「Wolfenstein II: The New Colossus」レビュー

Wolfenstein II: The New Colossus

これぞFPS、敵を撃ち倒す爽快感に酔え! 邪悪なナチスに不死身の男が立ち向かう

ジャンル:
  • FPS
発売元:
  • ベセスダ・ソフトワークス
開発元:
  • MachineGames
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
7,980円(税別)
発売日:
2017年11月23日

 「Wolfenstein II: The New Colossus(以下、「Wolfenstein II」)」は、FPSの楽しみの1つである、「とにかく撃ちまくりたい」という楽しさが前面に出た作品だ。片手にマシンガン、もう一方にショットガンを持ち、並み居る敵をガンガンぶっ飛ばす。いかにダメージを受けずその攻撃力を最大限に活かすかを考えて動き、撃ちまくる、そういう楽しさを満喫したい、極めたい、という人にぴったりのゲームである。

 本作は謎の超文明の技術を駆使し、世界を支配しているナチスが敵となる。その支配は苛烈であり、物語のトーンは全体的に暗いものがある。しかしその独特の世界観はプレーヤーを引き込む。そして、ナチスに立ち向かうレジスタンスのドロドロした怒りとパワー、そして根底に流れるブラックなユーモアのセンスは独特の味わいがある。この奇妙でエネルギッシュな魅力を持った作品を紹介していこう。

【Launch Trailer - Wolfenstein II: The New Colossus】

邪悪なナチスに支配されるアメリカで、ブラスコビッチが立ち上がる!

 「Wolfenstein II」は、前作のエンディング直後からストーリーが始まる。本作はもちろん前作をプレイしなくてもプレイできるし、ダイジェスト映像が流れるのでキャラクターはの関係などもわかる。詳しく知りたい人は、前作のレビューを参照して欲しい。

主人公ブラスコビッチ。過酷な運命を戦い抜いていく
両手に武器を構えるデュアル装備で相手を蜂の巣にしていく
本作のヒロインと言える「フラウ・エンゲル」。キレた感じがすごい
ブラスコビッチの過去も描かれる

 主人公B.J.ブラスコビッチは宿敵であるデスヘッドをついに倒したが、そのときに腹部に重傷を負ってしまう。彼は失血死寸前に仲間に助け出されアジトとなる巨大潜水艦に収納され一命を取り留める。彼が再び意識を取り戻したのは銃声のためだった。巨大潜水艦がナチスの飛行要塞の襲撃を受けていたのだ。下半身の動かないブラスコビッチは車椅子に乗りながら銃を片手に戦いを再開する……。

 そう、戦いは終わっていなかったのだ。ナチスは世界に密かに伝わっていた謎の先史文明を解析し、超技術で世界を支配していた。ブラスコビッチ達レジスタンスは数が少なく動きもバラバラで、世界は未だナチスの支配下にあった。レジスタンスが目指すはアメリカ。マンハッタンを皮切りにニューメキシコ、ニューオリンズと現地のレジスタンスと合流し、戦いを繰り広げていくこととなる。

 「Wolfenstein II」は“正当派”といえるFPSである。「目の前の敵を撃ち倒せ」というのがメインテーマとして大きく掲げられている。プレーヤーはブラスコビッチとなり様々な戦場を銃で突破していく。本作の大きな特徴が「デュアル装備」だ。両手に銃を持って敵に銃撃を与えることができる。一方で敵の攻撃には打たれ弱いところがある。隠れてチマチマ戦うのではなく、引き金を引きながら前進し、回復アイテムを取りながら敵が1人もいなくなるまで撃ち続けるその戦いは、大きな爽快感と高揚感をもたらしてくれる。

 一方で、ブラスコビッチの戦いは過酷だ。下半身が動かない彼がいかにして再び立ち上がるか、そして物語の中盤彼は衝撃の運命に直面することになる。本作ではブラスコビッチの過去も描かれる。その過去もシリアスであり、思わず「何もそこまで戦い続けなくても……」と同情したくなるほど、ブラスコビッチの生き様はキツイ。本作はキャラクター描写にエグイ部分があり、思わず目を背けたくなる陰惨なシーンもある。しかしそれが戦いのエネルギーへと変わっていくのだ。静かで寡黙な男・ブラスコビッチが秘めているその怒りがゲームの“勢い”に昇華されるのをプレイしていて実感できるだろう。

