「スーパーリアル麻雀 LOVE♥2~7!」レビュー

スーパーリアル麻雀 LOVE♥2~7!

シリーズ全アニメーションを網羅! 20世紀にゲームセンターで味わった悔しさを21世紀の今、晴らせる!

ジャンル:
  • ごほうびアニメと2人打ち麻雀
発売元:
  • シティコネクション
開発元:
  • マイティークラフト
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
5,980円(税別)
発売日:
2020年4月23日

 1987年に第1作目が登場し、同年に発売された2作目「スーパーリアル麻雀 PII」の大ヒットをきっかけとして、以後長らく続いた「スーパーリアル麻雀」シリーズすべてを、手軽に味わうことができる作品が本作「スーパーリアル麻雀 LOVE♥2~7!」だ。これまで、Nintendo Switchでは「スーパーリアル麻雀PV(以下PV)」、「スーパーリアル麻雀PVI(以下PVI)」、「スーパーリアル麻雀P7(以下P7)」がダウンロード販売されてきたが、それらにくわえて「スーパーリアル麻雀PII(以下PII)」、「スーパーリアル麻雀PIII(以下PIII)」、「スーパーリアル麻雀PIV(以下PIV)」も収録されているため、これ1本あれば全作品を楽しむことができる。

 しかし、今の時代「スーパーリアル麻雀」シリーズって? という人や、もしかしたら「脱衣麻雀」って何? という人もいるかもしれない。良い機会なので、そんなところも含めて紹介していこう。

【【Nintendo Switch】「スーパーリアル麻雀 LOVE♥2~7!」プロモーション映像】

勝負に勝つと、相手が脱いでいく「脱衣麻雀」とは

 「脱衣麻雀」といえば、相手の持ち点を0にしたりプレーヤーが和がるたびに、コンピュータ側のキャラクターが1枚ずつ着衣を脱いでいく、というゲーム。そんな「脱衣ゲーム」のルーツと考えられるのは、ジャンケンを行ない負けた方が着衣を1枚ずつ脱いでいくという、「野球拳」ではないだろうか。

 1980年代には、少しずつ普及してきたパソコン用のゲームとして「野球拳(ハドソン)」が登場し、元は“人間vs人間”で行なわれていた戦いが“プレーヤーvs画面内のキャラクター”となり、プレーヤー側が勝つことで相手が脱衣することになった。しかも、敵は人間ではなくコンピュータのため、プレーヤーにはデメリットがまったく生じないという利点も。そのためか、「野球拳」ゲームではプレーヤー側に厳しく、コンピュータ側に優しい仕組み、言うなればイカサマのような仕様が導入されていることもあった。

 その後、アーケードゲームとしての脱衣麻雀をいち早く打ち出したのが、「ムーンクレスタ(1980年)」などでお馴染みの日本物産だ。1983年には「ジャンゴウナイト」、翌1984年には「ジャンゴ・レディー」といったタイトルをゲームセンターに登場させ、“麻雀+脱衣”という図式を構築した。これは後に、各社から“花札+脱衣”や“クイズ+脱衣”、“ブロック崩し+脱衣”などが発売され、さまざまなバリエーションへと広がりをみせる。

 この時期の脱衣麻雀といえば、プレーヤーが和がった時などに女の子のグラフィックスが表示され、暗転後もしくは一瞬のうちに服が1枚取り払われたCGが再び描かれるというものが多かった。今風に表現するならば、グラフィックスソフトで服のレイヤーを1枚ずつ非表示にしていくだけという簡素なものだ。ところが時間経過と共に、ただ脱ぐだけではウリにならなくなり、グラフィックスを実写風にしたり劇画調にするなど、各社とも工夫を凝らしていくことになる。

