2017年10月26日 12:00
カプコンのゾンビゲーは「バイオハザード」だけじゃない! むしろ筆者個人としてはバイオを超えるゾンビゲーだと思っている「デッドライジング」のPS4版が、PlayStation Plus加入者なら期間限定でなんとたったの“100円”でDLできてしまうのだ! 今回紹介するPS4版「デッドライジング」は、2006年にXbox 360で発売された同タイトルを高画質&高フレームレート化して移植されたものだ。
「バイオ」と同じくゾンビを題材にしている「デッドライジング」だが、両タイトルではうまく差別化が図られている。ホラー要素が強い「バイオ」に反し、「デッドライジング」はホラー感はほぼ無く、いい意味で“バカゲー”なノリである。広大なショッピングモールを舞台にしたオープンワールドアクションゲームで、モール内に群がる溢れんばかりのゾンビどもを「マネキン」から「クマのぬいぐるみ」まで、ありとあらゆる物を武器に蹴散らしていく、ブッ飛んだゲームなのだ。
筆者は11年前、この「デッドライジング」にハマリにハマった。今回、リマスターでまたプレイできる機会が訪れて嬉しい限りである。ここから本作の魅力を語っていきたいと思うので、未プレイの読者に少しでも興味をもってもらえたら幸いだ。
ゾンビだらけの地獄から生還せよ
「デッドライジング」の舞台となるのはアメリカ・コロラド州ウィラメッティにあるショッピングモール。フォトジャーナリストの主人公、フランク・ウェストは、このショッピングモールが軍に閉鎖されている情報をキャッチ、事件の臭いを嗅ぎつけカメラ片手に、チャーターしたヘリコプターで現場へ取材に赴く。
フランクは町中でゾンビが大量発生し人間を襲っているのを目撃。ヘリの操縦士と3日後に落ち合う約束をしモールの屋上に降り立つ。ゾンビが発生した事件の真相を掴むべく、ゾンビだらけの地獄のショッピングモールで“72時間”生き抜くのが本作の目的となる。
本作には時間の概念があり、イベントの発生する時間と場所のタイムスケジュールが常に決められている。それに沿っていくことで真相に近づいていき物語が進んでいく。本作の魅力は、“自由度”にある。メインイベントが発生するまでの空白の時間にショッピングモール内を自由に探索できるのだ。
ストーリーに直接関係ないサブイベントの消化、生き抜くための武器の調達や回復アイテムの確保、スクープ写真の激写など様々なことができる。ゾンビをひたすら倒しまくるのも爽快で、とにかくやれることが無限大にある。メインイベント発生するまでの時間の間を縫って探索するのが本作の醍醐味である。
モール内は広いので探索に没頭しすぎてイベント発生場所から遠くに離れ過ぎてしまうと、時間に間に合わなくなってしまう。メインイベントを逃してしまうとその時点でゲームオーバーになってしまうので注意しなければならない。探索をどこで切り上げるかの駆け引きも面白さの1つだ。
フランクは屋上から下の階に降りてショッピングエリアに出るのだが、そこでバリケードを作ってゾンビを防ぐ生存者達に出会う。しかし、ひとりの老婦人がペットのプードルがいなくなったと騒いでおり、愛しのペットを探すために半狂乱になりながらバリケードを退かし始める。老婦人を止める男を突き飛ばし、入口の扉を開けてしまうのだ。
扉が開くと堰を切ったようにモール内にゾンビの群れが雪崩れ込む。やっぱりこうなりますよね! と、パニック映画ではお馴染みの“余計なことをするやつ”の登場により、ショッピングモールが安全な天国から救いのないゾンビ地獄と化す。ここから物語は本格的に始まっていく。
本作はそのゾンビの群れだろうがまとめて薙ぎ倒すことができる。身近にある物は全て武器になる。楽器店にあるギターやレコード。飲食店にあるフライパン。スポーツ用品店のスケボーなどなど、モール内には武器となるアイテムが無数に存在している。
