ゲーミングPCレビュー

「MASTERPIECE i1460GA1-SP-DOC-CVL」

“ワンボタンでいつでも”オーバークロック!
パワー、利便性、安全性を兼ね備えたプレミアムハイエンド機

ジャンル:
発売元:
  • マウスコンピューター
開発元:
  • マウスコンピューター
プラットフォーム:
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発売日:

 PCを再起動することなく、GPUとGPUを即時オーバークロック(OC)する。このコンセプトで開発されたマウスコンピューター製のOCPC「MASTERPIECE i1460シリーズ」が8月4日発売された。

 同社はワンボタンOCPCを3月から発売している。初代となる「MASTERPIECE i1440シリーズ」については、以前インタビューでお伝えしている。この記事でも触れていた新型が、今回紹介する「MASTERPIECE i1460シリーズ」だ。

 ワンボタンでオーバークロックできるというコンセプトはそのままに、使用するパーツを最新のものに変更し、CPUは4コア4.6GHz駆動までパワーアップ。また新モデルから、AMD製GPUを搭載したモデルも登場している。今回はそのAMD製GPUを搭載した「MASTERPIECE i1460GA1-SP-DOC-CVL」の実機をお借りし、性能や使用感を見ていく。

ハイエンドPCをさらに高性能にするOCボタン

 本機は、CPUに最新の“Devil's Canyon”ことCore i7-4790Kを採用。ビデオカードはAMD製シングルGPU製品では最上位となるRadeon R9 290Xを搭載する。主なスペックは下記のとおり。これはベースモデルの1つで、BTOも可能だ。

【MASTERPIECE i1460GA1-SP-DOC-CVL】
構成スペック
CPUCore i7-4790K
CPUクーラーCooler Master Seidon 120XL
メインメモリ16GB(8GB×2、PC3-19200)
ビデオカードRadeon R9 290X
HDD2TB(7,200rpm、SATA3)
光学ドライブDVDスーパーマルチ
電源700W(80PLUS BRONZE)
OSWindows 8.1 Update 64ビット

フロントパネルの中央右側に電源ボタン、その左下にOCボタンがある

 オーバークロックをオンにする方法は至って簡単。本体前面、電源ボタンの左下辺りにある「OC」と書かれたボタンを押すだけだ。押すタイミングは、PCの起動前でも起動中でも構わない。OCボタンを押すとボタンの文字が赤く光るので、OCしていることが一目瞭然だ。PCの電源が入っていない時もOCボタンは光り続けるので、OCの解除をし忘れていても気づきやすい。

 OCボタンが押されていない時は、CPUが最低800MHz、最大4GHz(4コア)、TB時4.4GHz(1コア)で変動する。GPUは最大1,000MHz。いずれも定格の値だ。OCボタンが押されると、CPUは全コア4.6GHzに固定される。GPUはクロックが変動するままだが、最大値が1,040MHzに引き上げられる。

 まずは本機の性能とOCの効果を、各ゲーム系ベンチマークソフトの結果で見ていただこう。

【ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.10(1,920×1,080ドット 最高画質)】
オーバークロック前オーバークロック後
20,57221,674(↑5,4%)
【ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編(1,920×1,080ドット 最高画質)】
13,04813,301(↑1.9%)
【ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0(1,920×1,080ドット 設定5)】
54,22158,972(↑8,8%)
【モンスターハンター フロンティア オンライン ベンチマーク【大討伐】(1,920×1,080ドット)】
23,29224,281(↑4.2%)
【バイオハザード6 ベンチマーク(1,920×1,080ドット[他は初期設定])】
12,93213,423(↑3.8%)

 絶対的なパフォーマンスとしては、さすがハイエンド機だけあってOC前から何ら不満のない数値となっている。ほとんどのゲームで非常に快適なプレイが可能だろう。

 OC後の値は、計測誤差はあるものの、全て数%のアップが見られる。いずれのベンチマークソフトも、GPUにはほぼ100%の負荷がかかっていたが、CPUを使い切る場面は見られなかった。よってCPUのOCはさほど影響せず、4%OCされたGPUの分が素直に反映されているという印象だ。もちろんこれはゲーム次第で変わるので、よりCPU負荷が高いものなら差は大きくなるはずだ。

