「ヒットマン2」レビュー

ヒットマン2

姿を変え忍び寄る神業暗殺者47、世界を巡る! 試行錯誤の果てに暗殺の極意を得るステルスアクション

ジャンル:
  • ステルスアクション
発売元:
  • ワーナー ブラザース ジャパン
開発元:
  • IO Interactive
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
価格:
7,800円(税別)より
発売日:
2018年11月15日

 「ヒットマン2」がいよいよ発売された。本作は前作である「ヒットマン ディフィニティブ・エディション」の直接の続編となるステルスアクション。プレーヤーは伝説の暗殺者47(フォーティーセブン)となり、様々なターゲットを暗殺していく。

 本シリーズの楽しさは、47がまるで全ての事柄をあらかじめ知っているかのように行動し、不可能と思えるターゲットを暗殺することにある。時速数百キロでコースを巡っているレーサー、何十人ものギャングに守られた麻薬組織のボス、貧民街に君臨する女王……その顔を見ることすら困難なターゲットをどう暗殺するか、不可能を可能にする爽快感こそ、本作の最大の魅力なのだ。

 「ヒットマン2」は前作と同じゲームエンジンを使いながら、人混みや茂みに隠れたり、NPCのAIの向上など様々な改良が加えられている。なにより、新しいその物語が良いのだ。もちろん前作を知らなくてもプレイできる。「ヒットマン2」の魅力を語っていこう。

警備員や医療スタッフ、周囲の人間は実は47かも……天才暗殺者になりきれ!

 「ヒットマン2」ではICA(通称ザ・エージェンシー)の暗殺を利用し、自分達の目的を達しようとしていた「影のクライアント」を見つけ出すため、様々なテロリスト達「民兵組織」を排除していくこととなる。47はその行動の中で、記憶を失っていた彼自身の過去に向き合っていくこととなる……。

 レースで盛り上がるアメリカのマイアミ、麻薬組織のアジトとなっているコロンビアのサンタ・フォルチューナ、人口過密の都市の暗部に海賊組織が暗躍するインドのムンバイ……。「ヒットマン2」でも世界の様々な地域が舞台となる。前作でもそうだったが、シリーズの最大の魅力はそのロケーションの描写にある。その土地土地の雰囲気を非常にうまく表現しており、観光客ではいけないような危険な地域や、その土地の人々が生活している生な感触のある生活圏も描いている。

 例えばマイアミではイベント会場が持つ多彩な顔をきちんと描写している。華やかなイベント会場ではサーキットを観戦できる観客席、車の展示や、VIPのみが入れるコーナーがある一方で、ちょっと階段を降りるだけで外の喧噪が嘘のような人の少ないスタッフ用駐車場があったりする。車を整備するピットコーナー、レースを撮影するための特設の場所、さらにはスタッフの健康を管理する医療コーナーもある。

スキンヘッドの暗殺者47。あらゆる銃器、格闘術、暗殺術に精通、様々な乗り物も乗りこなす。そして彼の最大の能力は何者にでもなりきれる変装術である
人でごった返す華やかなレース会場。47はこの人混みに紛れターゲットに近づいていく

 筆者は仕事柄イベントの取材で楽屋裏やスタッフ用入り口などを利用して移動することがあるが、マイアミのステージではこういった緻密な描写に感心させられた。しかもマイアミではもう1つレースに車を提供しているハイテク企業のオフィスビルがあるのだ。こちらの描写もとても細かい。

 そしてこの緻密なマップに多彩なエピソードが盛り込まれている。47はこれらを利用してターゲットに接近していく。マイアミのターゲットはレーサーとしてまさに今レースを展開している「シエラ・ノックス」と、その父であるハイテク企業のCEO「ロバート・ノックス」である。

 彼らは一見殺害が不可能な状況にあるが、“隙”があるのだ。シエラはその高慢な態度からピットクルーを激怒させ1人のクルーがサボっている。また、彼女はスキャンダルをつかまれており、ある男から脅迫されている。ロバートは政府の高官にデモンストレーション予定。また自分の作品には並々ならぬこだわりがあり、開発した展示ブースのレースカーは、些細な変調でも自分が見ないと気が済まない。暗殺不可能と思えるターゲットが見せる小さな隙を的確に突き、47は暗殺を成功させていく。

