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マイクロソフト、Windowsタブレット「Surface RT」記者発表会を開催
Windows RTベースの10.6インチタブレット。Surface Proの取り扱いは見送り
(2013/3/1 18:19)
日本マイクロソフトは3月1日、「新デバイスに関する記者発表会」と題した発表会を開催し、自社ブランドのWindows RTタブレット「Surface RT」を、日本語化して3月15日に発売することを明らかにした。価格は、32GBモデルで49,800円より。
「Surface」は、ARMプロセッサを採用したタブレット向けのWindows OS「Windows RT」を採用したWindowsタブレット。CPUにNVIDIAのTegra 3を採用し、Office 2013の利用はもちろん、ゲームや映像再生などヘビーな処理も行なえる。5点マルチタッチに対応した10.6インチ(1,366×768ドット)液晶を搭載し、キーボードも別売のカバーにより対応。USB 2.0やmicroSDカードを使ってPC的な利用にも耐えられるようになっている。外形寸法は275×172×9mmで、重さは675g。最大8時間の連続駆動が可能となっている。すでに海外では2012年10月から発売されており、満を持して日本での取り扱い決定となる。
Surface RTに搭載されているOS「Windows RT」は、Windows 8のタブレット版という位置づけの組み込み型OSであり、Windows 8の代名詞であるModernスタイルのUIを採用していることに加え、デバイスドライバはWindows 8と共通のものを使用しているため、マウスやゲームパッドなどWindowsのハードウェア資産はほぼそのまま活かすことができる。“日頃慣れ親しんでいるWindowsインターフェイスでタブレットが利用できる”というのが、iPadやAndroidタブレットなど、他陣営のタブレットと比較しての大きなアドバンテージとなっている。
注意点としては、Windows 8を含む、Windowsアプリケーションは動作しないことだ。利用可能なアプリケーションは、今回採用された「Office 2013 RT」のようにあらかじめプリンストールされたものと、Windows 8およびWindows RTで利用できるダウンロード販売サイト「Windowsストア」、もしくはXbox LIVEで提供されている一部のゲームが楽しめる「Xbox Games」を通じて入手したものに限定される。
海外では、このウィークポイントを克服するために、Surfaceのアーキテクチャを活かしたWindows 8搭載タブレットとして上位モデル「Surface Pro」の販売も開始されている。こちらはPCゲームを含むWindowsアプリケーションが動作するため、ゲームファンにとってはこちらのほうが注目されるところだが、今回の発表会では、「お知らせできるタイミングが来たら(樋口氏)」と含みを残すコメントに留まった。
発表会で最初に登壇した日本マイクロソフト代表執行役の樋口泰之氏は、Surface RTを手にして「やっとこさ日本で販売ができる」と万感の思いを込めてコメントし、「一体いつ売るのか?」、「どうやったら手に入るのか?」という無数の問い合わせに対して明確な回答が出せたことに安堵を示した。
樋口氏は、無数のパートナーがいるにも関わらず、あえて自社ブランドのタブレットを投入した理由について、「これまでマイクロソフトはソフトウェアに専念、特化してきたが、競争環境が変わり、ソフトとハードの両方を1社でまとめたほうが良くなってきている」と述べ、Windowsタブレットを、iPad、Androidタブレットに並ぶ第3極に成長させるために、自らが旗頭になる必要があり、パートナーとの協力関係は今後も変わらないことを強調した。
また樋口氏は、「Windows 8が載っていないタブレットをご利用の方の中の半数は“なんだ、この程度のことしかできないのか”という不満をお持ちだと聞いている」と、日本マイクロソフトの発表会としては珍しく、コンペティターのプロダクトを明確に批難し、Surface RTは「タブレットとしても使えるし、キーボードを付ければPCとしても使える。Office 2013がプリンストールされているため、その生産性は比較にならないほど高い」と、激しい表現で自社プロダクトに対する自信を示した。
Surface RTは、3月より始まる春商戦において、マインドの高い新入生や新社会人に向けて販売していく方針を明らかにした。この春商戦ではSurface RTのみならず、兄貴分であるWindows 8関連製品も同時に盛り上げていくということで、トータルで大きな山を作る考えだ。
発表会には、販売パートナーとなるビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラ3社の代表も出席し、それぞれSurface RTに大きな期待を寄せるコメントを発表。中でもヤマダ電機取締役兼執行役員常務の佐俣信一氏は、「Windows 95以来の商品が出た」と最大級の表現で黒船の到来を歓迎した。
「Surface RT」は、言うなればAppleのiPadに相当するプロダクトで、Windowsの名を冠してはいるものの、既存のWindowsフランチャイズとはまったく異なるエコシステムでサービスされる製品となる。
iPhoneやiPadなどのiOS端末でカギを握るのがApp Storeであるように、Surfaceの盛り上がりを左右するのは、Windowsストアでどれだけ優秀なアプリケーションが提供されるかに掛かっている。質疑応答では、「ユーザーが増えれば、それだけアプリも増える」とやや頼りなげな発言が気になったが、プラットフォーマーサイドからの働きかけが必要不可欠だと感じた。海外では「Xbox Tablet」の噂もあり、マイクロソフトのタブレット事業がどのように進展していくか注目されるところだ。
最後に、発表会の締めくくりに行なわれた質疑応答についてまとめておきたい。
・Surface Proは発売しないのか?
