2019年5月30日 00:00
Nintendo Switch用「GUILTY GEAR 20th ANNIVERSARY PACK」は、アークシステムワークスを代表する対戦格闘ゲーム「GUILTY GEAR」シリーズ20周年を記念した作品だ。本作は、シリーズ原点の初代「GUILTY GEAR」と、XX(イグゼクス)シリーズの集大成「GUILTY GEAR XX ΛCORE PLUS」(以下「GGXXAC+R」)の2作品がセットで収録されている。
格ゲーブームの90年代後期に登場した「GUILTY GEAR」は、2D格闘ゲーム史上最高のグラフィックスと爽快なゲーム性で格ゲーファンを魅了し、「コンボゲー」というジャンルを確立した革命的な作品だ。現在でも新作がリリースされ、圧倒的な人気を誇っている。
シリーズの“原点”と“集大成”という、「GUILTY GEAR」を語る上で欠かすことができない2タイトルをまとめてプレイできる本作。本稿では、当時の記憶を振り返りながら懐かしの名作をプレイしていきたいと思う。当時プレイしていた古参ファン、新作の「Xrd」から入った新規ファンには是非注目してもらいたい。
格闘ゲームの型をぶっ壊した衝撃の第1作
記念すべき1作目が発売されたのは1998年。この頃は格ゲーブームの真っ只中で、2D格闘ゲームといえばSNKとカプコンの2強という時代。アーケードとコンシューマの両方をこの2社の作品が盛り上げていた。
空前の格ゲーブームの煽りを受けて、聞いたことのないようなメーカーから今では格闘ゲームとは縁遠いメーカーまで、この時代はいろいろな企業が格闘ゲームをリリースしていた。まさに格ゲー戦国時代だ。クオリティもピンからキリまで様々で、特にアーケードで稼働しないコンシューマ専用タイトルは“危険”な作品が多かった。そんなあまり良い印象を持っていなかったコンシューマ専用タイトルとして、初代「GUILTY GEAR」がPlayStationでリリースされたのだ。
某メーカーの“実写の西遊記格ゲー”を掴まされたトラウマから、コンシューマ専用の作品には警戒心を持っていた筆者だったのだが、「GUILTY GEAR」はパッケージに描かれていたソルとカイがカッコよく、そのイラストに惹かれて手に取ったのを覚えている。今でこそ2D格闘ゲーム界のトップといえるアークシステムワークスというメーカーと「GUILTY GEAR」という作品だが、この頃はそのどちらも認知度はそれほど高くなく、失礼な話だがプレイする前は“1作で終わってしまう格ゲーなのだろう”などと思っていた。
肝心な中身なのだが、当時としては新しいアニメ調のカッコいいキャラクターと型破りなシステムを意欲的に盛り込んでおり、“格闘ゲームの常識をぶっ壊す”といわんばかりの熱意が感じ取れた作品であった。
個性的なキャラクターから中二感全開の世界観、さらにゴリゴリのロックテイストなBGMなど、初代「GUILTY GEAR」の魅力を上げ出したらキリがないのだが、やはり1番衝撃を受けたのが斬新なバトルシステムだ。
初代「GUILTY GEAR」は、近年の作品ほどではないが1作目からコンボを重視したゲーム性となっている。攻撃から次の攻撃に流れるように繋がる「ガドリングコンビネーション」や敵を打ち上げて空中で追撃を決める「ダストアタック」などのシステムにより爽快感のある対戦が楽しめた。他にも、ダウンしている相手でも攻撃の当たり判定があり、“どんな状況でも敵に攻撃を叩き込める”という自由度の高さに当時は驚かされた。
これらの斬新なシステムは後のシリーズにも受け継がれていくのだが、中にはこの1作目だけで無くなったゲームバランスを無視したぶっとんだシステムも存在した。その代表が「一撃必殺技(殺界)」だ。
一撃必殺技自体は続編でも存在するのだが、初代の一撃必殺技(殺界)はとにかく狂っている。簡単に説明すると開幕から何度でも発動できるにもかかわらず、1発入ってしまうと勝利ラウンド数を無視してその時点で勝負が決してしまうのだ。