 47には神業のような暗殺テクニックに加え、服装を変えるだけで様々な職業の特徴を発揮できる特殊能力がある。ピットクルーから警備スタッフ、医療スタッフ、粗野なテロリストから、きちんとした給仕まで、衣装を奪い、身につけることで周囲の人間を完全に欺いてしまう。47はスタッフのロッカールームら衣装を盗んだり、対象を気絶させて衣装を奪い、自由にマップを移動できる。マップ内には警備スタッフや、特別な人物だけが入れる場所もある。47は様々な人物に変装し、ターゲットに迫っていく。

マイアミでのターゲットは2人、レーサーとしてコースを駆け回っている「シエラ・ノックス」と、厳重な警備が敷かれているハイテクビルの中にいる「ロバート・ノックス」
暗殺の糸口となる「ミッションストーリー」。ターゲット達は手順を踏むと行動を変える。その中で彼らが抱えている問題や、計画が明らかになり、ターゲットのドラマが描かれていく。そしてそれは、暗殺のチャンスに繋がっていくのだ

 本作はある意味難易度が高めのゲームである。アクションやシングルプレイFPSのように目の前の事柄に対応するだけではクリアできない。華麗な暗殺を成し遂げるためには後述するシステムを使いこなし、かつ試行錯誤が必要となる。マップを細かく歩き回り、様々な情報を把握、失敗などをした場合はやり直した方が良い場合がある。

 ゲームはどの段階でもセーブ/ロードができるので、こまめにセーブし、犯行を目撃されて騒ぎになった場合や、準備が足りなかった時など、素直にロードするのが良いだろう。そういった試行錯誤を繰り返して、ゲームを進めていくのだ。

 しかも、本作のステージは1度クリアしたら終わりではない。違うミッションストーリー、さらには新しいアイテムを持ち込んでもっとドラマチックな暗殺にチャレンジしても良いのだ。劇的な暗殺を目指し、創意工夫し、やりこんでいく。詰め将棋のような戦略性と、自分の思いつきがうまくいったときの爽快感はたまらないものがある。噛めば噛むほど味が出る、新たな発見がある、実に味わい深いゲームなのである。

47は服を変えることで周囲の人間を欺ける。様々な人物に成り代わり、ターゲットのすぐそばまで接近していくのだ

ミッションストーリーを軸に、ステルス、変装、アクション、あらゆるテクニックを使いこなせ

 実際のゲームシステムに触れていこう。本作の基本はアクションゲームである。プレーヤーは3人称視点で47を操作し、マップを進んでいく。「インスティンクト(直感)」という能力を使うと画面の色が変わり、役に立つものやターゲットがピックアップされる。プレーヤーはインスティンクトをヒントに暗殺の準備を進めていく。

 暗殺は難しい。ターゲットは建物の中にいる場合が多く、大概ボディガードを連れており、近づくことすら難しい。そこでヒントとなるのが「ミッションストーリー」というシステムである。「実はターゲットはお忍びで買い食いをする」、「ターゲットは小型の潜水艇の開発を待っている」など、1人のターゲットにいくつかのストーリーが用意されており、決められたチェックポイントをクリアすることで、ターゲットが47の前に無防備な姿をさらすのだ。

インスティンクト。アクセス可能なオブジェクト、こちらの変装を見破る人物などがピックアップされる。壁を透かしてターゲットの位置も探知可能だ
ミッションストーリーはプレイを進める大きな指針となる。このストーリーを足がかりに、さらなる暗殺を目指していくのだ

 しかし、もちろんこのチェックポイントを通過することも難しい。まずマップには侵入するためのルートの確保が必須となる。建物に入るにはそこで働いているスタッフ、庭師や警備員、ボディーガードといった人物に成り代わるのが最も自然に侵入できる方法である。彼らに成り代わるには1人でいる人を探し出し、誰にも見つからない状態で気絶させ、服を奪うことができればベストだ。マップ上にはクローゼットや大型のゴミ箱などがあるので、これらに気絶した人を入れておけばミッション中は絶対に発見されない。

