ニュース
【特別企画】1番人気は「GTAV」!? 中国コンソールゲーム最新レポート
ゲームショップの状況はどうなのか? 今後の課題はプロモーションか
(2015/8/19 00:00)
ゲームショップの状況はどうなのか? 今後の課題はプロモーションか
さて、ここまで業界側の視点から中国のコンソールゲーム事情を紹介したが、ショップ側、ユーザー側はどう見ているのか。というわけで今回も上海滞在中に時間を取ってゲームショップを見てきた。上海のゲームショップを見て回るのは、2014年12月のSCESHの発表会以来、約8カ月ぶり。この間、PS4/PS Vitaのローンチがあったため、晴れてXbox OneとPS4の両プラットフォームの正規版がショップに並ぶ状況になっているはずだ。
昨年12月の取材では、徐家匯や淮海路、浦東といった上海の主要なショッピングエリアでは、もれなくXbox Oneの試遊台が置かれ、新しいビジネスの垂直立ち上げの様子を目の当たりにすることができた。
今回も同じエリアを回ってみたが、Xbox Oneの展示エリアは、なくなっているか、規模を縮小していた。徐家匯や浦東のMicrosoft Storeでの展示はそのままで、ここが主なタッチポイントになっていた。関係者に話を聞くと、モールの入り口に展示ブースを設けるやり方はコストの割に効果が見合わないとして、早々に方針転換したということだ。また、五角城にPerfect Worldが展開していたXbox Oneが体験できるアンテナショップも閉店し、Xbox Oneの展開は物理店舗的には早くも縮小傾向にある。
これに対してSCESHは、3月の正式ローンチ以降同じアプローチは取らず、Sony Storeを中核としたアンテナショップを通じて草の根で広げていっている。ただ、SCESHにとって若干不幸だったのは、上海に3店舗あったSony Storeのうち、南京東路店と徐家匯のMETROCITY店がSony Chinaの方針により閉店となっていたことだ。このため、PS4やPS Vitaを手軽に触れる店舗は、ローンチイベントを行なった淮海路の旗艦店しかないという状況になっている。こうしたことからPS4 VS Xbox OneというChinaJoy会場で見られたような風景を確認することはできなかった。
また、ゲームショップについても、その宿り主であるITモールそのものが、閉店や規模縮小傾向にある。ITモールの主な商材であるPCそのものが、スマートフォンの普及によって売れなくなり、閉店する店舗が増えているためだ。こうした結果、上海を代表するPC系ITモールPacific Digital Mallは、徐家路の2号店と浦東の3号店が相次いで閉店。全国展開しているBUYNOWの浦東店は、売り場面積を大幅に縮小していた。タッチポイントの確保に苦慮している点はMicrosoft ChinaもSCESHも変わらない。
そうした中で、ITモール内にあるゲームショップは、数年前の全盛期と比較して数は少ないなりに、生き残っている店舗はどこも元気だった。なくなった店舗は、海賊版や改造を行なっていた店舗ばかりで、それらの行為がすべてオンラインに移行し、PS4やXbox Oneでは海賊版が出回らなくなった結果、商売が続けられなくなっただけの話だ。今残っている海賊版ショップは、インドネシアのようなインターネットの回線スピードが極端に遅く、数十GBのダウンロードが現実的ではない地域に限られている。いずれにしてもPS4やPS Vitaは海賊版が存在しないため、プラットフォームの世代交代と共にすべて消えてなくなった。
現在残っている店舗は、ピカピカの優良店ばかりだ。店員はコンソールゲームが大好きで、人によって「ソニーが好き!」、「XboxのKinectが大好き」、「実は任天堂に頑張って欲しい」など意見は様々だが、中国にコンソールゲームを普及させようという熱意に燃えている人ばかりだ。