発動には条件があり、「殺界発生技を当てる」か「直前ガード」をすることで発生する「殺界」演出中に一撃必殺コマンドを入れる必要がある。一応条件はあるものの殺界発生技はガードされてもOKなので発動条件はユルユルである。殺界中は互いに一切身動きがとれないのでガードなどはできず、受け手側が一撃必殺をかわす方法は殺界演出中に回避コマンドを入力するのみ。入力ミスをしたら即終了という滅茶苦茶なゲームバランスは、後にも先にも初代「GUILTY GEAR」でしか味わえないだろう。
個人的には好きだったが初代以降無くなってしまったシステムが「チャージアタック」だ。特定のコマンド入力し、敬意(挑発のようなもの)ボタンを長押しすることで必殺技を強化できる。最大LEVEL3までチャージすることが可能で、LEVELによって威力が格段に上がるという面白いシステムなのだ。
戦いの幅を広げてくれるチャージアタックなのだが、このシステムには致命的な穴があり、“攻撃後の硬直をチャージでキャンセルすることができ、チャージ後は一切硬直が発生しない”のだ。これにより、攻撃→チャージ→ダッシュ→攻撃→チャージというような無限ループができてしまうのだ。こういう調整の甘さも1作目の格ゲーならではである。
本作はPlayStation版そのままの仕様となっており、用意されているモードはCPU戦の「ノーマルモード」、ローカル対戦の「VSモード」、技やコンボを練習できる「トレーニングモード」の3つ。現在の格闘ゲームと比べると遊べるモードが少なく感じるが、昔はコンシューマ版でもトレーニングモードすら無いタイトルも結構あったので、それを考えれば当時としては親切な作りだ。
昔は理不尽に難易度が高い格闘ゲームが多かったからあまり気にならなかったが、今プレイしてみると結構難易度が高く、1戦目から1撃必殺技を決めてくるガチっぷりだ。特に中ボスのテスタメントとラスボスのジャスティスはとんでもない強さだったが、執念のコンティニューでなんとかエンディングを見ることができた。
20年振りにプレイしてみたが、キャラクターの動きの細かさと攻撃モーションの滑らかさはさすが。ゲームのバランスも攻撃力が全体的に高めに設定されているのもあり、1コンボで体力がゴリゴリ削れるのもかなり爽快だった。現在の「GUILTY GEAR」とは感触は大分違い粗削りではあるが、その破天荒なゲームバランスを含めて今プレイしても十分に楽しむことができた。1人でプレイするのも良いが、仲間内で遊んだ方がいろんな意味で大いに盛り上がれるタイトルだろう。
シリーズ屈指の人気を誇る、不朽の名作も収録
本作に収録されているもう1つのタイトルは、「GUILTY GEAR」シリーズ8作目にあたる「GGXXAC+R」。2012年にアーケードで稼働したこのタイトルは、2006年稼働の「GGXXAC」を大幅にバランス調整し、クリフとジャスティスの2キャラクターを追加したシリーズの集大成といえる作品だ。コアな格ゲーファンから高い評価を得ており、最新の「Xrd」シリーズが稼働している現在でもアーケードで「GGXXAC+R」をプレイしている人を見かけるほどだ。
圧倒的な人気を誇る「GGXXAC+R」だが、正直をいうと筆者はこの作品をあまりプレイしたことがなかった。過去にPS3で配信されたのをDLはしたものの軽く触った程度で、当時は同社の「BLAZBLUE」シリーズにドハマりしていて他の格ゲーはほとんどプレイしていなかったのだ。なのでじっくりプレイするのは今回が初めてとなる。
初代から立て続けにプレイして1番最初に進化を感じる部分はやはり映像力だ。シリーズ2作品目の「GUILTY GEAR X」から基本グラフィックスは共通化されているのだが、細部まで描かれたアニメタッチのドット絵は近年の作品に引けを取らない仕上がりだ。
グラフィックスの他にゲームバランスも丁寧に調整されており、洗練されたゲームバランスに仕上がっている。攻撃によるヨロけ状態や壁バウンドなども追加され、コンボの幅が大きく広がっている。さらに「GGXXAC」からの追加システムである「フォースロマンキャンセル」と「フォースブレイク」が良い味を出している。
