PS3ゲームレビュー

PS3で初めての「FF」を徹底解剖!
「FINAL FANTASY XIII」
Trial Version

  • ジャンル:RPG
  • 発売元:株式会社スクウェア・エニックス
  • 価格:5,900円(体験版同梱版)
       49,980円(PS3本体、体験版同梱版)
  • プラットフォーム:プレイステーション 3
  • 発売日:発売中(本編:2009年冬予定)
  • プレイ人数:1人(本編:未定)
  • CEROレーティング:審査予定


――編集部より――

今作は注目度も高く、弊誌としては異例の2名によるレビューとなります(山村智美氏のレビューはこちら)。2人の視点違いなどをお楽しみいただければ幸いです。


 世界中のユーザーたちが待ち望んでいた、プレイステーション 3で初めての「ファイナルファンタジー(FF)」をプレイできる日がやってきた。4月16日に発売されたBlu-ray版「FFVII ADVENT CHILDREN COMPLETE」のパッケージの中には、もう1枚のディスクが入っていた。それは「FFXIII」の体験版だった。

 それを手に入れた筆者は、何回も繰り返しプレイした。1時間ぐらいの体験版でRPGのすべてがわかるはずはないが、第1印象は紛れもなく良い。いや、良すぎる。率直に言えば、これほど「FF」らしい「FF」を見るのは久しぶりだ。ストーリーの始まりも、世界中で最も愛されているエピソード「FFVII」へのオマージュだ。そう、すべては高速で走る列車から始まる……。


■ 2つの世界に成されたファンタジー

ライトニングと一緒に列車に乗っているのがサッズという陽気な黒人。アフロ頭の中に隠れている可愛い雛チョコボがとても印象的だ
プロローグシーンは美しいCGによるものだ。ライトニングが列車を降りてからは、実機によるグラフィックスになる。PS3の性能のお陰で、デモシーンのグラフィックスとの差はあまり感じられない

 ミサイルのように高速で走る列車。その中に、拘束衣に身を包んだ人々が乗っていた。重苦しい空気が漂う列車内を、聖府軍が監視の目を光らせている。この中には「FFXIII」の主人公、シリーズ初の女主人公「ライト二ング」が仲間と思われる黒人と一緒に身を潜めていた。

 列車は緑が生い茂る地上から、暗い地下へと進んでいく。空に浮かぶ殻に閉ざされた世界はコクーン。広大な大地が広がる世界は下界(パルス)と呼ばれている。「聖府」が「外なる異物」の影響を受けたと疑われる人々をパルスへ強制的に移住させようとしていた。

 ライトニングは聖府軍の元ソルジャー。何か事情があってパルスへ移送されている。パルスへの入り口と思われる紫色のゲートにぶつかり列車が大きく揺れた隙にライト二ングは拘束衣を脱ぎ、宙を舞いながら1人、また1人と警備員を倒していく。

 大きく揺れながら進行する列車に異変を感じた敵の戦闘機が、列車を銃撃して止めようとする。これに合わせて聖府軍も援軍を呼ぶ。水色の特殊なゲートから出てきた恐ろしい怪物が、市民たちに襲い掛かる。その一方でライトニングたちは、転倒した車両から降りる間もなく蛇のような形をした戦闘機とのバトルへと突入する。

水色のゲートから出てくる怪物は最初、デジタルノイズのような無数のキューブで表現されているが、徐々にリアルな形になってくるライトニングは重力を操る特殊な装置を身に付けている体験版の後半では、もう1人の主要キャラクターを操作できる。名前はスノウで、強制的に移住させられた市民を救うために聖府軍と対峙する

■ 時間が勝負を決める新感覚バトル。戦況を逆転可能なブレイク状態

タイムゲージにストックしたコマンドは△ボタンを押して実行する

 バトルが始まった瞬間に、またすべてが変わったことに気が付いた。それは、MMORPGのようなバトルシステムを採用していた前作との類似点はゼロに等しく、本作のバトルは「FFX」によく似ているということ。具体的には、バトル中にユーザーが実行可能なアクションはメニューからコマンドを選択するだけという、「FF」シリーズでお馴染みのコマンドメニューが蘇った。ちなみに、この体験版で選べるコマンドは以下のようになっている。