そして生まれた「スーパーリアル麻雀」シリーズ

 そんななか、1987年に登場したのが「スーパーリアル麻雀」シリーズ1作目となる「スーパーリアル麻雀PI」だ。牌を自摸ってくるときの手の動きや、洗牌後に山を積む際、見えていた牌も自摸時にそのまま引いてくるなどのほか、対局中に長考すると台を叩いたりといったリアルな仕草に、当時ゲームセンターで見かけた時は驚いたものだ。ところがこの1作目、対局の仕草は“スーパーリアル”ではあったものの脱衣要素が無かったためか、人気が出なかったとのこと。

 そこで、それらの要素はそのままに、アニメーターによる手描きアニメーションと、プロの声優による声の演出が追加されて完成したのが、あの「スーパーリアル麻雀PII」となる。当時、さまざまな麻雀をゲームセンターで遊んでいたが、「PII」のインパクトは格別だった。テレビで放映されているアニメにも負けないモーション、プレーヤーが勝つと艶やかに動きながら脱いでいく仕草……この記事を読んでいる諸兄ならコインを投入後、即座に“ふわっ!”と喋りながらセーターを脱ぐショウ子ちゃんに色めき立ち、次々と50円玉あるいは100円玉をつぎ込んでいった人も多いことだろう。あの時期としては珍しい、役の読み上げにもビックリさせられた。

【PII】
ゲームセンターでは、タイトル画面とウインクするアニメーションが交互に表示されていた。こんな滑らかに動くアニメーションは当時の麻雀ゲームにはなく、そのインパクトは本当に大きかった

 アニメーションと声だけでなく、その驚異的な強さも特徴だった。クレジットを投入して、対局が始まった瞬間に「自摸、天和。役満」と言われ、30秒たたずにゲームオーバーになる人も続出。それを回避出来たとしても、プレイ中に怒濤の連続和がりをされてしまい、あっという間に持ち点を0にされて終了、ということも少なくなかった。もちろん、それを“インチキだ!”と言うのは簡単だが、ゲームセンターで数多くのコインを入れてもらうのが目的なのだから、そのような設定は今考えれば当然だろう。逆に、それでもお金をつぎ込みたくなる魅力が、あのときの「PII」にはあったのだ。それゆえに、どうすれば長く遊べて相手を脱がせられるのかといった攻略法を探したのは、筆者だけではないはず。

あの、グリグリに動くアニメーション部分は、現在の解像度に合わせて綺麗になっている

 翌年1988年には、「スーパーリアル麻雀PIII」がリリース。対局相手が芹沢香澄と芹沢未来の2人になり、アニメーションもスクロールするようになった。コンピュータ側の強さも相変わらずで、「香澄、勝っちゃった!」の台詞を、はらわたが煮えくり返るほど聞かされたのも良い思い出だ。前作から比べると、牌の形や文字デザインがのっぺりした感じに変わったほか、洗牌や喫煙シーンなどが削られている。それでも、自摸時の手の動きや和がった時に牌を倒す仕草などのリアルな部分は、まだそのままだった。

【PIII】
右から左へ、下から上へとスクロールしながら、香澄と未来の可愛らしい仕草をアニメーションで見せてくれる。後のシリーズ作品と比べると、2人のグラフィックスはアッサリ目のタッチなのが分かる

 しばらく時を置いて1993年に登場した「スーパーリアル麻雀PIV」では、対局相手が3人に増加。アニメーションがよりリアルで滑らかになり、表現力が増している。さらに、ゲームにストーリー性が持たされたことで、対局目的が明確になったのも特徴のひとつ。代わりに自摸時のアニメーションなどは省かれ、そういう意味での“リアルさ”は、本作以降消えることとなる。

【PIV】
アニメーションの“リアルさ”は、よりパワーアップ。ぐりんぐりん動く彼女たちに、またしてもコインの山を築くことに……

 この後、1994年には5作目となる「スーパーリアル麻雀PV」、1996年に6作目「スーパーリアル麻雀PVI」、1997年に7作目の「スーパーリアル麻雀P7」が、それぞれゲームセンターで稼働していた。今回発売された「スーパーリアル麻雀LOVE♥2〜7︕」は、2作目から4作目までをセットにしたセガサターン版「スーパーリアル麻雀グラフィティ」と、5作目、6作目、7作目をそれぞれ収録したタイトルとなっているのだ。

