「ザ・ウェイ~トワの誓い~」レビュー

ザ・ウェイ~トワの誓い~

最愛の妻を蘇らせるため、男は未知の惑星を駆け巡る

ジャンル:
  • アクションアドベンチャー
発売元:
  • テヨンジャパン
開発元:
  • テヨンジャパン
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
1,200円(税込)
発売日:
2019年4月25日

 「ザ・ウェイ~トワの誓い~」は、ローカライズに定評のあるTeyon Japan配信の横スクロール型2Dアクションアドベンチャーだ。オリジナル版は2016年にPCゲームとして発売された「The Way」。亡き妻を蘇らせるため、未知の惑星に隠された永遠の命の謎を解き明かすという物語性や、歯応えのあるアクション、謎解き要素が好評を博してきた。

 オリジナル版の発売から数えること3年。遂に日本語テキスト・音声が実装されたNintendo Switch版が4月25日に発売されたので、本作の魅力をお伝えしたい。

愛する者のため、人はどこまで一途になれるのか

 本作の主人公「トム」は宇宙探索チームの一員として、ある惑星で永遠の命にまつわる伝承の研究を行なっていた。同僚でもあった「サラ」と結婚し、仕事も家庭も充実した生活を送る2人。だが、そんな幸福に満ちた日々に、サラの病気が無情にもピリオドを打つ。

 降りしきる雨の中、妻の墓前にて無言で佇む男……。そんな哀愁ただよう場面から始まる本作だが、トムは悲しみに打ちひしがれる無力な人間では終わらなかった。いや、むしろ悲しみのメーターが限界を振り切ったからこそ、あろうことか宇宙船を強奪する暴挙に出る!彼の目的はただひとつ。かつて研究を行なっていた惑星で永遠の命の秘密を解き明かし、妻のサラを蘇らせることだ。

ゲーム開始早々、一心不乱に墓を掘り返しはじめた主人公トム。ちょ、ちょっと落ち着いて……
妻の遺体を抱えながら戻った部屋の壁には、宇宙船の強奪から惑星の探索まで緻密なプランがびっしり。愛は人をマッド・サイエンティストに変える……

「アドベンチャー」のジャンルにふさわしい探索の旅

 数々のパズルや謎を解きながらエリアを移動していく本作では、エリアごとに異なるテイストの探索を楽しめる。宇宙船の強奪ミッションでは壊れた機械の部品を探し回る一方で、守衛を気絶させたり、レーザー銃でセキュリティロボットを破壊したりと、やりたい放題のトム。筆者の気分は、まさにスパイアクション映画の主人公になったかのよう。湿っぽい幕開けからは想像もつかないような冒険がここから始まる。

セキュリティの目をかいくぐり、狭い通路を進む主人公
守衛を後ろから襲っちゃうトム。「気を失うだけ」って、そういう問題じゃないぞ!!

 目的の惑星に到着した後は「インディ・ジョーンズ」や「スター・ウォーズ」のような雰囲気が色濃くなる。危険な現地の生物のみならず、遺跡を守るロボットも登場し、SF好きにもたまらない物語が展開されるが、本作はあくまで謎解き要素が強めのアドベンチャーである。我らがトムの目的は愛する妻の蘇生であり、謎が解ければ即座に次のエリアに移動するため、寄り道の要素はない。登れる階段や入れる場所には必ず矢印が表示されるので、道に迷うことはほとんどなく、プレーヤーは謎解きに専念できるのだ。

 とはいえ、道中ではバリエーション豊かな敵も立ちはだかる。時に戦いを挑み、時に逃げ延びながらも、謎に満ちた遺跡の探索を続けるトム。亡き妻を蘇らせる手掛かりを求め、今日も未知の惑星を駆け巡る。

レーザー銃に怯みこそすれ、倒すことができない生物もいる。時にはタイミングを見計らって先に進むことが必要だ
巨大な生物に立ち向かってもあっさり食べられるのがオチ。遺跡内のギミックを利用しつつ、逃げ延びる方法を探すのも本作の醍醐味と言える

シンプルでありながらも上達が感じられるアクション設計

 システム面では「ステージクリア型」に分類される本作は、遺跡の謎を解いたり、困難な状況を打破することで物語(ステージ)が進んでいく。ステージの攻略順を選ぶことや、前のステージに戻る、といったことができない分、限られたアイテムと自身のアクションの腕で難関を突破する快感が味わえる作りだ。

 アクション面に目を向けると、まず本作にはHPや残機などの概念はない。主人公は敵の攻撃を受けたり、高所から飛び降りたりしただけでも即死するため、ゴリ押しプレイは不可能。昨今のアクションゲームとしては比較的シビアな作りと言える。飛び降りて死んだ場合も血が流れ、現地の生物に近づけば丸呑みにされるなど、ドットグラフィックスでの死亡描写もリアル寄りだ。

