マーベラス、Wii「アークライズ ファンタジア」
スピーディーに展開していく戦闘を紹介
制作プロデューサー&ディレクターインタビュー


6月4日 発売予定

価格:7,140円

CEROレーティング:A(全年齢対象)


パッケージイメージ

 株式会社マーベラスエンターテイメントが、6月4日に発売を予定しているWii用RPG「アークライズ ファンタジア」は、王道ストーリーと「泣ける」をコンセプトにしたRPGだ。価格は7,140円、CEROレーティング:A(全年齢対象)。

 「アークライズ ファンタジア」は、剣と魔法と竜が混在するファンタジー世界を舞台にしたRPG。物語は、メリディア帝国の帝室認可傭兵である主人公ラルクが、濁竜との戦いで仲間を救うために濁竜ともども落下し、本隊とはぐれてしまい、そこで出会ったディーバの少女リフィアと行動を共にするところから始まる。

 開発は「ルミナスアーク」、「ワールド・デストラクション」、「セブンスドラゴン」など、を手がけた新鋭ディベロッパー、イメージエポックが担当しており、シナリオは「テイルズオブ ジ アビス」など担当した実弥島巧氏が、またメインキャラクタデザイン原案には「交響詩篇エウレカセブン」などの吉田健一氏が担当するなど、豪華スタッフによるタイトルとなる。

 RPGの肝となるゲームシステムの1つ、戦闘シーンではオーソドックスなコマンド方式、またフィールド上にモンスターを配置したシンボルエンカウント方式を採用しているほか、三位一体の組み合わせで敵に立ち向かう戦闘システム「トリニティ・バトルシステム」などが実装されている。なお、1度の戦闘では、3キャラクターまでが操作キャラとして参戦可能で、3人の行動によって戦闘時に様々な効果や演出が発生する。

 今回、制作会社のイメージエポックに取材に伺い、ゲームの戦闘シーンなどを体験するとともに、制作プロデューサー、ディレクター両名にインタビューを行なった。体験プレイでは、オーソドックスな雑魚モンスターとの戦闘と、序盤に登場するボスモンスターの戦闘、またゲーム中のマップ移動なども体験したインプレッションをお届けする。

 あらかじめ用意されたセーブデータでのプレイでは、戦闘システムの醍醐味である通常攻撃をはじめ、特殊技の「エクセルアクト」、魔法「光召術」、連携の「タンデムコネクト」や「トリニティアクト」など、派手な技が展開されるが、それぞれの技による演出などは昨今のRPGのように長めの尺で構成されたカットシーンによる演出などはなく非常にスピーディな展開になっており、特殊な技を出すことでの間怠っこしさなどは見受けられなかった。ゲーム中の戦闘システムや、キャラクターついては1月の記事を参照してほしい。

 また基本的にはプレーヤー自身の手で各キャラクターの行動は決定できるが、戦術を大まかに決めたオートバトルも可能。雑魚との戦闘などは「おまかせ」などを選ぶことで、3人のパーティキャラクターが自動で行動してくれるようになっている。このため、ザコモンスターでの戦闘では、ボタンを2つほど押すだけで、簡易的に経験値を稼げる仕様になっていた。

 ボスとの戦闘では、モンスターの属性と、その場に設置されている「レイストーン」などが重要な要素となっており、相対する属性での攻撃を与えれば高いダメージを与えられたり、設置されたレイストーンを利用することで、パーティの魔法を強化したり、破壊することで相手の属性攻撃を弱体化させることもできる。また、時折キャラクターたちから行動前に発せられる「嫌な予感がする」といったセリフが重要なヒントとなっており、危険な攻撃に備えHPを回復しておいたり、「防御」を選択してダメージを抑えるといったことも重要になっているようだ。

 ちなみにゲームの基幹部分では、画面切り替えやロード時間によるウェイトなどは見受けられないほか、フィールドや各種イベントシーンなど、主要登場キャラクターがほとんどのセリフを喋るセミフルボイス方式を採用。キャラクターコンテンツに位置するRPGとしては、各声優陣によるセリフ回りや歌、ムービーシーンの演出などは、スマートに仕上がっている印象を受けた。


ボスモンスターとの戦闘では、歯ごたえのあるバトルを楽しめるほか、キャラクターたちの掛け合いや危険に対する呼びかけなど、演出や戦略部分でも大事な要素となっている


■ 「泣ける」をコンセプトに制作された王道ストーリー

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、金丸さんはこれまで多数のRPGに携わっていらっしゃいますが、「アークライズファンタジア」をWiiで開発するきっかけなどを教えていただけますか?