 成り代わりやすいターゲットを見つけるにも観察と細かい調査が必要だ。そして現場の調査は細かくすることで他のアイテムも入手していく。ドアを開けるための鍵やカードキー、鍵を壊すためのバール、食べ物や飲み物に混ぜることで嘔吐反応を促し、ターゲットを無理矢理移動させることができる殺鼠剤、コードをむき出しにさせ相手を感電させることが可能なドライバー、ガス管やドラム缶を開け大爆発させる準備ができるレンチ……。

 アイテムを入手するほど47の暗殺の幅は広がっていく。このため、ミッションストーリーを進める前に、色々マップを歩き回って役立つアイテムや情報を集めておくことで、より幅広い状況に対応できるようになる。成り代わりやすい人間はどこにいるか、アイテムはどこに置いてあるか、壁の壊れたところや、パイプを伝って移動できる場所はあるか……それらの得た知見が、1つのミッションストーリーだけでなく、別のストーリー、ターゲット、そして逃走経路までも繋がっていくのだ。

どこに何があるか、把握することで暗殺の成功率は上がっていく
建物の外を移動することで人に見つからず移動できる
気絶させた相手は、隠すことで誰にも見つからなくなる
毒や殺鼠剤を入手していれば、食べ物の中に仕込める
今作で追加された物陰に隠れるシステム。人混みの中にも隠れることができる

 最初のプレイでいきなり成功する場合もあるが、突破口が開けない場合もある。ミッションストーリーはチェックポイントを提示するだけでそれを実行できるかはプレーヤーの腕と経験にかかっているからだ。例えば服を奪おうとして目撃者に見られた場合、その目撃者を黙らせるために行動したり、時には戦闘状態に発展してしまう場合もある。

 逃げ切るのも手だが、素直に直前の状況からやり直すのがいい。本作は難易度で最高級の「マスター」でなければいつでもセーブ/ロードが可能だ。本作がシリーズ初挑戦という人は、NPCの反応が少ない「カジュアル」を選んでコツを掴むのも良いだろう。うまくいかない場合は最初から始めて今回の知見を次に活かすのだ。

 そして、試行錯誤で何とかターゲットを倒し、暗殺を成功させると難解なパズルを解いたような満足感が得られるだろう。しかし、そこが「ヒットマン2」の本当の楽しさの始まりなのである。伝説の暗殺者47の名にふさわしい暗殺とはどのようなものか? まるで道具や人があらかじめそう動くのを知っているかのように行動し、暗殺の準備を進めていく47。そしてターゲットは全ての行動を予測され、まるでまな板の上の鯉のように、47の手が下される時を待つだけの存在となる。スマートで無駄のない、神業のような暗殺が可能となるのである。

 もちろん他のミッションストーリーを選ぶことでアプローチは大きく変わってくる。別な用意が必要となるし、ターゲットの状況も異なる。しかし回数を重ねることでプレーヤーはより幅広い状況に対応できるようになる。別のミッションストーリーを選ぶことで、ターゲットの別の一面が見えたりターゲットの人物像をさらに深く知ることができるのも面白い。意外な趣味があったり、実は気さくだったり、よりユニークな個性が見えてくる。……それでも眉一つ動かさず対象を暗殺する47だが、プレーヤーの気持ちは変わってくるだろう。

車に細工したり、栄養剤に毒を混ぜたり、様々な方法でシエラを暗殺。ミッションストーリーを進めることで決定的なチャンスにたどり着ける

 そしてミッションを成功させるとロケーションごとのポイントが得られ、より多彩なアプローチが可能となるのだ。隠れ家に様々な道具が持ち込めたり、スタート地点を変えられる。これらを利用しターゲットとの距離をショートカットしたり、スナイパーライフルやリモコン爆弾などを使った暗殺も可能となる。

 今回、特にピックアップされているのが「ブリーフケース」。ここに武器を隠し、持ち運ぶことで見つかることなく暗殺ができる。また敵を気絶させる武器としても使用可能だ。今回はレースを走るシエラを狙い、このケースでスナイパーライフルを運んでみた。地下駐車場にケースを運ばせ、エンジニアに化けケースを運び、撮影台から狙撃を行なった。銃声は察知されたものの、見事射撃は成功した。