 そして、「Wolfenstein II」での大きな見所の1つがナチスの女幹部「フラウ・エンゲル」だ。彼女は前作でも印象的な、ナチスの幹部がいかに人を見下し、弱いものをもてあそぶかを印象づけた人物だった。前作でエンゲルはブラスコビッチに重傷を負わされるのだが、それが彼女のタガを外してしまったのか、さらなる狂気でブラスコビッチを追い詰めていく。序盤のブラスコビッチを捉えたときの彼女の喜びぶりが超ヤバイ。

 敵をいたぶる残酷な口ぶり、自分の言葉にさらに狂気を募らせていく様子、そして見せる行動の異常さ……。「Wolfenstein II」はキャラクターとしての悪の象徴を彼女に集約しており、前作をプレイしていない人でも彼女に憎しみを抱くのはとてもたやすい。ナチスの“悪”を象徴する人物として、本作の“真のヒロイン”と言うべき人物である。

 他にも、ブラスコビッチの恋人であるアーニャは双子を妊娠していながら最前線に突撃するし、アフロヘアのレジスタンスリーダー・グレースはその過激で攻撃的な言葉遣いが印象的な黒人女性。熱く語ってるときの血走った目がとても危険な感じだ。レジスタンスに協力を決意するエンゲルの娘も印象的である。「Wolfenstein II」は特に女性キャラクターに注目して欲しい。

【スクリーンショット】
ブラスコビッチを支えるアーニャ
グレースはタフな女性だ
車椅子に乗ってのスタート。傷だらけになってもブラスコビッチの戦いは終わらない
戦いは核爆弾が落とされたマンハッタンへ

ステルスがばれたら正面突破! 強力な火器を自在に使いこなせ

 次に、「Wolfenstein II」のゲーム性を掘り下げていきたい。本作はプレイスタイルとして「戦略的な戦い」、「ステルス」、「正面突破」の3つがある。どれもガチガチに決まっているものではなく、「ステルスで進み、ばれたら正面突破だ!」というように、状況に応じて変化する……初見プレイだと、結局力ずくの正面突破になってしまうことが多いが。

様々な武器を手に戦っていく
ヘビーウェポンを活用すると戦いを有利に進められる
アップグレードしていくことで武器は強力に
木箱には様々なアイテムが隠されている

 「Wolfenstein II」では、多彩な武器が登場する。マシーネンピストーレ(サブマシンガン)、アサルトライフル、ショックハンマー(ショットガン)、カンプピストーレ(フレアガン)。さらに最初に選択するメンバーによって変わる2種類の武器「レーザークラフトワーク」と、「ディーゼルクラフトワーク」が用意されている。これらをデュアル装備で両手に持ち、ガンガン撃ち倒していくのだ。

 デュアル装備で気をつけたいのが「リロードのタイミング」である。気持ちよく撃ち続けていると弾を撃ちつくしリロードをしなくてはいけなくなる。この時は当然ながら無防備だ。リロード時にはもう片方の銃も撃てなくなる上、右と左のリロードで隙も大きくなる。壁際に隠れてリロードしながら戦っていくこととなる。

 武器はマップ内にあるアップグレードキットで強化できる。装弾数を増すのと、威力を増加させるアップグレードがオススメである。強化した武器で戦うのは非常に爽快だ。また、通常の敵にはアサルトライフルとショットガン、スーパーソルジャーが出てきたらレーザークラフトワークに持ち替えるなど臨機応変に対応するのが楽しい。

 ただし、「Wolfenstein II」はかなり歯ごたえのあるFPSである。アーマーは敵の攻撃が当たるとみるみるうちに減っていくし、HPの自動回復は上限まで行かず、一瞬前までほぼ満タンだったはずなのにあっという間に倒されるということも少なくない。敵はこちらを取り囲んで死角から攻撃してくるので、死角の少ない場所で周りに注意を払いながら戦うのが有効だ。敵を撃ったときの装甲の破片でアーマーを回復し、回復アイテムを積極的に回収しつつ戦っていく。

 マップ上に設置されていたり、スーパーソルジャーが持っている「ヘビーウェポン」も強力な武器だ。耐久力の高いスーパーソルジャー相手にはこのヘビーウェポンで立ち向かうのが有効だし、倒せば新たなヘビーウェポンが入手できる。筆者はこのヘビーウェポンをいかに長く使うかを考えてプレイした。ヘビーウェポンはその高い攻撃力で無敵気分を満喫できる。一方で移動スピードが遅くなるので近づかれると危険だ。手にしたら敵の素早い殲滅を心がけたいところだ。

