「NEOGEO Arcade Stick Pro」レビュー

NEOGEO Arcade Stick Pro

“100メガショック”は何度でも甦る! NEOGEOの不朽の名作を20タイトル収録したゲーム機とアケコンのハイブリッドマシン

ジャンル:
  • ゲームコンソール&アーケードコントローラー
発売元:
  • SNK
開発元:
  • SNK
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
13,900円(税別)
発売日:
2019年11月11日

 2019年9月に突如発表されたSNKの新ハードウェア「NEOGEO Arcade Stick Pro」が11月11日に発売された。本製品は、過去にSNKから発売されたゲームコンソール「NEOGEO CD」のコントローラーのデザインをモチーフにした、“ゲーム内蔵型のアーケードスティック”という斬新なアイテムだ。

 本製品の特徴は、HDMIケーブルでモニターに繋ぐことでNEOGEOの名作格闘ゲーム20タイトルが楽しめるゲームコンソールであるだけでなく、NEOGEO miniやPCに接続することでアーケードコントローラーとしても使えるという“1台2役”のハイブリッドマシンであるところ。1990年代の格闘ゲーム全盛期の頃、NEOGEO漬けの日々を送っていた筆者にとって、心揺さぶるものがある。

 NEOGEO Arcade Stick Proのアーケードコントローラーとしての機能や感触、そして収録されているNEOGEOタイトルを実際にプレイしての感想など、本製品の気になる部分をお伝えしていこう。

NEOGEOファン、NEOGEO miniユーザーなら持っておきたい1台!

 まずはハードウェアから見ていこう。中身を見るよりも前に、箱の時点でまずはその大きさに圧倒された。少しコンパクトなサイズのものを勝手に想像していたが、実物は本格的とも言える大型のアーケードスティックであった。重さもズッシリとしているので、膝上に置いてプレイする場合も安定性がある。

【NEOGEO Arcade Stick Pro】
NEOGEO Arcade Stick Proのパッケージ。箱を開けるとフレンドリーな挨拶が
NEOGEO miniのコントローラーと並べてみると、この大きさ
内容物には、電源ケーブル、USB変換アダプター、NEOGEOシールが付いている

 NEOGEOタイトルで使用するボタンは基本4つのみだが、アーケードスティックとしてNEOGEO以外の格闘ゲームをプレイすることも視野に入れられており、8ボタン式のアーケードスティックとなっている。

 本体側面部には、ゲームを始めるSTARTボタンや、連射機能を入れるTURBOボタンなどの4つのボタンに加え、ゲーム機として使用する「コンソールモード」とアーケードスティックとして使用する「ジョイスティックモード」の切り替えスイッチが備わっている。さらに本体上部と下部には、電源入力やHDMIなどの各種端子が付いている。

ボタンやスイッチが側面部にあり、誤操作が起こらない設計になっている
本体上部。電源入力端子、HDMI出力端子、USB端子が備わっている
本体下部。NEOGEO mini用のコントローラーや、NEOGEO Arcade Stick Proを接続できる。ヘッドホン出力端子もしっかり付いている

 本体裏の蓋を開けると、ジョイスティックモード用のUSBケーブルが収納されている。製品の仕様としては、NEOGEO miniとPCに対応しているとのことだが、差せるものは何でも差してみたくなるのがゲーマーの性。ということで、PS4とNintendo Switchにも接続をしてみたところ、残念ながら反応は無かった。

使わないときはケーブルが綺麗に収納できるのも良い

 まずはNEOGEO miniで格闘ゲームを数タイトル遊んでみたが、アーケードスティックとしての使い心地や感想としては可もなく不可もなくといったところ。ゲームコンソール兼アーケードスティックという製品になるため、純粋に同価格帯のアーケードスティックと比べるとさすがに分が悪いが、十分使い物になるレベルだ。

 感触としては斜めがやや入りにくく、基本技の昇龍コマンドをはじめ、コマンドが複雑なレイジングストームや天覇封神斬などを出すのはなかなか苦労した。とはいえ、NEOGEO miniに備わっている小さいスティックとボタンでの操作に比べたら雲泥の差で、操作性は格段に向上する。NEOGEO miniを愛用しているユーザーにとっては満足度は高いだろう。

 続いて、PCに接続してSteamの格闘ゲームをプレイしてみた。SNK以外のタイトルも含めて複数試した結果、ゲームによってはプラットフォーム切り替えスイッチを切り替えないと反応しないものもあったが、どれも一通り問題なく遊ぶことができた。昔の格闘ゲームから最新の格闘ゲームまで、PCには数多く揃っているので完全対応はかなりポイントが高い。

NEOGEO miniで遊んでみる。最初に触ったときは違和感があったが、慣れてくると斜めの入り難さもさほど気にならなくなる
PCに繋いで遊んでみる。プレイした範囲では、Steamで配信されている格闘ゲームはしっかりと対応しているのが確認できた。画面は筆者が好きな「幕末浪漫第二幕 月華の剣士 ~月に咲く華、散りゆく花~」
格ゲー史上もっとも複雑なコマンドとも言われる、レイジングストームと天覇封神斬は安定して出すことができなかった

ボーナス特典とは思えない、豪華ラインナップの収録タイトル!

