「レッド・デッド・リデンプション2」レビュー

レッド・デッド・リデンプション2

待望のPC版がついに発売! 4K、HDR対応による圧倒的ビジュアルで西部開拓時代にタイムスリップ

ジャンル:
  • オープンワールドアクションアドベンチャー
発売元:
  • ロックスター・ゲームス
開発元:
  • ロックスター・ゲームス
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
8,618円(税込)より
発売日:
2019年11月5日

 ついにPC版「レッド・デッド・リデンプション2」(以下、RDR2)が日本時間11月5日22時にプレイ可能となった! 今回新たに登場したPC版の特徴は何といっても4K以上の高解像度対応と高コントラスト(HDR対応)の組み合わせが生み出す最高品質のグラフィックスだ。

 「RDR2」はその“世界の描写”に大きな特徴がある。吹雪に荒れる雪山、どこまでも広がる平原、ボロボロの田舎町から石畳の都会、ワニがうようよいる沼地……西部開拓時代の終焉、1899年のアメリカの風景を本作は精緻に描き出している。プレーヤーはまるでタイムスリップしたかのようにあの時代の世界を旅することができる。4K高画質による没入感の高まりとその世界をまず語りたい。

 そしてやはりストーリーだ。筆者は本作の真の主人公のダッチを熱く語るまで本作にのめり込んだ。本作で語られる時代を越えていく男達のドラマの魅力ももう1度語りたい。この機会にこれまで「RDR2」をプレイしてなかった人も、ぜひプレイして欲しいし、PS4やXbox Oneでプレイした人も、もう1度この世界に飛び込んできて欲しい。

物語を牽引するダッチと主人公のアーサー。PC版「レッド・デッド・リデンプション2」がついに発売された。今回はXbox ONEのEliteコントローラを使用したが、キーボードやマウスでも操作可能なのがPC版ならではだ。特に設定することなく、操作した瞬間にキーボード/マウスとコントローラが切り替わるので、場面に応じて使い分ける事も可能だ

PC版では暗所の描画性能が格段に向上

 まずは「RDR2」について簡単に説明しておくと、その名の通り「レッド・デッド・リデンプション」(以下、RDR)の続編である。前作は2010年10月にPS3/Xbox 360版が発売され、その後8年の歳月を経て、続編となるRDR2のPS4/Xbox ONE版が約1年前の2018年10月26日に登場した。

 本作は「RDR」の前日譚であり「RDR」では最後の敵として登場するギャングリーダーのダッチがまだ自身のダッチギャングを率いていた頃の物語となる。主人公はダッチの部下の1人であり、子供の頃からダッチと行動を共にしてきたダッチギャングの幹部的存在、アーサー・モーガン。

 続編というと前作をプレイしていない人には不安があるかもしれないが、本作は前日譚のため、ダッチを中心としたダッチギャングの活躍や仲間との触れ合いは、前作をプレイしていなくても違和感なく世界観に溶け込める。もちろん随所に前作への繋がりが感じられるシーンが盛り込まれているが、それがわからなくても別段気にならないようにうまく調整されており、西部開拓時代の無法者としてのロールプレイが味わい深い体験になる事は間違いない。

 「RDR」シリーズ共通の特徴が、西部開拓時代を舞台とした無法者たちの物語であること。そして未開のアメリカ各地の自然描写の再現性の高さだ。PS4/Xbox ONE版発売時から評価の高かったこれら自然描写の再現性の高さが、PC版では更に強化され、よりリアリティが増しているのも特徴の1つだ。

 まずPC版では4K以上の解像度に対応した。PS4版の場合も、PS4 Proで動作させた時には4K出力が可能になっており、遠方の山のビジュアルや、雪山や水面の表現などに違いが見られたが、今回は改めて4K解像度に対応し直したとのことで、雪山や平原などの風景から、生活で使用する道具や銃などあらゆる物の解像感が向上した。そのため、PS4版では何度も見かけた、晴れた日の雪山の、目に痛いくらい眩しい雪景色や、いつものバレンタインの街の泥化してぬかるんだ道、晴れた日のサンドニの街に整然と並ぶ電柱や建物など、見慣れているはずなのにどこか違って、より臨場感が感じられる不思議な気分だ。

口元を覆い隠して列車強盗に挑むダッチギャングのみなさん。馬に乗ったメンバーが並ぶ様はとても見栄えがいい
冬も近く肌寒い事もあり、雪山の目が痛くなるくらい眩しい雪景色を見ていると、本当に雪山に来ているような気分になる
HDR設定をオンにした場合、最大の明るさを自動調整する「シネマティック」と手動調整可能な「ゲーム」が選択できる

