「HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)」レビュー

HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)

「サクラ大戦2」登場メカの魅力を、"組み立てる”ことで深く知る楽しさ

ジャンル:
  • プラモデル
発売元:
  • BANDAI SPIRITS
開発元:
  • BANDAI SPIRITS
価格:
3,850円(税込)
発売日:
2020年1月25日

 ゲームのキャラクターや登場メカがフィギュアなどで立体化され商品として販売されることは、今では珍しいものではなくなり、ゲーム画面でしか見られなかった好きなキャラクターやメカを手に取って楽しむ趣味もスタンダードとなったといえる。

 しかしそういった立体化において、「プラモデル」は対象を“組み立てる”という、他のジャンルにはない楽しみが備わっている。組み立てる過程でそれまで気づかなかった新たな魅力を感じることもできる。特にメカに関してはそれが顕著だ。

 今回の制作したのは、BANDAI SPIRITSが発売した「HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)」である。1998年にセガサターンで発売された「サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~」の主人公の真宮寺さくらら、帝国華劇団・花組が搭乗した霊子甲冑(りょうしかっちゅう)である。昨年末の「新サクラ大戦」の発売に合わせてキット化された製品であり、現在までにこのさくら機、大神一郎機、神崎すみれ機の3種が発売されている。

 実際に組み立ててみると、冒頭で述べたように、この機体の魅力を改めて感じられるキットであった。発売から少し時間が経ってしまったが、今は“積みプラ”を作るのにもいい機会でもあるので、そのレビューをお届けしていきたい。

「HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)」パッケージ。今回のキット化でラインナップされた3機の活躍シーンををCGで描いている

帝国華劇団花組の主力兵器、光武・改のさくら機を忠実に立体化

 光武・改は、帝国華劇団花組の主力兵器であり、「降魔接触戦」において大破した「光武(初期型)」を回収し、神崎重工の協力のもと、帝国華劇団工廠が改修・改造を加えた霊子甲冑である。先代光武は乗り手ごとに細部が異なるデザインだったが、この光武・改は色と装備武器が異なるものの、本体は基本的に同じ形状をしている。プラモデルとしてはバリエーション展開がしやすい機体とも言えるだろう。

【各パーツ】
Aパーツ。内装、外装のパーツ、武器などを“いろプラ”にて成形
B1、B2パーツ。コクピットや関節、装甲などのパーツ
B1、B2パーツ。コクピットや関節、装甲などのパーツ
D1パーツ、ポリキャップ、リード線とナイロンチューブ
シールは3種類。左はフィギュアの目が描かれた水転写式デカール。右は光武・改のアイカメラのジュエルシール

 プラモデルとしては、かつてウェーブから1/24スケールのキットが発売されたことがあったが、この製品はそれよりも大きめの1/20スケールで、機体の形状も相まって、ボリュームのある機体が完成する。メインカラーのピンクはパールカラーの成形色で、成型時に発生するウェルドラインもあまり目立たず、塗装しなくてもかなり美しく、さらにBANDAI SPIRITSお得意の「いろプラ」による多色成形で、組み立てるだけでも劇中に近いルックスとなる仕様だ。

【胴体の組み立て】
組み立て順は本体から。さくらが座るコクピットの座席を組み立て
光武・改搭乗時の戦闘服のさくらフィギュア。髪の毛は別パーツで成形されている。塗装する場合はここでしておく
コクピットから戦闘服に繋がるチューブは付属のリード線を使用する
フィギュアが乗ったシートにコクピットのパーツを組み付けていく。搭乗させない状態で組むことも可能だ
コクピット前面。レバーや伝声管は別パーツ。モニターなどはホイルシールで表現
本体前部のアイカメラは内部に仕込んだパーツに差し込むことで、レールに沿って可動する
本体内部が完成。完成すると見えなくなるところにも色分けしたパーツを使っているなど、凝った設計だ
本体前部を組み付けたら、ナイロンチューブを取り付ける。開閉させるために長めに切って、前方は固定はしな
マフラーは角度に合わせて取り付けられるように、ダボに溝が切ってある
装甲や色違いの外装のパーツを取り付けて胴体が完成。説明書の約4割が胴体の解説だった

