「リマザード:ブロークンポーセリン」レビュー

複数人から追いかけられる恐怖、新たな能力の覚醒……パワーアップした「リマザード」シリーズ第2作

【リマザード:ブロークンポーセリン】

ジャンル:サバイバルホラー

発売元:3goo

開発元:Stormind Games

プラットフォーム:プレイステーション 4/Nintendo Switch

価格:3,200円(税別)

発売日:12月3日

 「リマザード:トーメンテッド ファーザーズ」の続編にあたる作品「リマザード:ブロークンポーセリン」。「リマザード」シリーズは閉鎖された建物内で時に敵の目を掻い潜り、見つからないように進み、時に敵に追いかけられ、どこかに身を隠して敵が通り過ぎるのをひたすら待つ。その中で目標をクリアしていき、脱出を図るシリーズだ。

 身近にいる人間が、さっきまで普通に話していた人間が次の瞬間突然襲ってきたら、人はどれだけ戸惑うのだろうか。状況を理解するまでどれだけの時間を要するにだろうか。どうして変わってしまったのか、どうやったら元に戻ってくれるのか、誰か味方はいないのか、ありとあらゆる苦難にどう立ち向かっていくのか。そういった極限の精神状態で追い詰められていく主人公を操作しながら、プレーヤー自身も狂乱の渦の中にどんどん引きずり込まれていくような感覚を味わうことができるのが、本作の最大の魅力だ。

 なお、前作「リマザード:トーメンテッド ファーザーズ」では行方不明の少女セレステ・フェルトンを探す主人公ローズマリーが、訪れたフェルトン家の屋敷の中に忍び込み、セレステが失踪した謎に迫るというものだ。ストーリーの中で出てくる謎の薬品「フェノキシル」や赤い修道女が本作でも大きくかかわってくる。

 前作と本作では少しシステムが変わっており、やり込み要素も増えている。PS4版「リマザード:ブロークン ポーセリン」を発売に先駆けてプレイすることができたので、今回体験した本作の魅力を紹介したい。

【リマザード:ブロークンポーセリン|ストーリートレーラー【PlayStation®4/Nintendo Switch™】】
【リマザード:ブロークンポーセリン|ゲームプレイトレーラー【PlayStation®4/Nintendo Switch™】】

身近な人間がほぼ全員襲い掛かってくるサイコスリラー

 本作の舞台は「アシュマン・ホテル」、そして主人公は「ジェニファー」という少女だ。前作の主人公「ローズマリー」と比べると見た目がずいぶんか弱く頼りない印象を受ける。性格は気が強いタイプの女の子だが、それでも心許ない感じは否めない。プレーヤーは基本的に彼女を操作していくことになる。

本作主人公の「ジェニファー」

 本作のストーリーは主人公「ジェニファー」が突然おかしくなってしまった「アシュマン・イン」の従業員たちに襲われながも、ホテルからの脱出を目指す。そして彼らがおかしくなってしまった真相に迫っていくというものだ

 本作では、主人公「ジェニファー」を追いかけてくる人物は「アシュマン・ホテル」にいる人ほぼ全員である。さっきまで普通に話していた人たちが突然襲ってくるので、驚きと戸惑いが隠せないまま逃げ惑うことになる。登場人物のほぼ全員が敵になるので、時に複数人に追いかけられる状況になることもある。筆者は複数人に追い詰められてしまい、袋叩きに合うことがしばしばあった。複数人の目を掻い潜って逃げきるのは、なかなか至難の技だが、うまく行くと爽快で思わず歓声を上げてしまうくらい嬉しい。

さっきまで普通に話していたアンドレアさんが追いかけてくる
複数人に追いかけられることもある

 ストーリーの中には目的が掲げられており、その目標をクリアしながら物語は進んでいくことになる。目標は探し物から敵の撃退まで幅広く設けられており、ストーリーの進行によって随時更新されていく。苦戦する目標も中にはあったりと一筋縄ではいかない面白さがある。

目標は随時更新されていく

 また、前作に比べてプレーヤーをびっくりさせる演出が増えており、筆者も何度も心臓が痛くなるほど驚いた。本作はストーリーの緩急が良くできているので、気を抜いた瞬間こそ最も危険な瞬間だと感じた。

