「聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ」レビュー

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ

シリーズ屈指の人気作が遂にフルリメイク! 正統進化を遂げ、よりかわいらしく、よりドラマチックに現代に蘇る!!

ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
  • スクウェア・エニックス
開発元:
  • スクウェア・エニックス
プラットフォーム:
  • PS4
  • Nintendo Switch
  • Windows PC
価格:
5,980円(税別)
発売日:
2020年4月24日

 スクウェア・エニックスは、プレイステーション 4/Nintendo Switch/Windows用アクションRPG「聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ」を4月24日に発売する。本作は1995年に発売されたシリーズ3作目「聖剣伝説3」のリメイク作品であり、オリジナル版は美しいドット絵とシンプルかつ奥深いゲーム性や、選んだパーティの組み合わせによって異なる展開などが評価され、今なお根強いファンが多いと言われる。

 かく言う筆者も小学生の頃にリアルタイムで「聖剣伝説3」にどハマりし、そこで描かれた強くて可憐なヒロインたちに心を奪われ、現在に至るまで性癖に大いなる影響を受けてきた。待望のリメイク版となる本作では、グラフィックが3Dとなり、イベントシーンがフルボイスになるなど数々の変更がなされたが、結論から言えば、シリーズのファンならずとも十分に楽しめる正統派のリメイク作品に仕上がっている。今回のレビューでは、オリジナルから変化があった部分だけでなく、変わらずに洗練された部分についても、「聖剣伝説」に魅入られたファンの一人として存分に語っていきたい。

 なお、今回はSteam版でのデモプレイとなったが、プレイ時はPS4のコントローラーを使用した。本文での操作ボタンの説明などはPS4に準じたものになっているため、その点はあらかじめご了承いただきたい。

マナの力を巡る若者たちの運命の交差に刮目せよ!

 「聖剣伝説3」の最大の特徴といえば、6人のキャラクターから主人公1人と仲間2人を自由に選び、その組み合わせ次第で物語の展開が変わるところにある。ストーリーの基本的な流れは、精霊の力を集めて8つの厄災の化身「神獣」を倒し、マナの力を利用して世界支配を目論む悪者たちから世界を救う、という実にシンプルなものだ。しかし、選んだ主人公によってプロローグと終盤のダンジョン、対峙するラスボスが異なり、また道中のイベントなどもパーティーの組み合わせによって変化が起こる。その化学反応が実に面白く、筆者もオリジナル版を何度となく周回してきた。

 本作でもニューゲーム開始時に3人のキャラクターを選ぶところは変わらないが、見た目のかわいらしさはそのままに、頭身が大きくなって3Dになった主人公たちの姿に、時代の変化を感じて思わず目頭が熱くなってしまった……。パーティーの組み合わせによって戦闘スタイルやイベントなども変わってくるため、どんな構成にするかは本作でも大きな悩みどころだ。とはいえ、より美しく可憐さを増したアマゾネスの「リース」に目が釘付けとなった筆者に迷いはなかった。最終的にリースを主人公に選び、仲間は回復役の「シャルロット」、そしてアタッカーの「デュラン」に決定。

 リースは「聖剣伝説3」で最も人気があるキャラとも言われており、現在も様々な作品でコラボキャラとして登場している。能力的にも攻守のバランスがよく、ステータス変化の特技も相まって補助役として優秀なため、我ながらレビューの主人公に選ぶにはベタすぎるのでは? と一瞬は思った。だが、この可憐さ、チラリズム、そして何かを訴えかけてくる熱い眼差し(気のせい)に男として逆らえるだろうか!? いや、逆らえまい……!! というわけで、下心満載の理由で恐縮だが、ここからはリースを中心に語っていくことを何卒ご容赦いただきたい。