【PV】
「PV」の対局相手は遠野みづき、藤原綾、早坂晶の3人。ごほうびシーンは、背景などが描き込まれて雰囲気もさらに良くなった
【PVI】
1996年登場の「PVI」では、お嫁さん候補との対局というストーリーになったため、脱ぎ方がより艶めかしく。相手は、香山タマミと来宮ゆかり、栗原真理だ。彼女たちをクリアするとシリーズで初となった4人目の対局相手、クリス・ガーランドが対戦相手として参戦。対クリス戦でコンティニューすると、不自然に隙間が空いていた場所に彼女が登場する
【P7】
数字がギリシャ文字からローマ数字に変わった「スーパーリアル麻雀P7」は、プレイ開始時にストーリーを選ぶようになった。もちろん、良く動くアニメーションは健在。対局相手は、3人+隠しヒロイン1人の4人だ。収録作品のうち、「PVI」と「P7」はメニューから“GOHOUBI”を選ぶことで、一度見たごほうびアニメを後から鑑賞することができる。

DL版から改良されている部分に要注目

 「PII」、「PIII」、「PIV」を収録した「スーパーリアル麻雀グラフィティ」では、牌配時のアニメーションや画面構成などが「PIV」をベースとしている。そのため、「PII」を選んでも相手がタバコを吸ったり、「PIII」で腕が動いて自摸ってくるといった演出はカット。代わりに、選んだタイトルごとの対局相手が画面左上のウィンドウ内に表示され、プレイ中はリーチや放銃などに応じた可愛らしいリアクションを見せてくれるようになった。

 なお、自摸はオートで行なわれ、アクションが起こせる時はメニューが自動で表示される操作方法になっている。メニューはBボタンを押せばキャンセルできるが、その後に“やっぱり鳴きたい、リーチしたい”と思っても、再びメニューを出すことができないのはちょっと残念。

【「スーパーリアル麻雀グラフィティ」の対局画面】
上から「PII」、「PIII」、「PIV」での対局中の模様。「PII」と「PIII」は、アーケード版では対局中のBGMがなかったが、本作では楽曲が流れるようにパワーアップ。対局相手の顔グラフィックスは、和がられるとしょんぼりするなど表情豊かに変わるため、見ていて飽きない
「スーパーリアル麻雀グラフィティ」には、「PIII」のデモで表示されるようなキャラクタープロフィール画面が全キャラ分用意されている。アーケード版を知っている人であれば、「PIII」のプロフィールから香澄と未来が通っていた学校名が消えているのに気づいたかもしれない。今の時代、あの表記は残念ながら……

 「PV」、「PVI」、「P7」に関しては、先にダウンロード販売されているものと内容はほぼ同じ。若干異なる部分としては、公式HPによると「DL版よりも白い光が細い」とのことだ。細ければ細いほどアーケード版に近づくわけだが、万が一見えてしまうと大騒ぎでは済まないので、数ドットとはいえ調整は大変だったのでは? と、いらない心配をしてしまった(笑)。

【「PV~P7」の対局画面】
上から「PV」、「PVI」、「P7」の対局画面。「PV」と「P7」では画面いっぱいに表示される対局相手のアクションだが、「PVI」は画面中央に現れるウィンドウ内で控え目に動く
【PV】
「PV」では、ごほうびアニメの白い光がダウンロード版と比べると細くなっている。ちなみに、白い光が入らないアニメーションシーンが収録されていたものには、パソコン版やセガサターン版、3DO版などがある。スクロールするアニメーションが多少ガクツいているのが気になった
【PVI】
アーケード版「PVI」では、来宮ゆかりのデモアニメーションでは乳首部分の膨らみが描かれていたが、本作では残念ながら削除されてしまった……。これは、「PIV」の香織も同じ
【P7】
「P7」は、昨年ダウンロード販売されたものとほぼ同じ。もちろん、設定資料集やクイズゲームも収録されている

誰もが気になる思考ルーチンはいかに?