 キットを作ってみて感じたのは、胴体の密度だ。頭や腰がないずんぐりとした機体であり、スチームパンクの意匠として背部には6本の巨大なマフラーや無数のパイプが備わっている。これらの多くは別パーツとなっていて、組み立てることで機体のディテールがわかるようになっている。

 さらにこのキットはコクピットのハッチが開閉する機構を再現していて、その内部までしっかりと造形されている。コクピット内部の設定は、当時の設定に曖昧なところがあったため、セガゲームスと「サクラ大戦3」以降のシリーズでメカデザイナーを担当している明貴美加氏の監修によって、プラモデルの解釈で完成したものだ。完成すると見えなくなってしまうディテールもあえて造形することで、組み立てる楽しみを追求している。

【各部組み立て】
腕の組み立て。手首を装着する内部関節にはポリキャップを使っている
腕の完成。指は非可動で表情は変えられないが、気兼ねなくうごかせる
脚の組み立て。内部フレームに外装を組んでいく
脚の完成。複雑なところはなく、作るのは簡単だ
兵装は「シルスウス鋼の太刀」が付属。3パーツで色分けされている
胴体に腕、脚、腰部の装甲を取り付けて、光武・改の完成

 さらに機体内には同スケールのパイロットのフィギュアを搭乗させることが可能だ。このキットはもちろん真宮寺さくらで、フィギュアは髪が前後別パーツになっているなど凝った設計だが、肌色成形で無塗装なので、素組みで作ると本稿の作例のような見た目となる。組んでしまうと本体を分解しない限り取り出すことができないコンパーチブル仕様ので、塗装をする場合は組み立て前に行なう必要がある。

【完成】
光武・改正面。「サクラ大戦」シリーズを象徴するメカだ
背面は6本のマフラーやパイプなど、かなりごてごてしている
コクピットハッチはここまで開く。横から見たところのボリュームにも注目だ
さくらは設定通り、腕や足を内部に入れたスタイルで搭乗している
カラーパーツやシールのおかげでコクピット前方もそれっぽく見える
頭頂部のハッチと側頭部の装甲もそれぞれ開閉するギミックがある
アイカメラはそれぞれ独立して可動する
シルスウス鋼の太刀を装備するときは専用の持ち手を使う

 全体のパーツが仕様に合わせて細分化されていて、それが胴体に集中しているので密度が高く、ガンプラなどとはまた違う作りでのあるキットだった。腕や脚など、合わせ目が目立つ箇所があり、これらに対応するとなるとやや難易度は高くなりそうだが、成形色のパールカラーを生かすなら、最低限の塗装のみで劇中に近い雰囲気になるのも評価したい。ゲーム中では気づけなかった細かなディテールなど、冒頭で述べた組み立てることで新たな魅力を知るキットとしても優秀だと思った。

 パイロットのさくらのフィギュアが単色で、なおかつ組んでしまうと着脱できない仕様は見た目的にもいささか残念だが、これをフルカラーにするというのも価格的な点などからあまり現実的ではないこともわかるので仕方ないところだろう。フィギュアの塗装に必要なカラーガイドは本体とは別に説明書に明記されているので(要6色)、瞳の水転写式デカールも付属している。完成見本などを見てみると、見栄えもかなりよくなるので、ぜひ塗装にチャレンジしてみてほしい。

【ポーズ集】
あまり派手なポーズは取れないが、眺める角度で印象が結構変わる。「アクションベース5」に対応

 6月には「新・サクラ大戦」より、「HG 1/24 霊子戦闘機・無限(天宮さくら機)」がリリースされることも決定している。1/24スケールということは、1/20の光武・改よりも縮尺的に小さいが、これは劇中の設定が光武・改より大きいことによるもので、価格なども考えると、ボリューム自体は光武・改と同程度かそれより大きい可能性もありそうだ。こちらも楽しみに待ちたい。