「BAYONETTA&VANQUISH」レビュー
BAYONETTA&VANQUISH
極上のアクションとシューティングをまとめて堪能!! プラチナゲームズの2大タイトルが美麗映像で蘇る
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- プラチナゲームズ
- 開発元:
- セガ
- プラットフォーム:
- PS4
- 価格:
- 3,990円(税別)
- 発売日:
- 2020年5月28日
2020年5月21日 15:00
セガは、プレイステーション4用ソフト「BAYONETTA&VANQUISH」を5月28日に発売する。過去にプレイステーション3/Xbox 360で発売されたプラチナゲームズの名作、クライマックス・アクション「BAYONETTA(2009年10月29日発売)」と、シューティング・アクション「VANQUISH(2010年10月21日発売)」の2タイトルが1本になったお得なセットである。
本作最大の特徴は、ムービー解像度とフレームレートの向上。さらに、「BAYONETTA」は日本語音声の追加、「VANQUISH」はダウンロードコンテンツとして配信されていた特殊武器が追加されており、まさに完全版ともいえる仕様となっている。アクションゲームに定評のあるプラチナゲームズが手掛ける作品だけあり、両タイトルとも今なお根強いファンが多い。
つい何年か前にプレイステーション3でリリースされた気でいたが、気が付けばもう10年以上前の作品のようで正直驚かされた。10年も経っていると、「作品は知っているけどプレイしたことはない」という人もいるだろう。
本稿では、ストーリーのネタバレは避けつつ、異なる面白さを持つ名作2タイトルの魅力をお伝えしよう。
類を見ないキャラクター性、ブッ飛んだアクションが魅力の「BAYONETTA」
はじめに「BAYONETTA」について語っていこう。物語は数百年の時を超えて現代に蘇った魔女「ベヨネッタ」が、失われた自分の記憶を取り戻すため、彼女を狙う天使たちをブチのめしていく――という、簡単に説明するとそんなストーリーだ。
本作未プレイの人からは、「紹介が雑過ぎだろう」とお叱りを受けるかもしれないが、その振り上げた拳を一回収めてもらいたい。ベヨネッタとは何者なのか? 失われた記憶を辿った先に何が待っているのかなど、ストーリーも確かに気になる作品ではあるのだが、「BAYONETTA」の真骨頂は“そこではない”。
やはりなんといっても本作の魅力の8割を占めている(筆者調べ)のは主人公のベヨネッタだろう。その理由は言わずもがなとにかくエロい。クールでメガネの似合うお姐さんといった雰囲気で、気品のあるエロさをイメージするかもしれないが、蓋を開けてみると“何かにつけて大胆な開脚”を見せたり、“一糸まとわぬ姿を晒す”など、ド直球のそれである。
直球のエロでありながら、そこにバカバカしさを盛り込むことで、性的なものではなくユーモアのあるものに昇華させているのもナイスだ。
自分で言っておきながらではあるが、エロだけが全てだと思ってもらいたくない。華奢な見た目に反して、“ブッ飛んだ豪快さ”というギャップもベヨネッタの魅力だ。敵である天使たちを十数体まとめてジャーマンスープレックスを決めたり、涼しい顔で車を投げ飛ばしたりと、とにかく荒唐無稽なのである。
魔女といえば、どちらかというと虚弱で、魔法を使って戦うというのがお決まりだが、ベヨネッタはそのイメージをぶっ壊すゴリゴリの武闘派という斬新さ。誕生から10年以上経つが、ゲーム史ではまだベヨネッタを超えるインパクトのあるキャラクターは誕生していないのではなかろうか。
キャラクターの事ばかりになってしまうのでそろそろ肝心なゲームの内容にも触れていこう。
本作はチャプタークリア形式のアクションゲームとなっている。特筆する点といえば高品質なアクション性に尽きるだろう。ベヨネッタはバレットアーツと呼ばれる格闘術を駆使して戦うのだが、殴る、蹴るに加えて両手両足に装備している四丁拳銃で天使たちを蜂の巣にしていくのだ。