風の王国ローラントの王女リース。その可憐さといい、母性あふれる振る舞いと魅惑的な服装のギャップといい、幼い筆者の性癖を左右するには十分すぎた罪深いキャラである
聖都ウェンデルに暮らすシャルロットは、回復役として優秀だが生意気。でもかわいい
草原の王国フォルセナの傭兵デュランは、如何にも単純な熱血タイプ。でも強い
パーティーのコンセプトは、熱血息子と生意気娘に振り回されながらも、つい面倒を見てしまう優しいお母さんのご一行(妄想)
これは筆者の私物「聖剣伝説コレクション」からの一枚

 プロローグが始まると、チュートリアルも兼ねて魔物との戦闘に。参考までにオリジナル版の画像も載せてみたが、特に本作はリース(生足)の美しさが際立つのがお分かりいただけるだろうか。ドット絵の頭身もかわいかったが、本作のリースもなかなか……(以下略)

25年経っても見えそうで見えない丈のデザインといい、もう最高

 さて、魔物を倒し、いつものように城周辺のパトロールを終えたリースだったが、砂の要塞ナバールの義賊「ナバール盗賊団」の襲撃を受け、国王である父を失い、愛する弟のエリオットが拉致されてしまう。弟を取り戻すべく、廃墟と化した祖国を後に旅立つリース。ショッキングなプロローグではあるが、本作では3Dになってより濃密に、そしてドラマチックに描かれており、たとえ展開を知っていても目が離せない。

 リースに限らず、本作の主人公たち6名はいずれも何かしらの痛みを抱え、それを乗り越えるためにマナの女神のもとを目指す。そんな彼らの運命が交差し、やがて世界を救う冒険へと発展していく様は、25年前のゲームとは思えないほどよくできており、未プレイの方にはぜひとも味わっていただきたい一作だ。

ローラントに侵攻したナバール盗賊団の忍者「ビル」と「ベン」。この2人とはゲーム中盤で壮絶なバトルを繰り広げることに
ナバール盗賊団を裏で操る謎の美女イザベラ。その悪女っぷりは健在で、3Dになってさらに魅力的に!
祖国を失い、弟を取り戻す決意を固めるシーン。可憐・オブ・ザ・イヤーですわ……
ちなみに本作では、パーティーに加わった仲間のプロローグを遊べるようになった。地味に便利な機能だ

必殺技が躱せる……だと!? コペルニクス的転回を遂げた戦闘が楽しい!

 オリジナルの「聖剣伝説3」はジャンルこそ「アクションRPG」ではあったが、回避行動がとりづらく、ほとんどの魔法や必殺技は敵味方を問わず使用時に時間が止まり、基本的には確実に当たる仕様だった。その点ではターン性のRPGに近く、アクション性はやや薄かったとも言える。一方で、本作は敵が魔法や必殺技を使用する際に範囲が表示され、×ボタンでのジャンプ、□ボタンでの前転などで回避を狙うことが可能となっている。

 オリジナル版を未プレイの方はピンと来ないかもしれないが、「強力な必殺技を放ってくるザコ敵に対しては殺られる前に殺れ」、「ボス戦で攻撃に耐えきれないならレベルを上げるか魔法などでステータスを上下させろ」くらいしか対処法がなかったのに比べれば、必殺技を躱せることは正に目から鱗、コペルニクス的転回に等しい驚きなのだ!逆に言えば、プレーヤー側も攻撃する際は操作キャラの魔法や必殺技の範囲を把握し、敵の動きを見極めながら的確に当てに行く必要がある、ということ。その操作感はオリジナル版と別物と言ってもいいくらいで、本作がよりアクションの楽しさを味わえる作品として生まれ変わったことが実感できる。

敵の必殺技が放たれる時は画面に技名が表示され、範囲が赤く光る。躱せるといっても敵が複数いると攻撃も激しく、アクションの腕が試される
最初のボス「フルメタルハガー」戦で華麗に回避行動を取るリース
操作キャラの必殺技はカットインが追加され、より迫力が増している
オリジナル版のドット絵でも華麗に宙を舞っていたリース。嗚呼、美しい……
範囲攻撃の必殺技は、多くの敵を巻き込めるよう位置取りを意識しよう!