【選択可能なコマンド】
わざ:武器を使った物理攻撃
黒魔法:ファイアやブリザードなどのダメージを与える魔法
白魔法:ケアルなど、HPやステータス異常を回復する魔法

 各コマンドは、方向キーの上下で項目を選んで○ボタンを押すと展開されるサブメニューに、そのカテゴリーに対応したものが表示される。技なら「たたかう」と「うちあげ」、魔法なら「ファイア」と「ファイガ」というコマンドを選択できるようになる。各技と各魔法の横には、例えば「たたかう」は1、「ファイガ」は3という具合に数字が表示されている。これは、そのコマンドを実行するのに必要なMPを示す数値ではなく(本作ではMPという概念がない)、本作から新たに導入される「タイムゲージ」というシステムに関係している。

 コマンドメニューの上にあるタイムゲージは3つに区切られており、時間の経過と共に溜まっていく。1つ目の区切りまで溜まると1の数字が付いた魔法や技を実行でき、3つ目の区切りまでフルに溜まった場合は3の数字が付いたコマンドを実行できるようになる。つまりファイガのような強力な魔法を使うためには、それ相応の時間が必要ということだ。

 新要素であるタイムゲージは、「FFXIII」のバトルで重要なカギを握っている。なぜなら、戦闘に費やした時間や敵をブレイクした回数によって、戦闘終了後のリザルト画面に表示されるRANKが決まり報酬も大きく変動するからだ。敵が全滅するまでに費やした時間が少ないほど、獲得できる報酬が多くなる。

メニューから項目を選んだあとに、方向キーの左右でターゲットを選択する「ファイガ」や「ブリザガ」といった魔法はタイムゲージをすべて消費するが、その威力は凄まじく、ターゲットの近くにいる敵をも巻き込むランクは「戦闘時間」、「最大チェーン数」、「ブレイク」という3つのパラメーターで決められる。右下にある「TP Bonus」の意味はまだ不明だ

 バトルリザルトに影響を与えるのは時間だけではない。本作には「ブレイク」という要素が採用されているが、これもリザルトを大きく変動させる要素の1つとなっている。敵をブレイクするとダメージ量が増えるだけでなく、敵を空高く打ち上げることもできる。

 本作で敵をブレイク状態にするには、連続で攻撃する必要がある。攻撃が連続でヒットすると、画面の右上に「チェーンボーナス」が出現。それが増加することで、敵に与えるダメージが大きくなる。ただし右上のチェーンゲージが途切れないように素早く次の攻撃に繋げないと、連続ヒットにはならずにチェーンが終わり普通のダメージ値に戻ってしまう。このケースにおいても、やはり時間という要素が絡んでくる。また、連続で攻撃を受けた敵がブレイクすると赤く点滅し始める。これで初めて、「うちあげ」が使えるようになる。

 タイムゲージが最大まで溜まった状態で、例えば「うちあげ」、「たたかう」、「たたかう」という、それぞれゲージを1消費するコマンドを組み合わせて△ボタンで実行すると、「うちあげ」で敵を空中に打ち上げてから敵を追撃し、さらにダメージを与える。このように、敵をブレイク状態にし「うちあげ」コマンドを別の技と組み合わせることで、ダメージを増加させられる上にバトル時間も短縮でき、まさに一石二鳥だ。つまり、ブレイク状態とタイムゲージを有効に活用することが、勝利への近道といえるだろう。

 「FFXIII」体験版のバトルシステムについて他に特筆すべきことは、ユーザーがコントロールできるキャラクターが1人だけということだ。もちろん、体験版なので今後システムが変わる可能性はあるが、テンポを重要視した本作のバトルを成立させる為には、キャラクターの操作を1人に絞ったほうが遊びやすいと感じた。逆に3人ともユーザーがコントロールすることになった場合、限られた時間で選択する必要のあるコマンドが多すぎて、バトルの爽快感が失われる可能性もある。

 これは個人的な推測にすぎないが、製品版では操作するキャラクターをユーザーが戦闘中に切り替えることができ、残った仲間の操作はAIに任せるといった形になると思われる。もしそうであれば、「FFXII」の「ガンビット」のようなシステムを是非導入して欲しいと思う。仲間のAIを細かく設定できれば、実際にコントロールしなくても成功したときの満足感は得られるはずだ。もう1つの願望としては、マルチプレイだろうか。味方をネット上の友達に操作させたほうが、バトルはさらに楽しいものになるはずだ。