 もう1つ、コロラドでもスナイパーライフルを使ってみたのだが、ここは狙撃ポイントが難しい。目撃者が多かったり、ターゲットが狙撃ポイントに来にくいのだ。またちゃんと急所を狙わなければ仕留められない。アプローチを成功させるためにはどうするか、こういった研究をしていくのもとても楽しい。

暗殺を成功させると評価画面に。スコアやチャレンジに応じて様々な要素がアンロックされていく
ブリーフケースにスナイパーライフルを隠して持ち運び、走っているシエラを狙う

世界の様々な場所を巡り暗殺を実行、地域の特性を見極めるために、まず歩き回れ

 今回のステージにもう少し踏み込んで紹介していこう。「ヒットマン2」に関してはチュートリアル要素が強い「ホークスベイ」はファーストインプレッションで触れているので参考にして欲しい。次のマイアミは、E3や東京ゲームショウの取材で触っていたこともあり、筆者は最初から非常にスムーズに楽しめた。人通りが少ない場所や、気絶した人を隠す場所も豊富に用意されているため、初心者にもオススメのステージだ。

 今回のレビューにあたり、筆者がやりこんだステージはコロンビアの「サンタ・フォルチューナ」である。どこにでもあるような南米の小さな街、小さなホテルと、バーが1軒、小さな市場……しかしここは麻薬カルテルの本拠地なのだ。街のそばにはギャングに守られた麻薬カルテルのボスの豪邸があり、その向こうには銃を構えた男達に見張られた麻薬工場がある。ターゲットは3人。麻薬カルテルのボス「リコ・デルガルド」、コカインを開発する科学者「ホルヘ・フランコ」、麻薬ビジネスを取り仕切る「アンドレア・マルチネス」。

 このステージはかなり難しいのだ。まず3人は全く別な場所にいて、3人を守る兵士達もそれぞれ違う。彼らは2人で行動することが多く隙を見せない。そして最大の“敵”となるのが、実は街の住人達なのだ。南米の田舎町らしく住人はのどかで椅子に座っていたり、立ち話をしているのだが、どこにでもいるのである。兵士達を襲って彼らに成り代わりたくても、目撃した住人達が騒ぎ出し、ばれてしまうのだ。そして各ターゲットを暗殺するためにも成り変わらなくてはいけない。

サンタ・フォルチューナは、南米の田舎町だが……
麻薬カルテルのボスの邸宅や、コカインの生産工場がある。もちろん守りは厳重だ

 そのかわり、街中は初期の観光客の姿でかなり自由に動ける。物も無造作に置いてあり、バールやドライバーなども見つける事ができる。筆者のように本作シリーズのプレーヤーならば、工事中の壁や、壁が崩れている場所など侵入するポイントも見つけられるだろう。さらにコカイン農場は丈の高いコカの木が47を覆い隠してくれる。うまくルートを見つければ、敵に見つからずに農場を歩き回れる。

 さらにストーリーミッションが面白い。「サンタ・フォルチューナ」では47がヒッピーや、街の外れに住む怪しげなシャーマンになったりするのである。47の面白いところはその役割を完璧に演じられること。ヒッピーをからかう麻薬工場のスタッフの軽口にヒッピーらしく脳天気に答えたり、シャーマンとして怪しげな祈祷の儀式も完璧にこなす。寡黙で冷徹な暗殺者という47の素顔を知っているからこそ、彼の変装の見事ぶりがおかしくてしょうがない。他のステージももちろん面白いが、「サンタ・フォルチューナ」は特に楽しいステージだった。

ヒッピーや怪しげなシャーマンなど、47のユニークな変装も楽しい

 そして次のステージのインドの「ムンバイ」だが、驚くべき事に3人目のターゲットが「正体不明」なのだ。47はこの誰かもわからない謎に包まれたターゲットを探しだし、暗殺しなくてはならない。ムンバイのミッションのタイトルは「雲を掴むような話」というまさにぴったりなものだ。そしてこのステージのミッションストーリーには、47とは別の暗殺者も登場する。彼と47がどんなドラマを展開するか、楽しみにして欲しい。