 中でもまず最初に特筆すべきは「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」(以下HDR)だ。HDRとは明るさの幅を広げる技術で、明るい場所はより明るく、しかもよく見ると明るさの違いが明確に描かれる。また、暗い場所、特に暗所における陰影表現が格段に向上しているのだ。

 RDR2の舞台は1900年代、西部開拓時代のアメリカだ。まだ電気も十分に普及しておらず、ランプなどの光源では明るさが乏しい。そのため、夜になると街中であってもビジュアルは全体的に暗めになる。こうしたビジュアルとHDRは大変相性がいい。暗闇が単なる黒塗りにならず豊かな階調で表現されるからだ。暗闇のビジュアルの再現性が高くなることで、RDR2の魅力は更に引き立つこと間違いなしだ。

 実際にゲームをプレイ開始して最初に感じたのは、オープニングの暗闇の中の吹雪の描写が見事だったこと。明るすぎず暗すぎず、雪明りのゆらめきに応じて変わる明るさに合わせて常に周囲の明るさが変動するのがわかる。明かりの届かない木々はかなり暗めに描写されているが、単なる黒塗りにならず、その枝葉の様子がわかるなど、暗がりの階調表現が素晴らしい。

 その後、ダッチとマイカ、アーサーの3人で、山奥の民家を見つけるミッションも印象的だった。ここでダッチは最初に1人で民家に声をかけ、アーサーとマイカは周囲に潜んで様子をうかがうというシーンがあるのだが、マイカが隠れた荷車の中から遺体が発見されるシーンは、かなり暗いビジュアルだが、マイカが布で覆われた荷車の中を覗き込み、遺体を発見する動きがはっきりと見えるのだ。

 PS4版では明るさを最大に設定していたため、逆に全てがはっきりと見えすぎてしまい、ゲームとしてはわかりやすい反面、雰囲気的にはちょっと残念だった印象だが、HDR設定を有効にすることで、この辺りの暗がりの描写表現が格段に向上しているため、暗闇を暗闇として見せつつ、その暗闇で何かやってる、以上の情報がこちらに伝わってくるようになっており、ゲーム的にも雰囲気的にも問題のない絵作りに仕上がっている。

 民家の探索を終えて、仲間の元に帰ってきたダッチ一行のビジュアルにも違いが明確にみられた。前述の通り、明るさ設定を最大にしていたPS4版のビジュアルはランプの明るさに関係なく、後ろの仲間や背景の木々がはっきり明るく描写されていたのに対して、HDRを有効にしたPC版のビジュアルでは、ダッチの手に持ったランプが明るすぎず、狭い範囲の中だけを照らしており、その光源が届く範囲は赤みを帯びた色で描写され、背景の木々はかなり暗く描写されており、後ろの仲間たちは手元のランプ周辺しか明るくなっていない。にも関わらず、木の幹の様子などは暗いながらも雪が張り付いた様子がはっきりわかる。

 PS4版を最大の明るさ設定にしていた事で、HDRの表現力がより明確にわかる事になった。HDRを有効にした場合、明るさの最大値と最低値しか設定できないようになっているが、暗闇の中の描写でこれだけの情報がわかるなら、HDR設定のままでもゲーム的には支障はないし、何よりゲームの雰囲気は格段によくなったと感じた。

上がPC版で下がPS4版。全体的に明るいPS4版と比べて、PC版ではHDR効果により、雪煙で明かりが少ない森の薄暗い様子が表現されている
上がPC版で下がPS4版。PS4版ではランプの明かりが届いていないエリアもかなり明るく表示されるが、PC版ではランプの周辺以外はかなり暗く描写されているのがわかる

 HDR以外にも、グラフィックスは多方面が強化されている。例えば、グローバルイルミネーションとアンビエントオクルージョンの品質を向上したとのことで、昼夜の照明の改善も行なわれている。他にも雪道の品質が向上しているほか、光の反射表現の改良、影の解像度の品質を向上して、よりリアルな影描写になったという。前述の雪山でのビジュアルについてもこうした機能改善がプラスになっている事は間違いない。

 他にも木のテクスチャのモザイク化や、植物と動物のリアリティを向上するべく、芝生や毛皮のテクスチャも改良されており、よりリアルな草原や動物描写が実現しているとのことで、確かに列車強盗の時に動く列車から見えた山々の景色は壮大ながらも緻密な表現が感じられたし、雪融けが進み、まばらに雪が地面に残る山の岩肌の表現は、リアリティがかなり向上していると感じられた。

草木の陰影の処理や、岩肌に残る雪や、遠方の木々の表現など、あらゆるビジュアルが強化されている。なお、PC版でも視点切り替えで1人称視点のプレイが行なえる

4K/HDRで楽しむにはかなりの高スペックが必須!