チェーンゲージが減らないようにするためには、△ボタンを押すタイミングが重要。仲間の最後の攻撃がヒットした瞬間が、技と技が繋がる最高のタイミングだ「ブレイク」すると、敵が赤く点滅し始める
スノウが使えるのは氷系の黒魔法。敵がブレイク状態の時、「うちあげ」に「ブリザド」を2つ繋げるとコンボを繰り出せるこの体験版で組み合わせることのできるコマンドの数は少ないが、製品版ではそのバリエーションは大幅に増加するだろう

■ ユーザーフレンドリーなインターフェイス

フィールド上には宝箱も配置されている。金属でできたボールのような形のものが空中に浮かんでいる

 バトルシステムはRPGの面白さを決定付ける重要な要素の1つだが、移動をスムーズに行なえないと冒険のテンポが損なわれることになる。この面においても、「FFXIII」は理想的といっても過言ではない操作体系を構築した。

 カメラは、前作と同じように自由に動かすことが可能。コントローラーの左スティックでライトニングを操作し、右スティックで視点を上下左右に回転させられる。カメラが固定される場所もあるが、ほとんどのケースで自由に変更できる。

 前作とのもう1つの共通点としては、敵がフィールド上に見えることが挙げられる。敵シンボルに接触することでバトルパートに移るというスタイルを採用している。フィールド上に敵が見えるおかげで、場合によってはそれらをやり過ごすことも可能だ。体験版では通路が狭いためにほとんどの敵に接触してしまったが、製品版では敵をかわし易い広いフィールドも用意されるだろう。

すべてのユーザーのニーズに応えるためか、4つのカメラモードが用意されている主人公の存在に気が付いた敵の頭上には「Warning!」という文字が表示されるレバーやボタンのようなギミックがあるところに赤い丸が表示される
画面右上のレーダーで、敵シンボルや目的地などを確認できるカメラが固定されていてコントロールできない場面もいくつかあったフィールド上を歩いている間にも周囲の状況がリアルタイムに変化したり、爆発が起こったりする。演出の派手さもPS3ならでは

■ 伝統と進化を融合させた続編

 断言するのはまだ早いが、この体験版から最高傑作の匂いを感じた。シリーズの常識を変え過ぎた前作とは異なり、本作では新しいアイディアを提供すると共に、昔からの「FF」らしさも大切にしている。

 この続編には、筆者が愛した「FFVII」と「FFX」の良さが凝縮されており、それをさらに引き立たせる要素として時間を主軸にした新感覚のバトルシステムが追加された。一瞬の余裕も与えない緊張感たっぷりのバトルは、何回挑んでも飽きることはなさそうだ。コマンドを組み合わせて、連続で敵を攻撃する楽しさ、時間を短縮するために、何をするべきかをいつも考えさせられるシステムのおかげで、戦闘が単調になることはないという印象を受けた。

 今回の体験版では、前半で主人公のライトニングを、後半で氷魔法を得意とするもう1人の主要キャラクター「スノウ」を操作する。スノウのパートで特に印象に残ったのは、フィールドにいる仲間たちとの会話。スノウが近付くだけで、彼らのセリフが聞こえてくる。周囲の人々の気持ちがダイレクトに伝わるというメリットもあり、すごくいいソリューションだと思った。

 バトルシステムのクオリティの高さは、遊びやすさの向上にも繋がる。RPGの初心者でも難なく本作のすべてが楽しめそうだ。メニューが読みやすく、技と魔法を組み合わせるのが直感的で、一切ストレスを感じることなく、誰でも戦闘を進められるだろう。成長システムなどまだ謎に包まれた要素は多いが、筆者の勘が間違っていなければ、「FFXIII」はPS3の歴史を彩る最高のRPGになるだろう。

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【Reported by ジョン・カミナリ】
芸名:ジョン・カミナリ
国籍:イタリア 年齢:33歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ(アニメソング)
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、「大好き!五つ子」(アンソニー・ジャクソン役)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、大好きな「龍が如く」シリーズに敵役として出演すること


(2009年5月1日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]