急に出てくる演出で、声が出るほど驚いた

 襲ってくる人々は物音に敏感になっており、音を立てると音の方向へ向かってくる。足音や物を投げた音、陽動アイテムで鳴らした音などどんな音でも聞きつけて近づいてくる。特に本作では主人公の足音が歩いているだけでもかなり大きく感じる。その理由はホテル内を探索している時のBGMは基本無音だからだろう。主人公の足音だけがコツコツと響く。この足音だけというのが、逆に怖さに拍車をかけているのだ。筆者は足音を立てたくないあまり、ほぼずっと足音が鳴りにくい中腰での移動をしていた。

中腰で足音を立てないようにそろりそろりと移動
足音を立てなければ、敵の後ろを通り抜けることも可能
見つかったら猛ダッシュで逃げる

 また、敵の目から逃れるために、ロッカーやクローゼット、スツールの中に隠れることもできる。当然敵の目の前で隠れてしまうと容赦なく隠れた場所から引きずり出されてしまうので、敵の目を盗んで隠れる必要がある。また、敵が隠れている場所を怪しんでいると、ミニゲームが始まり、そのミニゲームに失敗すると同じく引きずり出されてしまう。ミニゲーム自体はさほど難しいものではないが、極限状態の中でプレイしていると緊張からか時折失敗してしまうこともあり、苦戦を強いられることもあった。

いろいろなところに隠れられる
敵から身を隠しながらのミニゲームは心臓がドキドキしっぱなしだ

 特筆すべき要素として、本作には回復アイテムがない。ダメージを負ってしまった場合、時間経過で治癒するのを待つか、鏡とメトロノームが設置された、セーブスポット兼回復スポットに行く必要がある。前作では回復すると鏡が主人公の怪我を吸収したかのようにひび割れていき、そのひび割れが治るまで、次の回復ができない仕組みになっていた。しかし、本作では、鏡が割れるような音はするものの、鏡が割れるような演出はなく、短期間で何度でも回復をすることが可能となっている。筆者は頻繁にボコボコにされていたので、短期間で回復できるのは非常に助かった。

回復スポット兼セーブスポットを見つけるとホッとする

 前作ではストーリーはほぼ時間の流れに応じて進んでいたが、本作では時間軸がころころと変わっていく。初めのうちはストーリーの展開が唐突に変わるのでちょっと混乱してしまうが、終盤に行くにつれて散らばっていたストーリーが一本の線上につながっていく様は本当に気持ちがいい。本作が前作の前日譚であり、そして続編という立ち位置ということ、そして3部作構想のうちの2作目というところからも、そのストーリー展開は目を見張るものがある。

 今また、今作では逃げる、隠れるだけでなく、時に敵に立ち向かって敵を倒すことも必要となる。敵の魔の手を掻い潜り、反撃するために敵の隙を作って、攻撃を仕掛ける。時に操作の正確性やひらめきを必要とされることもあり、特に本作はただ逃げ回るだけではないので機転も大事になってくる。

逃げるだけではなく時には敵に立ち向かうことも

アイテムアップデートやアビリティのレベルを上げて敵に立ち向かえ!

 今作では前作にも存在していた防御アイテムや陽動アイテムのアップデートがわかりやすくなり、プレーヤー自らが効果を確認してから組み合わせることができるように進化している。効果は「継続ダメージを与えるようになる」や「敵にダメージを与え、少しの間スタンさせる」、「少しの間、敵の視界を遮る」などがある。プレーヤーのプレイスタイルに合わせて効果の種類やどのアイテムに効果をつけるかを選択できるので、プレイの幅が広がる。ちなみに筆者は敵との距離をおくことに重点を置きたかったので、「敵をスタンさせる」という効果のアップデートを多用した。

防御アイテムや陽動アイテムをアップデートできる

 また、本作から登場する「蛾の鍵」というアイテムを集めていくと、ステージ上にあるポイントで主人公のいろいろなアビリティのレベルを上昇させることができる。アビリティは敵を近づけないようにドアの封鎖能力が上がる「バリア」、スプリントの持続能力が上昇する「逃走」、移動時の足音を軽減し、隠れ場所での能力が上がる「影隠れ」、防御アイテムの使用能力が上昇する「シャープネス」、体力回復が向上する「体力」、陽動アイテムの使用能力が上昇する「道具の達人」、体力が少ないときに特別な能力をアンロックする「生存者」、アイテムを拾う際に特別なボーナスを得る可能性を追加する「幸運」、蛾の目の使用能力が上昇する「メンガタスズメの母」の9種類があり、各アビリティごとに5段階レベルを上げることができる。レベルが上がるごとに得られる能力がどんどん強力になっていくが、その分「蛾の鍵」たくさん消費することになるので、苦手なところを補強するのか、得意なことをさらに強化させるのかはプレーヤー次第となる。筆者は苦手だった隠れたときのミニゲームが少しでも簡単になるように「影隠れ」を上げていた。

