「アサシン クリード オリジンズ」レビュー

アサシン クリード オリジンズ

オープンワールドARPGに生まれ変わった新たな原点

ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
  • ユービーアイソフト
開発元:
  • ユービーアイソフト
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • Windows PC
価格:
8,400円(税別)
発売日:
2017年10月27日

 10月27日に、ユービーアイソフトのプレイステーション 4/Xbox One/Windows用アクションRPG「アサシン クリード オリジンズ」がいよいよ発売された。

 これまでのシリーズの舞台は、新作ほど次第に現代へと近づいていたが、10周年を飾る記念碑的なタイトルでもある本作では産業革命の時代から一気に2千年ほど遡り、紀元前48年ごろのプトレマイオス朝エジプトが舞台となっている。

 今回は、PS4版で一足早くプレイすることができたので、ネタバレにならない範囲でのストーリーや、RPG風の成長要素が入ったバトルシステム、初めて盾という概念が追加された本作ならではの闘い方などを紹介したい。

困ったことは何でもバエクに相談しておけば大丈夫!

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 「アサシン クリード オリジンズ」の主人公バエク
「アサシン クリード オリジンズ」の主人公バエク
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー オープニングのカットシーンでアヤと息子とでプトレマイオスを出迎える
オープニングのカットシーンでアヤと息子とでプトレマイオスを出迎える

 まずはなにより主人公バエクについて語りたい。バエクはエジプトの西の辺境にあるシワという小さなオアシスで、街の平和と安全を守るメジャイという役職についている。

 ゲームは、プトレマイオス王がシワを訪れるパレードから幕を開ける。バエクは妻のアヤと一人息子のケムと一緒にそのパレードを見物している。その満ち足りた表情から、今の幸せが伝わってくる。

 だが、王の背後に怪しげな仮面の男たちが見えた瞬間、風景は一転。1年後、髪もヒゲもボウボウのバエクが、怒りを露わに「サギ」という別称を持つ男ルジャイを殺害するシーンへと急展開する。

 仮面の男たちに息子のケムを殺され、バエクはその復讐のために男たちの正体を調べている。ルジャイはようやく見つけた1人目の犯人で、序盤は彼の復讐を縦軸に進んでいく。

 そう書くと、同じく復讐譚だった「アサシン クリード 2」や「ウオッチドッグス」などを想像するかもしれないが、本作はこれらの作品とは少し雰囲気が違う。復讐の鬼と化しているバエクではあるが、だからといって世間に背を向けているわけでも、正体を隠して闇に潜伏しているわけでもなく、相変わらず地元の有名人だ。街の人はみんなバエクを知っており、バエクも街の人を良く知っている。

 バエク自身も、普段は特に暗い所もなく、ジョークをいって友達と和気あいあい過ごしたり、妻のアヤと濃密な時間を過ごしたりと、それなりに日々の生活も充実している。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー オープニングのカットシーンで激しい怒りを見せるバエク。髪もヒゲも延びていて、1年間の苦しみがしのばれる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー オープニングのカットシーンで激しい怒りを見せるバエク。髪もヒゲも延びていて、1年間の苦しみがしのばれる
オープニングのカットシーンで激しい怒りを見せるバエク。髪もヒゲも延びていて、1年間の苦しみがしのばれる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー チュートリアルを兼ねたルジャイの部下との戦闘。基本的な戦い方を練習できる
チュートリアルを兼ねたルジャイの部下との戦闘。基本的な戦い方を練習できる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 息子ケムとの思い出もカットシーンやクエストとして描かれる
息子ケムとの思い出もカットシーンやクエストとして描かれる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー イーグルダイブにつながるような試練は、バエクの一族に伝わるもののようだ
イーグルダイブにつながるような試練は、バエクの一族に伝わるもののようだ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 謎の仮面の男たちに捕らえられるバエクとケム
謎の仮面の男たちに捕らえられるバエクとケム

 また、スタート地点のシワで受けるサブクエストは、子どもたちとのかくれんぼだったり、バザールでおかしな商品を売る業者の調査だったり、村の鍛冶工のために道具を取り戻しに行ったりと、お助けマン的なものが多い。メジャイなら助けてくれるよね、と期待を寄せるエジプトの人々の依頼を「よしわかった! 俺に任せろ」と二つ返事で引き受けるバエクは、頼れる地域のお兄さんという感じだ。