株式会社イメージエポック デジタルコンテンツ部 課長 ディレクター 金丸宏之氏

金丸氏:「アークライズファンタジア」に関しては、私が関わる前にWiiでの開発は決まっていました。WiiでRPGを作るにあたり、どういうRPGを作ればいいのかというのが最初の課題でしたね。それを考える上で、Wiiリモコンに特化した操作ではないものを選択し、開発当初は、Wiiで遊ぶ本格的でオーソドックスなRPGというものがなかったので、そこを狙い撃ちしようということになりました。

――製作スタッフの中には、金丸さんとご縁のある方々も多いように見受けられました。舞台は変わりましたが、再び各スタッフと仕事された印象や感想などはございますか? これまで共に仕事をして、もう1度彼らと仕事をしたいと金丸さんから声を掛けたのでしょうか?

金丸氏:彼らとは「アークライズファンタジア」を作るために集まったわけではないんですよ。たまたまある人に声をかけられてイメージエポックを覗いたら、かつての仕事仲間たちが何人も顔を揃えており、更にそこにシナリオの実弥島さんが参加されて……という経緯になります。

 確かに、できたら彼等ともう1度一緒に仕事をしたいという思いはありました。だた、それがほんとに偶然、何かに導かれるように1つのところに集まったのかな……と。色々な偶然が重なって完成した「アークライズファンタジア」は、自分がRPG制作に携わってきた中でも集大成のようなものになったと思います。

――ストーリーコンセプトの部分ですが、改めて教えていただけますか? またイメージエポックさん制作のゲームとしては、キャラクター設定、声優など、いつもらしいターゲットのような気もしますが、今回そのほかにも意識したところはありますか?

株式会社イメージエポック 代表取締役 御影良衛氏

御影氏:王道のRPGシナリオで、泣けるシナリオにしてほしいと実弥島さんにお願いしました。結構シリアスなストーリーです。デバッグプレイ中にホロっときたことも何度もありますし、今回は女性の方を意識して作っている部分もあって、いつも遊んでいただいているユーザーさんのターゲットは確実に押さえつつ、それに加えて女性の方が楽しめるように配慮しています。

――女性ユーザーがターゲットに入っているというとライトな印象も受けますが、具体的にはどのような部分ですか?

御影氏:僕らが作ると女の子キャラには力を入れるんですが、男の子キャラに力を入れなかったんですよ。今回は男の子のキャラにすごい力を入れています。

金丸氏:ディレクション側からは、実弥島さんに、いくつかのキーワードを用意してシナリオも制作していただいた感じになります。実弥島さんとも話していたり、社内でも出たのですが、男性キャラを何度も見直しました。主人公のラルクなど3D化にあたっては、かなり手が入りましたね。そのほかにも、シナリオにおける各キャラクターの関係性やビジュアル、セリフや演出も含めて、このキャラはこうしたほうが女性にとっての印象がいいだろうという話を何度も詰めたと思います。

 男性プレーヤーの場合、RPGなどでは主人公以外の男性キャラは力を入れて見ていただけないので、今回はそのあたりも考慮し、平均的に愛が籠っているように作っています。弊社らしいキャラクター性が出せたゲームだと思っていますし、これまでのタイトルなどでは、描けなかった部分をしっかりと語り尽くせたのではないかと……当然物作りなので反省点もありますが、今回は今回で、納得のできる場所に辿り着けたと思います。

御影氏:金丸の言うとおりですが、僕としても出来が悪いと大法螺は吹けませんが、今回は中身に自信があります。一般的な人気RPGシリーズよりも、出来を良くしようというのが僕らの合言葉だったので、そこらへんの意味では十分適っているいると思いますよ。

――「アークライズファンタジア」は、登場キャラクターが非常に多く、おそらくほとんどのキャラクターがパーティに入るかと思いますが、どのキャラクターにしようか目移りしてしまう気がします。参考までにデバッグ中など御影さんと金丸さんが選んだパーティ構成を教えていただけますか?。

御影氏:ラルク、リフィア、レスリーかな。カテゴリ的には近距離、回復、遠距離になります。

金丸氏:ラルク、リフィア、レスリーかオイゲンかを使い分ける感じですね。たまにセシルを参加させて、彼女の元気一杯な戦いぶりを見て和んでいます。

――ラルクとリフィアは鉄板なんですね。

御影氏:リフィアは重要ですね。レスリーとニコルはカテゴリ的には一緒で、おそらく女性はニコルを選ぶと思います。僕たち男の子なんでレスリーですね(笑)。また、女性プレーヤー向けにニコルかサージュがいるのですが、社内的には二コルが多かったですね。多分シナリオの方の愛が強いのが遊んでて分かると思いますよ。