バリケードに使っていたベンチなんかは広範囲に攻撃できて大人数を相手にするにはうってつけの武器だ。ベンチを一振りするごとに大量のゾンビをまとめてぶっ飛ばすことができ、爽快感は抜群だ。武器を持てば鬼に金棒! ……とは簡単にはいかないもので、武器にはどれも耐久度があり、使い続けていると最終的には壊れて消滅してしまうのだ。どんなに強い武器も使い切りの消耗品なので、いついかなる時に強敵が襲ってきても大丈夫なよう手持ち武器のストックは常に確保しなければならない。
「デッドライジング」はこのようにしてゾンビをなぎ倒しながら生存者を探し、救出していくのが中心となる。モール内で唯一の安全場所であるのが守衛室。モール内にいる生存者の避難所&セーブポイントでもあり、フランクの拠点となっている。守衛室のモニターでモール内を監視している仲間から逐一無線通信が入り、メインイベントの目的地や生存者の救難情報を聞くことができる。
最初のイベントとなるのが、仲間のエージェント、ブラッドがフードコートで銃撃戦をしているという情報。フードコートに入るや否や、フランク目がけて銃弾が乱れ舞う。物陰に隠れてブラッドと合流。そして最初のボス戦に突入する。
最初のボスはカリートという男。モール屋上に降り立ったとき、フランクが最初に会った人物だ。二言三言交わした際、このゾンビパニックの原因を知っている素振りを見せていた重要参考人である。カリートはフードコートの屋根を陣取る。こちらが物陰から顔を出すとマシンガンで狙い撃ちをしてくる。火力もあり、最初のボスにしてはかなりの強敵だ。
ボス戦では地形を利用した戦い方が重要になる。ここはフードコート。周りを見れば辺りには回復アイテムである食べ物がゴロゴロ転がっている。このボス戦ではそれを利用しない手はない。普通に戦っていたら、相手の高火力のマシンガンやグレネードであっという間にお陀仏だ。
戦闘に突入したらすぐさま回復アイテムを持てるだけ回収。食べ物を抱え込めばこっちの体力は無尽蔵となる。マシンガンで撃たれるのもお構いなしに、パンや牛乳を飲み食いしながらハンドガンで応戦。撃たれても撃たれても食事で回復。まさにゾンビのような生命力で危なげなくカリートを撃退できる。カリートは姿をくらまし、この後幾度となくフランクたちの前に立ちはだかってくることとなる。
これが真の恐怖! 極限状態が、人間を化け物に変える
「バイオ」シリーズならゾンビ以外にもハンターやリッカ―などの様々なクリーチャーが敵として登場するが、本作は最初から最後まで一貫してゾンビのみ。正直、ゾンビはサッカーボール1つで倒せるくらいの相手で、このゲームにおいてさほど脅威ではない。本作において本当に怖いのは実は人間なのだ。
「デッドライジング」シリーズを象徴するといっても過言ではない、他のゲームにはない存在……それが「サイコパス」。ゾンビによって壊された日常……死と隣り合わせの状況で頭がおかしくなった人間であるサイコパスは、敵としてフランクに牙を向いてくる。
無線の通信で○○に生存者がいるという情報をもらい救出に向かってみると、情報通り生存者は確認できたが何やら様子がおかしい。救難情報の中には、正常な生存者だけではなくサイコパスも混ざっているのだ。
これがなかなかに厄介で、ただ救出するだけと思い軽装で目的地に向かい、いざ到着するとサイコパスと遭遇して下準備もなくボス戦なんてことが初見プレイではよくある。突然のサイコパスの登場にゲームオーバーに見舞われるのは必ず通る道。
自分の店をめちゃくちゃにされたスーパーの店長や、孫がゾンビに食われたことでイカレた老人など、彼らなりにサイコパスになってしまった理由があったりもするのだが、中には特に理由もなくただただ狂っているサイコパスも存在する。
自己防衛と称し、人間狩りを楽しんでいる狂気のファミリー「ホール一家」。見渡しのいいモールの2階から、人間を見つけてはライフルで狙い撃ちをしている最高にサイコなやつらだ。
父と息子が2人、3人ともライフルを装備していて、1人にかまけていると他の2人の援護射撃でどんどん体力を奪われる厄介な敵だ。
どう戦うか……。こちらもライフルを装備して撃ち合いを試みたが、照準を合わせている最中にも四方からバンバン撃たれ、とてもじゃないが撃ち合いでまともに戦える状況じゃない。
