「HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)」レビュー
HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)
「サクラ大戦2」登場メカの魅力を、"組み立てる”ことで深く知る楽しさ
- ジャンル:
- プラモデル
- 発売元:
- BANDAI SPIRITS
- 開発元:
- BANDAI SPIRITS
- 価格:
- 3,850円(税込)
- 発売日:
- 2020年1月25日
2020年4月20日 11:59
ゲームのキャラクターや登場メカがフィギュアなどで立体化され商品として販売されることは、今では珍しいものではなくなり、ゲーム画面でしか見られなかった好きなキャラクターやメカを手に取って楽しむ趣味もスタンダードとなったといえる。
しかしそういった立体化において、「プラモデル」は対象を“組み立てる”という、他のジャンルにはない楽しみが備わっている。組み立てる過程でそれまで気づかなかった新たな魅力を感じることもできる。特にメカに関してはそれが顕著だ。
今回の制作したのは、BANDAI SPIRITSが発売した「HG 1/20 光武・改(真宮寺さくら機)」である。1998年にセガサターンで発売された「サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~」の主人公の真宮寺さくらら、帝国華劇団・花組が搭乗した霊子甲冑(りょうしかっちゅう)である。昨年末の「新サクラ大戦」の発売に合わせてキット化された製品であり、現在までにこのさくら機、大神一郎機、神崎すみれ機の3種が発売されている。
実際に組み立ててみると、冒頭で述べたように、この機体の魅力を改めて感じられるキットであった。発売から少し時間が経ってしまったが、今は“積みプラ”を作るのにもいい機会でもあるので、そのレビューをお届けしていきたい。
帝国華劇団花組の主力兵器、光武・改のさくら機を忠実に立体化
光武・改は、帝国華劇団花組の主力兵器であり、「降魔接触戦」において大破した「光武(初期型)」を回収し、神崎重工の協力のもと、帝国華劇団工廠が改修・改造を加えた霊子甲冑である。先代光武は乗り手ごとに細部が異なるデザインだったが、この光武・改は色と装備武器が異なるものの、本体は基本的に同じ形状をしている。プラモデルとしてはバリエーション展開がしやすい機体とも言えるだろう。
プラモデルとしては、かつてウェーブから1/24スケールのキットが発売されたことがあったが、この製品はそれよりも大きめの1/20スケールで、機体の形状も相まって、ボリュームのある機体が完成する。メインカラーのピンクはパールカラーの成形色で、成型時に発生するウェルドラインもあまり目立たず、塗装しなくてもかなり美しく、さらにBANDAI SPIRITSお得意の「いろプラ」による多色成形で、組み立てるだけでも劇中に近いルックスとなる仕様だ。
キットを作ってみて感じたのは、胴体の密度だ。頭や腰がないずんぐりとした機体であり、スチームパンクの意匠として背部には6本の巨大なマフラーや無数のパイプが備わっている。これらの多くは別パーツとなっていて、組み立てることで機体のディテールがわかるようになっている。
さらにこのキットはコクピットのハッチが開閉する機構を再現していて、その内部までしっかりと造形されている。コクピット内部の設定は、当時の設定に曖昧なところがあったため、セガゲームスと「サクラ大戦3」以降のシリーズでメカデザイナーを担当している明貴美加氏の監修によって、プラモデルの解釈で完成したものだ。完成すると見えなくなってしまうディテールもあえて造形することで、組み立てる楽しみを追求している。
さらに機体内には同スケールのパイロットのフィギュアを搭乗させることが可能だ。このキットはもちろん真宮寺さくらで、フィギュアは髪が前後別パーツになっているなど凝った設計だが、肌色成形で無塗装なので、素組みで作ると本稿の作例のような見た目となる。組んでしまうと本体を分解しない限り取り出すことができないコンパーチブル仕様ので、塗装をする場合は組み立て前に行なう必要がある。
全体のパーツが仕様に合わせて細分化されていて、それが胴体に集中しているので密度が高く、ガンプラなどとはまた違う作りでのあるキットだった。腕や脚など、合わせ目が目立つ箇所があり、これらに対応するとなるとやや難易度は高くなりそうだが、成形色のパールカラーを生かすなら、最低限の塗装のみで劇中に近い雰囲気になるのも評価したい。ゲーム中では気づけなかった細かなディテールなど、冒頭で述べた組み立てることで新たな魅力を知るキットとしても優秀だと思った。
パイロットのさくらのフィギュアが単色で、なおかつ組んでしまうと着脱できない仕様は見た目的にもいささか残念だが、これをフルカラーにするというのも価格的な点などからあまり現実的ではないこともわかるので仕方ないところだろう。フィギュアの塗装に必要なカラーガイドは本体とは別に説明書に明記されているので(要6色)、瞳の水転写式デカールも付属している。完成見本などを見てみると、見栄えもかなりよくなるので、ぜひ塗装にチャレンジしてみてほしい。
6月には「新・サクラ大戦」より、「HG 1/24 霊子戦闘機・無限(天宮さくら機)」がリリースされることも決定している。1/24スケールということは、1/20の光武・改よりも縮尺的に小さいが、これは劇中の設定が光武・改より大きいことによるもので、価格なども考えると、ボリューム自体は光武・改と同程度かそれより大きい可能性もありそうだ。こちらも楽しみに待ちたい。
(C)SEGA