 また、好きなキャラクターたちだけで遊ぶことも可能ですが、キャラクター特性によって行動パターンがあるのと、遠距離カテゴリのキャラクターは、ボス戦などでレイストーンを破壊する時にすごい便利なんですよ。行動が素早いなど利点もあります。

【ラルク】【リフィア】
【アデール】【アルス】【サージュ】
【レスリー】【ニコル】【オイゲン】【セシル】
「アークライズファンタジア」では、個性的なキャラクターが多数登場する。ストーリーを進めていくことで、様々な伏線や彼らの裏に秘めた人間関係なども明らかにされていく。



■ 戦闘部分は極力スピーディーに、かつ戦略性に富んだものに

――「アークライズファンタジア」は、昨今のRPGでいう戦闘シーンでのエフェクトによる間怠っこしさがなく、非常にスピーディに表現されていますが、このあたりは開発サイドの企画として挙がっていたのですか?

金丸氏:戦闘シーンの部分は、制作初期から、戦闘でのストレスはかけないようにしていく方針で進めていました。ただ、マーベラスエンターテイメントさんからは、もうちょっと演出を派手にしてもいいんじゃない?といわれましたね。

――金丸さんとしては戦闘シーンで余計な時間がかかりすぎるのがよくないと。

金丸氏:そうですね。戦闘もそうですが、マップの切り替えなどにも十分気を使っています。昔、スーパーファミコンからプレイステーションに移行した時にROMカセットからディスクになり、ロード時間というのが発生しましたよね。今回は任天堂ハードということもあり、ROM時代のRPGのレスポンスを意識して作っています。戦闘は担当する企画のスタッフがうまく仕切ってくれたのが大きいですね。またプレイしていただいて初めてわかる部分などもあるかと思いますが、戦闘中のキャラクターたちの掛け合いや、危険を知らせる部分など基本的な要素は抑えつつも、ゲームプレイに変化があるようにしてあります。

特殊連携の1つ「エクセルトリニティ」。スクリーンショットでは、キャラクターカットやエフェクトによる派手で長めの演出といった印象を受けるが、ゲーム中では10秒くらいで表現されている



――ディベロッパーとしては、「ルミナスアーク」をはじめ、「ワールド・デストラクション」、「セブンスドラゴン」ときて、初の据え置きハードになりますよね。発売を目前に控え、完成した「アークライズファンタジア」ですが、自分の中でできあがった感想などはございますか?

金丸氏:今もそうですが、弊社はまだ経験の浅い会社でしたので、制作中は常に不安がありました。ただ、夏を過ぎたあたりから、「ひょっとしてなにか凄いものができるんじゃないか?」と思いましたね。今こうやって、出来上がったゲームを見てみると「よくこれができたな(笑)」と、「どんな奇跡が起きたんだよ!?」と思っています。

 ただ、スタッフのみんなが自分たちは「こういうRPGを作りたい」という熱意を持っていて、無いこと尽くしの会社でしたが、スタッフたちの想いだけでなんとかなってしまった部分もあります……実際の働きぶりなどを見ていると無茶苦茶でしたけどね。

  私の中でRPGとは、ゲームの集大成的なものだと思っていまして、今回もそうですが、自分でもまだまだできることはあると思います。今後もRPGを作っていきたいですね。社長がRPG好きで良かった部分もありますが、ビジネス的にいつか正気に戻らないかといった心配もあります(笑)。

御影氏:RPGは儲からないですからね。あくまでディベロッパーとしての話ですが、いい作品にしようとして、色々使いすぎて僕が事務に怒られる……と。ただ、僕もいつかたどりつきたいRPGが頭の中であって、それにたどりつける日が来るために社長やっている部分もあります。足踏みをする気は毛頭ないので、去年よりも今年、来年よりも再来年、そして10年、20年かかっても自分の頭の中で描いてる夢にたどりつきたいと思っています。死ぬまで試練ですよ。「アークライズファンタジア」は点数でいえば、70点から80点くらいですね。イメージ的には、会社のレベルも中身も外見も7割くらいはできてきたので、これ以降は何を作っても無難以上なものを作っていけると思います。良ゲーから神ゲーに辿り着きたいです(笑)。

 

金丸氏:自分が今まで関わってきたタイトルの中には、ハーフミリオンクラスのものもありましたが、それらは過去のスタッフの功績にぶら下がっていたという負い目がありました。そういう意味で、今回ようやく自分の作品として胸を張れるタイトルができたと思います。自分としては80点くらいの出来だと思っています。

――アークライズを作っていた上で、苦労した点や、制作途中での楽しかったことなどを教えていただけますか? ディベロッパーとしての苦労やプロデューサーの水谷さんとのこぼれ話などもあれば。

御影氏:水谷さんがプロデューサーに立つと、どんなタイトルであろうとすべてのディベロッパーが苦労すると思います。水谷さんとゲーム作れる人はそんなにいないと思います。

――(笑)。それは人を選ぶという部分でしょうか?