OCボタンは押すと光るのでわかりやすい。PCの起動中ならボイスも流れる

 これだけだと面白味に欠けるので、もう1つ、本当にリアルタイムにOCが効いているかどうかを、ベンチ途中でOCして確かめてみた。使用したのは「バイオハザード6ベンチマーク」。街中がゾンビで溢れるシーンから次に切り替わる、ちょうど全体の中間あたりのシーンでOCボタンを押してみた。

 スコアは“13,149”。上記のOCオン時とオフ時のちょうど間くらいのスコアが出ている。OCがリアルタイムに効いている証拠だ。

 ちなみにOSが立ち上がっている間にOCボタンを押すと、声優の南條愛乃さんが演じるG-Tune公式キャラクター「Tuneちゃん」による、「オーバークローック!」と力の入った音声が流れる。再度ボタンを押してOCを解除すると、今度は「あー、疲れたー」と力の抜けた声が聞ける。単にOCのオンオフに合わせて音声ファイルが再生されているだけなのだが、南條さんの演技のうまさもあって、意外と押すのが楽しくなってくる。

本当にOCしても大丈夫? 視点を変えつつ使用感をチェック

ケースは無闇に穴を開けた感じではなく、空気の流れを強く意識して開けられている

 OCにはパワーアップと引き換えに、大きなリスクがある。消費電力と発熱量の増加だ。節電が叫ばれる中、消費電力を上げるのは憚られる気持ちを抱く人もいるだろう。発熱の増加が機器の故障を招く点についてはメーカー保証があるとしても、排熱のための騒音の増加という点からは逃れられない。本機ではその辺りをどのようにフォローしているのか。

 まずCPUについては、先述のとおり、OC時は全コア4.6GHzで駆動する。ただCPUが全力で駆動しているわけではない(使用率はほぼ0%)ので、アイドル時の消費電力は数ワットの上昇に留まり、CPU温度もほぼ変化しない。いきなり消費電力や発熱が跳ね上がるわけではない。GPUについても、クロック上限が引き上げられるだけなので、アイドル時にはほとんど変化が見られない。「これならずっとOCしたままでいいかも」とも思える。

 CPUファンにCooler Master製の水冷クーラー「Seidon 120XL」を採用している。水冷クーラー「Seidon」シリーズの中でも、デュアルファンを採用した大型のものだ。本体内部にラジエーター(冷却装置)を置く、いわゆる簡易水冷の中では、かなり高級な部類に入る。OCにより発せられるCPUの冷却はこれでまかなっている。

 ラジエーターに装着されたファンは、高負荷時にはかなりの風量を出そうとする。特にCPUが高負荷時にOCボタンを押すと、回転数が一段上がるので、騒音も比例して上がることになる。ケースがゲーミング向けで空気穴が多めになっていることもあり、騒音の漏れはそれなりにある。ただ音質は低めで耳障りなものではないため、ゲームプレイや動画再生などをしていると、意外と気にならなくなる。

内部はすっきりしていて、まるで空気の流れが目で見えるような配置
Cooler Master製水冷ユニット「Seidon 120XL」は背面に取り付けられている

 挙動の面では1点注意がある。OC時にCPUに最大負荷をかけ続けると、数十秒程度でCPU温度が75度を超え、CPUクロックが全コア4GHzに落ちた。熱暴走やパーツへのダメージを防ぐため、スロットリング機能が働いて自動的にクロックを落としているのだと思われる。真夏で室温が30度近いことも影響しているはずで、もう少し涼しい季節なら4.6GHzで粘ってくれそうにも見える。

 ただこれは、真夏で、かつCPUが4コアとも100%使用されるという異常な状態でのことだ。そんな時でも本機は限界を自己判断して動いてくれているわけで、いつでも安心してOCボタンを押せる……とも言える。