 NEOGEO mini、PC用のアーケードスティックにとどまらず、格ゲーファンなら過去に遊びまくったであろう名作NEOGEOタイトルが20本も収録されている。これは本製品の大きな魅力の1つである。収録内容は「餓狼伝説」シリーズに「サムライスピリッツ」シリーズ、さらに「ザ・キング・オブ・ファイターズ」シリーズなど、90年代のアーケードシーンを盛り上げた名作ばかり。現在でもROMがプレミア価格となっている「サムライスピリッツ零SPECIAL」や「風雲スーパータッグバトル」まで収録されているのも素晴らしい。

【収録タイトル一覧】
1.ザ・キング・オブ・ファイターズ '95
2.ザ・キング・オブ・ファイターズ '97
3.ザ・キング・オブ・ファイターズ '98 4.ザ・キング・オブ・ファイターズ '99
5.ザ・キング・オブ・ファイターズ 2000
6.ザ・キング・オブ・ファイターズ 2002
7.餓狼伝説SPECIAL
8.餓狼伝説3~遥かなる闘い~
9.餓狼 MARK OF THE WOLVES
10.真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変
11.サムライスピリッツ斬紅郎無双剣
12.サムライスピリッツ 天草降臨
13.サムライスピリッツ零SPECIAL
14.龍虎の拳
15.ワールドヒーローズ2
16.ワールドヒーローズ2JET
17.ワールドヒーローズパーフェクト
18.NINJA MASTER'S~覇王忍法帖~
19.幕末浪漫第二幕 月華の剣士
20.風雲スーパータッグバトル

王道のタイトルから、少々マニアックなタイトルまで幅広く揃っている
「サムライスピリッツ」史上最大の残虐表現で話題となった「サムライスピリッツ零SPECIAL」。本製品に収録されているものは残虐規制が入っているバージョン
空手とブーメランを合わせた格闘技で戦う主人公など、アクの強い世界観で話題になった「風雲黙示録」の二作目、「風雲スーパータッグバトル」

 少しNEOGEOの魅力について語らせていただきたい。20年以上も前のレトロゲームに筆者がなぜそこまで心酔しているのか――。それは、1990年代に受けた“100メガショック”の衝撃を今でも忘れられないからだ。100メガショックとは、NEOGEOのキャッチコピーで、当時のゲームとしては規格外の100メガビットの容量を超えるハイクオリティなゲームであった。

 NEOGEO Arcade Stick Proにも収録されている100メガショック第一弾のタイトル、「龍虎の拳」を初めて見たときは震え上がった。画面が窮屈に思えるほど大きく描かれた迫力のキャラクター、ダメージを受けると顔がボコボコになっていく演出、女性キャラクターの脱衣KOなど、その全てがこれまでのゲームでは味わったことがない未知の領域だった。

筆者が初めてNEOGEOタイトルに触れた作品である「龍虎の拳」。今見ても迫力を感じるドット絵だ
残り体力ギリギリで勝つと、勝ちポーズを決めるも顔がボコボコ
必殺技でとどめをさすと衣服が破ける演出もある意味熱かった。この演出は続編や「KOF」シリーズにも継承された。「風雲黙示録」だけが特殊で、なぜか男キャラクターのみ服が破れるという謎仕様だったりする

 SNK初期の「龍虎の拳」は全体的に動きが固く、今の格闘ゲームのような動かしていて爽快感のあるゲームではなかった。それ故に対人戦にはあまり向いていなく、どちらかというと一人プレイで楽しむゲームバランスであった。ステージの合間にボーナスゲームが用意されており、クリアすることで体力の最大値アップや超必殺技の会得などの成長要素もある斬新な作品だ。

 コンボなども一切なく、ほぼ読み合いなどもない大味なゲームバランスなのだが、本作が持つ迫力と勢いのパワーで普通に楽しめてしまうから不思議だ。近年の洗練された格ゲーしか通っていない格ゲーマーにぜひプレイしてもらいたい1本だ。きっと驚愕するだろう。

