「The Wonderful 101: Remastered」レビュー
The Wonderful 101: Remastered
あの隠れた名作アクションゲームがパワーアップして、待望のリマスター版で登場!
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- プラチナゲームズ
- 開発元:
- プラチナゲームズ
- プラットフォーム:
- PS4
- Nintendo Switch
- Windows PC
- 価格:
- 3,980円(税別)~
- 発売日:
- 2020年6月11日
2020年6月10日 00:00
2020年に、まさか「The Wonderful 101(ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン)」というタイトルをプレイするとは、筆者は夢にも思わなかった。
「The Wonderful 101」は、プラチナゲームズが開発を手掛け、2013年に任天堂から発売されたWii U専用アクションゲーム。2月4日から3月7日まで行なわれていたクラウドファンディングでは2億円を突破し、リマスター版のリリースが実現した。Nintendo Switchへ移植されるのなら無い話ではないが、Nintendo Switchに加えて、プレイステーション 4とSteamのマルチプラットフォームで展開するのだから驚きだ。
もとはWii U専用タイトルの本作。ゲームファンならご存知だと思うが、Wii Uは近年の任天堂ハードの中では珍しく“商業的に振るわなかったハード”であった。そんな残念な理由もあり、気にはなっていても手が出せなかった人も多かったと思う。意欲作でありながら、不運にもあまり多くのゲームファンのもとには届かなかった「The Wonderful 101」が7年の歳月を経た現在、あらためてより広い範囲のユーザーに向けてリリースされると思うと感慨深いものがある。
弊誌では、発売に先駆け本作のSteam版をプレイすることができた。独創的とも言える尖ったゲーム性や世界観、Wii U版と比べてどのように生まれ変わったのか、気になる部分をお伝えしていこう。
リマスター版でついに実現! ヒーローの無敵感を存分に味わえる!!
はじめに、過去にリリースされたものと比較して、リマスター版でどれだけパワーアップしたのかを見ていこう。……とは言ったものの、過去にプレイしたのは7年も前。さすがに記憶も朧気になっているので、押し入れの奥深くからWii U本体を引っ張り出してきてこちらもプレイしてみた。
リマスター版といえば、まず最初に気になるのが映像面だ。Wii U版の解像度は720p。今プレイしてみても、映像は正直かなり綺麗だ。ゲーム自体が見下ろしで引いている画面が主ということもあってか、ゲームをプレイしている分には1,080pのリマスター版と一見大きな差は無さそうに思えた。
ゲーム画面では映像の変化はわかりづらかったが、ムービーシーンでは違いを確かに感じられた。キャラクターがアップになるとWii U版は僅かにだが解像度の粗さが見られたが、リマスター版ではジャギ感が一切無い滑らかな綺麗な映像になっている。今回プレイしたSteam版でも解像度の向上が十分に感じられたが、プレイステーション4 Proではさらに高い2,160pにも対応している。圧倒的に上がったその映像力も気になるところだ。
映像よりもわかりやすかったのがフレームレートの安定性向上だ。Wii U版も最大60fpsと、数字だけを見るとリマスター版と変わりはないのだが安定性は段違いだ。Wii U版ではユナイト・アタックで敵を攻撃すると結構なカクつきを感じたのだが、リマスター版では何発も連続で攻撃を食らわせても滑らかな動きで安定している。カクつきの不快感から解放されて、気持ちよくゲームに没頭できるのは嬉しいポイントだ。
あらゆる面でパワーアップしているが、今回のリマスター版でもっとも改善されているのは間違いなくゲームバランスだろう。
「The Wonderful 101」は、ユニークなゲーム性とコミカルな見た目に反して実は難易度がめちゃくちゃ高く、ライトゲーマーでは間違いなく心が折れるほどの骨太なゲームバランスだったのだ。かくいう筆者もWii U版では、1つのステージをクリアするのにコンティニューを重ねるのは当たり前という感覚でプレイしていた。