収集したアイテムの中には「蛾の鍵」というアイテムが存在する
「蛾の鍵」を集めるとアビリティをレベルアップすることができる
レベルを上げると能力が解放される
どのアビリティを上げるかはプレーヤー次第

 そして、本作の主人公「ジェニファー」には「蛾の目」という特殊な能力が備わっている。この「蛾の目」を使うことで遠くにある装置を操作する、敵の邪魔をするといった行動を、蛾の力を借りて行うことができるようになっている。「蛾の目」という通り、使用時は視点が飛んでいる蛾のものとなる。飛行機を操作するゲームに操作感は近く、気を抜くと一瞬で上下左右平衡感覚すべてを失い、今自分がどこでどんな状態になっているのかさっぱりわからなくなってしまう。操作に慣れるまで若干苦戦するが、うまく操作できるようになると、非常に便利な能力だと感じた。通常使う場所以外にもいろいろな場所で試してみたくなる能力なのだが、追われていたりするとなかなか使えず非常にもどかしい思いもした。

「蛾の目」を使うと高いところにあるアイテムを見つけることもできる
人が通れなさそうな場所を通ることもできる

 本作では「アシュマン・ホテル」についてや登場人物についての収集アイテムも数多く、収集物の中にはエンディングに少し関わってくるものもある。逃げながら集めていくのはなかなか骨が折れる上、心も折れそうになる。しかし、探していた収集アイテムを見つけると嬉しくなるし、他のものも何とか見つけたいと必死に探してしまう。本当にたくさんの収集アイテムがあるので是非ともたくさん探して集めてほしい。

収集できるアイテムもたくさんある

 本作ではムービーパートとプレイパートが絶妙なタイミングで組み合わせられており、怖いけれど続きが知りたい!という好奇心を煽られる。この絶妙なバランスがビビりな筆者の背中を押してくれた。

 前作からより進化した本作はそのストーリーの緩急とやり込み要素が増えたことやプレーヤー独自のカスタマイズが可能になったことで、より一層面白さが増したと感じた。最後までプレイしても総プレイ時間は10時間程度とあまり長くはないが、それでも十分すぎるくらいの怖さとストーリーが際立っている。そして3作目が非常に気になる。それぐらい密度が濃い作品だ。

 1点残念だったのは、プレイしていく中で「蛾の鍵」をいくつ集めても増えなくなってしまうバグに遭遇してしまったこと。ゲームを再起動してもセーブデータ自体がバグを引き継いだままだったので、仕方なくバグが発生する前のセーブデータからやり直した。怖い思いをしながら這々の体でクリアした場所をもう一度プレイするのは、少々精神的に辛かった。ただし、パブリッシャーの3gooによれば開発スタジオはこれまでに報告されている不具合について現在も継続的に調査を行なっており、年内を目標にアップデートの配信を予定しているという。

 本作は3部作の2作目という事で、1作目の「リマザード:トーメンテッド ファーザーズ」での疑問が徐々に明らかになっていき、ラストには怒涛の展開が待っている。本作だけでも十分楽しめるが、前作をプレイしておくとストーリーをより一層楽しむことができるだろう。

 本作の発売と同時に、「リマザード:トーメンテッド ファーザーズ」と「リマザード:ブロークン ポーセリン」がセットになったプレイステーション 4/Nintendo Switch用「リマザード ダブルパック」も発売される。2本セットで5,600円(税別)と2作品別々に買うよりお得なパックとなっているので、前作も併せて気になった方はぜひプレイしてみてほしい。

□PS4版「リマザード:ブロークン ポーセリン」のストアページ
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP4236-CUSA19458_00-REMOTHEREDBJAPAN

□Switch版「リマザード:ブロークン ポーセリン」のストアページ
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000031847.html