インドのムンバイでは、同業の暗殺者の姿も……

オンラインで広がる世界! 今作では暗殺の腕を競える「ゴーストモード」も

 「ヒットマン2」にはさらにいくつかのステージが用意されている上に、さらなる楽しさがある。1つはおなじみとなった「コントラクト」モード。こちらは既存のステージで世界中のプレーヤーがユニークな暗殺をする方法を解き明かしていくモード。出題プレーヤーはまずゲーム内で実際にターゲットをとても凝った方法で暗殺する。ユニークな武器を使ったり、その場では侵入不可能な服装で暗殺を行ない、「こういう暗殺ができるかい?」と挑戦するのだ。

 この暗殺ターゲットはミッションストーリーを進めていては気が付かないような人物であることも多い。ゲームをとことんまでやりこみ、マップや条件を把握しなくては実現できないような問題ばかりである。彼らの出題を見事解き明かし、自分も凝った問題を作る、このコントラクトモードは、本作の「究極の遊び方」といえるものだろう。

 そして「ヒットマン2」では新しい遊びが提示された。1つは「スナイパーアサシンモード」。これは遠隔狙撃に特化したゲームモードで、ターゲットに気づかれないようにスナイプする。例えば撃って水に落として死体を見つからないようにするなど狙撃のチャンスが課題となる。ターゲット以外にも暗殺すべき敵がいて、オンライン協力プレイでスコアを競う事が可能だ。

本編とは別に、たっぷり狙撃が楽しめる「スナイパーアサシン」。盛大な結婚式が行なわれる会場が舞台となる。オンラインの協力プレイも可能

 もう1つ、今回の目玉と言える「ゴーストモード」がある。対戦相手と同時にステージに降り立ち、どちらがより速く、正確にターゲットを暗殺するかを競うのだ。これはぜひ発売後に体験してみたいモードである。筆者はじっくり派なので勝てそうにないが、それでも他のプレーヤーがどのように暗殺をしていくか興味がある。どのような世界が広がるのだろうか?

 そして発売直前に、「ワールド・オブ・アサシネーション」という要素が発表された。前作「ヒットマン」を持っているプレーヤーは、「ヒットマン2」のシステムで前作のステージをプレイできるのである(PS4版は今後対応予定)。前作のステージでも新しいAIや物陰に隠れる能力が使え、しかも今後のアップデートにも対応するというのだ。前作を持っていないユーザーにも今後有料配信が予定されている。まず、「ヒットマン2」を触ってみて、それから前作のステージを遊ぶのも良いだろう。これからさらに「ヒットマン2」は発展していくのである!

【ゴースト・モード トレーラー】

【ワールド・オブ・アサシネーション トレーラー】

 筆者は、この「ヒットマン」シリーズが大好きだ。熱を入れてプレイしたのは異色作である「ヒットマンコントラクト」、そして前作「ヒットマン」、今作の「ヒットマン2」と3作であるが、ステージを把握し、相手の行動を読み切り、不可能を可能にする47の暗殺を体験できる本シリーズをとても気に入っている。

 他のアクションゲームと比べると偶然や瞬間的なプレイテクニックで押し切れる場面が少ないし、本作ならではのルールを覚える必要があったり、敷居が高い部分もある。何より暗殺という暗いテーマなため、人を選ぶ部分もあるかもしれない。しかし、この戦略性、ドラマ性はぜひ体験して欲しい。

 そして何より、本作のストーリーテリングがいいのだ。他のゲームの様に、ムービーや主要キャラクター達のやりとりでストーリーを語るのではなく、時間軸に沿って描かれる人物達が織りなすドラマを、47という“部外者”が情報を集め読み解いていくのが良いのだ。ターゲットは様々な人生のドラマを抱えており、それらに振り回されていく。47はその人物のドラマに隙を見つけ、暗殺を実行していく。ターゲットだけでなく、観光客や、ビルの中の従業員など、本編に全く関係ない人物の物語も断片的に描かれている。

 世の中の皆が日常を歩んでいる中、47だけはそれらから独立した存在として、人々に気づかれずその脇を通り抜け、ターゲットに死をもたらしていく……。本作ならではの物語、世界観に触れてもらいたい。とてもユニークで、面白いゲームである。

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