 ちなみにバエクの妻アヤは、美人で知的、意思と行動力を備えたパーフェクトウーマン。陰に日向にバエクを支えつつ、自らも歴史の重要シーンに切り込んでいく第2の主役だ。実際プレーヤーがアヤを操作するシーンもあり、バエクだけでは見ることができないこの時代の大きなうねりを感じることができる。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー バエクの故郷、シワの街
バエクの故郷、シワの街
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 街中の人たちはみなバエクに親切にしてくれる
街中の人たちはみなバエクに親切にしてくれる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 序盤のクエストは街中の困りごとを解決するようなものが多い
序盤のクエストは街中の困りごとを解決するようなものが多い
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 街を歩いていると声をかけてくる人も
街を歩いていると声をかけてくる人も

RPG的な成長システムでキャラクターを強化

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 装具画面
装具画面
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー アビリティの設定画面
アビリティの設定画面
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 近接武器の選択画面
近接武器の選択画面
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 遠隔武器の選択画面
遠隔武器の選択画面

 「アサシン クリード」シリーズはアクションゲームだが、本作はオープンワールドRPGのような作りになっている。キャラクターを強くするには、RPGのように経験値を溜めてレベルを上げていく。

 経験値は、敵を倒したり、クエストをクリアしたり、新エリアに入ったりといった様々なプレイの中で獲得できる。レベルアップすると基本ステータスが上昇し、アビリティポイントを獲得できる。このポイントを使って、様々なアビリティを覚えていく。

 アビリティは「ウォリアー」、「ハンター」、「予言者」という3つのツリーに分かれている。「ウォリアー」はアドレナリンメーターというゲージを消費する強力な技の発動や近接系の武器の能力に関係している。「ハンター」は弓の能力とアイテムや経験値獲得ボーナス、「預言者」は爆弾や煙幕といった道具の使用や、ワンボタンで時間を進めたり、動物を手懐けたり、戦車を使ったりという特殊なスキル利用を可能にする。どのツリーを覚えていくかは自由に決めることができる。

 装具は店売り、敵や宝箱からのドロップで手に入れることができる。装備部位には、飛び道具、近接武器、盾、道具のほか、おなじみのヒドゥンブレード、矢筒、グローブ、ブレーサー(籠手)、胸当て、道具袋がある。グローブは弓の性能、ブレーサーは近接武器の性能を向上させ、胸当ては最大HPを増加させる。

 武器と盾にはノーマル、レア、レジェンドといったレアリティがあり、レア度が高いほど特殊効果が沢山つく。例えばレジェンド弓「ジャッカルの眼」には「命中精度」、「出血攻撃」、「ライフ回復」という3つの追加効果が付いている。

 だが、せっかくレア度の高い武器を入手してもレベルが合わなくなると使えなくなる。そんな時には、鍛冶工で装備品をアップグレードすることで、そのときのレベルに合わせた性能に引き上げてくれる。

 それ以外の装備品は、製作によって性能を上げることができる。製作に使う素材は、狩りやドロップで入手するほか、部屋に置かれたツボや麻袋の中から見つかることもある。さらに難易度が高い手段として、物資を移送しているローマ兵を襲って奪い取るという手もある。ただし、かなり強い。

 クエストを進めていく中で、どうしても勝てないボスと遭遇した時には、一旦レベル上げをしてから再戦するのはRPGのお約束だが、本作でも中盤以降頻繁にそういった機会が訪れる。自分がレベル18で、敵が22くらいだと、痛めの攻撃で即死もあり得るため、一旦クエストは横に置いて、ガゼルやワニを地道に狩って素材を集める。

 「アサシン クリード 3」にも狩猟クラブがあったが、「オリジンズ」の狩猟はチャレンジ要素ではなく、RPGでいうところの経験値を貯めるための「狩り」に近い意味合いを持つ、成長要素と密接にかかわったコンテンツとなっている。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 「織工」では強さには関係ないが、キャラクターの見た目を変えることができる衣装を売っている
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 「織工」では強さには関係ないが、キャラクターの見た目を変えることができる衣装を売っている
「織工」では強さには関係ないが、キャラクターの見た目を変えることができる衣装を売っている
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 「鍛冶工」では矢や道具の補充、武器のアップグレードが可能
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 「鍛冶工」では矢や道具の補充、武器のアップグレードが可能
「鍛冶工」では矢や道具の補充、武器のアップグレードが可能