フォースロマンキャンセルは一部の必殺技のみ使えるシステムで、特定のタイミングでボタンを3つ同時押しすることで必殺技モーションをキャンセルして行動することができるのだ。例えばソルのガンフレイムで使えば、敵に向けて放った火柱を盾に懐に飛び込むことができる。かなり使えるテクニックなのだが、ボタンを同時押しするタイミングがシビアで成功させるのがなかなか難しい。モノにするには練習が必須だ。
もう1つのシステム、フォースブレイクはテンションゲージを使用して強力な必殺技を繰り出すことができる。こちらはフォースロマンキャンセルと違ってシンプルに使えるうえに高性能なのでいろいろな場面で役立つ。覚えておいて損のないシステムだ。
他にも「サイクバースト」や「スラッシュバック」など、初代にはなかったシステムが数多く追加されている。覚えなければならないことも増え、多少複雑にはなっているがその分対戦の駆け引きがさらに面白くなっている。
初代「GUILTY GEAR」には残念ながら未実装だったが、「GGXXAC+R」の方には格闘ゲームの目玉であるオンライン対戦が実装されている。勝敗が記録される「ランクマッチ」と勝率を気にせず対戦できる「プレイヤーマッチ」の2種類がある。格ゲーファンとしては真剣勝負のランクマッチをやるしかないだろう。
ランクマッチをとりあえず40戦ほどしてみたが、コアなファンが多い作品だけあってプレーヤーのレベルも高く、緊張感のある戦いが楽しめた。戦績は30勝・勝率75%というまずまずの滑り出し。一旦区切りをつけないと締め切りを忘れてプレイしてしまいそうなので、続きはこの原稿が終わってからじっくりやりたいと思う。
プレイした感想としては国内のプレーヤーとはほとんどラグもなく快適に対戦することができた。オンライン周りは概ね満足ではあるのだが、惜しい部分も少しある。それは相手との回線レベルが対戦前に確認できないところだ。対戦が始まってみないと遅延があるかどうかがわからないので、ここはアップデートなどで改善してもらいたいポイントである。あとは、欲を言えばトレーニング待ち受け設定などもあれば言うことなしだった。
基本的にはPS3版と同じ仕様となっているので、「アーケードモード」はもちろん、ハイスコアを競う「M.O.Mモード」に「サバイバルモード」、与えられた条件をクリアしていく「ミッションモード」などオフラインで遊べるモードもとても充実している。
中でも遊び応えがあるのが、重厚な物語を追体験できる「ストーリーモード」。プレイアブルキャラクター全25人分のストーリーが用意されているというボリューム感。さらに物語中の選択肢や、戦闘で特定の条件を満たすことでエンディングも分岐する。「GUILTY GEAR」の世界観やストーリーを楽しみたいファンにはうってつけのモードだ。
「Xrd」以前のシリーズを久々にプレイしてみて「GUILTY GEAR」の進化の歴史を改めて再確認することができた。溢れ出る熱量で作られた型破りな初代「GUILTY GEAR」と洗練されたゲームバランスで今なおファンを魅了する「GGXXAC+R」。ベクトルは違えど、どちらも今遊んでもかなり熱くなれる作品だった。
今回筆者は「Joy-Con」、「PROコントローラー」、「アーケードスティック」を使ってみたが、感想としては「GUILTY GEAR」をガチで遊ぶならアーケードスティック一択である。細かな操作や複雑なコマンド入力が必要なので、Joy-Conなどでプレイするのは結構厳しいというのが正直なところだ。
シリーズの原点と集大成が2本セットになって3,200円とかなり手の出しやすい価格になっている。DL版は作品単体での配信をしているのでどちらか片方だけを遊びたい人はそちらがおすすめだ。当時遊び込んだファンも、過去の作品に触れたことがない人もこの機会に「GUILTY GEAR」20年の歴史を体験してもらいたい。