 PC版「RDR2」にはベンチマークソフトが同梱されている。これを走らせることで今の環境に最適な設定を調べ、調整することができる。よりよいグラフィックスを実現させるために、自分のPCのどのパーツを強化すれば良いかもわかるだろう。

 今回のプレイ環境は、ディスプレイが27.9型、4K/HDR対応のBenQ製「EL2870U」、PCは株式会社ゾタック日本(ZOTAC)より、コンパクトサイズのゲーミングPC「MEK MINI」をお借りして試用した。CPUにCore i7-8700、メモリは16GB、ビデオカードにビデオメモリ8GBのハイミドルレンジのGeForce RTX 2070を搭載する。最新ビデオカードを備えるだけあって、4K解像度、HDR表示を有効にした状態であっても、グラフィックス設定のほとんど全てを最上位の設定にすることができた。

ZOTACのコンパクトサイズのゲーミングPC「MEK MINI」。ビデオカードを搭載できるのにやたらと小さくて驚いた

 ほとんど、というのはMultisample Anti-Aliasing(MSAA)設定のみ、最大のX8にするとビデオメモリの容量上限を超えてしまったためだ。そのため、ここだけX2に落としてプレイした。なお、X4設定に上げても、ビデオメモリ容量はギリギリだったが、この状態だとゲームの動作が若干ぎこちなくなったり、ベンチマークも正常に動作しない場合があったため、あえて2段階落としての運用としている。

 なお、手早くフレームレート(以下FPS)を稼ぎたい場合には下部のFXAA/MSAAを共にオフにすることで、かなりビデオメモリに余裕が出るため、大分快適にプレイできるようになる。

MSAA設定がビデオメモリをかなり消費する。いつの日か、ビデオメモリをさらに多く搭載するハイエンドのビデオカードで、制限なしの状態でプレイしてみたいものだ

 これら設定変更でどれだけのFPSが稼げるかについては、設定画面からベンチマークも実行できるため、これを利用する事で、設定毎の状態がスムーズに確認できる。

 ベンチマークでは吹雪の雪山や月明かりに照らされた木々、日が暮れる直前の丘、夜のバレンタインなど、光源の異なるシーンを描写して、光源の変化による負荷をチェックする。

光源や場所がゆっくりと動くことで、光源やカメラ位置の変化に伴った風景の変化にかかる負荷を測定している。こちらは雪山だ
月明かりに照らされた湿地帯の森
日が暮れていき、夕日が沈む前後の丘陵地帯
「RDR2」ではおなじみのバレンタインもベンチマークで使用されている

 最後は実際にゲーム内と同じようなシチュエーションで、アーサーがサンドニの雑貨屋から強盗して街を逃走するシーンが流れる。このシーンは単なる動画ではなく、ゲーム内のシステムを利用して、実際にアーサーをCPUが自動操作している。そのため、街の人の挙動や保安官たちの動きなどが毎回微妙に異なる事があるため、ついつい毎回じっくり見てしまう。特にわかりやすいのは、ダイナマイトを投げて保安官の馬車を爆破するシーンがあるが、ダイナマイトの爆発ポイントが毎回微妙に異なるのだ。デフォルト設定でプレイしている人も、是非1度ベンチマークを眺めてみてほしい。

ベンチマークテストの最後は、サンドニの雑貨屋で強盗を働いたアーサーが街から逃走する1シーンだ。金を懐にしまったアーサーは店を飛び出して馬で街の外に逃亡しようとするが、馬車に乗った法執行官に追われるので、これを各個撃破、最後はダイナマイトでド派手に馬車ごと吹っ飛ばしたら、別の法執行官が乗っていた馬車を“拝借”してそのまま街の外まで逃亡する
ベンチマークの結果はシンプルにFPSのみが表示される。4K解像度の場合、画質の設定をほぼ最低まで下げても平均40FPSまでしか稼げなかった

 こうした美麗なグラフィックスを活かす機能として、PC版では「フォトモード」も用意されている。フォトモードを起動すると、その場でゲームが一時停止し、カメラ位置を自由に変えて写真を撮る事ができる。