アクションゲームとしてのレベルはとても高く、それでいて複雑な操作が必要ないのも素晴らしいポイント。パンチとキックボタンを適当に押しているだけで爽快なコンボを簡単に決めることができる。コンボの締めには、自身の髪の毛を触媒として魔界の住人を呼び出す「ウィケッドウィーブ」が繰り出される。ド派手な演出と破壊力の高い技で、これを天使にブチかますのがとても爽快なのだ。
技の種類も豊富に用意されており、これがバトルの面白さを加速させている。技の中には「鉄山靠」や「アフターバーナーキック」なんてものもあり、セガファンならニヤリとさせられる。
多彩な技で敵をスカッとぶっ倒すのはもちろん爽快で楽しいのだが、本作では“敵の攻撃をかわすことすらも面白さに繋げている”。敵の攻撃がヒットする直前に緊急回避を成功させると「ウィッチタイム」が発動する。ウィッチタイム中は時間の流れが遅く感じられるようになり、自分以外の動きがスローになるのだ。バトルではかなり重要なシステムで、華麗に攻撃をかわして、スローになったところを仕留めるというスタイリッシュな戦い方が楽しめる。魔女ならではの設定をうまくゲームシステムに落とし込んでいるのは流石の一言だ。
ほかにも、拷問器具で天使をグッチャグチャにしてしまう「トーチャー・アタック」や、巨大な魔獣が天使を食らう「大魔獣召喚」など、ブッ飛んだアクションがこれでもかと詰め込まれている。
さらに、刀や鞭などの装備品も数多く用意されており、装備によってベヨネッタのアクションがガラリと変化するので、終始マンネリ化することなく新鮮な気持ちでバトルが楽しめる設計となっている。良作アクションゲームを作り続けるプラチナゲームズだけあって良い仕事をしてくれる。
名作が現行ハードで遊べるだけでも嬉しいところだが、ただのベタ移植ではないのも嬉しいポイントだ。
プレイステーション3版の「BAYONETTA」は後にアップデートでもろもろ改善はされたのだが、発売当初はグラフィックス、フレームレート、ロード時間などに難点があった。
当時の「BAYONETTA」を知っている身としては、今回のリマスターは感動すら覚える出来だ。グラフィックスはプレイステーション3版とは段違いのクッキリと色鮮やかな美しさ。
特に注目してもらいたいのは、序盤ボスのビラブドを魔獣ゴモラが丸かじりにするムービーシーン。解像度が上がったことにより“迫力とエグさ”が格段にパワーアップしている。まさに鳥肌物の映像だ。
地味ながらに大きな改善点は、ロード時間が大幅短縮されたポイントだ。場面の切り替わりやリトライ時にあった長いロード時間も本作ではものの数秒。ストレスなく遊べるようになっていて快適の一言。
さらにフレームレートの向上により、動きの滑らかさが凄い。戦闘では流れるような動きでコンボを決めることができ、アクション面での爽快さが格段に上っている。
プレイステーション3版には無かった、豪華声優陣による日本語ボイスの追加もたまらない。ベヨネッタの日本語音声には、お姉さまを演じさせたら右に出る者はいない田中敦子さんが担当と、誰もが納得のキャスティング。原作通りの英語音声も全く悪くないのだが、個人的には日本語音声の方がベヨネッタのセクシーさが何割も増しているように感じる。
「BAYONETTA」の伝えたい魅力はまだまだあるのだが、踏み込み過ぎるのも楽しみを奪いかねないので、これ以上は実際にプレイして自分の肌で感じ取ってもらいたい。
従来のTPSとは一線を画したハイスピ―ドシューティング「VANQUISH」
ここからはもう1つのタイトル、「VANQUISH」の紹介をしていきたい。知名度と華のある「BAYONETTA」と比べると、本作は硬派で男臭い隠れた名作といったポジションだが、こちらもプレイしたユーザーからの評価はとても高い。
物語は近未来の宇宙。「ロシアの星」と呼ばれる組織に占拠されてしまったスペースコロニーが舞台。コロニーからのマイクロウェーブでサンフランシスコを焼き払い、アメリカの無条件降伏を要求するロシアの星が次に狙うのはニューヨーク。そこでアメリカ軍はニューヨーク攻撃開始までの間のコロニー奪還を⽬指し、主人公はその作戦に同行する。最初からクライマックスともいえる、重厚感のあるストーリーだ。
