PS3ゲームレビュー

God of War: Ascension

怪物も神も叩き潰すアクションシリーズ最新作
初搭載のマルチはトラップなど仕掛けたっぷり!

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン
開発元:
  • Sony Computer Entertainment America
プラットフォーム:
  • PS3
価格:
9,980円
発売日:
2013年3月14日
プレイ人数:
1人 オンラインマルチプレイ最大8人
レーティング:
CERO:Z(18歳以上のみ対象)

 人知を越えた神々を叩きつけ、ねじ伏せ、そして打ち倒していく強大な人間“クレイトス”の活躍が楽しめる「God of War」シリーズ。そのシリーズ最新作「God of War: Ascension」が登場した。今作ではこれまでのシリーズで描かれていた物語の最も初期のエピソードとなる。クレイトスは戦神アレスとの“誓約”から魂を解放するため、誓約を司る復讐の女神に立ち向かっていく。

 今作ではクレイトスと復讐の女神の戦いを描くシングルプレイだけでなく、シリーズ初のマルチプレイモードを搭載している。開発者は「『God of War』のシステムでいかにマルチプレイを行なうか?」というテーマを実現させるために2年の歳月をかけたという。クレイトスではない未熟な神の戦士達が、お互いを倒しながら成長するというダークな雰囲気となっており、ステージにいる巨人が戦いに介入してきたり、様々なトラップを作動させられるなど多彩なアイディアが盛り込まれたものになっている。

 「God of War: Ascension」はアクションゲームファンにはたまらない、ディープでエキサイティングな作品となっている。殺伐とした、しかしながら血湧き肉躍る戦いにぜひ飛び込んでもらいたい。

アレスとの誓約から解放されるため、クレイトスは復讐の女神と戦う!

復讐の女神により、誓約の鎖に縛られた状態から物語は始まる
謎の影の存在がアレスとの誓約を打ち破る方法を教える
画面を覆うような巨人。こんな強大な敵もクレイトスは打ち破ってしまう
レイジゲージが上昇すると攻撃は派手で強力なものに

 主人公クレイトスは、スパルタの戦士。彼は戦神アレスに魂を捧げ、“神の力”を手に入れたことで戦争を勝利に導くが、アレスの策略により自らの手で妻子を殺めてしまう。憤怒のクレイトスはアレスへの復讐を誓うが、アレスに魂を捧げた“誓約”がクレイトスを縛る。そこでクレイトスは今度は誓約を司る復讐の女神に立ち向かうことになる……。「God of War」シリーズは、クレイトスがアレスのみならず、ギリシャ神話の主神達に次々に挑んでいく血みどろの物語だ。

 シリーズ最新作「God of War: Ascension」は、神々との戦いに立ち上がるクレイトスの最初期のエピソードを描いている。クレイトスがアレスに復讐するためには、アレスに魂を捧げた“誓約”から解放されなければならない。クレイトスはこの誓約を司る「復讐の女神」に戦いを挑むのだ。

 「God of War: Ascension」は最初プレーヤーにストーリーの流れをわざと明かさない。プレーヤーは状況がわからないまま、クレイトスが鎖に縛り付けられているのを目撃することとなる。彼を捕らえたのは復讐の女神の1人。絶体絶命の状況で女神はクレイトスをいたぶる。しかし、そのままにしていないのがクレイトスだ。

 手を縛り付けてる鎖を引きちぎり、女神の攻撃をかわして容赦ない反撃をする。逃げる女神を追い、向かってくる怪物達を蹴散らしながら、クレイトスは進んでいく。そして戦いを繰り広げていく中で、「復讐の女神を倒す」という本作の目的が提示されていくのだ。

 「God of War」シリーズの魅力は“クレイトスのパワー”にある。下半身が馬のケンタウロスや、1つ目のサイクロプス、鳥の翼を持つハーピー、さらには人間の何倍もある巨人などギリシア神話で語られる怪物達をクレイトスは切り刻み、引きちぎり、踏みつぶして倒していく。

 「God of War: Ascension」ではこれらお馴染みの描写も前作よりパワーアップしている。神話の怪物達を相手に戦い、実に残虐ながら爽快な攻撃で次々と敵を倒していく。特に、巨人との戦いの時には、カメラがロングとなり、クレイトスは豆粒のように小さくなる。その状態で画面に収まりきらないような巨人と戦い、そして勝ってしまうのだ。プレーヤー自身が強大な力を持った存在になったかのような気持ち、巨大な怪物をねじ伏せる“力”の爽快感に酔える作品だ。

 前作に当たる「God of War III」はハデスやポセイドン、そしてゼウスと言ったオリンポスの“主神”と戦う作品だった。比べてみれば今作の復讐の女神達はスケールが小さく感じるところもある。しかし「God of War III」は演出重視で所々ゲームとして見づらかったり、操作しにくく感じる部分があった。一方本作はプレイしやすく、そしてプレーヤーの創意工夫でさらに強く、格好良くクレイトスを活躍させられるようになっている。

 プレーヤーの“腕”がゲームの展開に影響を与えるというところで最も大きいものが「レイジゲージ」の存在だ。このレイジゲージは敵に攻撃を当てると上昇し、ダメージを受けると下がる。レイジゲージが満タン状態となると通常攻撃がより強力なものとなり、さらに一気に消費する「レイジアタック」が使えるようになる。「God of War: Ascension」ではいかに敵の攻撃を食らわずにレイジゲージを溜め、そして強力な攻撃で敵を倒すかが求められる。

 これまでのシリーズに比べ、本作は戦闘の難易度が少し高めだと感じた。敵が多めで、攻撃も激しいので、ごり押しだけでは進められない状況がある。もちろん難易度設定で下げることもできるのだが、試行錯誤を繰り返しながらより強い“クレイトスの戦い方”を見いだしていくことに本作の楽しさがある。戦いを重ねることでクレイトスのポテンシャルをどんどん活かすようにできるようになる。これまでのシリーズ以上にクレイトスを身近に感じることができる作品だ。

 パズル要素、ステージでのアクションもより派手に見応えのあるものとなった。特に「ウロボロスの宝石」を使ったパズルが面白い。この宝石を使うと、特定の場所で「再生」と「崩壊」に時間を動かすことができる。例えば大きな瓦礫のところでウロボロスの宝石を使うとカメラの逆再生のように瓦礫が動き出し、崩れ去ってしまっていた建造物が再生したりする。ステージそのものがリアルタイムで姿を変えていくのは圧巻だ。

 「God of War: Ascension」はこれまでのシリーズを受け継ぎながら、洗練され、ゲームとしての完成度を上げたという印象を持った。よりプレイしやすくなり、なによりもうまくなりたいという気持ちが強くなる作品となった。プレーヤーの向上心にクレイトスは応えてくれる。達人達の「超絶プレイ」を見たくなるゲームだ。プレーヤーの努力によってクレイトスは神をも越える力を手にできるだろう。

【スクリーンショット】
縛られたまま拷問を受けるクレイトス。しかしすぐに反撃し、復讐の女神を追い詰めていく。この圧倒的な無敵ぶりが「God of War」シリーズの魅力だ
神話上の怪物も彼の敵ではない。強大な彼らを倒していく過激な演出はさらにパワーアップ
ウロボロスの宝石の力で崩れていた橋が再生していく
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(勝田哲也)