狩るか狩られるか、野生動物たちとの生存競争

 これまで掲載されてきた試遊レポートでも、カバに襲われたとかワニに襲われたという報告があったが、「オリジンズ」の野生動物は人間の叡智が及ばない存在として暴れまわる。

 ミッションの中で、川を移動したり、時には潜ったりすることがあるが、そんなに時にはカバやワニに要注意だ。不用意に川沿いを移動したりしていると、不意に襲い掛かってくることもある。

 アレクサンドリアで、ワニに囲まれた商人を助けるというクエストをこなした時には、島に取り残された男を迎えに行くために葦舟を漕いで行くのだが、考えなしに近づくとワニが船を攻撃してきた。大きな船なので大丈夫だろうと思っていたら、2度、3度と体当たりされているうちに、船が嫌な音できしみはじめ、マストが折れて沈没し始めてしまった。水中で襲われると、人間に勝ち目はない。

 また、盗賊の砦に囚われた男を救出に行ったときには、檻に囚われていたライオンを放して盗賊を襲わせたりもした。たいした武器を持っていない状態でハイエナの群れに襲われ、命からがら岩によじ登ったり、弓での狙撃に夢中になってキングコブラを踏んづけて襲われたりと、日々野生動物とのエンカウンターがある。

 よく見ると、物資を運んでいるNPCがライオンやワニに襲われていることもあり、これを救出するミッションもある。またライオンとカバが戦っていたり、ハイエナがガゼルを襲っていたりと、野生動物同士でも日々生存競争が繰り広げられている。

 ほかにも、エジプトの神々のモチーフとなったスカラベやトキ、オシリスを思わせるような細身の犬や、猫など様々な動物が登場する。特に猫については、こうしてバエクを放置したまま原稿を書いたりしている間に、足元に3匹くらい集まってニャーニャ―鳴いている光景をよく見かけた。古代エジプト人は、バステトという女神を生み出すほどの猫好きだったそうなので、それを反映しているのかもしれない。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 人生で1番のスピードで逃げざるを得ないカバ
人生で1番のスピードで逃げざるを得ないカバ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 船が沈んでワニに取り囲まれる。もう無理そう
船が沈んでワニに取り囲まれる。もう無理そう
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 集団で襲ってくるハイエナ。1匹1匹は弱いが怖い相手だ
集団で襲ってくるハイエナ。1匹1匹は弱いが怖い相手だ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー オスライオンも一緒になって襲ってくる
オスライオンも一緒になって襲ってくる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 街中には牛がうろうろしている
街中には牛がうろうろしている
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 水中には魚やヒトデもいる
水中には魚やヒトデもいる

可愛くて頼りになる相棒、セヌ

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 手に止まっている時は愛嬌いっぱいで可愛いセヌ
手に止まっている時は愛嬌いっぱいで可愛いセヌ

 そんな動物天国の「オリジンズ」だが、その中でも特別な一羽がバエクの相棒である鷹のセヌだ。バエクはセヌの眼を通して上空から風景を見ることができる。暗殺のターゲットを見つけるときにも、ガゼルを追いかける時にも、街の鍛冶工を探すときにもセヌが大活躍してくれる。

 十字キーの上を押すと、上空を飛ぶセヌの視点に切り替わる。この視点からは、マップ上の素材入手ポイント、主要な施設、クエストポイント、敵の配置やレベル、NPCの行動などを調べることができる。

 今作からミニマップはなくなくなり、代わりに海外のRPGではよくある方向を示すバーの上に施設やクエストがアイコンで表示されるというUIに変更されている。例えばビューポイントを捜すときには、まずこのバーで大まかな方向を特定した後、セヌを出動させる。上空から見ると、どこにあるのか一目瞭然なので、その場所にマーカーを打ってから視点を戻し、後は移動するだけだ。

