ゲーミングPCレビュー「Razer Blade」

Razer Blade

触るとマジでヤケドするぜ! ベンチマークとエイジング検証

触るとマジでヤケドするぜ! ベンチマークとエイジング検証

 最新パーツを選りすぐり、それを驚異的な薄さにまとめた「Razer Blade」。何はともあれ、ゲーミングPCとしてはまず性能を確認すべきだろう。その上で、この薄さがもたらした副作用とその対処について見てみたい。

 まず定番の「3D Mark」のスコアから確認してみよう。超ヘビー級のテストとなる「FIRE STRIKE」を除き、快適ラインの10,000点を余裕で超えてきている。手元にあるデータで比較すると、おおよそGeforce GTX 570を搭載した2世代前のハイエンドデスクトップマシンと同等か、それをちょっと超えるくらいの数字だ。DirectX 11世代の最新ゲームも、フルHD解像度で問題なく遊べる水準である。

【「3D Mark」スコア】

フルHD解像度でなら余裕で快適動作

 つぎに、「バイオハザード 6」ベンチーマークの結果を見てみる。映像品質のオプションは全て最大に設定し、本製品の最大解像度である3,200×1,800を含む4種類の解像度をテストした。結果としては、フルHD(1,920×1,080)までランクS、“とても快適な動作が見込めます”という評価が得られた。フルHDでは大半のシーンで60fps超え、一番重いシーンでも40fpsを割る瞬間が少しある程度で、ゲームプレイ上も全く問題なさそうだ。それ以下の解像度ではさらにfpsが高まり、1,280×720では60fpsを割ることはない。

 最大解像度である3,200×1,800ではさすがに馬力不足が見られた。評価はランクB、“標準的な動作が見込めます”。軽めのシーンでも60fpsを超えることはほぼなく、大半のシーンで20~30fpsと低調。ゲーマー視点では“これで遊ぶのはキツい”となる。

 この結果を踏まえると、素直にフルHD解像度で遊ぶか、ちょうどパネル解像度の半分となる1600×900解像度で遊ぶのがオススメといえる。特に後者の解像度ではほぼ60fpsを割ることがなくなるので、フレーム落ちに過敏なこだわりゲーマーでもストレスフリーに本作レベルの最新ゲームを遊べるはずだ。

【「バイオハザード6」ベンチマーク】
3,200×1,800
1,920×1,080
1,600×900
1280×720

 ベンチマークの最後に「『新生FFXIV』ベンチマーク キャラクター編」を見てみよう。こちらも「バイオハザード6」と同じく、最高品質で解像度のみを変えての計測とした。品質を下げての計測は、本製品の性能的に不要だと思えたからだ。デスクトップマシンと同じ基準を要求していいくらいの性能はある。

 オンラインゲームゆえにシェーダー的には「バイオハザード6」よりは多少軽量な本作だが、3,200×1,800解像度でも“やや快適”レベルのスコアを出したのには驚いた。大半のシーンで30fps以上は期待でき、あまり激しいアクションを求めないプレーヤーなら充分に使える。

 それ以下の解像度は、フルHDを含めて“非常に快適”との評価で頭打ち。これ以上の評価がないため、動作中のフレームレートを見てみたが、チョコボが大量に走っているシーンで60fpsを多少下回る瞬間があるくらいだ。実際のゲームでは混雑シーンを除き常時60fps動作を期待していいということになる。最高品質なのに、厚さ17.8mmなのに。本作が世に出てまだ1年しかたっていないが、すでに隔世の感がある。

【『新生FFXIV』ベンチマーク キャラクター編】
3,200×1,800
1,920×1,080
1600×900
1280×720

 と、いろいろなベンチマークを動作させつつ気になったのは本製品の発熱だ。ゲームをしていないときのボディは常温よりほんのり暖かい程度で、内蔵ファンの回転音も、相当注意しなければ気が付きもしないほど、静音だ。しかしひとたびベンチマークを始めると、次第に本体が熱を帯び、ファンの回転音が増していき、最終的には「フォーーン!!」と、暖気中のジェットエンジンのような甲高い排気音が発生する。

 極薄の筐体であるがゆえに内部の熱容量に余裕がないのは当然で、その対策のため本製品では独特の熱設計が行なわれているようだ。背面を見ると、上の写真のように上部(キーボードのある表面から見ると、液晶モニターの付け根近く)に排気口があり、ファンが回転している。分解はしていないので詳細はわからないが、本体内部の熱はヒートパイプなどを通じてこの付近に集められているようだ。

 というのも、ベンチマークを5分も回していると、キーボードあたりはうっすら暖かく感じる程度なのだが、その上部、電源ボタン付近はもう1秒も触れないほど熱くなって来るのだ。GPUを中心に各所で発生する熱を一箇所に集めて、集中的に冷やしているという感じだが、冷やし切れていない。目玉焼きは無理だろうが、コーヒーを飲み頃の温度に維持するくらいはできそうな熱さである。

唯一の排熱口は本製品の背面にある

GPU-Zでの温度モニタリング。GPU温度は90度を超える。室温30度にて92度まで上がったのは確認したが、そこが上限だった

 「それにしてもこんなに熱くなって大丈夫か?」と思い、エイジング試験を行なってみた。「新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」を無限ループで回しつつ、モニタリングツールである「GPU-Z」を使ってGPU温度を確認。1ループ目の終わり付近で摂氏92度まで達した。さすがにそれ以上は熱くならなかったが、次のループでもずっと90度を超えたままの動作となる。

 この状態のまま、空調を入れていない蒸し暑い部屋で、1日放置した。様子を見たところ、GPU温度は変わらず91~92度を行き来している。電源ボタン付近を触ると、1秒も接触できないほど熱い。しかしキーボードまわりは、汗ばむほどの暖かさはあるが問題なくプレイ可能な温度に保たれており、もちろん、ベンチマークは熱暴走することなく駆動し続けていた。

 まさにギリギリの熱設計だ。これ以上GPU温度が上がっても、ボディ側の熱が上がっても、製造者責任法的に(熱暴走どころか、パーツが溶ける、本当に人体がヤケドをするなど)マズい事態になることは避けられないと思う。本製品はそうなる寸前の温度に保たれていた。大したもの(!?)だ。

 このスペックで、厚み17.8mmという本体設計がギリギリ可能ということになれば、GPUを発熱がずっと少ないGeforce GTX 860に変えるなど、より控えめなスペックに抑えることで、さらなる軽量化と静音化、低コスト化ができることは疑いようがないが、あえて極限までハイスペックを目指したところがいかにもRazerらしい。

 そういう意味で筆者は、本製品を“次世代ゲーミングノートPC”のはしりだとみなしたい。本製品を試金石として、ゲーミングノートPCは薄く、軽量なものが当たり前になっていくだろう。それはPCゲームそのものの間口を広げることにつながり、近年継続的に成長中のPCゲーム市場にまたいちだんと弾みをつけることになるはず。Razerは本当に面白い製品をつくったと思う。

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(佐藤カフジ)