 「スーパーリアル麻雀」シリーズと言えば、頭にくるのを通り越して、すがすがしいまでのイカサマが上げられる。それを思考ルーチンと表現するかどうかはさておき、全作品を1本にまとめた本作では、そのあたりがどうなっているのかが非常に気になっていた。

 そこで何度もプレイしてみたのだが、オプションで設定を標準の4にしていた場合、コンピュータ側がどの作品でもほぼ10巡以内にリーチをかけてくるのと、プレーヤー側が和がれるのは平均して5局に1度という傾向だった。どうやら、使用されている思考ルーチンは、作品ごとではなく共通になっているようだ。ただし、タイミングが良ければ連続で和がり続けることもできたので、善し悪しの波があるのかもしれない。

こうして写真を確認してみると、コンピュータ側は遅くても10巡以内にはリーチをかけている。テンパイの形にはこだわらず、カンチャンやペンチャン、シャボ待ちといった悪形でリーチをかけてくることが多かった

 また、プレーヤー側の牌配は一九字牌が6から7牌あったり、10巡目くらいまでは有効な自摸がないというパターンも多かった。全体的に見て、コンピュータ側が和がりやすく有利に進められる展開がほとんどという印象。他にも、順子場よりも対子場になりやすかったり、コンピュータ側が字牌で待たないといった特徴も見受けられている。代わりに、アーケード版では何度もやられた役満和がりが極端に少ないので、対局開始→即ゲームオーバーという状況に陥ることはまずないだろう。ただし、あくまでも今回プレイした範囲内でのことなので、もしかすると製品発売後には変わるかもしれない。

今回試した限りでは、字牌待ちが一度もなかったのが特徴的。そのため、コンピュータ側がリーチをしたときは、とりあえず字牌から切っておけば即座に振り込むことはなかった
コンピュータはフリテンでもリーチをかけてくるのでこんな和がりも。こうなると、相手の当たり牌を読むだけ無駄になるので、プレーヤーはひたすら自分の和がりだけを目指すのもいいかもしれない

 何と言ってもありがたいのは、どの作品もコンティニューし放題なのと、和がられても“服を着ない”ようにする設定があること。“服を着ない”にしてしまえば、どれだけ負けてもコンティニューし続ければ必ずエンディングを迎えられるので、ゲームセンターでの積年の恨みをこの機会に晴らすことができるのだ。正直なところ、この機能があるだけでシリーズを追いかけてきた人ならばマストバイとなるだろう……ええもちろん全員分見ましたとも。コンティニュー万歳!

アーケード版でも「PIII」からはコンティニューが導入されたが、「PII」には存在しなかった。それだけに、「PII」にコンティニューが追加されたのが特に嬉しい

“買い!”なのはもちろんだが、復刻セットにも要注目

 「スーパーリアル麻雀」シリーズ6本が入っているのでお得なのは当たり前だが、数量限定生産となっている「スーパーリアル麻雀 復刻豆本セット」も要注目だ。これは、アーケード版が稼働していた当時に配布された豆本を復刻したもので、ごほうびアニメが収められているのも同じ。オリジナル版は非常に高い人気で、入手するのは至難の業だった。それが数量限定とはいえ現代に手に入れられるのだから、これはもう全力で購入するしかない。

 過去に、彼女たちに役満を和がられたプレーヤー諸兄は、本作を買って全員に復讐(?)を果たそう!

【スーパーリアル麻雀 復刻豆本セット】
豆本15冊がセットになった「復刻豆本セット」。セットそのものにゲームは同梱されないが、こちらもマストバイ
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