設定資料集のニコルのページ。各キャラクターにはシナリオを担当した実弥島氏のコメントが添えられている

御影氏:何が大変かって水谷さんと仕事すると、こだわりがすごいんですよ。すべてのものに対して、前に進まなくなるんです。今持ってるポテンシャルを常に120%出してないと要求には答えられない状態になるのですが、ゲーム制作はチームワークですので、自分だけが120%の力を出すのではなく、如何にチームを120%に保ちつつ、3年間を進めるのが一番大変でした。

 「アークライズファンタジア」には、見た目にこだわった武器などもあるのですが、そこにも全部水谷プロデューサーのチェックが入って、「ここもうちょっとこうしたほうが」、「ここの紋章をこういう感じにしたほうが」など、この人はもしかして、1人でゲームを作る気なんじゃないかというのがたまにありました。良い意味では水谷さんは作品に対する愛が半端じゃないですね。よく言えば愛情たっぷりな人、悪く言えば暑苦しい人(笑)。

 

金丸氏:私のほうは、一時期このラインが潰れるんじゃないかと思うくらいシナリオ部分に遅れが出てしまったことですね。シナリオをより良くするために試行錯誤した結果、開発が6カ月遅れてしまい、そのためにマップの仕様やゲーム部分も止まってしまったので、毎日スタッフから突き上げを食らいました。

御影氏:設定資料集の各キャラクター部分には、実弥島さんのコメントが添えられていますが、ニコルのワンポイントコメントのところは要注意です。ただ、結果として「アークライズファンタジア」は「なにが足りないか?」という部分がなく完成したと思います。RPGの制作って実際、辛いです。他社さんでも制作されている時の苦労は、弊社でも同じべくありましたが、大事な部分を取りこぼさないで完成したと思います。公式サイトでもコメントしていますが、日本で4番目くらいのRPGを目指したと……3番手に限りなく近づいたゲームを作りたいと思ってできた作品だと思います。

――最後に読者の方へ向けたメッセージをお願いします。

御影氏:キャラもの系のRPGが過去、現在問わず好きだった人はぜひ購入して遊んでもらえればと思います。シナリオの部分に関してですが、「泣ける」というコンセプトをベースに要所でシリアスなシーンがたくさん登場します。また「アークライズファンタジア」の裏コンセプトになるのですが、キャラクターの駆け引きがたくさん用意されています。様々な場所でキャラクターが発したなんでもない一言が、実は後半にかかってくる琴線だったりすることもあり、これらを見つけていって楽しんでもらえれば嬉しいです。

金丸氏:RPGが好きな人にはぜひ! ストーリーやシステムが好きな人もぜひ遊んでいただきたいです。戦闘については、ザコはサクサク軽い口当たり、ボスはじっくり噛み応えがあるというようなメリハリを付けると同時に、間口は広く奥深いシステムを用意させていただいています。システムを把握していくことで、様々な高度なことを簡単にできるようになっていく発展性があるので、色々と突き詰めていただくことで、より楽しんでいただけるのではないかなと。また、闘技場や難度の高いダンジョンなどのお約束も多数用意させていただいていますので、それらも是非楽しんで下さい。

御影氏:戦闘が楽しくなるピークが、プレイしてから30時間を超えるあたりになるとおもいます。金丸の言うとおり、奥が深く噛み応えのあるシステムになっていますので、30時間超えたあたりで、自分らしさを出せるような遊び方を見つけてくれればと思います。

 それと購入いただいた方へのお願いになりますが、ぜひアンケートを送っていただきたいです。良かったところと悪かったところを1点ずつでもいいので書いてほしいですね。ユーザーの皆さんが遊んでいただいて、面白いと思ってくれることがモチベーションになりますし、何より生の声がすごく欲しいですね。面白かったという部分は当然として、ここは良くないというところも「何くそっ」てどちらにせよプラスに動くんです。アンケートをもらって目を通していくと、「やっぱりこうなんだ」ということろなどが再認識できる上に、我々からするとユーザーさんの意見がやる気へと繋がっていくことになるんですよ、アンケートがすっごくほしいです。よろしくお願いします。

 

――本日はありがとうございました。


普段のコスチュームとは違った衣装を着る登場キャラクターたち。ドレストークを見るためには、衣装だけでなくその場所も重要らしい

【スクリーンショット】

(C) 2009 Marvelous Entertainment Inc.

(2009年 6月 1日)

[Reported by 鬼頭世浪]