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ChinaJoy 2015開幕。SCESHがProject Morpheusで圧倒的な存在感を見せつける

初日はアンドリュー・ハウスCEOも参加し、中国のファンにPlayStationをアピール

7月30日~8月2日開催



会場:Shanghai New International Expo Center

 中国最大規模のゲームショウ「ChinaJoy 2015」が7月30日、中国上海にて開幕した。初日の朝には、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアの中国法人SCE上海(SCESH)がオープニングセレモニーを実施し、SCEIグループCEOのアンドリュー・ハウス氏が会場に駆けつけ、ショウの開幕を祝った。

【SCESHブース】

【Show Girl】

SCEの幹部が一同に揃った
挨拶を行なうグループCEOのアンドリュー・ハウス氏
恒例のオープニングセレモニー
Project Morpheusの出展を告げると大きな歓声が上がった
Project Morpheusを持つShow Girl
Project Morpheus試遊整理券

 ハウス氏は挨拶の中で、今年3月より中国でコンソールゲームビジネスが正式にスタートし、中国のローカルパートナーとすでに20にも及ぶタイトルの開発に着手していることを報告。中国のゲームファンにに対しては、PS4やPS Vitaを通じてグローバルから最新のゲームタイトルを届けるだけでなく、中国のゲームクリエイターに対しても中国ならではのクリエイティビティを発揮する機会を提供すると約束。SCEグループのトップとして中国市場を重視する姿勢を改めて明確にした。

 SCEが中国市場を重視する姿勢は、10年以上前のPS2の時代からの伝統となっているが、今なお衰えるどころかますます盛り上がっている。オープニングセレモニーには、SCEJAアジア統括の織田博之をはじめ、アジア各方面のエグゼクティブのほか、先日行なわれた発表会にも参加していたSCEWWSプレジデントの吉田修平氏、グループCEOのハウス氏、そしてSCEJAプレジデントの盛田厚氏と、SCEグループの幹部が勢揃いしていた。

 虎の子であるProject Morpheusも、アジアの一般公開は先週香港で実施された「ACGHK 2015」に次いで2番目。香港には、地続きである中国広東省からも多くの業者やメディアが参加しており、いずれにしても“中国優先”の施策となる。ここまで中国を重視する理由は、中国を統括する織田氏が垂直立ち上げにこだわっていることに加えて、潜在的なポテンシャルが他のアジア地域と比較しても隔絶して大きいことが挙げられる。

 中国でのコンソールゲームビジネスは、2014年、上海自由貿易地区限定でスタートし、2015年、予定通り全面開放となったことが報じられた。SCESH自身にとっては、すでに中国大手メディア企業である東方明珠との合弁会社を設立し、上海に根ざして活動を開始しているため、全面開放そのものにメリットは薄いが、任天堂をはじめ、コンソールビジネスを展開しているコンペティターが中国本土に上陸し、コンソールゲームビジネスがさらに盛り上がる可能性がある。SCESHとしては、上海を拠点に、中国全土に展開するゲームプラットフォーマーとして、そのときまでに完璧な迎撃態勢を整えたい考えだ。

 さて、今回SCESHは、先日行なわれたプレスカンファレンスのレポートでもお伝えしたように、57タイトルをプレイアブル出展し、「ウルトラストリートファイターV」や「Kingdom Under Fire II」など最新の未発売タイトルを数多く展開していた。ChinaJoy 2014では、正式参入前だったため、センサーシップが通りやすいドライブゲームやスポーツゲームに出展を限っていたのとは打って変わって、完全に攻めの姿勢に変わっている。

 中でも人気を集めていたのは、Project Morpheusだ。1日3回整理券を配布し、整理券を持っている人のみが体験できるというシステム。初回の配布時間は、オープニングセレモニーの終了直後だったため、来場者が殺到。あっという間に整理券がなくなっていた。

 出展タイトルは「THE PLAYROOM VR(Monster Escape)」、「THE DEEP」、「SUMMER LESSON(2015 Summer Demo)」、「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech DEMO」の4タイトル。今回Project Morpheusは10台用意され、4台は「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech DEMO」に割り当てられ、残りは2台ずつ。どれが体験できるかは運次第で、初音ミクファンの多い中国では、「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech DEMO」が大当たりといった感じだ。

 今回、SCESHの厚意により、E3 2015以来、約1カ月ぶりにProject Morpheusを再び体験する機会に恵まれたが、“あの世界にまた帰って来た”という感じがした。VRだけは体験しなければその価値がわからない。現実とは異なるものの、現実に近いもうひとつの世界。Project Morpheusを被ることで、その扉が開く感覚がある。

 ChinaJoyの会場は、極めて暑く、そしてイベントの騒音や来場者の声で騒がしいというゲームを楽しむにはあまり適していない環境だが、Project Morpheusを被り、ヘッドフォンを付けると、スッとVR世界に没入できる。今更ながらにこの没入感は凄いと思う。

 今回、「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech DEMO」だけ初体験だったが、初音ミクというバーチャルアイドルのコンサートをVRで特別席で堪能できるという試みは非常におもしろかった。ただ、コンサートという音にこだわるコンテンツに触れることで浮き彫りになったのは、現行のProject Morpheus+ヘッドフォンというシステムは、PS Moveをサイリウム代わりに、曲に合わせてぶんぶん振っていると、物理的に干渉して没入感が削がれる印象があるのと、もう少し耳のハメる位置を調整したり、ボリュームを調節する機能が欲しくなる。Project Morpheusは、サウンド周りの機能をどうするかについてまだ明らかにしていないが、Project Morpheusにサウンド機能が組み込まれ、手軽にサウンド調節が可能になると、デバイスとしてより完成度が上がると思う。

 ところで中国ユーザーがProject Morpheusを体験しているのを見ていて印象的だったのは、まだVR自体に免疫がないため、おっかなびっくりな人が非常に多かったことだ。「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project: VR Tech DEMO」は、中国の初音ミクファンはどういう反応を示すのか興味津々で見守っていたが、視界をぐるぐる動かすだけで、いっこうに手が動かない。目の前の現象を理解するのが精一杯で、コンサートを楽しむところまでいっていないという印象だった。

 もうひとつおもしろかったのが「サマーレッスン」だ。自分自身もそうだったが、初回のプレイは皆借りてきた猫のように反応が大人しい。アリソンがまるで映画の世界から飛び出してきたかのような存在感でリアリティたっぷりに振る舞うため、ついつい礼儀正しくなってしまうのだ。しかし、デモを終えたユーザーは、よほど楽しかったのか一様に目をきらきら輝かせて興奮が抑えきれないという顔をしている。自分がプレイするより、プレイした人の顔を見ている方が楽しいほどで、ゲームがもたらすプラスの効能をたっぷり鑑賞することができた。Project Morpheusは、アジア地域ではまだ発売自体を発表していないが、アジアでもまた成功するだろうと確信を持つことができた。アジアのゲームファンは発売決定を楽しみに待ちたいところだ。

【中国のユーザーは意外と大人しめ?】
後ろから見ていた限りでは、ほとんどのユーザーが大人しめの反応だった。もっとも慣れてきたらまた変わるのかもしれない

(中村聖司)