 ちなみにOC未使用時には、最大負荷時でも60度を少し越える程度で落ち着いている。OCでのスロットリング時は70度前後。同じクロックでもOC時の方がCPU温度が上がるのは、CPU周りの電圧を少し上げていることが影響していると思われる。またCPUのスロットリング機能が働いても、GPUは1,040MHzをほぼ維持できているので、使う意味はある。

OCなしのアイドル状態
OCありのアイドル状態。CPUクロックが4.6GHzに固定されているが、他に大きな変化は見られない
OCなしで負荷をかけたところ。GPUは一瞬少しクロックが落ちているが、1,000MHzまで上がる
OCありで負荷をかけたところ。CPU温度は75度前後まで上がった。この後、スロットリング機能によりクロックが4GHzに落ちる

ビデオカードはMSI製のRadeon R9 290Xを搭載。冷却はデュアルファン仕様

 GPUの方は空冷ファンが取り付けられている。OC幅が小さめなこともあって、OC前後で発熱量やファンの回転数が極端に変わるわけではない。アイドル時はファンの回転率が10%台まで落ちており、ほぼ無音だ。

 3Dゲームなどを動かしてGPU温度が上がると、ファンの回転率が55%前後まで上がる。こうなるとラジエーターのファンとは別にGPUのファンが回っているのがわかる。ただこれも甲高い音ではなく、ラジエーターのファンと似た重めのファン回転音と風切り音がする。

 CPUとGPUの騒音をトータルで見ると、確かにOC時の騒音はかなり大きめで、アイドル時とはかなりの差がある。だがゲーミングPCとして見れば、特別うるさいとは感じなかった。音量はそれなりにあるので、リビングPCとして使うというのはさすがに薦められないが、ファンの音質が低い分、他の音が出てしまえばそれに紛れやすい印象がある。使用感も含めてうまく考えられているなと感じた。

 もう1つの注目点は、安定性だ。OC状態でCPUとGPUに負荷をかけ続けたり、ベンチマーク中やゲーム中にOCをオンオフにするなど色々なことを試したが、それによってPCの挙動が不安定になることはほとんどなかった。1度だけ、CPUとGPUに1時間以上負荷をかけ続けるストレステストを試した時に、OC時のGPUクロックが1,000MHzまでしか上がらなくなったことがあったが、PCを再起動すると元通り1,040MHzで駆動した。

安定した超ハイスペックPCが欲しい全ての人へ

 OCボタンによる確実なパフォーマンスアップと、それをいつでも実現できるという、本機の売りの部分は十分に実感できた。ただ3Dゲームでは、CPUよりGPUの強化が効いてくるだけに、CPUが4GHzから4.6GHzに15%アップ! というほどの変化は感じにくいのも事実だ。元々がハイスペックPCなので、その性能に期待しつつ、OCのオンオフがリアルタイムでできるという点に付加価値を感じる人にはぜひオススメしたい。性能だけでなく、製品全体のクオリティも非常に高いと感じられる。

 本機はゲーミングPCを銘打っているだけで、他のことに使うなというわけではない。たとえば画像や動画の処理ではCPU負荷が高く、時間もかかる。そんな時にOCボタンを押してやれば、15%分の恩恵が丸々受けられる。

 OCの幅だけでいえば、4.6GHzよりも高いクロックで常用できるPCを自作する人もいると思う。ただ常用できるクロックを調べる手間がなく、1年間の保障まで付いた状態で安定したPCが手に入るというのは価値がある。しかも再起動なしでリアルタイムにOCできるというのは、一般用途のPCとしても非常に魅力的なものと言える。ゲーマーはもちろんのこと、それ以外の用途に使う人にも、おススメできるマシンだ。

前面にはUSB3.0やマルチカードリーダー、ヘッドフォン・マイク端子などがあり、利便性が高い
ケース内の前面中央辺りに、12cmファンを搭載
HDDは指でつまんで引っ張り出せる。増設や交換も簡単
電源は本体下部にある
背面は無駄のないすっきりしたデザイン
上部にも12cmファンがあり、空気の流れを作っている

(石田賀津男)