 他にも本作では○ボタンで弱攻撃、△ボタンで強攻撃、○と△の組み合わせでのコンボ攻撃など、通常攻撃もバリエーションが広がっており、メリハリの利いた戦闘が楽しめる。それが最も顕著に感じられるのは、やはりボス戦だろう。オリジナル版でも手強かったボスたちは、本作でも一筋縄ではいかない。巨大なボスは広範囲の攻撃や強力な必殺技を放ってくるし、人型のボスを複数相手にする場合は敵の動きに翻弄されることもしばしばだ。その代わり、敵の必殺技の中には発動を阻止できるものもあり、オリジナル版よりも確実にアクションとしての楽しさが増している。

オリジナル版でも中盤の難所として知られる「ビル&ベン」戦。敵の猛攻を受け、筆者はここで初めて仲間が戦闘不能に陥った
土の神獣「ランドアンバー」戦。物語後半の神獣戦は、ボスのデザインがやたら格好いいのもテンションが上がる!
強力な必殺技が来る前は青いゲージが表示されるので、攻撃を叩き込んでゲージを減らし発動を阻止しよう

「クラスチェンジ」に留まらない、好みに合わせた育成の幅広さ

 「聖剣伝説3」といえば「クラスチェンジ」と言っても過言ではなく、本作でもオリジナル版と同様に光と闇、2系統のどちらかへとクラスチェンジができ、能力や特技、外見も変化していく。レベル18以上でクラス2、レベル38以上+専用アイテムでクラス3にチェンジできる仕様は変わらないが、オリジナル版に比べてレベルは上がりやすくなっており、専用アイテムも体感的に入手しやすくなっている。特にクラス3は従来、終盤にならないとチェンジできず、下手したらクラス2のままクリア、という事態もあり得た。しかし、今回のテストプレイでは物語後半の早い時点、神獣の1体目を倒す辺りでクラス3にチェンジできたキャラもいるため、かなり遊びやすくなっていると感じた。

 また、本作ではクラスチェンジするとコンボ技のバリエーションが増え、特技だけでなく、クラスごとに固有の特性や覚えられる「アビリティ」も変わるなど、追加要素が盛りだくさん。クリア後の要素として新たにクラス4の導入も公式から発表されているので、オリジナル版をプレイしたことのある方も、まっさらな気持ちでクラスチェンジを楽しめる(悩める?)はずだ。

リースの場合、大まかに言えば、光のクラスは味方の強化や防御力、闇のクラスは敵の弱体や攻撃力に優れる。自身のプレイスタイルに応じてチェンジさせよう!
クラス3にチェンジするには、敵が落とす「???の種」から生まれる専用アイテムが必要
運悪く専用アイテムが手に入らず、デュランだけがクラス2のままのパーティー。これも「聖剣伝説3」あるある

 前述のとおり、本作では新たに「アビリティ」の概念も導入されており、よりキャラクターの柔軟な育成が可能となっている。オリジナル版では、レベルが上がった際に「力」や「守」などの任意のステータスを上げ、そのステータスが一定の値に達した時点で特技や魔法を覚える、という仕様だった。本作では、各ステータスへの育成ポイントの割り振りが任意のタイミングで行なえるようになったほか、アビリティを入手して装備できるようになり、アビリティの組み合わせによってカスタマイズの幅が広がっている。

 このアビリティの中でも、「リンクアビリティ」は習得したキャラ以外でも装備でき、パーティー内で共有できるという特徴がある。たとえば、従来であれば回復役のシャルロットの「力」はあまり重要ではなかったが、本作では「力」を上げていくと敵への与ダメージをアップさせるリンクアビリティを覚える。これを味方に装備させれば、シャルロット自身の力の強化だけでなく、味方の攻撃力の底上げも図れるので、「精神」を上げて魔法を覚えさせる以外の選択肢も出てくるわけだ。さらに、NPCとの会話からリンクアビリティを入手することもあるので、どのキャラがアビリティを持っているのか探すのも楽しく、ゲームが進めば進むほど、カスタマイズが悩ましくなって、それが本作の育成に深みを持たせている。

パーティーで有用なリンクアビリティを覚えつつ、力の強いシャルロットを目指すのも一興?
参考までに、こちらはオリジナル版のステータス画面。いま見るとかなりシンプルなつくりだ
この人からも!?というくらい意外なモブからもリンクアビリティを入手できるので、お楽しみに!
本作ではクラスチェンジ後も、見た目を以前のクラスに戻すことが可能。露出が増えたリースもたまらないが、アマゾネスの衣装も捨てがたい。嗚呼、悩ましい!