ボーナスゲームはミスをすると何も得られないので、失敗は許されない
ネットでなにかと有名な「覇王翔吼拳を使わざるを得ない」というセリフもここから生まれた

 初代「餓狼伝説」や「龍虎の拳」などはCPU戦オンリーで楽しんでいたが、対人戦の面白さを筆者に教えてくれた作品は「餓狼伝説SPECIAL」だ。手前と奥の2ラインを使って戦う戦略性の高いシステム、通常攻撃から技に繋がるコンボや、体力がピンチの時だけ使える一発逆転の超必殺技など、とにかく対戦を盛り上げる要素が詰まっていた。

ライン移動で敵の技をかわすなど、画期的なシステムであった
キャラクターごとに持つ、ド派手な超必殺技も対戦を熱くさせた
登場するキャラクターも個性的。中でも過激なビジュアルで衝撃を与えた不知火舞は、格ゲーをプレイしない人でも1度は見たことがあるのではなかろうか

「龍虎の拳」の主人公のリョウ・サカザキが隠しキャラクターとしてゲスト参戦していたのも熱かった。出現条件が、1戦目から最終ボスのクラウザーまで1ラウンドも落とさずにクリアすると乱入してくるという難易度の高い条件。当時は1ラウンドを取られてはやり直し、何度も繰り返し挑戦していたのを今でもよく覚えている。

後半に進むにつれて敵が超反応の動きになって大苦戦。リョウを出現させるのに今回も数えきれないほどリトライを重ねた
「龍虎の拳」では気力ゲージというシステムの都合上、必殺技を連続的に使えなかったが、「餓狼伝説SPECIAL」では強力な技を連発してくる

 今でこそ、アーケードゲームとコンシューマゲームとで容量やグラフィックスの差は無くなったが、当時第一線で活躍していたコンソール機ではNEGEOタイトルをアーケードそのままに移植するのはマシンパワーの理由で不可能であった。そこで、アーケードNEOGEOと完全互換性のある、コンソール機のNEOGEOが登場した。本体58000円、ソフトも1本30000円以上とかなり高価で、簡単に手に入る物ではなかった。欲しいけど手が届かない――そういった特別感もあって、NEOGEOのゲームへの憧れが今でも強いのだと思う。

NEOGEO本体。幼少の頃は、家にNEOGEOがあればなーと、よく妄想に耽っていた

2台あればローカル対戦も楽しめる!

 収録されている懐かしのタイトルを一通りプレイしたが、やはりNEOGEOといえば対人戦は欠かせない。NEOGEO Arcade Stick Proをもう1台用意するか、NEOGEO miniのコントローラーがあれば2P対戦が可能なので、筆者と同じくNEOGEOを通ってきた友人を呼び出して夜通しプレイをしていきたいと思った。

 格ゲー仲間と対戦をする気満々でいたのだが、急な呼びかけということもあり、一緒にプレイしてくれる人が誰一人として掴まらなかった。とはいえ、対戦をやらずして終わるわけにはいかないので、手近にいた格闘ゲーム初心者の嫁で手を打つ事にした。

 ある意味動きが読めないガチャプレイの嫁から容赦なく勝ち星を上げていると、負けず嫌いな性格から段々と不機嫌な様子に……。この懐かしい感覚――、昔ゲームセンターで怖いお兄さんに連勝しているときに流れたピリついた空気のやつだ。

 昔のゲームセンターは、今では考えられないほど恐ろしい場所で、怖いお兄さんに絡まれることなど日常茶飯事だった。そういったトラブルを極力避ける為に、対戦相手がヤバそうだと察したら“ソレ用の立ち回り”が必要なのだ。いくら相手の実力が低かろうと露骨な手抜きではなく、うまい具合に接戦を演じながら最後のギリギリで相手に勝たせるという試合運びが鉄板。

 持ち前の接待プレイで嫁も大満足の様子で、楽しく(?)対戦することができた。当時を振り返りながら対戦を楽しむ予定だったが、思わぬ方向の懐かしさを感じることとなった。

2台で遊んでみる。対戦相手が妻だったため今回は接待プレイで終わったが、今度はプライベートでガチの対戦を楽しみたいと思う

 今回、NEOGEO Arcade Stick Proで、懐かしのNEGEOの作品に改めて触れてきたが、やはり名作は何十年経っても色褪せずに面白い。近年ではPS4やNintendo Switchなどでダウンロードもできるが、20本収録していてアケコンもついていると考えると値段的にこちらがかなりお得に感じられる。

 NEOGEOファンだからこそあえて残念に思った点を述べると、NEOGEO miniに収録されているものとゲームタイトルが被っているところだ。しかし、収録タイトル絡みで吉報もあり、収録されているこの20タイトル以外にも“隠しタイトル”が内蔵されていて順次アンロックしていくとSNKからアナウンスされている。NEOGEO miniにも収録されていないタイトルだった場合、NEOGEO Arcade Stick Proのありがたみが倍増するだろう。どんな隠し球が用意されているのか期待が高まるところである。

【収録タイトル(一部)】
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