銃が無理なら残されてる手は1つ。近接武器による接近戦だ。日本刀を手に、ライフルで撃たれながらも近づき、店の中まで追い込む。狭い店の中では遠距離用のライフルよりも日本刀の方が間違いなく有利だ。
こうなればもはや袋の鼠。店の中をグルグルと逃げ回るのを追いかけ、後ろからバッサリと斬撃をお見舞いする。1人を片付ければ後は2人。こいつらは3人揃うと脅威だが、数が減れば減るほど強さは半減。残り2人も1人目と同じく特攻して刀の錆にしてやった。
本作はやり込み要素がふんだんに盛り込まれており、周回プレイを前提とした作りになっている。助けを求める生存者やサブイベントの数は無数にあり、1、2周のプレイでは遊びつくすのは不可能なボリュームだ。
遊べば遊ぶほど面白くなっていくのが本作の魅力である。プレイを重ねることでショッピングモール内の構造やアイテムの配置など把握でき、まさに“自分の庭”状態になっていく。ショートカットの道筋が即座にわかるようになれば行動に全くの無駄がなく、時間に追われることがなくサブイベントなどを存分に堪能できるようになる。
本作にある成長要素の概念が周回プレイの楽しさをより引き立たせている。ゾンビを倒したり、襲われている人を救出するとPPというポイントがもらえ、貯めることでレベルが上がっていく。レベルが上がると体力の最大値や攻撃力の上昇。移動速度のアップやアイテムの最大所持数も増加する。能力が上がるほかにも、レベルによってフランクは様々なアクションを修得する。強烈なタックルや投げ技、さらにはゾンビによじ登れるようになるなどの役立つスキルを使えるようになる。
周回プレイを苦にさせない作りもさすがと言いたい。プレイの途中でゲームオーバーになったとしても、そのプレイで成長した要素は全て次の周回に引き継ぐことができるのだ。1周目で苦戦した敵にも2周目ではあっさり倒せるようになっていたりして、成長を肌で感じられ、優越感に浸れるのが最高だ。
書ききれない程「デッドライジング」の魅力はまだまだあるのだが、最後にこれだけは言いたいのがコスチュームシステムだ。
ショッピングモールの中には当然、衣類が売っているブティックが多数存在する。売り場の服や靴などを調べるとフランクに着せることができるのだ。スーツで身を包みハットを被るなど自分好みのファッションにコーディネートできるのだ。
確かに面白いシステムだが、特筆するほどのことかと思うだろう。そこはバカゲー(褒め言葉)の「デッドライジング」である。ただフランクにカッコイイ服を着せるだけで終わるわけがない。子供服のお店や婦人服のお店でも着替えることができるのだ。
キツキツの子供服を腹丸出しの状態で着たワンパクおじさんや、厳つい中年男の花柄ワンピース姿など、もはやお前が1番サイコパスと言いたくなるような笑えるコスチュームがいっぱいあるのだ。しかもコスチュームはイベントシーンでも反映されるので、真面目なシーンもふざけた格好で一気に台無しにしてくれて笑える。これは是非自分の目で見てもらいたい。
今回「デッドライジング」を改めてプレイしてみても10年以上前のゲームとは思えないクオリティだった。古臭さを感じさせないどころか今プレイしても逆に新しさすら感じる、時代の先を行っている作品だ。
ゾンビとショッピングモールというベタな組み合わせでありながら、ここまで真新しさを詰め込んでいるのはさすがのカプコンである。自由度の高さや純粋にゲームとしての面白さ、そして何度もプレイさせようという工夫がこらされている。まだまだ洋ゲーにも負けていない、国産ゲームの底力を感じた1本だった。
今回紹介したPS4版デッドライジングは、11月7日までにPS plusに加入すればPSストアにて100円で購入することができ、正直全力でオススメだ。12月には最新作の「デッドライジング 4 スペシャルエディション」も発売予定なので、その予習やこのレビューで興味を持ったなら是非ゾンビパラダイスを体験してもらいたい。
(C)CAPCOM CO., LTD. 2006, 2016 ALL RIGHTS RESERVED.