 素材を積んだ馬車のように常に場所を移動しているものも、上空から見つけだし、敵の数などを確認してから行動を起こすことができる。ちなみに今作のビューポイントは、高速移動のポイントとセヌの感知精度に関連している。

 クエスト目標地点の近くまで行くと、セヌを出せというシステムメッセージが出る。そのまま突っ込むこともできるが、まずはセヌに上空から偵察してもらい、ターゲットの正確な位置を掴むとともに、弓兵の場所や、敵の人数などを確認すると戦略性が増して攻略がより楽しくなる。

 さらにアビリティを覚えることで、セヌが敵を妨害してくれたり、動物の狩りに参加してくれるようになる。普段はずっと空にいるが、キャラクターを放置していると腕に舞い降りてくる。餌をやったり、のどをなでたりとバエクがかわいがる姿も見ることができるので、ぜひ猫と合わせて放置状態のアクションを楽しんで欲しい。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 十字キー上押しでセヌの視点に切り替え
十字キー上押しでセヌの視点に切り替え
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー イエローのマーカーで示された方角を探索
イエローのマーカーで示された方角を探索
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 目標発見。目標が何をしているかの行動もわかる
目標発見。目標が何をしているかの行動もわかる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 目標以外のNPCもターゲットすれば行動やレベルが分かる
目標以外のNPCもターゲットすれば行動やレベルが分かる
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ナデナデされて嬉しそうなセヌ
ナデナデされて嬉しそうなセヌ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 潜入時には、上から敵を攻撃してかく乱してくれる
潜入時には、上から敵を攻撃してかく乱してくれる

ステルスも激しい立ち回りも可能な戦闘システムは健在

 今作は盾という新たな装備が加わり、戦闘のシステムも見直されている。これまで長らく「□」ボタンで攻撃をしていたが、今作は「R1」ボタンで近接攻撃、「L2」で弓を構えて「R2」で発射。物陰からの攻撃は「△」といった形になった。

 「オリジンズ」では、街中での暗殺というよりは、敵がアジトにしている砦や洞窟などに乗り込んでの殲滅をする機会が多い。そんな今作では草むらに隠れることで、ステルス状態になる。

 たとえば邪魔な門衛をこっそり殺したい時には、壁沿いに生えている雑草に紛れて近づき、軽く口笛を吹いて守衛をおびき寄せて、草むらに引きずり込んで暗殺する。ただし、草むらからの暗殺も敵の正面に踊り出すと殺す前に感知され失敗することがある。口笛を不審に思って近づいてくる敵に気付かれないよう、背後に回り込んで「△」を押せば、華麗な暗殺アクションを披露してくれる。

 近接戦闘は「R1」で通常攻撃、「R2」で強攻撃、「R2」長押しでさらに強い攻撃がでる。遠隔戦闘は「L2」で構えて「R2」で発射。「R2」長押しで攻撃力が増す。防御は「L1」ボタンで盾防御、「○」で回避、「□」でバックステップになる。

 近接武器の種類は、直刀のレギュラーソード、リーチの長い曲刀のシックルソード、短剣を2本持つデュアルソード、ガード崩しが強力なヘビークラブ、敵の間合いの外から攻撃できる槍の5種類と素手の殴り攻撃。遠隔の弓は、「R2」で貯めることで強力な威力を持つ狩人の弓、移動しながらの攻撃に強い軽装の弓、リーチは短いが複数の矢を1度に放って範囲攻撃できる戦士の弓、遠距離からの射撃に向いた捕食者の弓の4種類がある。

 武器はアビリティ開放で各2つずつ装備できるようになり、十字キーで切り替えて使う。筆者のお気に入りは、盾の上から振り下ろして相手を転倒させることができるヘビークラブと、素早く懐に飛び込んで攻撃するデュアルソードの組み合わせだ。戦士の弓は、ショットガン風に使えるため相手がうろうろしている時や、こちらに向かって突進してくるときなどに便利だが、狩人の弓や捕食者の弓でヘッドショット1発で相手を倒すのも楽しい。