難しかった点を挙げると、まずとにかく敵の火力が高く、道中のザコ敵の攻撃でも1発食らえば結構な痛手を負ってしまうレベル。さらに敵の装甲も固く、火力の高いユナイト・ハンドで攻撃しても簡単に倒れてくれない。ザコ敵すらも本気でプレーヤーを殺しにかかってくるのだ。
本音を言ってしまうと、世界観や設定が面白いだけにWii U版は非常に惜しいゲームバランスだった。ヒーローたちの力が結集したユナイト・アタックは設定的には敵を一撃粉砕できるようなイメージがあるにもかかわらず、プレイしてみるとザコを倒すにもサクッといかず、ぶっ飛んだ力を持つヒーローたちの持ち味が活かしきれていないのが当時は残念に思っていた。
そんな難しすぎる難易度に本作ではしっかりと調整が入っている。難易度ノーマルは以前と大きな差は感じられなかったものの、イージーやベリーイージーはWii U版よりも断然遊びやすくなっていて感動した。
敵の火力は全体的に抑え気味になり、こちらの攻撃は敵の体力を一発でゴッソリと減らせるようになっている。まさに筆者が過去にイメージしていた、ヒーローたちの超パワーを存分に味わうことができるゲームバランスになっている。ユナイト・アタックの一撃で敵をワンパンで蹴散らせるのは爽快の一言に尽きる。当時味わいたかったものが7年越しでついに体験することができた。
敵の強さの調整以外にも、ショップで販売されているユナイト・モーフの価格が変更されているのも大きい。ガードの「ユナイト・ガッツ」と緊急回避の「ユナイト・スプリング」は、ゲームを進行する上で必要不可欠なアクションでありながら、Wii U版では価格が高く、すぐに購入することができなかった。しかし本作ではタダ同然の価格に変更されているので、ゲームスタート時から敵の攻撃を防ぐアクションを揃えることができる。
リマスター版ではUI部分も大きな調整がされている。Wii U版では、ゲームパッドのモニターも使用するゲーム性であったため、操作方法の確認やアイテムのショートカットなど、基本的にはゲームパッドを見て操作する。真新しさに最初は面白いのだが、プレイを続けているとテレビ画面とゲームパッドを交互に見て操作するのが少々面倒に感じていた。
同じ理由で謎解きの場面でも煩わしさを感じていた。建物に入ると、建物の中はテレビ画面に表示され、外はゲームパッドのモニターに映し出される。その両方を見ながら謎解きを進めなければならないという、快適さに欠ける作りであった。しかしリマスター版では、ゲームパッドに表示されていた情報は、ワイプで小さな画面が表示される仕様が基準となり、モニター1つで遊べるように快適化されている。
その他に、ユナイト・モーフの操作は基本はタッチペンで図形を書くというやり方だったため、タッチペンを持ち替えたりと操作が忙しかったが、その点もバッチリ解消されて別物レベルで遊びやすくなっている。
他にも、操作面や謎解き部分では説明不足な部分も結構あり、どこに進めばいいのかわからず迷ったこともあったが、そこにも細かく手が加えられており、チュートリアルや進行のヒントなどが常に表示され、とても親切な設計になっている。
王道だけど型破り! 100人が1つになるヒーローアクション!!
本作の世界観は、王道の戦隊ヒーローテイスト全開の作品。敵は地球侵略を目論む「ゲスジャーク星団連合無敵艦隊」。二度に渡る襲撃をヒーローたちによって退けてきたが、ついに本隊を動かして地球への総攻撃を開始した。地球の平和を守るため、ワンダフル・ワンダブルオーが立ち上がる。まさにベタベタなヒーローもののストーリーだ。
主人公は特務戦闘兵団「ワンダフル・ワンダブルオー」のリーダー、ワンダ・レッド。普段は正体を隠して小学校の教員として生活しているという、アメコミ調の見た目に反して日本の昭和のヒーローのような設定なのも面白い。
ヒーローもののベタさを逆手にとって、変身シーンでは某宇宙刑事のようなナレーションが入るという、ユニークなパロディ演出が盛り込まれている。このバカバカしさも本作の味である。
ゲームの世界観を見た時点で“手垢が付き過ぎて真新しさが無い”と思った人は、それはもう開発側の術中にまんまとハマっている。テンプレートとも言える王道な世界観をあえて用意し、油断しているところに“かつてない斬新なゲーム性”をぶっ込む。この意表の突き方がプラチナゲームズのうまいやり方だ。
従来のアクションゲームのように1人のヒーローを操作するのではない。本作はなんと100人のヒーローたちを引き連れて戦う軍団アクションゲームなのだ。迫りくる敵をヒーロー軍団で蹴散らしてゴールを目指すのがゲームの基本の流れになる。