 RDR2では、PS4/Xbox ONE版の頃から、未開の地が多く残るアメリカの荒野の原風景の美麗さが特徴の1つであり、実際にTwitterなどでは、そうした風景画像をスクリーンショットに収めて、多少の加工をした上で公開している人も多く見られる。そういう風景写真撮影の環境と考えても、さらに描写周りにも大幅に手を加えたPC版RDR2は満足のいく環境になっていると言える。

 他にも新たな賞金稼ぎミッションの追加や、武器、馬、アクセサリーの追加など、PS4/Xbox ONE版「レッド・デッド・オンライン」で先行して追加された新要素がPC版のストーリーモードにも反映されている。

静止画を自由に“撮影”できるフォトモードを搭載。ビジュアルに自信を持ってる証とも言える。カメラアングルなどかなり自由に設定できる

邪悪な秩序に立ち向かう、善なる無法者たちの物語

 「RDR2」PC版はPS4版と比較しても、とにかくビジュアルの性能向上が目覚ましく感じられた。広大な草原や果てしない原野、木々の密生する森や湿地帯など、まだまだ未開拓の地が点在する広大な世界はプレイしていて飽きることなく、没入できる。特にHDRによる暗部の描写能力の向上は、ゲームとして見た場合も情報量が増えることで、よりプレイしやすくなっている印象を受けた。

 だからこそ改めて本作のストーリーの魅力を少しでも多くの人に味わってもらいたい。ストーリーにどのような深みがあるのかと言われると、過去にも色々語らせてもらってきたが、今回、PC版で久々に見直した時に「RDR」シリーズは、邪悪なロー(秩序)に立ち向かう善なるカオス(混沌)の物語だと考えるようになった。

 主人公のアーサーやダッチは基本的に法に従う事のない無法者だ。だが主人公たちに共通して言えるのは、彼らはいずれも単なる悪人ではなく、自由に生きるために法を無視する者たちであり、そこに邪悪な意思は存在しない。ただ生きる事に必死なだけなのである。彼らを「善」とする根拠は、夫をコルム一味に殺されたセイディなどの身寄りのない女性たち、人種差別で苦しむチャールズなど世間から迫害された人たちを拒むことなく、みんな受け入れてきたダッチギャングのメンバーたちを見れば一目瞭然だ。

 一方で「RDR2」シリーズに登場し、ダッチギャングたちを追い回す法執行官やピンカートン探偵社は、ギャングたちを追い詰める"ため"に行動する。行動その物は法に対して従順であり、秩序を守るための行為ではあるが、一方でそこには明確な“邪悪”な意思が感じられるのだ。法に従わない相手(ギャング)に対しては“何をしても”許させれるという邪悪な意思が。

 西部開拓時代の末期、国家としてのアメリカの法整備が少しずつ整いはじめ、無法者たちの居場所はなくなっていった。そういった時代に抗ってきたのが、本作に登場するダッチギャングたちのような無法者だったわけだが、時代が進むにつれて彼らは居場所を失い、数を減らし、そして消えていった。そんな善なる無法者たちの最後の抵抗と、明確で無自覚な邪悪なる意思を持って、ギャングたちを壊滅させるために動いた法執行人たちを描いたのが「RDR」シリーズだと考えている。

元娼婦であり、ジョンの妻であるアビゲイルやその息子、ジャックもダッチギャングの一員として行動をともにしている

 このように、ストーリーを全てプレイし終えてからも色々考えさせられる事が多く、こういうところから本作のストーリーの深みを実感する。このストーリーの深みは、是非PC版で改めて味わってみてほしいし、プレイした後の感想も色々読んでみたい。もしPS4/Xbox ONE版を駆け足で進めた人は、是非未クリアのサブミッションをチェックしてPC版でリトライしてみてほしい。サブミッション以外にも狩りや薬草集めといったコレクション要素など、まだまだ遊ぶ要素は多く残されているはずだ。

 一方でグラフィックスがリッチになったということで、PC環境もかなりのハイスペックが要求される。筆者も今回は借り物の環境で試してみたが、現状、GTX1060搭載のゲーミングノートPCしか持っていないので、これらを全て1から揃えるためにはかなりの出費が要求されると考えると、今後どうするか悩ましいところだ。

 まだPCゲームをプレイしたことがない人は、PC版「レッド・デッド・リデンプション2」の発売を機会に、新たにゲーミングPCを用意して、PCゲームの世界に飛び込んできてみてほしい。そこまでして薦めるだけの価値のある体験がPC版「レッド・デッド・リデンプション2」にはあると信じている。

チャールズは黒人とインディアンの混血のため、これまで人種差別で迫害され続けていたが、ダッチギャングは人種の事など一切気にせず、仲間に迎え入れてくれた