 矢は1度に持てる数に上限があるが、敵の見張り台などに結構矢筒が置いてあるので、そこから補給することができる。敵からのドロップで入手したり、敵が撃ってきた矢を盾で受け止めて、それを自分の矢として再利用するというアビリティもある。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 弓を使った攻撃。騎乗したままでも攻撃可能だ
弓を使った攻撃。騎乗したままでも攻撃可能だ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 屋根の上から暗殺のチャンスをうかがう
屋根の上から暗殺のチャンスをうかがう
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 下から掴んで引きずり落とす暗殺方法も健在
下から掴んで引きずり落とす暗殺方法も健在
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 強攻撃をくらうと、一気に体力が減るので、盾のガードと受け流しが重要
強攻撃をくらうと、一気に体力が減るので、盾のガードと受け流しが重要
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 口笛で草むらにおびき寄せて暗殺
口笛で草むらにおびき寄せて暗殺
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 複数の矢を1度に打てる戦士の弓
複数の矢を1度に打てる戦士の弓

援軍を阻止しつつ、なるべく気付かれずに敵を殲滅

 本作の戦闘の流れを、メインクエスト「『スカラベ』のトゲ」の中で攻略する「ピュロスの野営地」の戦闘で紹介したい。このミッションの目的は連れ去られた男を救出するというものだ。

 まずはセヌで上空から偵察する。この偵察で、男が囚われている場所、歩哨の位置などを掴むことができる。まずは草むらに隠れて見張りについている弓兵を暗殺する。次に、入り口を守る歩哨を狙うために、セヌで周囲を偵察。しかしここで、近くにレベル17の隊長がいることに気付く。隊長は盾を持っていて、防御力、HP共に高いうえに、放置すると援軍を呼ぶためのかがり火を付けにいく。このかがり火を焚かれてしまうと、新手が続々と駆け付けてきてしまう。

 その中にもし「警備兵」がいると最悪だ。警備兵はバエクを付け狙う賞金稼ぎで、見つかってしまうと執拗に追いかけてくる。鬼のようなマスクをかぶった見た目通り、けた違いに強く、できれば戦いたくない相手だ。

 弓で狙撃するときに攻撃が他の敵の視界にはいっていると、どんどんリンクして攻撃してくるので、なるべく1人になるタイミングを狙って、じわじわと部下の数を減らしていく。かがり火付近に近づけるようになったら、隊長がすぐに火をつけられないよう罠を仕掛けておくこともできる。そうして、ようやく隊長1人になったところを、ヘビークラブでガードを崩しつつ、セヌの援護攻撃や弓での攻撃も加えつつ倒すことができた。

 書いてしまえばこれだけのことだが、実際は適正レベルより1つ下で挑戦したときには、援軍だらけになって手が付けられなくなり、ほとぼりを冷ますために、しばらくはサイドクエストと動物狩りに精を出した。2つほどレベルを上げてから再挑戦し、そこからさらに何度かの失敗を繰り返しつつの勝利だった。

 「オリジンズ」では難易度設定ができるので、イージーに下げようかとも思ったが、せっかくのレビューなのでと頑張った。しかしおかげで戦い方やセヌとの連携がこのクエストでずいぶん上手くなり、これ以降のクエスト攻略のためにここで頑張っておいてよかったと思えた。

 ミッションポイントは、市街地あり、洞窟あり、神殿や温泉の中など千差万別。アクションゲームが得意な人なら、反射神経と操作だけで敵をなぎ倒すこともできるのかもしれないが、どちらかというとアクションゲームが苦手な筆者は、アビリティが増えるほどに、その場に応じた武器や方法の組み合わせでクリア方法を考える詰将棋のような遊び方が楽しかった。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 恐怖の「警備兵」。こいつに見つかるとヤバイ
恐怖の「警備兵」。こいつに見つかるとヤバイ
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 弓兵がいた櫓を占拠して、上から狙撃
弓兵がいた櫓を占拠して、上から狙撃
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 檻に入っていたライオンを解き放って襲わせる。自分も襲われたが
檻に入っていたライオンを解き放って襲わせる。自分も襲われたが
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 草むらの中での暗殺は基本
草むらの中での暗殺は基本
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ステルス移動でこっそり近づき、背後から暗殺
ステルス移動でこっそり近づき、背後から暗殺
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 隊長の頭に炎のアイコンが付くと、援軍を呼びに行く合図
隊長の頭に炎のアイコンが付くと、援軍を呼びに行く合図
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー かがり火に火をつけられたらおしまい。何とか阻止する
かがり火に火をつけられたらおしまい。何とか阻止する
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ここぞという時のラッシュにはアドレナリンメーターを消費する攻撃を使う
ここぞという時のラッシュにはアドレナリンメーターを消費する攻撃を使う