ある店員は、自分はPS4オーナーで、ChinaJoyにも行き、筆者に写真を見せながら「Project Morpheusはマストバイだ!」と興奮気味に語ってくれたが、私がニンテンドー3DSの並行品も扱っていることを指摘すると、「ファイアーエムブレムif 白夜王国」は良いゲームだと勧めてくれた。筆者が「中国に来る前にクリアしたよ」と自慢すると、「自分もだ。最高のゲームだ」と語り、ひとしきり「ファイアーエムブレム」の話で盛り上がることができた。PS3/Xbox 360の時代までは自らが海賊版に手を染めているという後ろめたさからか、ショップの店員とこういう雑談に発展することはなかったのだが、PS4/Xbox Oneの世代は正規品をプレイする正規ユーザーばかりであり、日本と同じような健全なゲームファンが中国でも育ちつつあることを実感することができた。
SCESHは、時間が掛かっても、こうした優良店舗を1つずつ増やそうとしている。具体的には、台湾や香港と同様に、過去の販売実績や取扱量によってA、B、Cランク分けし、ランクによって試遊台やPOPの割当量を増減させていく。ランクを上げるためには、海賊版の販売を辞め、正規品をしっかり売ることをコミットしなければならず、自然と市場が清浄化されていくというわけだ。
こうした優良店も、先に述べたように、香港からの繁体字版を中心に、並行品はたっぷり仕入れている。理由は正規品だけだとビジネスにならないことと、並行品のニーズが圧倒的に高いからだ。この正規品と並行品の両方が並ぶスタイルは、アジアではごく普通で、10年以上前からビジネスを展開する香港や台湾でも並行品を置かない正規品のみのショップが登場したのはつい数年前のことだ。
ゲームショップは徐家匯のMETROCITY2階、浦東のBUYNOW2階あたりに集中している。優良店でも売り場の半分ほどは並行品が置かれており、本体も並行品と正規品の両方から選ぶことができる。ただ、いずれの店も扱っているのはPS4ばかりで、Xbox Oneは少ない。
PS4本体の価格は2,899元(約56,000円)の正価に対して2,400元(47,000円)で、関税の関係から日本よりもかなり高いものの、日本や欧米でもなかなかない思い切った値下げをお店側が実施しているところがおもしろい。並行品については6月に発売されたばかりの電源効率を上げた新型PS4も入っていて、値段は2,450円(48,000円)と、正規品より若干高くなっている。ソフトは、299元(約6,000円)の正価が、250元(約4,900円)と2割ほど安くしている。
店内で品物を見ている側から、2台ほどPS4が売れていた。いずれも並行品で、繁体字版「GTAV」をセットで購入していた。接客が終わってからお店でどういった商品が売れているか尋ねたところ、ゲームソフトはやはり繁体字版「GTAV」だという。本体については、正規品を買うユーザーが多いという。理由は2年間の無償保証が付いているためだと語り、中国のユーザーも安心安全を求めるのは同じことがわかる。それだけにSCESHには、中国ユーザーに向けた簡体字版タイトルを増やす努力が求められるところだ。
今回、ゲームショップ巡りのために街を歩いていて感じたのは、コンソールゲームの存在感のなさだ。台湾や香港のように街を歩いていて巨大な広告やラッピングバスなどでコンソールゲームを感じることはほとんどないし、そもそも売っている場所が少なく、表通りから目に付きにくい場所に限定されている。上海のような巨大な都市でアンテナショップがいくつかしななく、正規品を扱うゲームショップは特定の家電量販店の2階に上がらないと見つけられないというのは、いかにも寂しい。
中国は物理的に広く、流通網が十分に発達していない地域も多々あるということで、コンソールゲームを全土に普及させるにはまだまだ時間が掛かりそうだが、関係者の間ではようやく開放されたという喜びと、普及させたいというエネルギーが充満しており、他にはない非常にエキサイティングな市場となっている。今後、中国のコンソールゲームはどのような変遷を遂げるのか、残るダークホースである任天堂の本格参入はあるのかどうか。センサーシップの規制緩和はあるのかといった点も含めて、今後も中国コンソールゲーム市場の動向を注視していきたい。