今回出るのはRTタイプのみ。Proはお知らせできるタイミングが来たら。
・日本語版と北米版との仕様の違いは何か?
OSが日本語になり、キーボードが日本のキーボードになる。そしてOfficeが商用利用ができる正式版になること。USはプレビュー版なのでできない。ハードはまったく同じ。
・WiFi以外の通信環境はどのようにカバーするか?
3G、LTEの対応は今のところ予定していない。
・販売目標は?
非公表
・OEMのパートナーとの関係の調整はどうするのか?
Windows 8対応PCは250機種以上出ている。Surfaceはその中の4機種で沢山ある中のひとつ。パートナーエコシステムは変わらないし、一緒になってタブレット市場を盛り上げていかないといけないと感じた。
・CMを見てると、3社に加えてMicrosoft Storeのロゴもあるが、Microsoft Storeからも販売するのか?
Microsoft Storeからダイレクトに販売する
・Windows RTは、今後日本マイクロソフトとして、継続的にやっていくつもりか?
この種のビジネスは1つだけ出して終わりということはない。今後も魅力ある製品を出すという方向性で動いている。
・発売のタイミングについて、日本投入をあえて遅らせてると聞いていたが、本来ならWindows 8と同じ10月26日に発売すべきだったのではないか?
1日でも早く投入したかったが、戦略的な順序や、Windowsパートナーから色んな製品が出てくるのを待っていた。あとはOffice 2013 RTを待っていた。北米のようにプレビュー版ではなく、商用用途にも使えるという製品版ことを搭載するために、Office 2013の発売を待っていた。逆に、どうしても間に合わせたかったのは、春商戦。
・わずか4機種とは言え、安いし、マイクロソフトのブランド力もある、NECの「LaVie Y」はもっと高い。店頭に49,800円で出てくるとインパクトはでかいと思う。価格戦略についてどのように考えているか?
パートナーと競争するというかは、Windows陣営と、その他の陣営の競争ということなので、Windowsを盛り上げていかなければならない。盛り上げ材料、PR材料のひとつになれば。トータルとしてWindows 8、Surfaceも含めて盛り上がればいいと考えている。
・Windows RTは様々な制約があって売りにくい。この点はどう克服するのか?
Windows RTはタブレットに最適化したOS。タブレットとしてリリースする。長時間バッテリで手軽に扱える。スリープ状態でも通信する。スマートフォン的な使い方もできる。タブレットにはWindows RTが軽くてベストという結論。従って、PCはWindows 8、タブレットはSurface RT。SurfaceでPC的な使い方もできるし、Windows 8ノートでタブレット的な使い方もできる。どちらに主軸を置くかということを考えるかわかりやすい。両者は今後も共存し続ける。Surface RT普及のために、Windowsストアを充実させていきたい。
・ストアの充実について具体的に
数自身は公開していないが、見ていくと新聞、ショッピング、ゲームも充実、かなり揃ってきたな。今後、どんどん増えていく。ユーザーが増えればアプリも増えていく、このサイクルを作ることが重要かなと考えている。
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