ゲーム内で海外旅行気分を満喫

 ここまでキャラクターやバトルについて紹介してきたが、本作最大の魅力は細部まで作り込まれた古代エジプトの風景だろう。遥か遠景まで見渡せる広大な自然は、近づくと考証にこだわった緻密な生活感で彩られている。

 バエクの時代には、エジプト文明はすでに3,000年も続いており、スフィンクスやピラミッドなどは、この時代にもすでに遺跡になっている。かと思うと、今では伝説のように語られるアレクサンドリア図書館があるアレクサンドリアなどは、ローマ風の建物が並ぶ瀟洒で壮大な大都市で、紀元前40年代のエジプトにこんな巨大都市があったのかと驚かされる。

 そこに住んでいる人々の描写にも力が入っている。道端で竪琴を弾いている吟遊詩人、馬車の車輪を作る人、木材を切り出している人、鞍を作っている人、パピルス売り、農民、漁師、剣闘士など本当に様々な職業や身分、人種の人が街を行き交っている。「テルマエロマエ」で初めて知った、ローマ時代のあかすり器具がちゃんと浴場で使われているのを見た時には、感動的だった。筆者は古代エジプトもローマもそこまで詳しくないが、きっと知識がある人が見ればさらに感動が深まることだろう。

 水や砂漠の表現も非常にリアルだ。船を使って移動しているときの4K画像などは、ぱっと見写真に見えるほどに美しい。もし4KHDR環境があるなら、本作はぜひともハイクオリティで鮮明な画像で楽しんで欲しい。砂漠を照らす太陽の熱気すら感じるほどの描写力は、VRでもないのに、本当に海外旅行をしたような気分を味わえる。

 今回遊んでみた限りでは、これまでのシリーズを遊んでいなくても特にプレイに困ることはない。むしろ最近の、オープンワールドRPGで遊んでいる人ならば、何の違和感もなく遊ぶことができるのではないだろうか。

 もちろんシリーズのファンが楽しめる要素もたくさんある。特に、見たい人だけ見てねという部分には、過去作を知っていないと意味がわからないようなものもある。そして、今作にもまたアレが登場している。

 本作のメインストーリーは、これまでのシリーズ同様たくさんの伏線や謎が隠されている。無粋なネタバレにならないよう、今回はメインストーリーにはほとんど触れていないが、これぞ「アサクリ」という暗殺後のやり取りや、超常的な力を感じるような不思議な現象にもプレイ中に遭遇できる。

 今後、多数のダウンロードコンテンツと共に、エジプトの歴史をツアー形式で体験できる「ディスカバリーモード」実装される。鬱陶しい敵や野生動物の襲撃に怯えることなく、自由にエジプトの大地を探索できる。

 「アサシン クリード」ファンならずとも、古代エジプトが好きな人や、エジプト旅行に行きたいけど怖いという人も、ナイルが生み出した悠久の風景を本作で体感してみてはどうだろう。

「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 古代の競馬場ヒッポドロームも戦いの舞台として登場する
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 古代の競馬場ヒッポドロームも戦いの舞台として登場する
古代の競馬場ヒッポドロームも戦いの舞台として登場する
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ギザのピラミッド。この時代にはまだ花崗岩の化粧がかなり残っている
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ギザのピラミッド。この時代にはまだ花崗岩の化粧がかなり残っている
ギザのピラミッド。この時代にはまだ花崗岩の化粧がかなり残っている
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー ピラミッド横にあるスフィンクス。意外と小さい
ピラミッド横にあるスフィンクス。意外と小さい
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー アレクサンドリアの風景
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「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 海に面したアレクサンドリアには図書館や灯台、浴場や宮殿など多くの施設がある
「アサシン クリード オリジンズ」レビュー 海に面したアレクサンドリアには図書館や灯台、浴場や宮殿など多くの施設がある
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「アサシン クリード オリジンズ」レビュー レトポリスにあるホルス神殿
レトポリスにあるホルス神殿
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