バトルの基本アクションは、リーダー単体による攻撃と軍団メンバーによるチームアタックの2種。チームアタックは敵の足を一定時間止めることもできるので、仲間に動きを止めてもらっているうちにリーダーが敵を叩くという痛快なコンビネーションも決められるのだ。
斬新なゲーム性というのは、大量の仲間を引き連れる点だけではない。本作でもっとも注目してもらいたいのは、このゲーム独自の要素である「ユナイト・モーフ」というシステムだ。ユナイト・モーフとは、「ヒーローたちの互いの体をワンダ・エナジーで結束させて巨大な兵器へと変形合体する」という、一瞬何を言ってるのか理解できないと思うが、平たく言うと複数のヒーローたちが合体して武器になるという、荒唐無稽なアクションなのだ。
右スティックの操作で隊列を作ることでヒーローたちが1つになり、様々な兵器へと姿を変える。スティックで円を描けば巨大な拳「ユナイト・ハンド」、直線を書けば巨大な剣「ユナイト・ソード」など、さまざまな武器にチェンジすることができる。
ヒーローの力が1つになったユナイト・アタックの威力は凄まじく、通常の攻撃ではビクともしないタフな敵も、火力の高いユナイト・ハンドなら効果絶大。そして、敵がワラワラと押し寄せる場面では、攻撃範囲の広いユナイト・ソードを使えば敵をまとめて一掃することができ、最高にスカッとする。この他にも武器は沢山あるので、状況に応じてユナイト・モーフを使い分けることでゲームを有利に進められる。これこそが本作の醍醐味である。
敵との戦闘だけではなく、ユナイト・モーフはあらゆる局面で活躍する。足場の無い場所ではヒーローたちが橋やグライダーに姿を変え、ロックされている扉を開ける鍵にもなったりする。ヒーローたちがスクラムを組んであらゆる物を作りだすというハチャメチャ感は、まるで子供が想像した“何でもアリの最強ヒーロー像”を具現化したかのようだ。
本作を面白くしているユナイト・モーフだが、当然ながら合体する仲間がいなければ使うことができない。ステージ開幕時はメンバーが少ないので、道中にいる一般市民を救出して仲間に引き入れていく必要がある。ステージ中には市民に紛れてヒーローが隠れていることもあり、じっくり探索する楽しみもあるのだ。
メンバーが増えれば増えるほど長い隊列で大きなユナイト・モーフを作ることができ、ユナイト・アタックのパワーが格段にアップする。なので、ステージ中でなるべく多くの市民を救出して進むのが攻略のカギになる。仲間の力(数)が強さに変わるという“ヒーローのお約束”がうまくゲームに落とし込まれている。
様々な魅力をこれでもかと詰め込んでいる本作だが、アクションゲームに定評のあるプラチナゲームズが手掛けているだけあって、アクション性と戦略性が高く、戦闘がとにかく楽しい。
最初のうちはアクションの幅も狭いが、レベルを上げることで様々な技を習得すれば、それらを使って自由自在にコンボを決めることができ、突き抜ける爽快感が味わる。
さらに、ショップで販売しているスキル「マルチユナイト・モーフ」を購入することで、複数のユナイト・モーフを同時に使用できるようになる。ユナイト・ハンドで敵を殴っている最中に、ユナイト・ソードで斬撃といった連携攻撃も可能になる。慣れるまで操作は少し大変だが、使いこなせるようになればバトルの楽しさにグイグイ引き込まれるハズだ。
ステージの最後に待つボス戦も型破りな展開の連続。序盤のボスである人型巨大兵器「ガグージン」戦では侵攻してくるガグージンの体の上で戦うのだが、ただ殴って倒すというありきたりなものではない。腕などのパーツの連結部分の留め具をユナイト・ハンドで外して解体していくという、想像だにしない方法で倒すのだ。
このほかにも、戦艦を操縦して戦うシューティングゲームのような形式や、巨大な砲弾をバットで打ち返して戦う野球盤的なものなど、ボス戦の内容はとにかくバラエティに富んでいてプレイしていて全く飽きがこない。どんな戦いが待っているのか、先の読めないワクワク感も良いスパイスになっている。
今回、過去に発売されたものとリマスター版の両方をプレイしてみたが、、大きな点から細かな部分まで随所に手が加えられており、遊びやすさをとことん追求した作りになっていた。まさに「The Wonderful 101」の理想形ともいえる仕上がりだ。
難易度イージーなら、アクションゲームにそこまで自信がない人でも、ド派手なアクションでヒーローの無敵感を存分に味わうことができる。逆に硬派なアクションゲームを楽しみたい人も、難易度ノーマルなら近年では珍しいくらいの歯応えあるアクションゲームが堪能できる。これまで本作をプレイする機会がなかった人は、是非この機会に触れてもらいたい。