 基本的なアクションも十字キーでの移動とジャンプ、アイテムの操作だけとシンプルなもの。また、アクションの難易度が高めな分、死亡した場合は直前のチェックポイントからやり直せる親切設計となっている。操作がシンプルだからこそ、トライ&エラーを繰り返すうちに自身の上達を感じられる。そんな絶妙な難易度も本作の特長だ。

原住民が投げつける石に当たるとゲームオーバーになる。ここで10回は死んだ身としては、「スト~ップ!」というトムのセリフは、もはや筆者の心の叫びでもある

頼もしい相棒とのバディアクション

 広大な惑星を1人で探索するのは、どんな屈強な人間でも難しく、時には猫の手も借りたいほど。そこで登場するのが、ひょんなことから主人公に懐いた現地の生物である「ティンカン」(おそらくあだ名)だ。そのキモ……カワイイ見た目のとおり、ティンカンはただのペットではなく、頼れる冒険の相棒となってくれる。

 探索が進むと、様々な場面で「ティンカンを呼ぶ」というメッセージが表示され、アクションを起こすことができる。例えば、高すぎて主人公では登れない壁があった場合、時にティンカンが足場となってくれる。ありがとう、ティンカン!また、敵が邪魔で先に進めない場合はティンカンが蹴散らしてくれることも。このように最初は「何この生き物……」と思っていた筆者も、段々とティンカンなしには生きられない体になった。読者の皆様にも、ぜひそのかわいさを体感してほしい。

はじめはちょっとキモいと思ったティンカンだが、ともに旅をするにつれ段々とかわいく見えてくるから不思議だ

アクション要素と絡めた多彩な謎解きの数々

 前述のアクション要素と双璧をなすのが、主人公の行く手を阻む謎解きの数々だ。序盤の宇宙船の強奪ミッションでも、壊れた機械の部品を見つけるといった軽めの謎解きはあったが、惑星での探索に場面を移した後、遺跡でのアイテム入手を機に、一気に謎解きの幅が広がる。

 例えば「テレキネシス」の力が使えるようになると、壊れた物を修復したり、特定の模様を作ったり、水道管を繋げ合わせたり、といったようなパズル要素の強い謎解きが増えてくる。他にも、敵の一部の攻撃が跳ね返せる「シールド」を入手すると、謎解きにおいても「レーザーを反射して鏡の角度を変える」といったように、遺跡内のギミックを作動させることが可能になるのだ。

レールが途切れているため、近くの破片を「テレキネシス」で動かして修復する場面
「シールド」をレーザーに当てることで、反射したレーザーがギミックを動かすことも

 前述のとおり、本作はあくまで謎解き要素が強めのアドベンチャーゲームであるため、ゴリ押しでのプレイはできない。「ギミックを駆使して大きな岩を作り、タイミング良く敵の頭上に落とす」といったように、頭脳と指先の双方を駆使するプレイスタイルが求められるのだ。一筋縄ではいかない探索の旅に筆者も何度も挫折しそうになったが、そんな時もトムとともに「愛する者を絶対に蘇らせる!」という謎の使命感にかられ、プレイを続けたくなるから不思議だ。

サウンドトラックやアチーブメントなどのお楽しみ要素も

 スタート画面のメニューからサウンドトラックモードに入れるのも、本作の地味にうれしい要素のひとつ。オープニングに代表される哀愁ただよう曲をはじめ、巨大な生物に追いかけられる場面での緊迫したBGMなど、様々な音楽を味わうことができる。

在りし日の思い出を背景に、BGMが楽しめるサウンドモード

 また、特定の場面をクリアした時や、特定の条件を満たした際に入手できるアチーブメントも、シリアスな物語の中で程良いアクセントになっている。全体的に色々なジャンルの映画の影響が感じられる本作においては、アチーブメントも有名なキャラクターをオマージュしたものが多く、製作者の遊び心が満載だ。

たまたま何回かジャンプして頭を天井にぶつけていたところ、「おい、大丈夫か!」というアチーブメントが開放された。大丈夫ではない

 困難を乗り越え、最愛の妻を蘇らせようと奔走する一途なトムの姿に、思わず胸を打たれる本作。「Nintendo Switch」版では英語音声・日本語テキストといった切り替えも可能なため、字幕テイストで壮大なハリウッド映画を観ているような気分も味わえる。歯応えのあるアクションや謎解きが好きなゲーマーだけではなく、SFやアドベンチャーといった映画のジャンルに興味がある方にも、ぜひ手に取っていただきたい一作だ。