そこに一族の寿命という制限が加わると、迷宮探索が思うように進まず奉納点を稼げなかったり、無駄な交神をして奉納点が足りなくなったり、一族強化への道はなかなか険しい。
そのもどかしさも当然ゲーム性のうちではあるし、ある程度プレイを進めると、迷宮での引き際、交神の頻度など自分なりのプレイスタイルを確立していけるのだが、こうしたフリーシナリオ系のゲームに慣れていないと、その試行錯誤のとっかかりも掴みにくい。これに対する「2」での回答が、提案システムと言えるだろう。
“コーちんの提案”は一族の拠点となる屋敷におけるメインメニューの1番上、“コーちん”メニューのさらに1番上に位置し、迷ったときはまず選択、という導線になっている。これを選ぶと“奉納点を集める”、“新たな術の巻物を探す”など今月の方針から、具体的な出撃先まで提案してくれる。特に、そろそろ交神の儀で子供を作った方がいいというタイミングで提案してくれるのはありがたい。交神相手も手持ちの奉納点などから候補を出してくれる仕組みだ。
コーちんに“全部お任せ”することも可能だが、筆者のお勧めは対話形式でやることを決めていく“いっしょに決める”コマンド。「なぜ、その提案をするのか」の理由も表示され、選んでいくうちに自然とゲームの勘所が掴めるようになっている。そのうち、「コーちんはそう言うけど自分はこっちの方が」などと思うようになれば“提案卒業”。言わば提案システムは、慣れないうちの補助輪のようなものだ。
もちろん、これはあくまでプラスアルファのサポートシステムなので、「そんなものに頼るのはヌルい」と思うなら全く使わなくても構わない。ただ、完全自力でプレイするとしても、「とくに今月急いですることがないな」という時にちょっと覗いてみると気分転換になるし、秘書役のキャラとあれこれ相談するのはそれ自体、コミュニケーションの楽しみがある。自分で考えてから、「コーちんならなんて言うだろう」と覗いてみたら同じことを提案してきた、というのもなかなか嬉しいものだ。
実際コーちんは、迷宮探索と並んでプレイ時間の多くを占めるであろう屋敷での各種作業において、常にプレーヤーと共にある本作のマスコット的存在。メイン画面で耳をピクピク動かしながらこちらを見つめ、放置しているとさまざまな仕草を見せ、話かけてくるコーちんは可愛い。なお、迷宮探索時もイタチの姿でパーティに同行し、戦闘時はまれに術などで支援してくれる。
プレイのサポートという面では、迷宮で先に進みすぎて周囲の敵と戦うのが危険な場合に“強敵接近”アラートが表示されたり、初めて戦う鬼神でも戦いを挑む前に体力が表示されたり、マップが常時表示されたりと、前作に比べるとだいぶ“プレーヤーに優しい”作りとなっている。
とはいえ、出撃中はセーブ不可、セーブスロットは1つの一族に対して1つのみという仕様はそのまま。大ダメージを食らったり奥義を使うと“健康度”が減り、あまり減りすぎると寿命が縮むため、リスクをとって強敵や鬼神に挑み戦勝点を稼ぐか、大事をとって慎重に進むかという、緊張感のある探索は本作でも十分健在だ。
プレーヤーごとに異なる国。“自分だけの一族”の物語がより鮮明に
もう1つ、現代的な新要素と言えるのがプレーヤーごとに用意される国と、ネットワーク連携要素。本作では、2つの呪いをかけられた一族が、力をつけるため日本全国に散らばっていった……という設定で、プレーヤーはそのうち1つの国の当主となる。ここでのポイントは、メインシナリオの進行に必要なものを含め各国に現れる迷宮はランダムで、1つの国にすべての迷宮は出現しないこと。そこで、ある程度ゲームが進むと別の国へ“遠征”し、自国にはない迷宮へ行くことができるようになる。
他の一族の国はゲーム上に用意されているものもあるが、ネットワークへの公開を許可した他のプレーヤーの国も遠征先として表示される。遠征先の迷宮では、自国ではなかなか見つからなかった道具を抱えている敵が居たり、自国の迷宮では見つけられなかった迷宮探索のための鍵があっさり手に入ったりすることも。ゲームの進行度による敵の強さの違いもあり、「ちょっと武者修行がしたいので自国よりも強い敵が居る国へ行く」なんてプレイも可能だ。
また、自国の街は武器屋、薬屋、娯楽施設、神社など施設ごとに投資を行ない、販売される道具の内容や各種設備を充実させていくことができる。この街は遠征時にも寄ることができ、自国とは異なる発展をした街で、自国では売っていない掘り出し物を探す楽しみがある。
こうした国ごとの違いにより、本作では“自分だけのオリジナルの一族を作る”という要素がより強まっている。メインシナリオを進めるために必須の迷宮すらプレーヤーによって異なり、それぞれの一族が、異なる道を歩んでいくのだ。
さらに、他国のキャラクターを傭兵として一時的に雇ったり、養子にしたり、“結魂”(けっこん)して子供を作る(人間との間に子は成せないが、同じ呪いをもつ一族が相手なら可能という設定。……なら一族内でもできるのでは? と突っ込んではいけない)ことができる。なお、これらの候補は遠征先の他家で選べるだけでなく、「俺の屍をこえてゆけ2」公式サイトの“写真館”などに投稿されているQRコードを読み取ることでも追加可能。
傭兵は1回の出撃にのみ有効で、自国の世代交代が遅れ出撃メンバーに穴が開いてしまった場合などに便利。一方、養子や結魂では奉納点を消費せずに一族を増やすことができ、ちょっと便利すぎるきらいはある。支度金や結納金は必要だが、本作ではお金は奉納点よりずっと稼ぎやすい。
養子は初代「俺屍」から、結魂はPSPリメイク版からの要素だが、メモリーカードやアドホック通信を利用する仕組みで、ある程度親しい間柄でのクローズドなやり取りという前提があった。それに比べて、オープンなSNSでの共有というのは今風といえば今風だが、誰でも簡単に最強キャラ(「うちの子自慢」の場でもあるので、結構頻繁に投稿されている)が手に入ってしまうのは、やや、バランスブレイカーであるという印象も否めない。
とはいえ、もともと「俺屍」は敵の体力や勝利時の取得戦勝点・お金などのパラメーターの組み合わせによるいくつかのゲームモード(難易度)をプレイ中にも変更可能と、ゲームバランスがある程度、プレーヤーの手に委ねられているゲームでもある。濫用はプレイの緊張感を失ってしまうが、自国にない職業を試してみたり、いざという時の保険として候補にだけは加えておくなど、それぞれのプレイスタイルで活用するなりスルーするなりすればよいだろう。SNS上の友人のキャラと、プレイの記念に結魂してみるなんてのも楽しそうだ。養子や結魂も一族の家系図に記録されていくので、そうした選択すらも、一族の歴史となっていく。