 敵が強いな、と感じる人には難易度を下げたプレイもオススメだ。今回はノーマルで挑戦して何とかクリアしたが、1番易しい難易度ベリーイージーにしたところ、敵から攻撃を食らってもアーマーが少ししか減らず、無敵気分を満喫できた。ストーリーを楽しみたい人や、FPS初心者だったり、苦手意識のある人は、難易度を下げてプレイするのも良いかもしれない。本作ならではの「撃つ楽しさ」をしっかり味わうことで、新しい楽しさを見つける事ができるだろう。本作のベリーイージーモードは「FPS入門作」としてオススメである。

【スクリーンショット】
アサルトライフル、ショックハンマー、レーザークラフトワーク……多彩な武器で戦っていく
ステルスで進むのも戦い方の1つだ

独特な世界観、そして何より「戦いの感触」が魅力。たっぷり楽しめるボリュームも!

 マンハッタン、ニューメキシコ、ニューオリンズとブラスコビッチの戦いは続いていく。ステージにはあの“ロズウェル”すら登場するのだ。UFOの噂で名高い街ロズウェル。本作でももちろん鍵十字をつけたUFOが登場し、筆者のようなUFOファンをニヤリとさせてくれる。

ロズウェルでは戦勝記念のカーニバルに遭遇する
様々なところで手に入る資料。物語の背景がより詳しくわかる
各地で収集物が入手できる

 本作の大きな魅力として世界観がある。その“雰囲気”を象徴する場面としてはこのロズウェルの街のパレードがある。アメリカを完全に支配したナチス。街はその勝利を祝うパレードが行なわれている。これまでの戦場となった地と大きく違う華やかな雰囲気。空は祭りに華を添える戦闘機が煙を引いて飛び去っていく。

 しかし、そこには冷たく厳しいナチスの支配がある。明るく楽しい屋台にもナチスのパンフレットが置かれ、鉄の鎧に身を包んだ兵士達が通りを監視し、怪しい人物を見かければ容赦なく発砲してくる。そしてダイナーにストロベリーミルクセーキを食べに来る士官の勝ち誇った態度……“支配されている”事を痛感させられる場面だ。

 他にも、ガソリンスタンドに車体全体がタイヤとなったバイクがあったり、本作でのナチスがどのような存在かをしっかり見れるのも興味深い。「ディストピア」という表現がぴったりな、独特のリアル感が感じられる世界描写は、本当に楽しい。他の場面では、ナチスといえば欠かせない“あの人”も登場するので、楽しみにして欲しい。

 「Wolfenstein II」では筆者はノーマルでじっくりプレイして20時間ほどでクリアした。うまいプレーヤーはもっと短くできると思うが、クリアしたとしてもアメリカ全土を開放するための「エニグマコード」と、クリアしたマップでナチスの幹部達を倒すやりこみ要素がたっぷり残っている。高難易度に挑戦するのも良いし、やりこみ要素はたっぷりとある。

 くり返しになるが本作は「戦う感触」が楽しい。サブミッションを含め徹底的にやりこむのも良いし、難易度を変えて挑戦するのも楽しいだろう。数で上回り、こちらを取り囲む敵にどう立ち向かうか? ステルスにこだわるのも良いし、武器を変えてみるのもいい、ルートをうまく調整するのも良いだろう。ブラスコビッチは武器のアップグレードと能力の拡張でドンドン強力な存在になり、ルート選択も増える。様々な遊びが可能になるのだ。

 「Wolfenstein II」は独特のストーリーとキャラクターに独特のエグ味と、暗さがある。プレーヤーの好みを選ぶ部分もあるが、あえてマルチプレーヤー機能を持たせず、敵を倒す爽快感と、アイテムによる回復にフォーカスしたルール、大きな火力を発揮できるゲーム性など、開発側が「FPSの楽しさ」を真摯に研究し、作り出したゲームである。「隠れるんじゃなくて、バリバリ撃ちたい」というFPSファンにぜひ遊んで欲しい。

 「Wolfenstein II」は早くもDLC情報が公開されている。現在3つのDLCが予定されており、ブラスコビッチとは別にアメリカの解放を目指す英雄達にスポットが当たるという。こちらではどのような体験ができるか、注目したいところだ。

【スクリーンショット】
ナチスに占領されたアメリカの生活が垣間見える
アジトとなる潜水艦では仲間の日常を見ることができる
ブラスコビッチの過酷な戦いは続いていく
収集物や、アップグレードなど、収集物やサブミッションなど、本作はやりこみ要素がたっぷりだ
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