かわいいのは人間だけじゃない!? 愛らしいモンスターやアイツにも注目

 シリアスな物語が持ち味の「聖剣伝説3」ではあるが、登場するキャラクターやモンスターは愛らしい見た目のものも多く、そのギャップがまたグッと来る。3Dモデリングによって肌の質感などが完璧に表現されたリースは言うまでもなく、行く手を阻むモンスターたちも立体的になって、よりかわいさを増しているのだ。シリーズを代表する「ラビ」や「マイコニド」はともかく、ドット絵では強面に思えた獣人系の敵も目がクリクリっとかわいくて意表を突かれたので、ぜひ色々なモンスターたちにも注目してみよう。

愛らしいフォルムで迫ってくるモンスターが、実は一番やりにくい
その容貌で目がかわいいのは、ずるいわ!
こちらはオリジナル版。きっと殺意に満ちた鋭い眼差しをしているに違いない! と思ってたあの頃が懐かしい

 他にも冒険の中で仲間になる精霊たちや、海を渡る際にお世話になる「ブースカブー」といったアイドルたちがひしめく本作に、シリーズお馴染みの「サボテン君」も遂に参戦!街やフィールド、ダンジョンといった至るところに隠れており、ただかわいいだけじゃなく、見つけた数に応じて冒険が有利になる効果も得られる。「たまに入手経験値が倍になる」など、かなり便利な効果もあるので、じっくり隅々まで探してみよう。

最初に仲間になる精霊「ウィスプ」を筆頭に、かわいい精霊が勢ぞろい
海にぷかぷか浮いてるブースカブーも、めちゃくちゃかわええ……
満を持して本作に参戦したサボテン君。こいつはプリティだぜ!
「ごほうびマップ」の力の入れ込みようと言ったらね

オリジナルの魅力はそのままに、丁寧に再構築された一作

 ここまで手放しで本作の良さを伝えてきたが、もちろん中には気になる点もある。たとえば、オリジナル版では2Pのコントローラーで仲間キャラを操作する協力プレイが楽しめたが、本作は発売時点では1人プレイにしか対応していない。その辺りは、オリジナル版を遊んだ方ほど賛否両論となるところだろう。

 ただ、それでも今回のテストプレイを通じて感じたのは、25年の時を経て、小学生だったときの感動をいま再び味わうことができる喜びは、何物にも代えがたいということだ。もし幸運にも、まだオリジナル版をプレイしたことがない方は、ぜひとも本作を手に取ってみていただきたい。難易度も4段階まで選べ、アイテムも充実している本作なら、どんなパーティーでも最後まで駆け抜けられるはずだ。そして、オリジナル版をプレイ済みの方には、「聖剣伝説3」の変わらない魅力と進化した部分を体感してほしい。私たちが感じた楽しさ、面白さは決して思い出補正などではなく、今なお脈々と受け継がれていたのだと。

物語の基本的な流れは同じでも、主人公によっては特別なイベントが起きるのも本作の醍醐味
モブのアマゾネスたちが本作では見た目のバリエーションが増えており、スタッフの寵愛を受けているとしか思えない……ご褒美か?ご褒美なのか!?
まあ、オリジナル版のアマゾネスも甲乙つけがたいんですけどね。ぐへへ
敵対する悪役も実に魅力的なキャラばかり。彼らが辿る運命をご堪能あれ
筆者的には、本作のリースのクラス3は「フェンリルナイト」一択! この露出が……(以下略)