主人公はDARPA(国防高等研究計画局)の研究員で、バトルスーツARSの設計者である「サム・ギデオン」。自ら開発したARSを身にまとい戦場に赴くという、アメコミ的なカッコいい設定である。
本作はサードパーソン・シューティング(TPS)に区分されるゲームだが、「VANQUISH」はこれまでのTPSとは一線を画している。従来のTPSにプラチナゲームズが得意とするアクション要素を盛り込むことで、かつてない戦略性と爽快感を生み出したのだ。
このゲーム最大のセールスポイントは、高速推進システム「ブースト」で実現した疾走感溢れるハイスピードな戦闘。銃弾飛び交う戦場の中、物陰から物陰へ高速で移動することや、敵陣を横切って相手の裏を取るなんてことも可能。このブーストの存在により、他のTPSでは味わえない自由度の高い戦闘が実現している。
シューティングゲームでありながら、パンチやキックなどの強力な近接攻撃が用意されているのも特徴的だ。銃⽕器だけではなく、ここぞという場面では格闘で敵を吹っ飛ばすことも可能で、通常のTPSと⼤きな差別化を図っている。
周囲の時間の流れをスローに感じさせる「ARモード」というシステムも良い味を出している。腕に自信があれば、ブーストダッシュで敵陣に突っ込み、動きをスローにしてまとめて殲滅させるというスタイリッシュな戦い方もできる。プレーヤーの技量さえあればどんな攻め方をしても攻略できるという設計は、実にゲーマー心理をくすぐってくる。
大量なザコ敵を蹴散らしていくのも面白いが、ステージ後半に待ち受ける大型兵器との戦闘では、ザコ戦では味わえない緊張感のある戦いが楽しめる。撃てども撃てども動きを止めない耐久力と硬い装甲、食らえば即死級の圧倒的火力、そんなやつを相手にするのだからワクワクしない訳がない。
ボスの大型兵器はかなり強く、初見では苦戦を強いられるかもしれないが、トライ&エラーで繰り返し戦うことで敵の攻撃パターンや弱点などが徐々に理解でき、次第に戦闘が楽になってくる。この絶妙なバランスがプレーヤーをゲームにグイグイ引き込んでいく。
元からクオリティが高かったこともあり「BAYONETTA」ほどではないが、「VANQUISH」も過去に発売されたものよりも間違いなくパワーアップしている。特にフレームレートの面では結構な差が感じられ、本作ではブーストで激しく動き回ってもカクつきが全くと言っていいほど無い。ブーストの他にも、アクションの1つ1つが心地良い滑らかな動きになっている。
プレイステーション3では有償配信されていたDLCの特殊武器が、本作では初めから実装されているのもお得感が大きい。
「ブーストマシンガン」、「レーザーキャノン」、「アンチアーマーピストル」の3種類が追加されており、その性能はDLC武器だけあってどれも強力。中でもレーザーキャノンはインパクト抜群の超兵器で、弾数制限無く絶大な威力のレーザービームをとことんぶっ放すことができるのだ。ワラワラと溢れる敵を一瞬で消し飛ばす爽快感は、一度味わったら病みつきだ。
プレイし初めの、操作の勝手が掴めるまでは、正直なところかなり難しいゲームではある。しかし、プレイすればするほど上達していき、思うような戦い方ができるようになると、俄然ゲームが面白くなってくる。他ではなかなか味わえない爽快感に満ちたTPSを是非体感してもらいたい。
今回、両タイトルをプレイして感じたのは、10年経った今でも、映像面、ゲーム性、ともに現行のゲームにも全く引けを取らないクオリティであった。アクション性の部分だけで言えば、この2作品を超えるアクションゲームに正直まだ出会っていないほどだ。
全く毛色の違う2作品が1つになっているが、共通して言えるのは、どちらも難しいこと抜きで遊べるとっつき易さと、プレイしているときの楽しさに極振りしたゲームである。
2本まとめて遊べば、かなり遊び応えのあるボリュームとなっている本作。価格設定も良心的なので、未プレイのユーザーはもちろん、過去にプレイした人にもおすすめしたい。