PS Vitaゲームレビュー
SOUL SACRIFICE
アドホック・オンラインどちらでも楽しめる最大4人での共闘プレイ! そこにこそ本作の魅力が!!
(2013/3/28 16:35)
アドホック・オンラインどちらでも楽しめる最大4人での共闘プレイ! そこにこそ本作の魅力が!!
マルチプレイは、アドホックによるPS Vitaを持ち寄ってのアドホック通信と、インターネット回線によるオンラインマルチの両方に対応している。マルチプレイはルーム制になっていて、最大4人が入室し、ルームホストがクエストを決定してそれに挑むというものだ。
本作は、やはりマルチプレイでその面白さが格段に跳ね上がる。特に魔法を使う本作では、プレイスタイルが非常に様々で、しかもバトルに入るまでキャラクターの見た目だけではわからないところがある。
それだけに、バトル中に「この人はこういう戦い方なんだ」と思うようなところがあって、自分に近いスタイルなら「やっぱりその魔法を使うよね」と親近感が湧くし、特殊なものを使いこなしていれば驚かされる。それがプレーヤーの数だけあって、プレイスタイルの個性が際立つゲームだ。
特筆すべきはやはり、“救済と生贄”であり、“選択と覚悟”の要素だ。これを他のプレーヤーとも行なっていく。誰かが瀕死になった時、または自分が瀕死になった時にその機会が訪れる。瀕死になった側は、救済して欲しいか、それとも生贄にして欲しいかをボタンで発言できる。だが、それを聞いた側が“その通りにするとは限らない”のだ。相手に選択権があるのだから。
自分が生贄にされた場合、その後は霊体となって闘いをサポートできる。画面は心眼時のようになり、タッチ操作で共闘者の攻撃力を高めたり、魔物をタッチして防御力を下げたりといったことができる。
この選択では、基本的には瀕死になった側の求めている通りにするというプレーヤーが多く、それは当然そうなるだろう。だが時には、救済を求めるプレーヤーを生贄にし、代償魔法を決めれば勝てる、という判断をする人だっているし、いていいゲームなのだ。特に、ギリギリの追い込まれたバトルになると、そうした場面が出てくる。それは本作ならではの面白みであり、本作がマルチプレイを“協力”ではなく“共闘”と表現しているゆえんだ。
マルチプレイでのコミュニケーション方法としては、「テキストを打ち込んでのフリーチャット」、「あらかじめ用意された文を選択する定型文チャット」、「Party機能を利用したボイスチャット」の3つの手段が利用できる。フリーテキストはルーム内のみで利用でき、定型文チャット、ボイスチャットはルーム内でも、クエスト中でも使用できる。ボイスチャットができれば操作に影響はほぼ与えないので、1番便利だと思われる。
Wi-Fi通信時、見知らぬプレーヤーとコミュニケーションをとるために主に定型文でチャットすることになるが、定型文はルーム内、クエスト中ともに複数の選択肢が階層的に並んでいるものから選ぶ形になっている。これについては、頻繁に使うものを先頭に並べ替えるとか、プリセットされている定型文を自分が使いたい定型文と入れ替えるなどできたら、より嬉しかった。
例えば、「自分はこの属性を使うよ」という定型文はあるが、クエスト対象の魔物がどの属性に弱いのかを聞くという定型文はなく、ちょっともどかしい。定型文の方が気軽に発言できるので、より使いやすくカスタマイズしたかった。
“選択と覚悟”が生む共闘感。尖った独特のセンスで満ちた新機軸の「狩りゲー」
「ソウル・サクリファイス」は新規作品であり、意欲に満ちた第1作として“会心の出来”だといえる。いつでも新しい作品が新しいムーブメントを創っていく。当たり前の事ではあるが、ゲームファンからすると時折見えなくなってしまうそれを、改めて示してくれたと思える。
もちろん荒削りに感じるところもあるが、それは特筆するほどには大きなものではなく、全体のまとまりは非常にいい。一時休憩を入れても、またすぐにプレイを再開したくなる良さがあり、それはゲームとしての手触りが良い作品だけが持ちうる魅力だ。
強いて言えば、これだけの表現を書けるゲームだけに、プレーヤーはすごい勢いでゲーム内容を消化してしまう。それがゆえに、もっとボリュームが欲しい、拡張して欲しいという願望が生まれるところはあるだろうか。魔法を合成しての強化や、レベルアップの要素など、がっつりやり込めるだけの充分なボリュームが本作にはあるが、それでももっともっと、と求めたくなるものがある。これについては、やり込み派に向けて4月より無料アップデートにより、複数の魔物が追加されていく予定だ。
ゲーム性としてはいわゆる「狩りゲー」だが、その中には新しさがギュッと詰め込まれている。“救済か生贄か”から生まれる“選択と覚悟”。協力ではなく共闘。委ねられる判断と、それによる結果。マルチプレイでも新機軸な概念だ。世界観も独特で、ファンタジックながらダークでありシビア。ゆるぎない、尖ったセンスの作品だ。気になっているけれどまだ手を出していないという人は、ぜひ、この刺激的な作品をプレイしてみてもらいたい。
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